703.事典篇:亜人族:マーフォーク、ヒッポカンポス

 今回は「マーフォーク」と「ヒッポカンポス」についてまとめました。

「マーフォーク」はマーマンとマーメイドの総称です。

「ヒッポカンポス」は海に棲む馬で、マーマンなどが騎乗します。





事典【亜人族:マーフォーク、ヒッポカンポス】


 マーマンやマーメイドなどの人魚のことを総称して「マーフォーク」と呼びます。

 人魚は世界中で知られている存在なので、「剣と魔法のファンタジー」に登場させても著作権に引っかかることはありません。

 ヒッポカンポスはギリシャ神話に登場しますのでこちらも著作権に引っかからないので安心して使っていきましょう。




マーマン、マーメイド

 マーメイドは英語で「人魚」のこと。人魚は水中に生息すると考えられた伝説の生き物です。世界各地に類似の生き物の伝承があります。それらがすべて同一の種に属するという保証はありませんが、ここではそれらを総称して「人魚」と呼びます。

 水域に棲み人と魚の特徴を併せ持つという大まかな共通点はありますが、伝承されてきた土地によりその形状や性質は大きく異なるのです。「剣と魔法のファンタジー」ということでヨーロッパで見られる「人魚」について見ていきます。

 ヨーロッパの「人魚」は、上半身が人で下半身が魚類のことが多い。裸のことが多く、服を着ている人魚は稀です。伝説や物語に登場する人魚の多くは、マーメイド(若い女性の人魚)です。この姿は十六、七世紀頃のイングランド民話を起源とします。それより古いケルトの伝承では、人間と人魚の間に肉体的な外見上の違いはなかったそうです。

【ローレライ】

 ライン川にまつわる伝説。ライン川を通行する舟に歌いかける美しい人魚たちの話。彼女たちの歌声を聞いた者はその美声に聞き惚れて、舟の舵を取り損ねて川底に沈んでしまうとされています。

【セイレーン】

 航海者を美しい歌声で惹きつけ難破させるという海の魔物で、人魚としても描かれます。元はギリシャ神話に登場する伝説の生き物。

【メリュジーヌ】

 メリュジーヌはフランスの伝承に登場する水の精。異類婚姻譚の主人公。上半身は人間の女性、下半身は蛇(一説に魚)の姿をしています。文献によってはメリュシヌと表記。レーモンドという貴族がメリュジーヌを見初め、結婚します。結婚にあたって、メリュジーヌは「土曜日には自分の部屋にこもるが、その時は姿を決して見ないこと」という条件を課しました。メリュジーヌは夫に策を授け、富をもたらしたのです。ところが夫は「メリュジーヌが浮気している」という噂を耳にすると、つい約束を破ってしまいました。彼女は入浴中で、上半身こそ人間だったが下半身は魚に変わっていたのです。メリュジーヌは夫の元を去ってしまいます。

【ハゥフル】

 ノルウェー語で人魚を指します。ハゥフルは漁師の間では嵐や不漁の前兆とされ、見たら仲間に話さずに火打ち石で火花を立てることで(嵐や不漁を)回避することができるとされます。また、人魚には予知能力があるとされ、予言を聞いたという伝説もあるのです。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、マーフォーク(人魚)は水棲の人型生物で、上半身はヒューマンに似て、下半身は魚に似ています。肌や鱗は貝殻の飾りで覆われているのです。

 マーフォークの部族や王国は世界中の海にあります。地上のヒューマンが民族ごとに肌の色や文化も外見もさまざまであるのと同じく、マーフォークも多様性に富んでいるのです。よほどの偶然でもないかぎり、地上人とマーフォークが顔を合わせる機会はないのですが、夢見がちな船乗りは、はるか遠方の島でのマーフォークとのロマンスを語りたがります。

 皆を脅かす相手に立ち向かうため、あるいは一大征服事業に乗り出すためといったよほどの事情があるときのみ、彼らは一人の指導者のもとに団結します。このような団結が数百年に及ぶ海中王国の萌芽となる場合もあるのです。

 水中に住むマーフォークには、金属の武器を作ったり、書物を記して知識を伝えたり、石造りの建物や都市を築いたりできるような材料も実用的な手段もありません。ゆえにほとんどのマーフォークは小さな部族単位で狩猟と採集の生活を送っており、部族ごとに異なる価値観や信念を持っているのです。

 マーフォークの居住地は、巨大な水中洞窟に、サンゴの迷宮に、水没した都市の廃墟に、あるいは海底の岩盤を削って造られます。彼らの生活の場は海面から差し込む陽光の明暗によって時の流れを認識できる程度には浅い海です。居住地の近くの浅瀬や溝はマーフォークのサンゴ農場および牧場になっていて、地上の農夫が羊の世話をするように、ここでは魚の群れが飼われています。

 マーフォークが大洋の暗き深淵へ潜ることはめったにありません。深海や水中洞窟においては、発光能力を持つ動植物以外の光源はないのです。ゆっくりと明滅しながら漂うクラゲの光が照らし出すマーフォークの居住地の眺めは、この世のものとは思えぬほど美しさを誇ります。

 マーフォークは槍を構えて自分たちの共同体を守ります。この槍は、難破船、海岸、水生生物の死骸などから使えそうなものを根こそぎ回収して作ったものです。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、腰回りから上は体格のよい人間の胴がついており、エルフのように自然界との絆が深い人型生物を思い起こさせる優美な容貌をしています。マーフォークの下半身は大きな魚の鰭と尾で出来ています。地域によってマーフォークの鱗の色合いは違っており、キラキラした銀色や薄い緑、果ては黄色と朱色の島のある青色などです。

 典型的なマーフォークは全長6〜8フィート(約1.8〜2.4m)、体重は200ポンド(約90kg)を超える。女性は男性よりやや小さい。

 水陸両生ではあるが、マーフォークは地上で移動することは困難であり、海から1マイル以上離れることは稀です。

 マーフォークが同類ではないクリーチャーと接触することはかなり稀です。それどころか、彼らの多くは船乗りたちに自分たちの領域を避けさせるためならば労を惜しまず、必要ならば暴力に訴えます。古代の記述がほのめかすところによると、マーフォークは深海に隠された恐るべき秘密を守っているというのです。この秘密がなんなのかについて語るものはありませんが、マーフォークが他の種族から孤立し続けるためにどんなことでもするさまが、この守りの重要性を物語っています。

 マーフォークは表面上は美しく強力な種族ですが、一部の賢者と海の民が声を潜めて語るには、堕落した変異種のマーフォークが知られざる最も深き海域に潜んでおり、暗黒の深みに潜むねじくれた邪悪な存在への崇拝を捧げているとされているのです。また他の説では、すべてのマーフォークはこの邪悪な計画に含まれており、自分の運命は自分で決めていると信じているマーフォークでさえ、実際は、単に邪悪で知られざる深海の支配種族の自覚なき操り人魚に過ぎないといいます。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、マーフォーク(マーマン、マーメイド)は、簡単にいえば、海の人間です。かつては人間であったかもしれませんが、現在その身は波の下で暮らすことに完璧に適応してしまいました。上半身は普通の人間だが、肌の色は青白く緑がかっています。空気を呼吸する肺を持っているが、同時に首の側面にエラを持ち、それらは普段は長く伸ばした髪によって隠されています。一方、腰から下は魚のような尾びれを持ち、鱗に覆われているのです。ヒレを動かすことできわめて速く泳ぐことができ、その手で武器や品物を運ぶことが可能です。水中の洞窟や海底の隠された一画に住処を築き、そこで海藻、海苔、その他の食べ物を育てています。

 マーマンとは男性で、この種族における戦士たちです。誇り高く傲慢で、海中をイルカと共に偵察をしているのがときおり見られ、サメや他の捕食者の警戒に当たっています。普通は槍やトライデント(三叉鉾)を持ち、時には盾も持つのです。海上の世界を気にかける暇などはなく、稀に人間と接触すると侮辱するような態度を見せます。

 マーメイドはこの種族の女性で、水の彼方の世界について異なった考えを持っています。未婚のマーメイドにはときおり人里離れた海岸の岩で、独り日光浴をしながら歌っているところに遭遇することもあるでしょう。マーメイドの歌はとても甘美で、これを聞いた男性は即座に彼女と恋に落ちます。彼女はその中からひとりを選び、水中へと彼を招き入れるのです。選ばれた人間はそうしたいと望むが、それにあくまで抵抗できるか〈運だめし〉をしてもよい。この場合、彼が不運ならマーメイドの歌に抵抗し、呪文は破られ、彼女は泳ぎ去ってしまいます。もし運良く魅力されたまま誰も止めないなら、相手は水中へと潜り、海の底でともに暮らすことになるのです。時間が経つうちに、彼の体はマーマンとなるまで水中に適応し、そうなるとマーメイドは他の人間を求めて、地上へと再びやってきます。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、この魚に似た種族マーフォークは水から出て、二本足で歩けるように変身できるとはいえ、水から離れるとひじょうに不利です。ブクブクという音の混じったしゃべり方や、湿ったりぬめったりしている皮膚のせいで、彼らは「魚人」以外の何者にも間違えられることはありません。エラと肺の両方を備えており、陸上でも水中でも呼吸できます。あまり長時間水から離れていると、だんだん弱ってきます。体を湿らせ続けることで、昏倒を免れることができるのです。海水に住む亜種と淡水の湖に住む亜種に分かれますが、「ヴォドノイ」と自称する小さなグループもあります。

 下半身は巨大な魚、上半身は人間という通常の姿で本来の環境にいるときに、マーフォークは最も能力を発揮します。鱗は繊細で小さく、指には水かきがあります。戦闘になると、小型で軽い武器(ナイフや槍)を好みます。自分たちの俊敏な身のこなしを大切にし、重い鎧は避けます。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、人魚は鱗に覆われ、えらを持ち、手足には水かきがついています。空気も呼吸できますが、水気のある場所からは離れられません。槍やナイフを投げて武器とします。

 人魚マーフォークが語るときは、半人半魚のおとぎ話の主人公を思い出してください。ふだんは深海に住んでいるため、人間と接触することはまずありませんが、ときおり「刺激」を求めて人間の住む領域に現れことがあります。

 人魚は肺も発達しており、空気も呼吸できます。しかし、体表が乾くと死んでしまうため、あまり水ぎわから離れられません。

【トリトン】

 トリトンは人間とほぼ同じ姿ですが、好んで水中に住んでいるのが大きな特徴です。戦い好きで、武器の扱いも熟達しています。使用する武器は、スピアやトライデントのように水中で使える槍類と、水中銃です。

 トリトンは魔法の能力を持っています。しかし「魔術師組合」が存在しないため、使える魔法は限られています。「凶眼」「魔神の剣」といった戦闘補助の魔法がほとんどです。

 トリトンはシーホース(海馬、馬頭魚尾のモンスター)やセイウチに乗って現れることもあります。

【セイレーン】

 セイレーンは女半鳥のモンスターで、海に浮かぶ孤島などに住んでいます。始終歌声を絶やしませんが、その歌声には人間を魅了し、虜にしてしまう力があります。そのため、セイレーンの住む島の近くを船は通れません。通りかかれば、船員たちがセイレーンの歌声の虜になり、船を島に近づけようとして遭難してしまうからです。セイレーンの歌声を避けるには、ロウなどで耳栓をするしかありません。さもなくば、体になにかを縛りつけるなどしなければ、海に飛び込み、お泳いででもセイレーンのもとに行こうとします。

 セイレーンは空を飛びます。人間を運び上げるほどの力はありません。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、マーマンは海中に棲む種族で、上半身が人間で下半身が魚です。女性のマーマンはマーメイドと呼ばれます。彼らは人間を極端に恐れ、嫌っており、決して交渉を持とうとはしません。というのも百年以上前、「マーマンの肉を食べると長寿になる」という噂が広まり、人間が争ってマーマンを乱獲したからです。それ以来、マーマンは人間を避けて深い海の底で暮らしており、その社会制度や風習は謎に包まれています。

 マーマンは水中呼吸を行なう種族であり、地上では呼吸できません。地上で行動できる時間は限られており、それを過ぎると窒息します。ふつうは数十人程度の集団を作って生活を営みます。集団にはリーダーとシャーマンがいて、部族を統率しています。彼らは武器として三つ叉の矛を用います。

【マーメイド・シャーマン】

 マーマンの部族は知性と精神力に優れた女子を選び出し、幼少の頃からシャーマンとして訓練を与えます。その結果、マーメイド・シャーマンが誕生するのです。マーメイド・シャーマンは|水の精霊(ウンディーネ)を力の源とする精霊魔法を使えます。マーメイドのシャーマンは1戦闘グループにひとり存在し、マーマン・リーダーの補助をする役割を持っています。また、マーマン・リーダーが倒されたときは、代わりに戦闘の指揮をとります。リーダー、シャーマンともに倒された戦闘グループは別のグループに加わるか、逃げ出します。それができない状況のときは、マーマンたちは死ぬまで戦います。

【マーマン・リーダー】

 マーマンの部族は特に肉体的に優れた男子を幼少の頃から選び出し、特別に訓練を施します。訓練を受けて成長したものはマーマン・リーダーとなり、10人程度からなるマーマンの1戦闘グループの長となり、マーマンたちを指揮して戦います。また、彼らの中で特に選ばれた者が部族を統率する族長となります。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、マーマン、マーメイドは海中に棲み、上半身は人間で下半身は魚の姿をしている、いわゆる「人魚」です。男性はマーマン、女性はマーメイドと呼ばれます。昔、人間の社会に「マーマンやマーメイドの肉を食べると長寿になる」というデマが流れて乱獲された時期があり、それ以降から人間を恐れて敵視しています。

【マーマン・リーダー】

 肉体的に優れた少年は部族内で選ばれ、リーダーとしての訓練を受けます。マーマン・リーダーは10人程度の戦闘グループを率いる長となり、やがて複数のリーダーの中から次の族長が選ばれます。マーマン・リーダーはヒポカンパスを騎馬にしていることがあります。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、マーマンとマーメイドがいます。

【マーマン】

 人魚の男性種です。女性種のマーメイドとは違い、半魚人のような姿をしています。当然、水中活動に適していて、人間の二倍ほどの速度で移動することができるのです。トライデントを装備していることが多い。

【マーメイド】

 人魚の女性種です。上半身が人間の女性、下半身が魚の姿をしています。海中で社会生活を営んでいます。人間に対しては強い警戒心を持っていて、めったに姿を現しません。シャーマン魔法を使うことができます。



 TRPG『グランクレストRPG』では、オアンネスはオリンポスに住まう半魚人。エラや鱗、水かきなど水中生活に適した身体を持ちます。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、水棲緑鬼サファギンは海洋を縄張りとする亜人間種族の一種。魚と人間を合成したような姿をしており、鱗の色は基本的に青色や緑色系統が中心です。陸上に上がることあまりありませんが、稀に沿岸部の人里を襲う場合もあります。単体ではたいしたことはないが、集団になると槍を次々と振りかざし、熟練の冒険者でも侮れない圧力となりえます。

水棲緑鬼サファギンの鮫騎兵・シャークライダー

 水棲緑鬼サファギンの兵科バリエーションで、騎士に相当します。鮫に跨がり、見事な意匠の珊瑚の槍に似ており、通常種より積極的に攻撃を行なうのです。『大災害』後においては、集団内で高い地位を得たようで、大地人の船に一騎打ちを挑む姿も目撃されています。

誘歌妖鳥セイレーン

 水辺に棲む精霊亜人で、美女の頭部に白い翼の鳥の身体を持つ魅了の歌声を発します。





ヒッポカンポス

 ヒッポカンポスは、ギリシャ神話に登場する半馬半魚の海馬です。ヒッポカムポスとも表記されます。英語でヒッポキャンプまたはヒッポキャンパス、またシーホースと通称されることもあります。

 ヒッポカンポスの前半分は馬の姿ですが、たてがみが数本に割れてヒレ状になり、また前脚に水かきがついています。胴体の後ろ半分が魚の尾になっています。ノルウェーとイギリスの間の海に棲んでいて、ポセイドンの乗る戦車を牽くことでも有名です。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、海に棲む馬で、体の後ろ半分は魚になっています。前脚には蹄の代わりにヒレがあり、後ろ足はありません。水中では素早く動き回れますが、陸に上がるとペナルティーを受けます。

 マーマンはヒッポカンポスを飼い慣らし、乗馬として使用しています。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、ヒポカンパスは海に棲む馬で、体の後ろ半分は魚、たてがみがヒレになっています。マーマンなどの水棲知的種族は、この生物に騎乗することがあります。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、下半身が魚の姿をした馬。海馬とも呼ばれることがあります。水の中を自由に行動し、戦闘になれば力強い前足で蹴って攻撃してくるのです。マーマンたちが、乗用動物として飼い慣らしていることもあります。





最後に

 今回は「亜人族:マーフォーク、ヒッポカンポス」についてまとめました。

 基本的に「マーマン」たちは人間を恐れています。しかし敵愾心を持つほどではなく、誤解が晴れれば理解し合える存在です。

「ヒッポカンポス」が登場するRPGは少ないのですが、ギリシャ神話に登場しますので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させることは自由です。



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