701.事典篇:妖精族:バンシー

 今回は「バンシー」についてまとめました。

 本来は妖精です。しかし「死ぬ者のために泣く」つまり「死を呼ぶ」という性質からアンデッドに類することもあります。

 ここでは妖精として扱いました。





事典【妖精族:バンシー】


 バンシーは本来の伝承によると妖精ですが、作品によってはデュラハンと同様にアンデッドとされることもあります。



バンシー

 バンシーはアイルランド及びスコットランドに伝わる女の妖精であり、家人の死を予告すると言われているのです。

 バンシーとはケルト語の「女妖精」という意味で、ベン・シー、ベン・ニーアなどの別名があります。ゲール語では「嘆きの妖精」以外にも「泣き女」と直訳もなされます。

 バンシーの泣き声が聞こえた家では近いうちに死者が出るとされました。しかし、すべての死が近い人間の家にでも現れるというわけではなく、純粋なケルトやゲール系の家族のもとにしか来ないともいわれます。複数のバンシーが泣いた場合は、死者は勇敢な人物か聖なる人物であった証とされるのです。アイルランドやスコットランドの旧家には、その家固有のバンシーがいて、たとえ故郷を遠く離れて暮らしている者にも、故郷にいる家族の死を伝えます。

 アイルランド地方に伝わる一説では、バンシーは長い黒髪で灰色の服に灰色のマントを来た女性の姿をしているとされますが、泣き声が聴こえるときは、その姿は見えないといいます。その泣き声は、ありとあらゆる叫び声(人間以外も含める)を合わせたような凄まじいもので、どんなに熟睡している者でも飛び起きるほどです。

 また、バンシーの目はこれから死ぬ者のために泣くので燃えるような赤色をしているといいます。

 妖精が自身と交わった相手に加護を与える例として、バンシーの乳房を吸った人間は望みを叶えられると語られています。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、夜がやってくると、不運な旅人の耳には、孤独な死者のかすかな泣き声が聞こえます。この嘆き悲しむ霊こそはバンシー。エルフの女性の霊から形作られた恐るべきクリーチャーです。

 バンシーの姿は微光を帯びておぼろで、どこか生前の面影を残しています。乱れもつれた髪が顔をふちどり、かすみのようなぼろぎれが身体を包んではためき流れています。

 バンシーはエルフが死してアンデッドと化したものです。かつてきわめて美しかったが、その美をもってこの世界に喜びをもたらすのではなく、その美をもって他人を堕落させ、あるいは他人を意のままに操ったエルフたちがバンシーの呪いにとらわれやすい。バンシーの呪いに憑かれたエルフは、もはや何事にも喜びを覚えず、生者とともにあって失望のみを感じます。呪いが進むにつれ、その精神と肉体はともに腐敗し、やがて死によって完全にアンデッドと成り果てるのです。

 バンシーは自分の死んだ場所に永遠に縛りつけられており、そこから5マイル(約8km)を超えて遠くへは行けません。バンシーは生前の一瞬一瞬を明瞭に思い出すことを強いられており、しかも自分がどうして破滅したかを決して認めようとはしないのです。

 バンシーと成り果てる原因だった虚栄心は、死してなお残っています。それゆえバンシーは美しいものに執心するのです。一方では鏡のような「物を映す表面」を恐れます。今の己の姿を見るに耐えないからです。己の姿をひと目でも見ようものなら、バンシーは怒りに我を忘れてしまいます。

 バンシーは空気、飲食物、睡眠を必要としない。

 魔法の力により5マイル以内のアンデッドでも人造でもないクリーチャーの存在を感知できます。相手のたいていの方角はわかるのですが、精確な位置はわかりません。

 他のクリーチャーや物体を、あたかも「移動困難な地形」であるかのように通り抜けることができます。バンシーは自分のターンを物体の中で終了したなら力場ダメージを受けるのです。

 バンシーの近くにいてこのバンシーを見ることができる、アンデッドでないクリーチャーはみなセーヴィング・スローを行なわねばならず、失敗すれば1分間恐怖状態になります。目標は自分のターンの終了時ごとにセーヴィング・スローをやり直せ、成功すればその目標に対しては恐怖状態が終了するのです。セーヴィング・スローに成功するか、恐怖状態が終了したら、その目標は24時間このバンシーの「恐るべき容貌」に対する完全耐性を得るのです。

 このバンシーは悲しみ嘆く声を発します(日光の中にいないときに限られます)。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、バンシーはぞっとするアンデッドです。彼らが住むという見捨てられた不毛の荒野で、声を聞くことがあっても出会うことはめったにありません。日夜、主に荒野をさまよい、魂を引き裂くような声で泣き叫ぶのは有名です。この不気味なモンスターは、地上界に囚われたまま休息を許されない人間の亡霊であると考えられています。生前恐ろしい罪を犯しており、その罰でこうなったというのです。

 バンシーの外見は、しわだらけで節くれだった体つきの老爺や老婆のようで、長くもじゃもじゃの髪をしていて、鼻孔と歯は1つしかない。目は赤く縁取られ、その目をあえて誰かが覗き込むなら、このモンスターの怒りと悲しみすべてが映し出されていることがわかります。

 攻撃には、鉤爪が備わった鱗に覆われた手を用います。その叫びは敵の集中をかき乱し、聞いたものは恐怖で立ちすくんだしまうのです。硬直してしまったら、その者はバンシーの鉤爪のいい標的となります。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、バンシーは誰かの死の前兆として現れる、幽霊のような存在です。バンシーは悲しそうに泣きますが、その泣き声は狂気をもたらします。

 バンシーと戦うときには、各戦闘ターン、最低1つの「魔法的な攻撃」が必要です。それは、魔法のかかった剣でもかまいませんし、「これでもくらえ!」のような攻撃魔法でもかまいません。もし通常の武器だけで戦おうとしたら、バンシーはふわふわした霊のような体であるためにいっさいのダメージをこうむりません。

 バンシーの体はふつうの生き物とは異なる、霊的なものなので、毒は効果がありません。また「ねんねんころり」で眠ることもありません。





最後に

 今回は「バンシー」についてまとめました。

 元々は伝承上の妖精なのですが、『D&D』ではアンデッドに類しています。

 ですのでアンデッドとして扱うと『D&D』の著作権に抵触する恐れがあるのです。

 あくまでも妖精として扱う限りは、著作権に抵触することはありません。

 前項の「デュラハン」とともに妖精として扱うことをオススメします。



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