697.事典篇:妖精族:コボルト

 今回は「コボルト」についてまとめました。

 ドイツの民間伝承に由来する妖精なので、あなたの「剣と魔法のファンタジー」にコボルトを登場させても問題ありません。

 ドイツ読みだと「コボルト」で、英語読みだと「コボルド」になります。TRPGでは英語読みの「コボルド」と表記されます。





事典【妖精族:コボルト】


 コボルトは多くのTRPGやコンピュータRPG、ファンタジー小説に登場する雑魚キャラの一種です。

 雑魚キャラとして有名なコボルト、ゴブリン、オークの中でも最弱に位置づけられます。ゴブリンはホブゴブリンやオーガーなどに率いられて統制がとれた戦い方をしますし、オークは繁殖力が強くて数をたのんだ物量戦を強いられます。それらに比べてコボルトは統制がとれているわけでも、繁殖力が旺盛なわけでもありません。

 よくファンタジー小説でゴブリンが最弱とされていますが、実際の脅威としてはコボルトのほうが弱いのです。




コボルト

 コボルトはドイツの民間伝承に由来する醜い妖精、精霊です。コーボルト、コボルドとも表記します。ドイツ語で邪な精霊を意味し、英語ではしばしば「ゴブリン」と訳されるのです。

 最も一般的なイメージは、ときに手助けしてくれたりときにいたずらをするような家に住む小人たちというものです。彼らはミルクや穀物などと引き換えに家事をしてくれたりもしますが、贈り物をしないままだと住人の人間にいたずらをして遊んだりもします。また、一度贈り物をもらったコボルトはその家から出ていってしまうと言われるのです。

 もうひとつあるコボルトのイメージは、坑道や地下に住み、ノームにより近い姿です。

『D&D』で臆病だが残酷な、小柄で犬に似た頭部を持つ人型生物とされています。鱗を持ち、頭には角が生えており、ドラゴンの血を惹く爬虫類とされていますが、犬のような頭部という側面が強調された結果、その後に続いた多くのRPGで「犬のような人型生物」という表現もされるようになりました。

 ちなみにファンタジーのモンスターとしてのコボルトは、英語読みの「コボルド」と表記されることが多い。

 コボルトは銀を腐らせると伝えられます。これは掘り出されたばかりのときは銀色の鉱石が酸化して変色してしまうことから来ています。この変色する金属こそコバルトであり、その名はこの妖精「コボルト」が由来です。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、コボルドは臆病な爬虫類の人型生物であり、邪悪なドラゴンを神と崇め、下僕やおべっか使いとしてドラゴンに仕えています。コボルドは許可されるならドラゴンの住処に住みますが、そうでなければ普通はダンジョンに住み着き、財宝やがらくたを集めて少しでも増やそうとするのです。

 コボルドは卵生の生き物です。大人に成長するのは早いが、中にはグレート・ワーム(大長虫)と呼ばれる100歳以上まで生きるものもいます。ですがほとんどのコボルドは10歳になる前に死にます。肉体的に虚弱なコボルドは捕食獣にとって恰好の獲物なのです。

 この弱さゆえに、彼らは団結せざるをえません。数の暴力によってコボルドが強敵に勝つことも可能ですが、そのような勝利はしばしば多数の犠牲者を伴います。

 コボルドは自分たちの肉体的な弱さを、ずる賢い罠作りと穴掘りで補っているのです。彼らの巣は、コボルドなら普通に通れるが大きな人型種族は通りにくいような天井の低いトンネルで構成されています。その上、コボルドの巣は彼らが仕掛けた罠だらけです。コボルドの罠の中でもたちが悪いのは、自然の危険や他のクリーチャーを利用するもの。たとえば侵入者がワイヤーに足を引っかけると、バネ仕掛けの罠から肉を溶かすグリーン・スライム入りの陶器の壺が投げ込まれたり、毒を持つジャイアント・センチピード(巨大ムカデ)を満載した木箱が飛んできたりします。

 巣に籠もることが多いため太陽光の下では不利をこうむるのです。

 コボルドはドラゴンを崇めるだけでなく、特定の下級神も信仰しています。伝説によるとかつてコボルドの神は九層地獄において地下世界の竜の女王ティアマトに仕えていましたが、ある時ノームの神が竜の女王の財宝の山から取るに足りない品を一つ盗んだのです。ティアマトは盗品を取り返すためにこの下級神を遣わしたが、ノームの神はコボルドの神をだまくらかし、地面を崩してコボルドの神を永久に地底の迷宮へ閉じ込めたといいます。これこそコボルドがノームを憎み、あらゆる悪ふざけを嫌う理由です。コボルドの神の真に敬虔な信徒は、牢獄迷宮を見つけ出して自分たちの神を解放することに一生を捧げます。

【ウィングド・コボルド】

 生まれつき皮膜の翼を持ち、飛ぶことのできるコボルドが少しいます。「ウルド」と呼ばれるウィングド・コボルド(翼を持つコボルド)たちは高い岩棚を好み、下を通る者に岩を投げ落とすのです。ウルドの翼はいかにも竜の女王ティアマトの恩寵のように見えますが、翼のないコボルドたちはこの恩寵を妬み、ウルドとはあまり仲が良くありません。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、コボルドは闇に棲まうクリーチャーであり、広大な地下の荒野や陽も差さぬ森の暗き片隅で目にすることが多い。肉体面で類似するところがあるため、コボルドは自分たちが竜族の子孫であり、大いなる神のごとき“いとこ”の翼の下で大地を支配することを存命づけられている、と声高に公言しています。しかし、ほとんどの竜はこの不愉快極まりない病害虫を大して必要としていません。

 神より与えられし権利や来たるべき宿命について声高に語ることもある一方で、コボルドは自分たちの弱さを痛切に実感しています。臆病者で悪だくみを好むコボルドは、そうせずに済むなら正々堂々と戦うことなど決してありません。待ち伏せや裏切りの手はずを整えるなり、数え切れないほどの粗末だが精巧な罠の向こうにある住処に身を隠すなり、おびただしい数のキャンキャン吠える大群で敵を蹂躙します。

 コボルドの体色は一腹の兄弟姉妹の間でさえさまざまで、クロマティック・ドラゴンの体色全般に渡るのです。赤色のコボルドが最も一般的ですが、白、緑、青、黒のコボルドもいないことはありません。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、小柄で醜い人型種族で、肌は岩や石のような色をしています。また、生まれつき変身能力を備えていますが、彼らの選ぶ姿はネコやイヌ、キツネ、幼い子どもなどの小さな生き物に限られています。短時間ですが、小さな炎(ろうそくや暖炉の火)のなかに自分の意識を投影することができ、その状態で話したり聞いたりできます。しかし、もし彼らがそこから抜け出す前に炎が消えてしまったら、かなりのダメージを受けます。

 ホブゴブリン同様、コボルドもときどき、誰かに「助けを求められている」と思い込むことがあります——それが実際、わずかでも手助けになっているかどうかは別問題ですが。また妄想であっても軽蔑されたと思い込めば、腹を立てます。つまり、過度に手を貸されたり放っておかれたり、違うことを違うやり方でやれと言われたり、いっさい手を出すなと言われたりした場合です。自分たちが他の種族よりも聡明だと自負しており、すべての答えを知っていると確信しているのです。

 コボルドが鉱山や地下で働くことが多いのは彼ら自身のためか、あるいは、なんであれ自分たちが役に立てると信じていることをやりたいと思うためか、いずれかでしょう。

 鋳造や鍛冶は得意ですし、あらゆる金属加工に有能さを発揮します。

 コボルドはどのようなキャラクター・タイプにもなれます。ただ、すでに自分たちはなんでも知っていると思い込んでいるため、(呪文であれなんであれ)我慢強い師匠を見つけるのは難しいでしょう。コボルド同士が最悪の敵同士になる可能性もあります。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、コボルドは小型の妖魔で、犬のような顔をして、尻尾も持っています。体毛はいっさい生えていません。人里近い森や丘、山などに住んでいますが、臆病な性格であり、人家に危害を加えることはめったにありません。

 ただし、コボルドは卑劣なことでも知られ、数の少ない相手や、傷ついている相手、あるいは戦うことのできない女性や子どもに対して襲ってくることもあります。

 普通は牙で噛みかかってきますが、棒切れを棍棒代わりに使うこともあります。

 コボルドは銀を腐らせるという言い伝えがあり、鉱山関係者やドワーフから激しく敵視されています。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、犬のような顔と尾を持ちますが、体毛のない不気味な姿の妖魔で、体格は人間の幼児程度です。

 臆病かつ卑屈で、ゴブリンの奴隷になっていることもあります。

 銀を腐らせるという言い伝えから、ドワーフに嫌われています。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、犬のような顔をした、小型の妖魔。人里近くの森や丘に集団で住んでいます。性格は臆病であり、卑劣でもあるのです。いつも集団で行動し、他の妖魔の奴隷となっていることがあります。暗視能力があるので暗闇でも自由に行動できるのです。

【コボルドチーフ】

 コボルドの集団に、ときおり見かけるるリーダーで、数十匹の群れを従えています。ふつうのコボルトとは種類が異なり、ひとまわり身体も大きく、頭も良い。普段は臆病なコボルトも、コボルドチーフがいると、少しだけ勇敢になります。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、小牙竜鬼コボルドは悪の亜人間種族の一種。全身を鱗で覆われた、犬に似た形の頭部を持つ小柄なモンスターで、『大災害』以前から武器や防具の違う細かなバリエーション違いが存在します。群れると好戦的になることから、弱い割に厄介だが、敵集団をあしらうよい練習台という評価を受けることも。また罠作りに長けた種族という設定から、トラップとともに登場することが多い。

小牙竜鬼コボルドの詠唱師・キャスター

 小牙竜鬼コボルドの一種で、初歩的な攻撃魔法を扱います。装備も羽飾りや魔術師のローブ、杖など小牙竜鬼コボルドよりも豪華で見分けがつきやすい。物陰や障害物を盾にしつつ距離をとって攻撃を仕掛け、追われるとトラップに誘導するように逃げるため、『大災害』以前から冒険者に嫌がられているエネミーです。『大災害』後は群れの中で一目置かれており、多くの場合複数の小牙竜鬼コボルドを引き連れて現れます。

小牙竜鬼コボルドの罠匠・トラッパー

 とくに罠の扱いに長けた小牙竜鬼コボルドで、工具を手にした職人のような姿は群れの中にあってもよく目立ちます。あらかじめ設置してある罠を利用した攻撃手段は『大災害』以後も健在で、うっかり近づく冒険者たちを手玉にとっているのです。



 TRPG『この素晴らしい世界に祝福を!TRPG』では、二足歩行の犬の姿をした亜人種族。それほど危険ではないが、駆け出しの冒険者が油断した結果、囲まれて倒されることもあります。





最後に

 今回は「妖精族:コボルト」についてまとめました。

 最弱の人型種族とも考えられます。それは繁殖力と組織力がゴブリンに劣るからです。

 しかし『D&D』『PF』ではドラゴンを神と崇めることで、意外なほどの強さを発揮します。

 それでも相対的に「弱い」ことには変わりありませんが。



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