694.事典篇:妖精族:ピクシー

 今回は「ピクシー」についてまとめました。

 前回の「フェアリー」と混同されますが、「小妖精」を指すなら「ピクシー」のほうが適切です。





事典【妖精族:ピクシー】


「ピクシー」は典型的な小妖精を指します。よって多くのTRPGに登場しているのです。

 一般名称として、あなたの「剣と魔法のファンタジー」に登場させることができます。




ピクシー

 イングランドのコーンウォールなど南西部諸州の民間伝承に登場する妖精の一種です。

 普段は透明で人間には見えませんが、頭に四つ葉のクローバーを乗せると姿を見られるようになります。

 身長20cmほどの小人で、赤い髪の毛、上に反った鼻をしているのです。闇でも光る目、青白い顔、尖った耳、緑色の服を着、先の尖ったナイトキャップをかぶっているともいわれます。

 貧しい者のために仕事をし、ボウル一杯のクリーム、林檎一個をご馳走になることもあるのです。自身に恵みを与えた者には正しく報いるとされます。

 怠け者を見つけるとつねったりポルターガイスト現象を起こして懲らしめます。また一晩中輪を描いて馬を乗り回しガリトラップと呼ばれる妖精の輪を作ることもあるのです。翌朝馬のたてがみと尾を結び馬を帰すとされます。

 古代の塚やストーンサークル、洞窟などに住み、夜になると森の中でダンスをするのです。彼らの踊りに出くわした旅人は皆一緒に踊らされ時間の概念をなくしてしまいます。そうならないための妖精よけの方法は上着を裏返しに着ることです。また旅人を惑わせ迷わせくたくたに疲れさせるいたずらも行ないます。基本的には人間に悪戯をするのが好きです。

 また人間の子供を盗んだり、取り替え子チェンジリングを行ないます。そうならないためヴィクトリア朝時代までさらわれぬように赤ん坊をベビーベッドにくくりつける風習の地方もありました。

 洗礼を受けずに死んだ子供の魂が化身した存在だと言われており、直接人目につく場所には出てきませんが、人間とさまざまな点で共生関係にある存在です。

「ピクシー」の語源は、悪戯好きな妖精のパックに愛称語尾syがついたパクシーとされます。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、ピクシーは身長1フィート(約30cm)足らずの、とても小さなエルフに見えます。背中に生えたトンボや蝶のような羽は、朝日を浴びてピカピカ輝き、満月の光を反射してほのかに光るのです。猫のように好奇心が強く、鹿のように臆病で、どこへでも行きたいところへ行きます。

 他のクリーチャーの様子をこっそりのぞき見るのが好きで、興奮すると我を忘れそうになるのです。

 ピクシーが持つ、相手に自己紹介をして友達になりたいという衝動はとても抗いがたいもので、捕まったり攻撃されたりする恐怖があるからかろうじて我慢できます。ピクシーの住む森の中の空き地に迷い込んだ者は、ピクシーの姿はまったく見えないのに、クスクス笑う声、息を殺す音、ため息をつく音だけを聞くこともあるのです。

 ピクシーは自分たちのことをフェイ(妖精)の王子や王女のようなものだと考えており、池に映る月光のようにキラキラした優美なドレスやぴったりした絹の上着を着ます。ドングリ、葉、樹皮、小さな森の獣の皮などで身を飾る者もいるのです。ピクシーはみな自分の着こなしに自信を持っており、「頭のてっぺんからつま先まで、王様みたいに見事なお召し物ですこと!」とでも褒めてやれば大喜びして満面の笑みを浮かべます。

 ピクシーは生まれつき不可視になる能力を持つため、本人が見られたいと望まない限りめったに姿を現しません。ピクシーたちは妖精界や物質界において、冬は凍った池の表面に模様を刻み、春は木の芽をつつき起こします。夏は花々にきらるめく朝露を落とし、秋は木の葉を燃えるような色に変えるのです。

 ピクシーは不可視になって飛ぶ際、キラキラ光る流れ星の尾のごとく、チカチカ光る粉を振りまきます。この「ピクシーの粉」がほんの少しあるだけで、空を飛んだり、クリーチャーを見事に混乱させたり、敵を魔法の眠りに誘ったりできると言われているのです。この粉の真の力を引き出せるのはピクシーだけなのですが、ピクシーはこの粉の力を我が物にして研究したい魔道士やモンスターからいつも追いかけまわされています。

 ピクシーはとても臆病なので、来訪者に好奇心を刺激されても最初から姿を現そうとはしません。まず遠くから客の性格を観察したり、害のないイタズラをしかけて反応をうかがったりします。たとえばドワーフの両脚の靴紐を結んだり、不思議な生き物や宝物の幻を見せたり、「ダンシング・ライツ」を使って侵入者を道に迷わせたり。来訪者が敵対的な反応を見せた場合、ピクシーたちは距離を取ろうとします。いっぽう善良そうな相手に対しては、怖がる気持ちが薄れ、より友好的に接するのです。時には「お客さん」の前に姿を現し、安全なルートを案内したり、祝宴に招待することもあります。いかんせん食事の量は少ないのですが、ピクシーたちは自分の名誉にかけてご馳走を準備してくれるのです。

 親類のフェイであるスプライトと異なり、ピクシーは武器を忌み嫌い、敵と直接戦うくらいなら逃走を選びます。

 魔法によって、精神集中が途切れるまで不可視状態になるのです。その際、このピクシーが着用または運搬していた装備品もまた同じく不可視状態になります。



 TRPG『PATHFINDER RPG BESTIATY』では、おそらくすべてのフェイの中で最も有名で、最も逃げ足の速いピクシーは、ほとんど人手の入らない深い森に住むが、抑えがたい好奇心のために故郷を離れることも珍しくない。ピクシーのほとんどは身長2フィート強(約60〜70cm)、体重30ポンド(約14kg)。会話相手と目を合わせるために相手の目の高さあたりを飛び、早口で、過度に興奮しやすい傾向があります。

 自然界とそれを超越した世界にまたがる不思議な存在であるピクシーは、時折自分たちに役立つ不思議な魔法を持っているのです。たとえば、10体のうち1体は、1日に1回使用できる追加の疑似呪文能力を持ちます。通常は「ビースト・シェイプII(超小型クリーチャー限定)」「ベイルフル・ポリモーフ」などだが、さらには「イレジスティブル・ダンス」のようなより強力な呪文が使えることもあるのです。あるいは、ピクシー粉を矢に振りかけたときの効果を変更してもよい――原則として、代替する効果は[精神作用]効果にすべきです。「コンフュージョン」「ヒディアス・ラフター」「ヒプノティズム」「フィアー」が新しいピクシーの矢の力として適切な選択です(通常は「記憶喪失」「睡眠」「魅惑」のいずれか)。しかしながら、ピクシーに変更版の能力を適用することにより、数値的なデータ(と比較的低いCR)から導き出される理論上の強さをはるかに超えた脅威となる可能性があるため、適用にはじゅうぶん注意を払いましょう。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、ピクシーは小柄で華奢な人型種族で普通は小さな生き物をいじめて楽しんでいるような人間からは、遠く離れた地域に住んでいます。平和を好み、自然につながるものを愛しているからです。身長は50センチほどで、たいていは自然と同じような茶か緑の衣服を着ています。田園地帯のひっそりと小さな村で暮らし、そこで作物を育て、大きな生き物から離れた生活に概ね満足しているのです。ときおりそれ以外の場所、たとえばドワーフの村や開けた場所などで遭遇することもあります。

 ピクシーはやみくもに人間を嫌っているわけではない――とても礼儀をわきまえた種族なのです――ただ出会った相手が真に友好的だと確信できるまでは、ひじょうに警戒します。大きな生き物との戦闘は、自殺行為だとわかっているので避けようとするのです。

 いざ戦いになれば短いナイフで全力を出して身を守るでしょう。ただしスプライトと遭遇したなら、一瞬もおかずに攻撃を仕掛けます。おそらく、スプライトが備えている羽や魔法の能力をやっかんでいるのです。理由はどうあれ、ピクシーはこの不運な生き物を逆恨みして、つねに命がけで戦おうとします。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、次元の門が開かれたとき、多くのものがそこを通ってやってきました。小型の昆虫に似た、いやらしいビクシーも、ヴァルテと一緒にやってきました。この悪意に満ちたエルフたちのペットや下僕としてです。

 ピクシーがフェアリーと似ているのは、おおむね人型をしており、生まれつき外骨格を持っており、小さな翼で飛行できるという点だけです。

 野生のピクシーは残忍で危険な肉食の吸血性生き物です。より文明化したピクシーは信頼できない相手と見なされながらも、他の人型種族、とくにヴァルタや人間のクズと行動をともにしていることがあります。

 ピクシーは服を着ていることも着ていないこともあります。武器はだいたいはトゲなどを使うのです。しかし、雇い主が彼らの大きさや知性の程度に合わせた特注の破壊道具を与えることがあります。

 ピクシーは毒を好み、真のフェアリー同様、生まれつき魔法の才能に恵まれています。また他の昆虫や小動物などが大好きです。乗り物としてジャイアント・スパイダーを、仲間としてヘビや大小のカエルを飼い慣らします。

 スプライトとは、普通は敵対します。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、小型の昆虫に似た悪意に満ちた種族です。フェアリーに似ていますが、まったく違う、本来は残忍で危険な肉食の吸血性の生き物です。文明化したピクシーは他の人型種族(ただし性根の悪い者)と一緒に行動することがあります。魔法の才能に優れ、独自の呪文を持ちます。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、ピクシーはエルフに似た姿形を持っていますが、身長はおよそ30センチくらいしかありません。背中に昆虫類を連想させる翼を持っています。女性の姿をしたものが多いのですが、男性の姿をした個体もいます。またなぜか服のようなものを着ているようです。

 彼らは人間に対して比較的友好的なのですがあまり積極的に交わろうとせず、めったに人前に姿を現しません。しかも彼らは小精霊と呼ばれているスプライトと非常に密接な関係があるらしく、スプライトがシャーマンに提供する「インビジビリティ」の呪文の力を、基本的な能力として持っているため、ますます目撃するのは難しいでしょう。彼らはこの能力をなんの制限もなく使用できますし、またこの能力を使うことによって精神点も使いません。ただし、透明でいるためには精神集中が必要で、それが行なえない状況では「インビジビリティ」を使えませんし、使っていても集中が途切れれば(攻撃を行なったり、他の魔法を使うなど)即座に姿を現してしまいます。

 彼らはときどき人間にいたずらをします。姿を隠したまま、耳元でささやいたり、手に持っている武器(針のように細いダガー)を、お尻に突き刺したりとかです。

 戦闘になることはめったにないでしょうが、そうなったときには、ピクシーたちは低レベルの精霊魔法を使います。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、身長30cmほどの、エルフに似た姿の妖精です。背中から昆虫を思わせる翅が生えています。

 人間に対して友好的ですが、積極的に交わろうとはしません。小妖精スプライトと密接な関係にあるらしく、〈インビジビリティ〉を消耗せずに使うことができます。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、森に住むいたずら好きな妖精。体長は30センチほどと小型で、背中には美しい透き通った羽を持っています。特殊能力として透明になって姿を隠せます。また、シャーマン魔法を使うことができるのです。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、蜂妖精ピクシーは古い遺跡や洞窟に棲む、人間の手のひら程度の大きさの妖精。背に蜂に似た羽を持つ少年といった姿をしています。魔法で姿を消すことができ、戦闘では針のような細い剣を使った奇襲を得意とするのです。『大災害』以降は人間たちにさまざまな悪戯をするようになりました。とくに馬に悪戯することを好むので騎乗中に蜂妖精ピクシーを見かけたら要注意です。





最後に

 今回は「妖精族:ピクシー」についてまとめました。

 小妖精として有名で、妖精の総称である「フェアリー」と違って『D&D』にも種族として登場しています。

 一方『T&T』では悪い性格をした小妖精とされており、善良な小妖精は「フェアリー」と呼ぶのです。



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