693.事典篇:妖精族:フェアリー

 今回は「フェアリー」についてまとめました。

 おおかたの人は「フェアリー」と聞くと身長30センチ未満のとても小さな妖精族を思い浮かべるはずです。

 私もまとめるまでそう認識していましたから。

 しかし本来「フェアリー」はトロールまでを含む「妖精」の英単語です。





事典【妖精族:フェアリー】


「フェアリー」と聞いて真っ先に30cmや15cmといった小妖精を思い浮かべた方が多いはずです。

 しかし元々「フェアリー」は妖精全般を指す単語であり、エルフもドワーフもトロールもまとめて「フェアリー」と称します。




フェアリー

 主に「妖精」と訳され西洋の神話や伝説に登場する、超自然的な存在、人間と神の中間的な存在の総称です。人とも神とも違う性格と行動は、しばしば気まぐれと形容されます。説によっては元々は神の使いであったともされているのです。

 絵画や文学の作品中で羽を持つ非常に小さな人型の姿で登場することが多い。世界中のさまざまな神話や伝承に共通する面が見られるのと同じように、同様のフェアリーが類型としてさまざまな名前や姿形で異なる地方、民族の伝承にあらわれます。

 ケルト族の神話や伝説にはいろいろな種類の数多くのフェアリーが登場します。フェアリーはまた「小人」とも言われていましたが、ドワーフ、レプラコーン、ゴブリン、メネフネなどの他の神話の生き物も同じように「小人」と呼ばれているのです。アイルランドではシー、スコットランドではディナ・シー(ダーナ・オシー)として知られています。

 人の姿をしたもの、同じ呼び名を持つものでも、その身長についてはさまざまな言い伝えがあります。昔から伝わるフェアリーは人間と同じかより背が高いとされているのです。

 ブリトン族の人々は、フェアリーは冷たい鉄が苦手であると信じていました。この迷信の存在から、ケルト族がやってくる前にグレートブリテン島に住んでいた人々の民間伝承がフェアリーの起源であると推測しているのです。これらの人々の武器は石で作ったものだけであり、鉄の武器を持つケルト族のほうが軍事的に優位に立ちました。

 人の姿をとらないフェアリーも少なくありません。旅人を惑わすウィル・オ・ウィスプは日本でいう鬼火、人魂です。家畜や身近な動物の姿のフェアリーも多い。猫は妖精的な生き物とされ、魔女の使い魔、魔女の集会に集まると考えられたり、そのものが妖精ケット・シーとされたりします。犬もサー・アーサー・コナン・ドイル氏『バスカヴィル家の犬』やJ.K.ローリング氏『ハリー・ポッター』シリーズに見られるように、墓守あるいは死に結びつけられる黒妖犬として登場するのです。馬の激しい気性は、御しがたい川の激流に結び付けられ川馬ケルピーや人を乗せて死ぬまで走る夜の白馬などとして登場します。

 今日では、フェアリーは人間に好意的で優しい性格の生物とされることも多いのですが、歴史的には必ずしもそうではないのです。たとえばフェアリーが人間の子供をさらって代わりに彼らの子供を置いていくという「取り替え子チェンジリング」の迷信は中世まで広く伝わっていました。ウィリアム・シェイクスピア氏『真夏の夜の夢』では「取り替え子チェンジリング」でさらってきた子をめぐってオベロンとタイタニアが仲たがいをするのです。

 アーサー王と円卓の騎士にまつわる伝承『アーサー王伝説』には、現在想像されるフェアリーとは印象は異なりますが、数多くのフェアリーが登場します。アーサー・ペンドラゴンにエクスカリバーを渡した湖の女性の腕、赤子のランスロット卿を養育した湖の貴婦人は湖の妖精です。魔女モーガン・ル・フェイの「フェイ」は「フェアリー」のことです。ガウェイン卿と緑の騎士に登場する緑の騎士の不死の力は植物の勢いや再生力に結びつけられ、パックなど緑衣をまとう多くのフェアリーと同じく森林信仰に起源があるとされます。

 J.K.ローリング氏『ハリー・ポッター』シリーズにはゴブリン、トロール、ドビーなどのホブゴブリン、ボガート、ドラゴン、レプラホーン、グリンディロウ、カッパなど数多くのフェアリーが伝承に沿って、あるいはローリング氏の解釈や創作を加えられて登場するのです。子供に読ませたい本の上位に挙げられる一方で、読ませたくない本の上位にも挙げられるのは、宗教上の異端的な内容がふんだんに盛り込まれていることも関係していると考えられています。売れすぎるのも、それはそれで非難の的になってしまうのですね。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、フェアリーは最初、レプラコーンや妖精族と同じく、エルフとともに惑星トロールワールドにやってきました。本人たちは血縁関係を否定していますが、「下級エルフ」と呼ばれ、単なる小柄なエルフとして扱われることもあります。またピクシー(少し知性のある虫)と間違われることに傷ついています。というのも、フェアリーはキチン質の外骨格ではなく、骨と肉で出来ていますし、ピクシーみたいに野蛮な食事はしないからです。

 真のエルフ同様、フェアリーもほっそりとした人間型で、愛らしい外見をしています。ただ、身長は15センチほどしかありません(それよりずっと小さいこともあります)。透明なトンボのような羽を肩甲骨から生やしており、空を飛ぶことができます。地面を歩いているフェアリーほどみじめなものはないのですが、限界重量の半分を超える荷物を持つと、重すぎて地面から浮き上がることができません。

 フェアリーは生まれつき魔法の才に恵まれていますが、概して勉強熱心でも真面目でもないため、魔法使いとして大成する者はほとんどいません。

 陽気で軽薄なため、彼らの知恵はときとして過小評価されますが、興味のあることはすぐに身につけます。

 素晴らしい偵察や斥候になれますし、小さな指は大型の種族の指では触れられない場所にも届きます。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、フェアリーは羽を生やした、小さな妖精です。装備の総重量が限界重量の半分までであれば、魔法的な力によって空を飛ぶことができます。フェアリーは戦いや危険を好まない平和な種族ですが、中には冒険心に富んだ、風変わりなものもときどき見かけます。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、フェアリーは妖精族の代表的な種族で、その多くは妖精界にいまだ住んでいて、めったに我々が住んでいる世界(物質界)にはやってきません。しかし、物質界の中には、妖精界と接触を持った場所がいくつか存在しています。

 こうした二つの世界が接触する場所に、ときおりフェアリーたちが目撃されるのです。人間が妖精界に迷い込むのと同様に、妖精界から物質界に迷い出てしまうフェアリーたちもいます。

 フェアリーたちは美しいエルフの姿をしていて、ほとんど全裸か薄い絹の衣服をまとっています。身長もエルフと同じくらいですが、エルフとの何よりの違いは背中に生えた美しい翼です。この翼は非常に薄いのですが丈夫で、彼女たちはゆっくりとした速度ではあるものの、空を飛ぶことができます。

 銀の短剣などを護身用に身に着けている場合もありますが、それを振るうことはめったにありません。もし、本当にトラブルに巻き込まれたときには、彼女たちは武器よりも、精霊魔法の力を使うことを選ぶでしょう。妖精界の住人だけあって、精霊との関わりが深いからです。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』ではフェアリーは、薄い絹の衣服をまとった美しいエルフ女性に見えます。体格もエルフ女性と大差ありません。ただし、その背中からは大きく強靭な虫の翅が生えています。

 フェアリーは代表的な妖精で、ほとんどは妖精界に暮らしています。しかし、稀に妖精界と物質界の接点となる場所があり、そうした所からうっかり物質界に迷い込んでしまう者もいます。トラブルに巻き込まれた場合、暴力で解決するよりも精霊魔法で対処しようとします。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、精霊界の住人で、物質界で見かけることはあまりありません。穏やかな性格の妖精で、エルフの女性と似た姿をしています。体長は1メートルほどで背中には蝶のうな羽が生えており、飛べます。シャーマン魔法を使います。





最後に

 今回は「妖精族:フェアリー」についてまとめました。

『D&D』には種族名として登場しないので、他のTRPGでは一般的に用いられることになりました。

 ただし小妖精なのは『T&T』だけで、『SW』『ロードス島』ではエルフ女性の背丈ほどの妖精として登場するのです。

 我々が想像している小妖精としての「フェアリー」は次回ご紹介する「ピクシー」のことだと思います。



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