692.事典篇:妖精族:レプラコーン、レッドキャップ

 今回は「レプラコーン」と「レッドキャップ」についてまとめました。

 レプラコーンが登場する作品にはレッドキャップも現れます。





事典【妖精族:レプラコーン、レッドキャップ】


 レプラコーンは利己的な妖精です。

 主にアイルランド伝承を土台にした『T&T』には明確な種族像が描かれています。

 『SW』では混乱を司る精神の精霊です。種族として戦えるわけではありません。

 レッドキャップは残虐な妖精の一種です。帽子が赤いのは、獲物の返り血で染められているからとされています。『T&T』『SW』にだけ登場するのは、レプラコーンとの対比があるためではないでしょうか。




レプラコーン

 アイルランドの伝承に登場する妖精。「小さな体」を意味する名であり、ルプラホーン、ラバーキン、ルホルバン、ルプラホーンとも呼ばれる。英語読みではレプラカーン。

 垣根に座って靴を修繕する姿が見られる悪霊の子供で堕落した妖精と伝えられます。働く姿を見せる妖精であることから、スコットランドやイギリスに伝わるブラウニーとも類似しますが、ブラウニーは人間に奉仕する妖精であるのに対し、レプラコーンはほとんどの場合自らのためにしか働きません。靴職人とされ、グリム童話『小人の靴屋』に登場する妖精とはこのレプラコーンのこととも言われます。

 地中の宝物のことを知っており、うまく捕まえることができると黄金のありかを教えてくれるが、たいていの場合、黄金を手に入れることはできません。

 小さなしわくちゃの顔にごま塩のあごひげ、尖った鼻に輝く目をしています。銀のボタンの赤ジャケット、茶色の半ズボン、銀の留め金付きの黒ブーツを履くとされます。また一日に靴を片方しか作りませんが、体が小さくてあまり仕事ができないから、または片足であるからとも言われるのです。たいてい皮のエプロンをし、忙しそうに小槌でコツコツと靴の修理をしています。

 この妖精は金の入った壺を持ち、一瞬でも目を逸らすとすぐに悪戯を仕掛け、笑いながら姿を消すといわれています。

 J.K.ローリング氏『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』ではクィディッチのアイルランドチームのマスコットとして登場し、会場に金貨を降らせました。ただしこの話のレプラコーンが降らせた金貨は二、三時間ほどで消滅します。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、数多くの冒険者がいたずら好きなレプラコーンの一団の手にかかり、ひどい目に遭ってきました。彼らは小柄な魔法の人型種族で、おおむね身長1メートル、疑いを知らない人々にいたずらすることで大喜びするのです。だぶだぶの服(普通は目のくらむような若草色をしている)を着て、どこからともなく愉しげに笑いながら現れます。腐ったトマトを投げたり、あるいはただうなずいて人々に自分の後をついてこさせたりしますが、どちらにしろつねに小さいが甲高い声で笑っているのです。新しい知り合いを仲間の待つ場所に連れていき、さらなるいたずらと、うまくいけば財宝と食物を盗もうとしています。

 彼らは翼の助けがなくとも宙を飛ぶことができ、同様に自在に姿を消すこと、幻影を作り出すことなどもできます。愚かな犠牲者が反撃をしようとしても、ただ魔法の粉を相手の顔面に投げつけ、1時間以上も麻痺させます。これで、レプラコーンは持てる限りのものを盗む時間を得るわけです。しかし犠牲者が本当にユーモアのセンスを持っていることを示し、(笑いものになっているにも関わらず)冗談を一緒に楽しめれば、レプラコーンは友好的になって犠牲者の目的の手助けをしてくれるでしょう。しかし彼らがすでに盗んだものを返すことはありません。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、レプラコーンは基本的に平和を好む種族ですが、いたずら好きで、ありとあらゆる悪ふざけを仕掛けます。レプラコーンとグレムリンは互いに、自分のいたずらで相手が責められることに無上の喜びを感じるのです。彼らが愉快ないたずら以上に好きな唯一のものはお金で、他のどんな種族もかなわないほどお金に執着します。彼らが冒険者としての人生を選ぶのもそのためです。

 レプラコーンも、ドラゴンから逃亡するエルフとともにこの世界にやってきた、陽気で魔法的な種族の一つですが、種族間の結合はとくに強くありません。さまざまなレプラコーンの領主があちこちの地域の主権者として名乗りを上げていますが、せいぜい独立心旺盛な妖精族がその主張をなんとなく受け入れているだけです(そして、領主のお金が尽きたなら、そうした支持者たちはとっとと姿を消します)。

 レプラコーンは人間の基準に照らして魅力的でないとは言いませんが、「美しい」というより「かわいい」と見られることが多いです。エルフのような尖った小さな耳をしており、成人すると身長60センチほどになります。髪の多くは赤毛ですが、赤みを帯びた黒髪もよく見かけます。なにかと見下されがちですが、レプラコーンは機知に富み、幸運に恵まれています。しかも敏捷で、あらゆる危機から逃れる——もしくはあらゆる危機に飛び込む——ことができます。ユーモア心を解さず冷やかしを聞き流せない相手ほどちょっかいをかけたがる性質を考えれば、これはひじょうに役立つ長所でしょう。

 フェアリー同様、すべてのレプラコーンとその邪悪な同族レッドキャップは生まれつき魔法の才能に恵まれています。必ず魔術師か盗賊のキャラクター・タイプになるのです。レプラコーンにとって呪文の習得は行き当たりばったりなので、公的な魔術師組合とはまず相容れません。魔術師組合は彼らにとってあまりに堅苦しすぎるため、種族内でそれを共有することで魔術師組合の代わりにしています。

 レプラコーンは全員、短い距離を「瞬き移動」する能力を生まれつき備えています。

 レプラコーンは指先が器用なうえ、創意に富んでいるため、靴職人としてもひじょうに互い評価を得ています。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、レプラコーンは独自の集落を作って暮らす、妖精の一種です。ひじょうに魔法に近く接しているのが特徴で、十人が十人とも魔術師です。また種族独特の魔法として「瞬き移動」の魔法を使える能力を持っています。

 レプラコーンは少しひねくれたものの考え方をし、これが種族の大きな特徴となっています。直観的、まっすぐに結論を導き出すことは一面的で狭いものの見かたにつながり、危険であると考えているのです。とはいえ、それが彼らの好むいたずらを肯定するものとは、他種族は思っていません。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、レプラコーンは混乱を司る精神の精霊です。その姿は全裸の小鬼で、性別を現わす特徴はありません。彼らは通常の移動の他に、瞬間移動を行ないます。その移動を選択したラウンドは他の行動をいっさいとることはできせん。瞬間移動の行き先は、レプラコーンの視界の範囲内です。レプラコーンは精霊ではありますが、この世界では完全な実体を持っており、噛みついて攻撃してきます。それ以外にも彼らは「コンフュージョン」「フォーゲット」といった呪文でこちらを攻撃して(混乱させて)きます。

 レプラコーンを傷つけるためには、魔力を帯びた武器か銀の武器が必要です。





レッドキャップ

 イギリスの民間伝承にある、極めて危険な妖精の一種です。ゴブリンやオーガなどの加害性の強い妖精、悪鬼の類いです。長く薄気味悪い髪、燃えるような赤い眼、突き出た歯に、鋭い鉤爪を具えた、醜悪で背の低い老人の姿をしており、赤い帽子と鉄製の長靴を身に着けて、杖を携えています。斧を獲物とし、これで人間を襲います。

 彼らの名の由来となっている帽子の赤は犠牲者の血で染められたものであり、それゆえに常に赤錆色を帯びているのだというのです。人と見ればその命を奪おうと強烈な殺意を持って迫ってくる極めて残虐な霊的存在であり、廃墟となった城や塔、とりわけ、過去に凄惨な殺しが行われたり流血沙汰になったりした現場に棲み、墓地などにも出没するといわれます。

 独り歩きの人間を見つけると、たとえ遠く離れたところにいたとしても恐るべき速さで瞬く間に接近し、斧を振りかざして襲ってくるのです。そうして人を惨殺した後、溢れ出る血潮を用いて帽子を染め上げることを至上の喜びとします。

 弱点はロザリオ等の十字架であるとされるのです。また捕まったときに聖書の文句を二言三言口にすれば姿を消すといわれています。

 一方パースシャーにあるグランタリー城にも複数のレッドキャップが棲んでいて、彼らは幸運を授けてくれといいます。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、平均的なホブやレプラコーンは、他の善の種族のなかでよい評判を得ていますが、全員がそうした立派な社会基準に沿って行動しているわけではありません。モンスターのキャラクター・タイプとしてプレイする場合は、そうした邪悪な心を持つレプラコーンは「レッドキャップ」と呼ばれます。彼らのいたずらは愉快どこらかむしろ残忍で、命に関わることさえあります。彼らの考える「悪ふざけ」には動物の腸を持って柱の周りで踊る、などというものがあります(本来は柱の先端から伸びたテープを手に持って踊ります)。種族名の由来は、獲物の新鮮な血で染めた象徴的な赤い帽子です。


【レッドキャップ・ゴブリン】

 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、ゴブリンに似た小柄な原始的な人型種族で、でとりわけ卑劣な性格をしています。小川が近くにある密集した森に住むのを好み、木をくり抜いた中に家を造ります。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、レッドキャップとは「朱頭病」という同名の病気にかかり、少し進行した患者のことです。

 戦闘などによってひじょうに強い恐怖にさらされたとき、精神の精霊であるレプラコーンが異常発現して病気となるものです。症状が進むと、体型に変化が現われます。猫背になり、手が異常に長くなり、また、顔はひきつり、目が赤くギラギラ光るようになります。身体全体が赤みを帯び、毛髪も抜け落ちた姿から病気の名前がつけられました。この状態になった患者は狂暴化し、手当たり次第に周囲のものを襲うようになります。

 この病気は、かかったものと視線を合わせると伝染します。病気にかかっているものと視線を合わせたときは、即座に進行判定を行なってください。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、赤帽子レッドキャップは古戦場や墓地などに出没する、背の低い老人の姿をした妖精。地形を利用して戦う狡猾さを持ち、生者を見つけると物陰からこっそり近づき、大ナタを振り上げて襲いかかります。服と帽子の赤は返り血の色とされ、『大災害』以後はその禍々しい姿に、実力以上の恐怖を感じる冒険者も多い。



 TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、熾火の魔神ファイアブランドは、赤い外皮と翼を持つ、俗に赤帽子レッドキャップと呼ばれる個体です。不規則な軌道で空を飛び、鬼火を投じて襲いかかってきます。魔神の士官候補生スポーンとも言われます。





最後に

 今回は「妖精族:レプラコーン、レッドキャップ」についてまとめました。

 レプラコーンがいないTRPGにはレッドキャップも存在しないという関係性があるため、この両者は同じ姿の表裏であることがわかります。



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