687.事典篇:妖精族:ハーフエルフ

 今回は「ハーフエルフ」についてまとめました。

「エルフ」の初出である『北欧神話』からすると、原巨人ユミルの死体に湧いたウジ虫から作られたエルフと、トネリコやニレの木から作られた人間は近しい種ではありません。

 そこにJ.R.R.トールキン氏『指輪物語』が登場します。この作品でエルフと人間が近しい種であると定められたのです。

 近しいということは混血種の存在も想定されます。そうして生まれたのが「ハーフエルフ」です。





事典【妖精族:ハーフエルフ】


 今回はハーフエルフについてまとめています。

『北欧神話』では、始まりの巨人ユミルの死体に湧いたウジ虫のうち光り輝くものに人型と知恵を与えて「アールヴ(エルフ)」が作られています。

 人間はオーディンらがトネリコの木から男性を、ニレの木から女性を作り出しているので、種として近しいわけではありません。

 ですが『指輪物語』からの流れで「種が近しい」とされ、ハーフエルフの存在が発生しました。




ハーフエルフ

 エルフを扱ったファンタジー作品の中には、人間との混血であるハーフエルフが登場するものもあります。多くの場合、ハーフエルフは人間とエルフ双方の特徴を受け継いでおり、人間とエルフの双方から差別的な扱いを受けることがしばしばあるのです。エルフと人間との異種婚姻譚はいくつかの神話にも描かれるモチーフですが、現代のハーフエルフの原型は『指輪物語』での設定に多くを負っています。同作の半エルフは種族として固定されたものではなく、彼らはエルフと人間のいずれの運命を選ぶかの選択を行ない、エルフの運命を選んだものは不死性を得たという設定です。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、ハーフエルフは二つの世界を歩み、しかもどちらの世界にも本当に属することはありません。

 ある者は、彼らはヒューマンとエルフの両親から、双方の最上の資質を受け継ぐのだと言います。ヒューマンの好奇心と独創性と野心を備えたうえで、これを補うにエルフの洗練された感覚や、自然と芸術への愛をもってするのだというのです。

 ハーフエルフのうち、ある者はヒューマンに混じって生き、感情や肉体の差異ゆえに一歩下がった態度を保ち、時が自分にはほとんど何の足跡も残さないのに友や愛する者は老いてゆくのを見守ります。またある者はエルフに混じって生き、友達がまだまだ子供のうちに自分は成年に達して、もう時を知らぬエルフの土地でじっとしていられなくなってしまうのです。

 こうして多くのハーフエルフは、どちらの世界にも溶け込めず、孤独な放浪の生涯を選ぶか、あるいは他ののけ者、はぐれ者の仲間に入って冒険の日々を送ることになります。

 ハーフエルフはヒューマンの目にはエルフのように、エルフの目にはヒューマンのように見えるのです。

 身の丈は両親と同じほどで体はエルフほど細くもなくヒューマンほど肩幅広くもない。身長は5〜6フィート(約152〜183cm)、体重は100〜180ポンド(約45〜82kg)、男性は女性より身長体重ともわずかにまさります。

 ハーフエルフの男性にはエルフと違ってヒゲが生えます。風貌に現れるエルフの血を隠そうとして、わざとあごひげを生やす者もいるのです。肌の色、髪の色、顔つきはヒューマンとエルフの両親の間のどこかにあたります。このためハーフエルフ同士の姿形の違いは、エルフ同士、ヒューマン同士の姿形の違いよりもさらに幅広い。目の色はエルフの親と同じことが多いのです。

 ハーフエルフに本当に自分のものと呼べる土地はありません。ですが彼らはヒューマンの都市では歓迎され、エルフの森でもまあ受け入れてはもらえます。エルフとヒューマンが頻繁に行き来する土地の大都市では、ハーフエルフはじゅうぶんな人数がいて、ハーフエルフの共同体も築けるのです。彼らは他のハーフエルフと過ごせることを喜びます。二つの世界の間で生きるとはどんなことか、それを本当にわかってくれるのは自分と同じハーフエルフだけなのですから。

 ですが、この世界のほとんどの土地ではハーフエルフは珍しい。あるハーフエルフが別のハーフエルフにまったく出会うことなく数年を過ごすこことは珍しくないのです。誰とも連れ立とうとせず、罠猟師、森林監督官、狩人、冒険者として荒野を放浪し、ときおり文明の土地を訪れるだけという者もいます。彼らはエルフと同じく長命ゆえの放浪熱に突き動かされているのです。ですが別の者は社会の大渦に飛び込み、生来の魅力と社交能力を活かして交渉、外交、詐欺、ペテンに腕をふるいます。

 ヒューマンと同じ速度で成長し、20歳前後で成年に達するのです。けれど寿命はヒューマンよりずっと長く、しばしば180歳を超えます。

 エルフと同じく個人の自由と創造的表現を重んじ、長を愛し敬う素振りも下僕を従えようとする素振りも見せません。面倒な掟を嫌い、他人からああしろこうしろと言われることを嫌います。彼らの行動は時として信頼を裏切り、しばしば予想を裏切るのです。

 ハーフエルフはエルフのように夜目がきき、暗闇の中を白黒の濃淡のみですが見ることができます。



 TRPG『PATHFINDER RPG CORE RULEBOOK』では、エルフは長い間、他の種族から羨望の視線を向けられていました。彼らは長い寿命と魔法への親和性、さらには生来の優雅さを持ち、それゆえに隣人たちから称賛と痛烈な嫉妬を浴びせられてきたのです。中でも人間ほど彼らの美しさに魅了されたものはいません。エルフと人間という二つの種族が最初に出会ってからというもの、人間はエルフを完成した肉体のモデルであり、人間にとって理想的な姿だと考えてきました。一方、比較的野蛮な人間の短い人生、そして情熱と衝動性に魅せられ、若き種族である人間に多くのエルフが心を惹かれてきたのです。

 時折、この双方の好意によりロマンチックな関係がもたらされます。人間の基準にしても短い間の密会によって、2つの文化の両方を持ちながら、そのどちらも継承しないハーフエルフが誕生するのです。ハーフエルフはハーフエルフ同士で子を産めますが、これら“純血の”ハーフエルフでさえ、人間とエルフの私生児と同様にみなされることが多い。

 ハーフエルフの背は人間より高く、エルフより低い。彼らはエルフの血筋による引き締まった体格と魅力的な特徴を引き継ぎますが、肌の色は人間の血筋によって決まります。ハーフエルフの耳はエルフのように尖っていますが若干丸みを帯びており、それほど顕著ではありません。ハーフエルフの眼は人間に似ており、琥珀色やヴァイオレットからエメラルドグリーン、紺碧まで幅広くエキゾチックな色になります。

 統一された母国や文化が存在しないため、ハーフエルフは多才であることを余儀なくされているのです。結果、彼らはどのような環境にもほぼ順応できるようになっています。彼らの両親が惹かれ合った理由と同じく、両方の種族から見て魅力的に見える部分もあるのです。しかし他方の種族の特徴が多く目についてしまうため、人間・エルフのどちらともしっくりいくことは少ない。受け止めてくれる存在がいないことは、多くのハーフエルフの重荷となっています。しかし同時に、“様式化された文化を持たない究極の自由”という彼ら独自の特徴が彼らを支えているのです。その結果、ハーフエルフは信じられないほどの順応性を持ち、いかなる社会にも溶け込みます。

 ハーフエルフは孤独を理解しており、個人の性格が種族よりもそれぞれの人生経験によって形作られることを知っています。そのため、ハーフエルフは他の種族との友情を受け入れやすく、新しい知人の評価を決める際、あまり第一印象には頼りません。

 ハーフエルフが持つ孤独感は彼らの人格と価値観に強い影響を及ぼします。彼らが自然と残酷な性質を持つことはありません。社会の慣例に溶け込むことも従うこともないハーフエルフの多くは混沌にして善です。統一された文化を持たないため、信仰に目覚めることはあまりありませんが、一般的に彼らの母国で普遍的な宗派に従おうとします。

 ハーフエルフは故郷と呼べる場所を求めて大地をさまようため、旅を好むことが多い。共同体に自らを証明したい、個人のアイデンティティや先祖からの遺産を確立したいという欲望により、多くのハーフエルフの冒険者は勇敢な人生へと駆り立てられるのです。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、人間とエルフの混血であるハーフエルフは普通、エルフの親の魅力度を受け継ぎますが、鉄に対する忌避感は受け継いでいません。一般的な色合いの肌と、わずかに尖った耳を持ち、体格はエルフよりがっちりしています。

「エルフ」でも説明したとおり、魔法によって繁殖力を高めようとしています。ハーフエルフの混血はすべて、個々のエルフに備わった天性の魅力が発揮された直接の結果なのです。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、ハーフエルフは人間とエルフから生まれてきた者のことです。人間とエルフは種として近く、子供をもうけることができるのは、エルフの項で説明したとおりです。

 ハーフエルフは人間とエルフの両者の特徴を合わせもっています。耳はわずかにとがっていますし、ヒゲを生やすこともあります。身長は人間とさほど変わりませんが、華奢な作りをしています。

 ハーフエルフは、エルフの特性から人間より寿命が長く、200歳程度が寿命とされているのです。

 人間に育てられたか、エルフに育てられたかによって、その特性が変わります。エルフに育てられたときの特性はエルフに準じます。人間によって育てられたときには人間とまったく変わりがありません。

【チェンジリング】

 ハーフエルフは一代だけの混血ではなく、自由に子孫を残すことができます。その子供は完全なるエルフか、ハーフエルフか、人間となります。どちらかの特徴を四分の一だけ受け継ぐ、というようなことはありません。

 人間であっても、過去にエルフの血が混じっていれば、ごく稀に人間同士の間からも隔世遺伝によって、エルフやハーフエルフが産まれることがあります。これらの子供は「取り替え子チェンジリング」と呼ばれ、人間社会では忌み嫌われています。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、ハーフエルフは、人間とエルフの間に生まれてきた者のことです。人間に育てられれば騎士を除いた人間と同じ基本クラスを選ぶことができ、エルフに育てられればエルフと同じ基本クラスを選ぶことになります。エルフよりも人数は少ないのですが人間に近しい存在であるため、それなりに出会うことがあるでしょう。

 人間とエルフの両者の特徴を持っています。耳は先がわずかにとがっており、体格は人間とエルフの中間程度で、男性はヒゲも生やせます。平均的な寿命は100歳程度、最長で200年ほど。身体的には人間とあまり変わらない時間で成年に達します。

 人間社会で育ってもエルフ社会で育っても、周囲から阻害される傾向にあります。

 そうしたこともあり、人間社会では15歳程度、エルフ社会でも30歳程度で、自分のいた集団から離れ、放浪したり人里離れた地域に居を構える者が多いようです。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、ハーフエルフはエルフと人間の間に生まれた混血種。一見、普通の人間となんら違いはないが、わずかに先端のとがった耳と小柄なところに、エルフの特徴が残されています。

 ハーフエルフはハーフということから、どうしても迫害される傾向にあります。人間社会でもエルフ社会でも、彼らの存在は受け入れられません。

 そのせいか、ハーフエルフは、冒険者や傭兵など、実力がものをいう仕事に身をおいている場合が多い。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、ハーフアルヴはすでに滅亡した古代種族アルヴの特徴を色濃く残す種族。隔世遺伝によりヒューマンから生まれるとされています。外見はヒューマンとほぼ変わりがありませんが、舌の上に奇妙な紋章が存在し、古代の装置や魔法の品物と親和性が高い。冒険者としては武器攻撃職、魔法攻撃職に適性がある。





最後に

 今回は「妖精族:ハーフエルフ」についてまとめてみました。

『北欧神話』では種として近しいわけではなかったのはご説明してきた通りです。

 しかし『指輪物語』や「取り替え子チェンジリング」からハーフエルフの存在が生まれていったと想定されます。

『北欧神話』寄りの『T&T』にもハーフエルフが登場するのは、他のTRPGでPCとしてプレイできるところを取り込んだとも言えるでしょう。

 次回は「ダークエルフ」についてです。



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