686.事典篇:妖精族:エルフ

 今回は「剣と魔法のファンタジー」といえばほとんどの作品に登場する「エルフ」についてまとめました。

「エルフ」は『北欧神話』において「アールヴ」「アルフ」と呼ばれていた存在です。

 それがどのようにして「剣と魔法のファンタジー」に欠かせなくなったのでしょうか。





事典【妖精族:エルフ】


 エルフは北欧神話で「始まりの巨人ユミル」の死体から湧き出てきたウジ虫のうち、オーディンらが光り輝いていたものに人型の体と頭脳を授けて生み出されたとされています。

 しかし北欧神話では詳しい姿形の情報が載っていないため、J.R.R.トールキン氏『指輪物語』で設定された情報が、現在のスタンダードとなったのです。




エルフ

 ゲルマン神話に起源を持つ、北ヨーロッパの民間伝承に登場する種族です。日本では妖精や小妖精と訳されることも多い。

 エルフに関する最も古い記述は『北欧神話』にあります。最初期のエルフは古ノルド語で「アールヴ(アルフ)」と呼ばれたのです。当時の人々はエルフを強力で美しい、人間ほどの大きさの存在として理解していたように思われます。

『北欧神話』における彼らは本来、自然と豊かさを司る小神族です。エルフはとても美しく若々しい外見を持ち、森や泉、井戸や地下に住むとされます。また彼らは不死あるいは長命であり、魔法の力を持っています。

 ゲルマン民族にとってのエルフは、ギリシャ神話・ローマ神話におけるニンフや、スラヴ神話におけるヴィラやルサールカのような存在です。



 J.R.R.トールキン氏『指輪物語』では、賢明で半神的な種族である「エルフ」が活躍しました。身体能力が高く、知識に富み、魔法を使います。人間ほどの背丈で、耳は長く尖っていま。トールキン氏はホビットの耳はエルフのように尖らせてほしいなどと手紙に書き、その意を汲んだイラストレーターらがエルフの耳を尖っているように描写しました。この作品が成功して以降、トールキン風のエルフは現代のファンタジー作品における定番となったのです。

 1978年の『指輪物語』映画化を機に日本でもファンタジーが流行の兆しを見せ、「エルフ」「オーク」といった言葉が徐々に認知されました。その影響から、欧米の文学や民間伝承などに登場する妖精の総称としての「エルフ像」よりむしろ同作で描かれるような固有の種族としてのイメージが日本におけるエルフのステレオタイプとなったのです。

 さらに悪魔のモチーフである尖った耳を持つ妖精の容姿が描かれた海外のゲームやペーパーバック小説のイラストを通じて「エルフの耳は長いもの」というイメージが日本人の間に定着します。

 とくに強固な影響を与えた代表作として1988年刊行の小説『ロードス島戦記』に登場するディードリットのキャラクターデザインが挙げられるでしょう。出渕裕氏によると、長い耳のエルフのモチーフは1982年の映画『ダーククリスタル』としています。



 TRPG『Dungeons & Dragons』第五版では、エルフはこの世ならぬ優美さを備えた、魔法にゆかり深い種族です。

 彼らは完全にこの世界に属する存在というわけではありません。彼らが住むのは霊妙な美をたたえた土地です。たとえば古い森の中。あるいは妖精めいた薄明かりを帯びた銀の尖塔の中。優しい音楽の調べが漂い、かすかなゆかしい香りがあります。エルフは自然と魔法、美術と芸術、音楽と詩、この世界の良きことを愛するのです。

 エルフはこの世のものとも思えぬ優美さと繊細な顔立ちを備えています。その姿はヒューマンの目にも、他の多くの種族の目にもそら恐ろしいほど美しいものと映るのです。

 背丈は平均としてヒューマンよりもわずかに低く、5フィート(約152cm)弱から6フィート(約183cm)強の幅に収まります。そしてヒューマンよりも細身で、体重は100〜145ポンド(約45〜66kg)に過ぎません。身長は男女ほぼ変わらず、体重は男性のほうが女性よりもわずかばかり重い。

 ヒューマンにある肌や髪や目の色はすべてエルフにもあります。加えてエルフの中には赤銅色、青銅色、水色に近いほど白い肌、緑や青の髪、白目も黒目もなく黄金や白銀の湖のような目を持つ者もいるのです。ヒゲはなく体毛は薄い。好んで明るい色合いの優美な衣を着、シンプルながら美しい装身具を身に着けます。

 エルフの寿命はゆうに700年以上に及びます。このため彼らは、命短い種族が深刻に受け止める事柄を、より長期的な視野をもって受け入れるのです。興奮するというより面白がることが多く、渇望するというより興味深く思うことが多い。思わぬ出来事にあってもたいていは泰然として動じません。けれどもひとたび目当てを定めたなら——たとえば任務を帯びて冒険の旅に出たり、新しい技術や技芸を学ぶことにしたなら、一心に打ち込むようになります。彼らが友情や敵意を抱くには時間がかかり、友情や敵意を忘れるにはさらに長い時間がかかるのです。小さな侮辱には軽蔑をもって応え、大きな侮辱には復讐をもって応えます。

 エルフは危険に面しては若木の枝のように柔軟です。意見の相違を解決するには、暴力に訴えるより前に、まず折衝と妥協が大事に思っています。自分たちの住む森によそ者が入り込んできたなら、エルフは「向こうはそのうち出てゆくだろう」と考えて姿を隠してしまうといわれるのです。けれど事あるときには容赦なく戦い、剣でも弓でも戦術でも大した腕前を示します。

 ほとんどのエルフは森の中、木陰に隠れた小さな村に住むのです。鳥や獣を狩り、食物を採集し、作物を育てて暮らします。技能と魔法のおかげで、土地を開墾したり耕したりすることなく、自分たちの必要を満たすだけのものを手に入れているのです。

 工芸に長け、見るも見事な布を織り美術品を作ります。よそ者との交流は概して限定的ですが、中には採掘作業に興味を持てない同族のために、細工物を金属と取引して生計を立てている者もいるのです。

 故郷の外にいるエルフは、吟遊詩人、芸術家、賢者であることが多い。ヒューマンの貴族たちは、自分の子弟に剣技や魔術を教えてもらおうと、競ってエルフの教師を求めるのです。

 エルフは漂泊の思いに駆られて冒険の旅に出ます。きわめて長命であるため、何世紀にもわたって探検と発見の旅を続けることもあるのです。ヒューマンの社会は、毎日やることがきちんと決まっており、そのくせ十年単位でやることはどんどん変わっていくのですから、エルフはどうもこれに馴染めません。そこでヒューマンの社会で暮らすエルフは、自由に旅し、急ぐも休むも自分で決められるような仕事を選びます。

 また武技を磨き魔術を高めることを好みますが、冒険はその機会をふんだんに与えてくれるのです。反乱軍に加わって圧政と戦う者もいます。また、大義のために戦う勇者となる者もいるのです。

 エルフは自分で成人を宣言するまで(百歳前後)は子供として扱われ、幼名で呼ばれます。

 薄明かりの森に慣れ、夜の空に慣れており、闇や暗がりを見通す目を持ちます。「薄暗い」光の中では自分から60フィートまでを「明るい」光の中であるように見渡せるのです。また同じ範囲の暗闇の中を「薄暗い」光の中であるかのように見通せます。暗闇の中で物の色を見分けることはできず、ただ白黒の濃淡のみが見えるのです(赤外線カメラのようなものと思われます)。

 エルフは睡眠を必要とせず、代わりに深い瞑想に入り、半ば意識を保ったまま、一日四時間を過ごします。これでヒューマンの八時間の睡眠と同じ効果が得られるのです。

 魔法で眠らされず、魅了状態効果が効きづらい。

【ウッド・エルフ】

 ウッド・エルフは鋭敏な五感と直感を備えており、慣れ親しんだ森の中、足取り軽く速やかに音もなく動きます。ワイルド・エルフ(グルガック)、カガネスティ、ウッド・エルフ(他にもワイルド・エルフ、グリーン・エルフ、フォレスト・エルフとも)は人里を離れて隠れ住み、エルフ以外のものに疑いの目を向けます。

 肌は概して赤銅色であり、わずかに緑がかっていることもあるのです。髪の色は茶色や黒が多いが、金髪や赤銅色のこともあります。目の色は緑、茶色、あるいはハシバミ色のような薄い金褐色です。

【ハイ・エルフ】

 ハイ・エルフは鋭敏な精神を備え、魔法を(少なくとも魔法の基礎を)修めています。『D&D』の諸世界の多くにおいて、ハイ・エルフには二種類があるのです。

 片方(グレイ・エルフとヴァレー・エルフ、シルヴァネスティ、サン・エルフ)はプライドが高く、世間を離れて隠れ住み、自分たちのことをエルフ以外の者にまさり、他のエルフにもまさっていると考えています。

 もう一方(ハイ・エルフ、クォリネスティ、ムーン・エルフ)はより数が多く、より親しみやすく、ヒューマンその他の種族に混じっていることも多い。

 サン・エルフ(ゴールド・エルフ、サンライズ・エルフともいう)は、肌は青銅色、髪は赤銅色や黒や金色、目は金色や銀色や黒をしています。

 ムーン・エルフ(シルヴァー・エルフ、グレイ・エルフともいう)はより色白で、肌の色は雪化石膏(アラバスター)のよう、時には青みがかっていることもあるのです。髪は銀白、黒、青が多いけれども、銀色、茶色、赤色がかった髪も少なくはない。目の色は青や緑で、その中に金色の斑点があります。



 TRPG『PATHFINDER RPG CORE RULEBOOK』では、長命なエルフは多くのフェイ(妖精族)と同様、自然界のおとし子ですが、フェイと異なる面も持っています。エルフは自らのプライバシーと伝統を重んじるため、個人的または国家間で友となるまでには長い時間がかかるのです。しかし、一度仲間として認められると、その関係は何世代にも渡って継続されます。エルフは彼らの途方もなく長い寿命、もしくはより深く神秘的な理由から、周囲の環境に深い愛着を持っているのです。長い間同じ場所に暮らすエルフは目や髪などの体色がその環境に合わせた色彩に変化していきます。一方、短命な種族と共に過ごすエルフは次々と友人たちが歳を重ねて死んでいくのを目の当たりにするのです。その結果、死に対して歪曲した見識を持ち、気難しくなることも多い。

 エルフは一般的に人間よりも背が高い。その耳は長く先が尖っていて、優美で華奢な体格を際立たせています。幅の広いアーモンド形の眼は鮮やかな色彩を持つ大きな瞳で満たされているのです。エルフは自然界の美を模したい服を着ていることが多い。その一方で、都市に住むエルフには最新のファッションで自分たちを飾り立てる傾向があります。

 多くのエルフは自然との結びつきを感じとり、自然と調和するよう努力します。一方で、たいていのエルフは大地や石をいじることを不快に感じ、彼らを魔術にも適応させているのです。生まれ持った根気で作った素晴らしい芸術品を鑑賞することを好みます。

 エルフは軽率で衝撃的な他の種族から距離を取ることが多いものの、彼らは正しく評価してもいるのです。ドワーフが近くに住むことをあまり好ましく思っていませんが、その鍛冶技術は高く買っています。彼らはノームを奇妙(でときどき危険)な好奇心の塊だと見なしているのです。また、ハーフリングのことを「先祖代々家を持たずにさまよう、哀れな小さき人」と感じています。世界中のハーフリングの数を見れば明らかなように、エルフは人間に夢中になることがあります。しかし、その結果産まれてきた子供を認知しないことが多い。彼らはハーフオークを信用せず、疑いの眼で見ます。

 エルフは感情的で気まぐれであるにも関わらず、親切や美の価値を認めています。多くのエルフは混沌にして善です。彼らは世界の神秘と関わる神を好んでいます

 多くのエルフは世界を見聞して回りたいという願いから冒険を始めます。失われたエルフの魔法を取り戻すため、祖先が数千年前に樹立した失われた王国を探し出すため。静かな森林を離れていく人間に囲まれて育ったものは、冒険者の儚くも束縛されない人生に惹かれます。エルフは一般的に華奢なため、白兵戦闘を避け、ウィザードやレンジャー等のクラスを極めることを好みます。



 TRPG『ADVANCED FIGHTING FANTASY』第2版『モンスター事典――奈落の底から――』では、エルフは、人間がまだ洞窟や木の上に住んでいた頃には、もう地上を歩いていたとても古い種族です。彼らは背の高い人型種族で、人間の二倍もの時間を生きるため、人間や子どものように見下す傾向があります。

 すべてのエルフは痩せ型で、大きな耳と釣り上がった目を持つのです。彼らは人間より品があり、どこか賢く見えます。また恐れ知らずの戦士で、とくに長弓にかけては専門家です。エルフにはいくつかの異なる種が存在し、同じ源から別れ出ていますが、かなり違う特徴も持ちます。

【ウッドエルフ(森エルフ)】

 あらゆるエルフの中で最もありふれているのがウッドエルフで、大きな森ならどこでも出会う可能性があります。友好的、平和な種族で、自然を愛し、多くの時間を植物や樹木、その他の森の住人の世話に費やすのです。彼らはあまりドワーフを好いていない。なぜなら、ウッドエルフはどうしてドワーフが美しい地上の世界から離れて地下にこもるのか理解できないからです。ウッドエルフはオーク、トロールその他の人型種族を、その卑劣さや森を燃やしたり無垢な生き物をすぐに殺すような在り方ゆえに嫌っています。人間については態度を決めかねています。人間には悪の軍勢と戦う仲間もいれば、オークその他の邪悪な種族と手を結ぶものもいると知っているからです。冒険者が友好的かつ経緯を払うなら、ウッドエルフは援助をすべて与えるでしょう。暴力を振るい無作法に振る舞うなら、エルフの領域にはそれ以上一歩たりとも足を踏み入れられないはずです。

 ウッドエルフは草木の茂る環境に溶け込むような、落ち着いた緑の衣服を好んで着ます。森で生きる技術に優れ、攻撃する好機をつかむまで獲物を音もなく追跡できるのです。恐るべき射手でもあり、接近戦になるとショートソードを巧みに使います。

 ウッドエルフは、生い茂る植物と強力な魔法に守られた大きな隠れ里に住んでいます。信用できるものにしか村を見つけられないようにしていて、そうでない者が探そうとしても、道に迷って近づくことすらできずにさまようことになるのです。エルフの村は、偉大な戦士であり魔術師でもある誇り高い貴族たちによって治められています。彼らは森に住むすべての生き物を公平に統治しているのです。

【マウンテンエルフ(山エルフ)】

 すべての善のエルフが低地の森に住んでいるわけではありません。高い丘陵や山肌の雪に覆われた常緑の森で、マウンテンエルフは狩猟生活をしています。見た目はとてもウッドエルフに似ていますが、背丈はより低く、あまり痩せてはいません。たいていが茶色や白の暖かな毛皮を着て、弓と長い狩猟刀を持っています。弓による射撃を得意とするのです。鹿、ウサギ、その他の森林に住む生き物を糧としますが、必要なぶんだけを狩るように気をつけています。

 マウンテンエルフの家は樹上の高い場所に取り付けた小屋です。そこはスノウウルフやその他の危険な捕食者から安全です。マウンテンエルフは平和を好むどちらかというと内気な種族で、他の新興の種族とは関わりたがりません。彼らはよそ者に対して警戒しますが、敬意をもって接すれば親切にしてくれるでしょう。攻撃を受けるようなことがあれば、恐るべき矢の斉射によって敵を殺すことをためらいません。



 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版では、エルフは惑星トロールワールドに外部からやってきた最初の種族です。古いエルフの言い伝えでは、彼らはドラゴンの侵略を逃れて巨大な魔法の次元の門から大挙して移住してきたと言います。そのときにフェアリーやレプラコーン、その他あまり知られていない妖精族も同行してきました。謎めいたヴァルタやピクシーなどは、次の大移住のときにやってきました。エルフとドラゴンの間には今も間違いなく、古代からの確執が存在しています。ドラゴンも同じ手段でトロールワールドへやってきました。

 エルフにいくつかの種族があるという考えは必ずしも広く認められてはいません。

「真のエルフ」を自称する者たちは、最も一般的なエルフです。それより稀少なヴァルタはそうしたエルフたちを「陽光エルフ」とか単に「光エルフ」と呼んでいます。

 小柄な種族(フェアリーやレプラコーン、その他の妖精族)は「下級エルフ」と見なされことがありますが、異世界に起源を持つという点を除いては、まったく別の種族だと主張しているのです。

 エルフはあらゆる主要な森林地帯で暮らしており、ほとんどの人がエルフと聞いて思い浮かべるのが彼らです。しかし密林に住む者、船乗りになる者、砂漠に暮らす者もいます。ヴァルタは地下世界を好み、ドワーフたちと反目しあうこともあります。森や林に住むエルフの中にもさまざまな部族や伝統があります。

 概して言うと、エルフは人間より少し長身でかつ細身です。耳は上部が尖り、耳たぶはひじょうに小さくなっています。ほとんどの人間より少しだけ耳がよいようです。

 肌の色は濃い褐色から濃い青色や灰色、真っ白なものまでいます。森エルフの多くは草色や茶色を帯びた肌です。髪はありとあらゆる色合いがあります。

 目はつり目で、猫のように切れ長です。瞳は琥珀色や瑠璃色、青みがかった紫など一風変わった色をしています。そのため、エルフは暗闇でも目が見えるとか、はるか彼方の地平線の細部まで見極めることができると噂されますが、こうした説は事実無根です。ヴァルタは暗闇でも陽光エルフよりよく目が見えますが、ひじょうに強い光では目がくらんでしまいます。

 エルフは比較的よく見かける種族ですが、これは彼らの寿命がひじょうに長いためです。子供の数は少なく、エルフの多くは出生率を高めて妊娠の機会を増やすために魔法の研鑽を積んでいます。これはとりわけ他の種族のそばにいるときに、彼ら本来の魅力と相まって成果を発揮します。他の種族はこぞってエルフと結ばれようとするため、エルフとの混血は珍しくありません。

 真のエルフに特徴的なのは、肉体のいくつかの部分、たとえば鼻や耳、指、つま先などが成長し続けることです。そうした肉体の一部は時間とともにゆっくりと成長しますが、完全に成長を止めることはありません。真の古代のエルフは異様に大きい耳や鼻などで判別できるでしょう。彼らの間では、長い鼻や高く伸びた耳が年齢と力を示すステータスシンボルとなっています。よそ者の前では、こうした古代エルフは幻覚をまとって、異様なほど肥大した肉体の一部を隠します。

 真のエルフは「労力を節約できる道具」を敬遠するのです。魔法を好み、あるいは物事をより困難なやり方で進めるのを好むため、機械や卑金属を軽蔑しています。

 また、彼らは鉄を嫌います。鉄のせいで気分が悪くなることがあるためで、その傾向は年を経るごとに強まります。冒険心旺盛なエルフはたいてい若い男女ですが、鉄や鉄の合金のそばにいても耐えられる効果のある魔法アイテムをよく携帯しています。

 職工や鍛冶屋のエルフたちが大いに好むのは銀や金、それにリル(エルフ銀とかムーンシルバーも呼ばれます)として知られる銀色の物質です。エルフの鍛冶屋は、リルは実は鋼鉄より硬い木材の一種だと説明しています。金属に敏感なドワーフでさえ、この物質には困惑しますし、人間はプラチナだと信じています。しかし、プラチナに詳しいドワーフはそうではないとわかっています。これまでのところエルフはリルの真の性質を明かしていません。

 魔法に無知なエルフはほとんどいません。エルフは賢明さや知識、美しさに重きが置かれる職業に秀でています。音楽や演劇、物語を愛し、飛び抜けた記憶力で他の人々がとっくに忘れてしまった細かな過去まで覚えているのです。


 TRPG『Tunnels & Trolls』完全版『MONSTERS! MONSTERS!』では、エルフはやや長身で細身、とがった耳と切れ長の目を持つ、美しい種族です。太陽の光と自然の営みを愛し、暗闇や金属を嫌います。優れた知性と、繊細な感性を持っています。他人には笑みを絶やさず、にこやかに接することをごく当たり前な行動としています。エルフはドワーフたちを嫌っています。ドワーフたちが地下に居住を構え、鉱石を掘り出す作業に従事し、また無骨で無愛想と、エルフと正反対の性格なためです。エルフは基本的に善良な種族であり、よほどのことがなければ、人間たちと争ったり邪悪な行動をしたりはしないでしょう。



 TRPG『ソード・ワールドRPG』完全版では、エルフは森に住む妖精族の一員で、容姿の美しさと不死性(寿命を持たないこと)で、人間の羨望の的となっています。

 彼らの特徴は細長くて先端の尖った耳です。身長は160センチくらいで、細身です。体毛は薄く、男性でも髭が生えません。髪の色は金色から栗色、ときには銀色の髪をしたものもいます。肌の色は白に近く、瞳の色は薄い青か緑色です。彼らは人間と種として近く、両者は子供を作ることができます。この子供のことをハーフエルフと呼びます。

 彼らは森で非常に閉鎖的な生活を送っています。外来者を好みませんし、また他者に支配されることも望みません。そのため、森への侵入者には、攻撃的な行動に出る場合があります。めったに自分たちの住む森から出ることはありませんが、ときどき変わり者のエルフが街へ姿を現わすことがあります。彼らはいかなる神をも信仰していません。

 人間がエルフを羨望する理由の一つである「不死性」ですが、これはハイ・エルフと呼ばれる上位種(古代種族)の特徴です。しかしこのハイ・エルフたちは、ふつうのエルフ以上に人間たちとの接触を避けています。人間たちの街に姿を現わすエルフたちは、大半が普通の(種として新しい)エルフであり、不死ではなく千年ほどの寿命に縛られています。



 TRPG『ロードス島戦記RPG』では、エルフは森に住む妖精族の一員で、繊細で美しい容姿と長寿により人間から羨望の的となっています。森から出る者が稀であるため、かなり珍しい存在です。

 細長くとがった耳と細身の体格で、肌の色は薄く、頭髪も色味の薄い金や銀の物が多く、頭髪以外の体毛は薄く細く、男性でも髭が伸びることは稀です。千年程度の寿命を持つといわれていますが、三百歳を超えるような者はまず人間と接触しない傾向にあります。またハイエルフと呼ばれる非常に稀少な上位種(古代種族)も存在し、そうした者は寿命がないとされています。

 平均的な体格は、男性が身長165cm程度で体重55kg程度、女性が身長155cm程度で体重40kg程度です。またエルフは人間との間に子をもうけることができ、この子供をハーフエルフと呼びます。

 エルフは森の中で非常に閉鎖的な社会を築いており、人間やドワーフを排除したり蔑視する傾向があります。しかし、ときおり変わり者のエルフもおり、そうした者の一部は冒険者になります。身体的には人間とあまり変わらない時間で成年しますが、エルフ社会で一人前と認められるのは百歳程度からでしょう。



 TRPG『クリスタニアRPG』では、エルフはドワーフと同じ妖精の仲間です。エルフは森の妖精で、森を豊かに育てるために日々努力しているのです。もっとも物質界にいるエルフたちはそんな仕事から解放されています。

 人間よりやや小柄で、身長はおよそ150センチほどしかありません。体つきも華奢で、どちらかというとか弱い印象を受けます。しかし彼らは驚くほど長命な種族で、その寿命は数百年・数千年を超えるとまで言われているのです。

 特徴としては、先のとがった長い耳と細い目。男性も女性も見た目に差が少なく、どちらかといえば中性的な雰囲気を持っています。

 彼らの伝統として、理由ははっきりしていませんがドワーフとはあまり仲がよくありません。ダークエルフはエルフにとって最大の敵です。



 TRPG『グランクレストRPG』では、アールヴはエルフとも呼ばれます。ひじょうに魔力が高く、強力な魔法を操ります。

 果てしなき森に覆われた世界、エルフ界から投影されてきた亜人種族を表す投影体、それがエルフです。

 彼らは長く尖った耳と細身で美しい外見が特徴的な長命種族であり、深い叡智と神秘的な伝統を一族代々受け継いで、深い森の奥深くに集落を作って自然とともに生きることを信条とします。

 基本的に理性を尊び争いを好まない種族ですが、自然界に存在する精霊の力を操ってさまざまな神秘を為す独自の魔法を心得ており、また生来の身軽さや鋭い感覚を活かした武技や弓術にも天性の才能を示すため、いざ戦いとなれば他種族が舌を巻くほどの戦力となるのです。遠近に対応した武器戦闘から、精霊魔法を用いた戦場操作や支援まで、万能の働きが可能なスタイルといえるでしょう。

 反面、ある種の閉鎖性や保守性、他種族に対しての偏狭さや無自覚な傲慢さを見せる者がいることでも知られます。無論、若いエルフの中にはそのような悪しき種族的因習に反発し、この世界の人間と進んで交わり行動をともにすることを喜びとする者も少なくありません。



 TRPG『ログ・ホライズンTRPG』では、ほっそりとした体型と尖った耳が特徴の長命種。長い寿命の一方で出生率が低く、種族の人口は八種族の中でも少ない部類に入ります。精霊に対する親和性と俊敏さが特徴。冒険者としては、武器攻撃職、回復職に適性があります。



 TRPG『ゴブリンスレイヤーTRPG』では、森人エルフは「言葉持つ者」の中では最も少なく、古い森の中にある隠れ里のような集落で暮らしています。笹の葉のような長い耳を持ち、細身ですらりと背が高く、不老不死であるため、総じて若く美しい姿をしているのです。体力と持久力に劣りますが、高い移動力を誇り、弩弓の扱いや精霊術に長けているため、射手や斥候、精霊使いに向いています。

 森人エルフは成長がゆるやかで寿命がないため、一人前の技量を持つ分野についてだけ成人として扱われます。





最後に

 今回は「妖精族:エルフ」について述べてみました。

『D&D』『PF』『T&T』では人間よりわずかに背が高く、それ以外の『SW』『ロードス島』は人間よりわずかに背が低い設定となっています。

 これは『北欧神話』の影響が強い『D&D』『PF』『T&T』と、『指輪物語』の影響が強い『SW』『ロードス島』という棲み分けだからだと思われます。

 いずれにせよ、人間よりも長命であり、とくにハイ・エルフは寿命で死ぬことはまずないようです。

 次回は「ハーフエルフ」について触れます。



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