676.事典篇:アーサー王伝説:ガウェインの血族
今回は『アーサー王伝説』で、早くからアーサー王に仕えたガウェイン卿の血縁についてまとめました。
ガウェイン卿はアーサー王の甥にあたり、兄弟もたくさんいました。
そんなガウェイン卿の血族は「円卓の騎士」の中枢を担っていたのです。
事典【アーサー王伝説:ガウェインの血族】
円卓の騎士の中では最古参であるアーサー王の甥、ガウェイン卿の血族を見ていきましょう。
ちなみにガウェイン卿とアーサー王の実子モルドレッド卿は同じ母親から産まれていますので「異父兄弟」の間柄です。
ランスロット卿の不義により円卓の騎士が割れた際、ガウェイン卿自身はアーサー王に付きましたが、兄弟はランスロット卿に付いた者が多かったとされています。
ガウェインの血縁
ガウェイン卿
アーサー王の異父姉モルゴースの息子でアーサー王の甥。弟にガヘリス卿、ガレス卿、アグラヴェイン卿、異父弟にモルドレッド卿。息子にフローレンス卿、ロヴェル卿、ガングラン卿がいます。
アーサー王の甥として最古参のひとりであり最も優秀な騎士。朝から正午までは力が三倍になる特性を持つそうです。強情で勇猛果敢ゆえの失敗も少なくないのですが、アーサー王の片腕として分別を働かせることもあります。愛剣ガラティーンは、アーサー王の聖剣エクスカリバーの姉妹剣とも。
王妃グィネヴィアと駆け落ちしたランスロット卿とフランスで一騎討ちして重傷を負い敗れるも、その間に異父弟モルドレッド卿が起こしたクーデターに端を発する「カムランの戦い」へ赴いてアーサー王の腕の中で息絶えました。
アグラヴェイン卿
オークニーのロット王とモルゴースの息子でアーサー王の甥、ガウェイン卿の弟。
ランスロット卿の失脚を狙い、兄弟であるガウェイン卿、ガヘリス卿、ガレス卿、そして異父弟モルドレッド卿に、ランスロット卿とグィネヴィア王妃の不義密通の証拠をつかもうと提案するもモルドレッド卿以外の人物に拒否されます。結局モルドレッド卿とその他十二人の騎士とともにランスロット卿とグィネヴィア王妃が同衾している現場を押さえるのです。しかしその場を脱出しようとしたランスロット卿に斬り殺されます。
ガヘリス卿
オークニーのロット王とモルゴースの息子でアーサー王の甥、ガウェイン卿の弟。
騎士になる前はガウェイン卿の従者を務めました。その後もガウェイン卿とともに登場することが多い。勇猛果敢な美丈夫だが寡黙な性格だったとされます。
父ロット王の仇であるペリノア王の息子であるラモラック卿と母親モルゴースが愛人関係にあったことに激怒し母を殺害。さらにラモラック卿をガウェイン卿、アグラヴェイン卿、モルドレッド卿の四人がかりで惨殺しました。
タークィン卿に監禁されていたところをランスロット卿に救われた過去があるため、「円卓の騎士」がガウェイン派とランスロット派に割れたとき弟のガレス卿とともにランスロット派に属したのです。
密通の罪で火刑に処せられそうになるグィネヴィアを救出に現れたランスロット卿によって故意ではないにしろ殺害されます。ランスロット卿を尊敬していたため武装していなかったからです
ガレス卿
オークニーのロット王とモルゴースの息子でアーサー王の甥、ガウェイン卿の末弟。
当初身分を隠していたためケイ卿により厨房で一年働かされたのです。のちにキャメロット宮廷に乙女がやってきて、自分の仕える貴婦人を助けてくれるよう依頼されます。しかし貴婦人の名前がわからなかったため、名のある騎士を派遣できませんでした。そこで無名のガレス卿が冒険に出ることになります。その際ランスロット卿により騎士に任命されたのです。数々の困難があったものの貴婦人を貶めている騎士を決闘で打ち倒し、帰還後その功績と母により出自が明らかにされたことから円卓の騎士に加わります。
兄たちのように私憤で他者を殺したことがなく、その点が兄ガウェイン卿、ランスロット卿からもひじょうに愛されていたそうです。
権勢を増していくランスロット卿は王妃グィネヴィアとの密通現場を押さえられ、口封じにアグラヴェイン卿、ガウェイン卿の息子フローレンス卿やガングラン卿ら十二人の騎士を殺害し逃亡します。非はアグラヴェイン卿にあり、ガレス卿がランスロット卿を尊敬していたためランスロット卿に敵対することはありませんでした。
しかし不倫による火刑に処せられそうになる王妃グィネヴィアを救出に来たランスロット卿にそれとは知らないながらも兄ガヘリス卿ともども殺害されてしまいます。ランスロット卿を尊敬していたため武装していなかったからです
同じ弟であるアグラヴェイン卿や息子のフローレンス卿とロヴェル卿を殺されても我慢したガウェイン卿は、ガレス卿が殺されたと聞いて激怒して反ランスロット派に転向し、アーサー王がランスロット卿と和平しようとするたびに厳しく反対することとなります。
ガレス卿の死がガウェイン卿とランスロット卿の関係を修復不能なものとし、ひいては「円卓の騎士」の崩壊につながったとされます。
ガングラン卿
ガウェイン卿の息子。兄弟にフローレンス卿。
ガウェイン卿は森で出会った妖精・ブランシュマルとの間にガングランをもうけます。ブランシュマルはガングランの出生をひた隠しにし、いっさい血筋について情報が入らないようにしていました。しかしガングランが森で少年の騎士に出会うと、自分も騎士になることを望んでアーサー王の宮廷に旅立つのです。ガングランは自分の名前を知らなかったので「ル・ベル・インコニュ卿」として騎士に任命されます。
やがてウェールズの王女「金髪のエスメレ」から使者がやってきます。強力な魔法使いマボンの包囲攻撃に苦しめられており助けてほしいとのこと。
「ル・ベル・インコニュ卿」が選ばれてウェールズへ向かう途中いくつかの冒険をします。その中でも魔法使いマルジェ・ル・グリと戦っています。ル・グリは黄金の島の女主人「白い手のピュセル」の求婚者だったがピュセルからは嫌われていました。ル・グリを打ち負かし、自分を救い出した「ル・ベル・インコニュ卿」に結婚を申し出るのです。しかし「ル・ベル・インコニュ卿」にはウェールズの王女救出の義務があるため再び旅に出ます。
「ル・ベル・インコニュ卿」はエスメレを助け出し、ピュセルの元へ訪問ししばらく「黄金の島」に滞在し続けたそうです。
アーサー王は帰還しない「ル・ベル・インコニュ卿」を宮廷に誘き寄せるためにトーナメントを開催することにし、さらに彼をウェールズの女王となったエスメレと結婚させようと考えます。「ル・ベル・インコニュ卿」はピュセルの愛を失うことを承知でトーナメント参加を決意。最終的にエスメレと結婚し、その際にガウェイン卿の息子・ガングラン卿であることが明らかにされます。
アグラヴェイン卿やモルドレッド卿とともに王妃グィネヴィアとランスロット卿の不倫現場を押さえたが証拠を揉み消そうとしたランスロット卿により殺害されてしまいます。
最後に
今回は「アーサー王伝説:ガウェインの血族」をまとめました。
ガウェイン卿の血族はランスロット卿の不義を暴こうとした際に殺されたか、火刑に処されようとした王妃グィネヴィアを救いに来たランスロット卿一族に殺されたかしています。
これがガウェイン卿とランスロット卿の仲を決定的に引き裂きました。
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