665.事典篇:北欧神話:アルフとドヴェルグ

 今回は「アルフとドヴェルグ」についてまとめました。

 えっ、聞いたことがいないですって。

「アルフ」はエルフのことで、「ドヴェルグ」はドワーフのことです。

「ドヴェルグ」はまた「デックアルフ」つまり「ダークエルフ」とも呼ばれています。

『北欧神話』ではドワーフとダークエルフは同じ存在なのです。




事典【北欧神話:アルフとドヴェルグ】


 始まりの巨人ユミルの死体から湧いてきたウジ虫に、オーディンたちが人型の身体と知性を授けたのがアルフ(エルフ)とドヴェルグ(ドワーフ。ダークエルフとも)の始まりです。

 著名なものだけですが、まとめてみました。




光の妖精アルフ(エルフ)

ビュグヴィルとベイラ

 豊穣神フレイの召使い夫婦。フレイは妖精の国アルフヘイムの支配者であり、エーギルの宴会場に集まったアース神族と妖精たちの中に二人がいたと書かれているため、二人は妖精である可能性があります。

 ビュグヴィルの仕事は石臼で穀物を製粉することで、これは奴隷の仕事とされています。ロキとビュグヴィルは口ゲンカをして、ロキはフレイに醜聞を聞かせるべく罵倒し、さらにビュグヴィルの小さな体格をからかいました。

 ベイラはトールが諌めに来たのをロキに告げるが、ロキから罵倒されてしまいました。





闇の妖精ドヴェルグ(ドワーフ)

イーヴァルディの息子たち

 ドヴェルグの鍛冶屋であり、その息子たちによってシヴのカツラ、スキーズブラズニル、グングニルといった宝物が作られたといわれます。これらの宝物はロキが女神シヴの美しい髪を切ってしまったことを発端とし、シヴの夫である戦神トールに代償を求められ、ロキが代わりになるものとして作らせました。



ブロックとエイトリ

 ドヴェルグの兄弟。エイトリはシンドリとも。

 ロキはイーヴァルディの息子たちにシヴのカツラ、スキーズブラズニル、グングニルを作らせた帰り道で、ブロックとエイトリの兄弟に「これらに優る宝を創れるか」との賭けをし、もし作れたのなら自分の頭をやると約束したのです。

 兄弟は鍛造を始め、終わりに差しかかるとエイトリはブロックに「なにがあってもふいごを動かす手を休めるな」と言いつけて出ていきました。一匹のハエ(ロキが変身したともいわれる)がブロックの邪魔をしたが、彼は手を休めずふいごを動かし、グリンブルスティ、ドラウプニルと順に完成させていきました。最後にミョルニルを創る際、ついにブロックはハエの邪魔に耐えきれずに手を休めてしまい、そのためにミョルニルの柄は短くなってしまったとされます。

 ブロックはロキとともに宝物を神々の前に持っていき、どちらが優れているかを判定させたのです。結果はミョルニルを創り上げたプロック兄弟の勝ちでした。兄弟はロキに頭を請求しましたが、ロキは「頭はやると言ったが、首をやるとは言っていない」と言って逃れようとします。そのため兄弟はロキの口を錐と糸で縫い合わせてしまったといいます。



フィアラルとガラール

 神クヴァシルを殺し、彼の血を詩人に霊感を与える「詩の蜜酒」に作り変えたドヴェルグの兄弟。

 さらに霜の巨人ギリングを彼の妻ともども殺しました。ギリング夫妻の息子スットゥングがそれを知るとフィアラルとガラールを満潮時に海面下に沈む暗礁に置いて脅します。二人は償いとして「詩の蜜酒」を彼に提供し、和解したのです。



アンドヴァリ

 滝の近くに住み、自らの意志で魚に変身する能力があり、自分を富ましめる魔法の指輪アンドヴァラナウトを所有していました。

 ドワーフのオッテルを殺害したため父フレイズマルに彼の賠償を求められたロキは、ラーンから与えられた網を使ってカワカマスに変身したアンドヴァリを捕らえ、彼の黄金を全部引き渡すよう強要します。

 アンドヴァラナウトを隠したが、ロキに見咎められ取り上げられてしまったのです。彼は財産を増やせる魔法の指輪であることを告げて返してくれるようロキに懇願したが叶いませんでした。

 アンドヴァリは指輪の恩恵が他者に帰さないように、それを手に入れた者は破滅するという呪いをかけました。ロキはフレイズマルに黄金を引き渡したあとで指輪の呪いの事実を伝えたのです。

 ブリュンヒルドとシグルズの死後、グンナルは黄金を洞窟へ残しました。アンドヴァリは洞窟を発見し黄金を取り戻したが、指輪アンドヴァラナウトは永遠に失われたのです。



ファフニール

 ドワーフでワーム(日本では竜・ドラゴンもしくは蛇)に変身できます。

 フレイズマルの長男であり、オッテル(次男)とレギン(三男)という弟がいます。

 神であるロキ、オーディン、ヘーニルが旅をしているとき、河でカワウソに変身していたオッテルを仕留めたのです。神々はそれを知らずにフレイズマルにその日の宿を求めました。フレイズマルに指示されたファフニールとレギンは神々を捕らえ、賠償金を要求します。

 神々はオッテルの皮の内側と外側を埋め尽くす量の黄金(もしくは赤い黄金)を支払うことで合意します。オーディンとヘーニルが人質として残され、ロキがドワーフのアンドヴァリから黄金と黄金を生み出す指輪(もしくは腕輪)を奪います。その際にアンドヴァリは指輪の持ち主に永遠の不幸をもたらす呪いをかけます。(もしくは最初から指輪はそのような性質のものであった)。

 指輪は黄金とともに皮に入れられてフレイズマルに渡されました。そして黄金に欲を出したファフニールはフレイズマルを殺害したのです。弟と分け合うことを拒み、黄金とともにグニタヘイズへ逃亡、黄金を守るために毒を吐くワームに変身します。(もしくは指輪の呪いによってワームになってしまう)。

 シグルズは名剣グラムでファフニールを殺します。死に際にファフニールはシグルズの問いかけに答え、自身の持つ腕輪、黄金は死に至る呪いがかかっているため、持っていくなと忠告します。しかしシグルズはそれを聞き入れませんでした。その後レギンはファフニール殺害を指示した自身にも責任があるが、それでも兄を殺したとシグルズを非難します。そしてレギンはファフニールの心臓を炙って食べさせてくれと頼んだのです。

 シグルズがリジル(リジン)という剣でファフニールの心臓を切り出し、シグルズはレギンの指示に従って心臓を火で炙りました。その際、焼き具合を確かめるために親指を押しつけた際やけどしてしまい親指についたファフニールの心臓の血(脂)をなめます。ドラゴンの血の力によってシグルズはすべての言語を理解する力を得たのです。鳥の鳴き声からレギンに自分が殺されようとしていることを知ったシグルズは、眠っているレギンの首を刎ねて殺害し、黄金を手に入れます。またその心臓を口にしたシグルズとグズルーンは余人より遥かに賢くなったといいます。


レギン

 父はフレイズマル、兄はファフニールとオッテル。姉妹にリュングヘイズ、ロヴンヘイズ。

 父フレイズマルはロキが殺害したオッテルの賠償金として、オーディンたちから黄金を得ました。レギンは兄ファフニールとともに黄金の分配を求めたが断られたため、兄と共謀して父を殺害します。しかし黄金はファフニールに独り占めされてしまうのです。

 レギンはその後デンマーク王ヒャルプレクのもとで鍛冶屋として働き、ヒャルプレク王からフラグランドの王シグムントの養子シグルズの養育を任されます。

 彼にさまざまな知識を教える一方、勇士として育て上げファフニールを殺害させようと考えたのです。

 そしてシグルズに過去を話し、ファフニールを殺すように頼みます。

 ここで分岐が入るのです。鍛冶屋であったレギンは竜を倒すためといい名剣グラムをシグルズに渡したとする説。何度か剣を作ろうとするもののシグルズはその出来に満足せずシグルズは母からシグムントの遺産である折れた剣を受け取り、それをレギンが鍛え直して名剣グラムの名を冠して与えたとする説です。



アルヴィース

 トールの留守中、アルヴィースがトールの娘スルーズに結婚を申し込みました。すると他の家族が承知したものの帰ってきたトールが結婚に反対したのです。そこでトールはアルヴィースへ矢継ぎ早に質問をして答えさせます。アルヴィースはひじょうに賢かったので、なんでも答えたのです。

 しかしトールは朝まで問答を続けたため朝の光が差し込んできて、ドヴェルグのアルヴィースは日光を浴びて石と化しました。





最後に

 今回は「北欧神話:アルフとドヴェルグ」についてまとめてみました。

 同じ生まれなのに、片や光をまとうエルフに、片や光を嫌うドヴェルグ(ドワーフ、ダークエルフ)になったのです。

 彼らは両極端な存在であり、それが多くの作品で互いを嫌う要因ともなっています。



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