664.事典篇:北欧神話:ユングリング家

 ヴァン神族のフレイと女巨人ゲルズとの子孫を「ユングリング家」と呼びます。

 そこでゲルズを中心に「ユングリング家」についてまとめました。





事典【北欧神話:ユングリング家】


 ヴァン神族のフレイと女巨人ゲルズの子孫たち(ユングリング家)をまとめています。




フレイとゲルズの血族・ユングリング家

ギュミル

 妻は山の巨人のアウルボザ。豊穣の神フレイの妻となるゲルズの父。エーギルが「別名ギュミルとも呼ばれるエーギル」と呼ばれていることから同一視されることもあります。

 黄金を多量に持つ資産家であり、また相手とすぐ斬り合いを始める性格です。ゲルズの部屋の前に獰猛な番犬をつないていることから娘を溺愛していたのが伺えます。


アウルボザ

 山の巨人の出であり、霜の巨人ギュミルの妻。豊穣神フレイの妻ゲルズの母。


ゲルズ

 豊穣神フレイの妻となった巨人の女性。フレイが殺したとされる巨人ベリが兄。

 フレイとの間に息子フィヨルニルをもうけます。

 あらゆる女の中で最も美しいとされ、彼女の腕の輝きにより空と海が明るくなったとされているのです。

 フレイは高座フリズスキャールヴから戯れにヨトゥンヘイムを眺めてゲルズを見つけました。彼女の美しさに一目惚れし、召使いのスキールニルが求婚のために差し向けられます。

 彼女はスキールニルから十一個の黄金の林檎やドラウプニルを贈られてもフレイの愛を拒みました。最終的にスキールニルが呪いのルーン文字を刻むと脅したため、ようやく「バリの森」でフレイと会うことに同意します。


フィヨルニル

 フレイとゲルズの息子。ガムラ・ウプサラにいたとされるスウェーデン王。フレイの子孫は彼の別名ユングヴィに由来する「ユングリング家」(ユングリンガル)と呼ばれたと言います。

 素晴らしい王であり、その治世の収穫は豊作であり、平和が続いたのです。彼の治世に王フロージ(フリズレイヴの息子)はシェラン島のレイレを支配していました。

 のちにデンマークとなるシェラン島に、「平和」のフロージ王を訪ねた際、蜂蜜酒の樽の中に転落して溺死しました。

 フィヨルニルの後はその息子スヴェイグジルが継ぎました。


スヴェイグジル

 ユングリング家(フレイの子孫)の一族であるスウェーデン王。フィヨルニルの息子で、その後を次いで王となりました。ヴァン神族であるヴァナヘイムのヴァナと結婚しました。

 ドヴェルグ(ドワーフ)によって誘い込まれたスヴェイグジルは石の中に姿を消し、二度と戻ってきませんでした。彼の後はその息子ヴァンランディが継ぎました。


ヴァンランディ

 ユングリング家(フレイの子孫)の一族であるスウェーデン王。スヴェイグジルの息子で、後を継いで王となりました。

 フィンランド出身の女性と結婚したが彼女のことは忘れてしまったそうです。復讐のため女性はヴァンランディが死に至るまで夢魔に乗られるような手はずを整えます。彼の後はその息子ヴィースブルが継ぎました。


ヴィースブル

 ユングリング家(フレイの子孫)の一族であるスウェーデン王。ヴァンランディの息子で、後を継いで王となりました。

 ヴィースブルは妻を捨ててその息子たちに世襲財産を与えなかったことを恨まれて、自身の息子のうちの二人が仕掛けた放火によって邸内で焼死しました。彼の後はドーマルディが継ぎました。


ドーマルディ

 ユングリング家(フレイの子孫)の一族であるスウェーデン王。ヴィースブルの息子で、後を継いで王となりました。

 その治世は不作や飢饉によって特徴づけられています。

 最初の秋、スウェーデン人たちはウプサラの神殿で雄牛を生贄として捧げたが、次の年はさらに収穫が悪かったそうです。

 二度目の秋、彼らは人間を生贄として捧げたが、次の年はさらに悪くなりました。

 三年目に多くのスウェーデン人が神殿のあるガムラ・ウプサラで開かれた全スウェーデン集会に集まったのです。そして有力者たちは、豊作を招くためにドーマルディを血祭りにあげるべきだとしました。すなわち王を生贄として神に捧げたのです。そして神の像にドーマルディの血を振りかけると豊作が戻ってきました。

 ドーマルディの息子ドーマルが後継者となったが、その治世は裕福であったとされています。


ドーマル

 ユングリング家(フレイの子孫)の一族であるスウェーデン王。ドーマルディの息子で、後を継いで王となりました。

 高慢なダン王の妹ドロートと結婚したのです。

 ドーマルの支配は長く続き、彼の父ドーマルディが供犠にされた後、収穫は豊かであり平和が支配しました。それゆえ彼の治世ではあまり語るべきことはありません。彼の後は息子ディッグヴィが継ぎました。


リーグ

 神ヘイムダルが「リーグ」(アイルランド語の王の意)と名乗って人間の間を巡り、三つの階級(奴隷、農民、貴族)を作ったとされています。

 老夫アーイと老婦エッダの元で三晩宿泊し、彼らに多くの助言をしました。その後エッダが産んだ息子スレールは、女性スィールと結婚してたくさんの子どもを得たのです。これが奴隷の発祥でした。

 祖父アヴィと祖母アンマ夫婦の元でも三晩宿泊し、彼らに多くの助言をしました。その後アンマが産んだ息子カルルは、女性スネールと結婚してたくさんの子どもを得たのです。これが自由農民の発祥でした。

 父ファジルと母モージル夫婦の元でも三晩宿泊し、彼らに多くの助言をしました。その後モージルが息子ヤルルを産んだ。

 ヤルルの元にリーグが現れ、自分の名前「リーグ」を与えて後継者にしました。またルーン文字も教えたのです。ヤルルは周囲の国を攻めて支配下にし、多くの者に自分の財産を惜しみなく分け与えます。やがてエルナと結婚し、ブルを始めとする多くの子を得ました。彼らが貴族の発祥でした。

 末息子コンは多くのルーン文字を知っており、自身も「リーグ」と称したとされています。

「リーグ」の息子ダンプの子どもとして兄ダン王、妹ドロートが生まれ、ドロートはフレイの子孫ドーマルと結婚しました。





最後に

 今回は「ユングリング家」についてまとめてみました。

 ユングリング家は名門として長くミッドガルドを支配したのです。



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