663.事典篇:北欧神話:巨人族:その他
今回は「巨人族」の中でこれまで語られなかった者たちをまとめました。
とくにエーギルは、彼が開いた酒宴が発端となって「ラグナロク」につながったという意味で最重要の巨人です。
事典【北欧神話:巨人族:その他】
今回はこれまで取り上げてこなかった巨人族を取り上げます。
細切れになってしまいかねないので、長くなりますがすべて挙げました。
ムンディルファリの血族
ムンディルファリ
ヨトゥン巨人族のひとり。太陽の女神ソールと月の神マーニの父。
自身の二人の子どもがあまりに美しいことから、娘にソール(太陽)、息子にマーニ(月)という名を付けました。それが神々の怒りを買ったのです。
ソールとマーニ
太陽の女神と月の神。巨人族の男ムンディルファリの娘。太陽と月の名を冠されたことに神々は怒り、二人を捕らえて太陽を牽く馬車の馭者をさせました。ソールは太陽の運行を、マーニは月の運行と満ち欠けを司ります。
馬の名前はアールヴァクとアルスヴィズといい、体を冷やすためのふいごが取り付けられています。
太陽はスコールという狼に追いかけられているのです。
月はつねにハティという狼に追いかけられているため、急いで運行しなければなりません。
エーギルの血族・関係者
フォルニョート
霜の巨人。海の支配者エーギル、火の象徴ロギ、風の象徴カーリの父であり、フィンランドとクヴェンランドの王であったともされています。ミスコンブリンディは別名ではないかと考えられているのです。
外海の神エーギル
波しぶきを思わせる白髪・白髭の、人間に無慈悲な外海の神(巨人ですが)。妻はラーン。
エーギルはアース神族のために酒宴を催すなど神々に近い立場にありますが、所属は巨人族です。そのためか「ラグナロク」の際に神々と戦わなかったとされています。
戦いで死んだ者がオーディンの元へ連れて行かれるなら、海で溺れ死んだ者はエーギルの元へ連れて行かれるといいます。
ラーン
父はフォルニョート。エーギルの妻。夫妻の間に九人の娘がおり「波の乙女」と呼ばれています。
大きな網を使って船や人を難破させて海中に巻き込むとされています。
召使いにフィアフェングとエルディルがいる。
波の乙女
父エーギルと母ラーンの九人の娘。アース神族であるヘイムダルの九人の母となります。
天に輝く者ヒミングレーヴァ、沈める波ドゥーヴァ、血まみれの髪ブローズグハッダ、高くせり上がる波ヘヴリング、叩きつける波ウズ、重なる波フレン、取り囲む者ビュルギャ(ドゥロヴン、ドロヴンとも)、漂流者を弄ぶ大波バーラ、押し寄せる大波コールガ。
フィマフェング
エーギルの召使い。エーギルが酒宴を催したので神々と妖精が大勢出席しました。神々は召使いのフィマフェングやエルディンたちの素晴らしい働きぶりを褒めたのです。この様子が面白くなかったため、彼はロキに殺されてしまったのです。神々は怒ってロキを追い出してしまいました。
エルディル
エーギルの召使い。フィマフェングらとともに神々を招待した酒宴の準備をしています。
フィマフェングがロキに殺されたので、怒った神々がロキを追い出しました。しかしロキは酒宴をぶち壊そうと企み、会場に戻ってきたのです。エルディルはロキを見て「中にいる神々と妖精の誰も、お前のことを良く言っていない」とロキを中に入れまいとしました。しかしロキはエルディルを無視して会場に入っていって口論を始めました。
火を支配するロギ
父はフォルニョート。兄弟にカーリ、エーギル。
トールがロキたちを従えてウートガルザ・ロキの治める巨人の国ウートガルズに行った際、ウートガルザ・ロキの宮廷において、トールたちと巨人たちとで競争をすることになりました。
最初にロキとロギが骨付き肉の早食い競争を行ない、ロキは器用に骨や皮を除いて食べ無事完食したのです。しかしロギは肉はおろか骨や木皿さらには桶までも食べ尽くし、ロキの負けとなりました。
風を支配するカーリ
父はフォルニョート。兄弟にロギ、エーギル。フロスティまたはヨークッルと名付けられた息子の父。孫はスネー(スナー、スナィルとも)。
巨人のフォルニョートの王国の後継者。カーリの子孫はフィンランドとクヴェンランドの支配者となりました。
スットゥングの血族
ギリング
霜の巨人のひとり。スットゥングの父。彼と妻はドヴェルグのフィアラルとガラールによって殺害されます。三人で湖の真ん中まで行くべく船を漕ぐことをギリングに承知させ、三人が岸にたどり着く前にフィアラルとガラールは船を沈め、漂流する残骸につかまったのです。しかし泳げないギリングは溺死しました。二人のドヴェルグが今度はギリングの妻の家の屋根に乗ってギリングが死んだことを大声で嘆くと、動揺した妻が悲鳴を上げて外へ走り出たとき、ドヴェルグは彼女の頭に石臼を落として殺害したのです。息子のスットゥングは復讐を誓いました。
スットゥング
霜の巨人。ドヴェルグの兄弟フィアラルとガラールに両親であるギリング夫妻を殺されました。ギリングは二人に誘われて沖合へ漕ぎ出し、二人が船を沈めて泳げないギリングを殺害。ドヴェルグの兄弟は船を元通りに直して漕いで戻ってきたのです。夫の死を知ると妻が大声で泣いたため、彼が死んだ場所へ案内すると買って出て、戸口を通るところを彼女の頭へ石臼を落として殺害しました。
スットゥングは両親に起こった出来事を悟るとフィアラルとガラールを捕まえ、満潮時には海中に沈む岩に縛りつけました。二人は命乞いをして魔法の「詩の蜜酒」を彼に提供したのです。受け取ると自分の娘グンロズに見張りをさせて一緒に山の中に隠しました。
そんな中、オーディンは密かに「詩の蜜酒」を入手することに決めたのです。彼はスットゥングの弟バウギのために農民として夏の間中働き、それから「詩の蜜酒」の数口ぶんを要求しました。バウギが山に穴を開けるとオーディンは蛇に変身して内部に滑り込みます。内部ではグンロズが守っていたので彼女を口説いて三夜をともにし、自分に三口ぶんだけ譲ってくるように彼女を説得し、ついに彼女が応じたのです。オーディンはその「詩の蜜酒」をすべて飲み干し、鷲に変身して逃げ去りました。スットゥングは彼を追いかけましたが「詩の蜜酒」を取り戻すことはできなかったのです。
グンロズ
巨人スットゥングの娘。父が「詩の蜜酒」を保管した山フニットビョルグの中の穴に見張りとして居させられたのです。彼女の元へオーディンが来て彼女を口説き、三夜をともにしてすっかり魅惑させられたグンロズはとうとう「詩の蜜酒」の三口ぶんをオーディンが飲むことを許したのです。ところがオーディンは彼女を騙し、「詩の蜜酒」をすべて飲み込むとその場で鷲に変身して逃げ去りました。
バウギ
霜の巨人スットゥングの弟。スットゥングが父の仇ドヴェルグのフィアラルとガラールから「詩の蜜酒」を得たのち、オーディンはボルヴェルクと名乗ってはバウギのもとへ行き、彼の九人の奴隷を殺し合わせたのです。働き手をなくしたバウギのためにオーディンは農民として夏の間中働きました。秋になるとオーディンは報酬としてスットゥングの保管している「詩の蜜酒」の数口分を要求します。バウギとオーディンはスットゥングに頼みに行ったがすげなく断られます。そこでバウギは「詩の蜜酒」を隠している山にラチという錐で穴を開けたのです。するとオーディンは蛇に変身し、内部に滑り込んだ。内部ではスットゥングの娘グンロズが「詩の蜜酒」を守っています。オーディンは彼女を口説いて三夜をともにし自分に三口ぶんだけ譲ってくれるよう説得し、ついに彼女が応じたのです。オーディンはその「詩の蜜酒」をすべて飲み込み、鷲に変身して逃げました。
その他の巨人
ゲイルロズ
霜の巨人。娘のギャールプとグレイプの父。
ロキが鷹になって空を飛んでいると、ケイルロズはロキを捕らえ、トールに魔法の力帯と鎚を持たせず、自身の城に誘き寄せるように脅迫します。彼はトールのことを嫌っていたのです。ロキはその要求を飲みます。ゲイルロズの城へ向かう途中、ロキとトールは女巨人グリーズの家に立ち寄ったのです。彼女はロキが部屋を離れるのを待って、トールになにが起こっているかを話し、彼女が持っていた鉄の手袋、魔法の力帯とグリダヴォルという棍棒をトールに与えます。トールはゲイルロズを殺し、さらに見つけられただけの他の霜の巨人(ゲイルロズの娘であるギャールプとグレイプも含む)もすべて殺したのです。
フルングニル
自慢の駿馬グルファクシでオーディンの馬スレイプニルと競走するが、その勢いでヴァルハラ宮に入ってしまう。オーディンは彼を客人としてもてなすが、フレイヤの酌で大量の酒を飲み、酔って暴言を吐き始めたのです。トールが呼ばれ、この様子に激怒してすぐにでもフルングニルを打ち倒そうとします。
フルングニルは自分の槍と砥石を持ってこなかったため不利を悟り、トールに対して非武装の自分を殺すのは卑怯だと咎め、改めて後日の決闘を約することでその場をしのぎました。そこでアスガルドとヨトゥンヘイムの境のグリョートトゥーナガルザルで決闘をすることとなったのです。
ヨトゥンヘイムの巨人たちはフルングニルが倒されるのを心配し、グリョートトゥーナガルザルにおいて粘土で巨大な人間モックルカールヴィを作りました。この心臓に牝馬の心臓を使ったため、モックルカールヴィは現れたトールを恐れて震えてしまうのです。
頭は石、心臓は三角形の砥石で出来ているフルングニルは、担いだ砥石の他に楯を持っていました。そこでトールの召使いシャールヴィが言う「トールが地下に潜って下から攻撃しようとしている」という言葉を信じ、楯を大地に置いてその上に乗りました。トールがミョルニルを、フルングニルが砥石を互いに向かって投げ合うと、ミョルニルが砥石を破壊してそのままフルングニルの頭蓋骨を打ち砕いたのです。巨大なフルングニルの脚の下敷きになって動けなくなったトールに、生後三日目の息子マグニが駆け寄って脚をどかしたのです。これをトールは褒めてグルファクシを褒美に与えました。
このとき破壊された砥石の欠片がトールの頭に食い込み痛みを感じたため、巫女グローアに欠片を取り除いてもらおうとしたのです。
ヒュロッキン
女巨人。
ロキの企みによりバルドルが殺された後、神々はバルドルをフリングホルニで船葬しようとしたのですが、その重さゆえに誰も船を海へ流すことができなかったのです。そこで神々はヨトゥンヘイムに使者を送り、女巨人ヒュロッキンを呼び寄せました。ヨトゥンヘイムから狼に乗って駆けつけたが、その手綱は毒蛇であったとされます。
ヒュロッキンは船首へ回ると一突きで船を動かすことができましたが、あまりに乱暴だったため、それに怒ったトールがミョルニルを持ち出してヒュロッキンの頭を打ち砕こうとしたので、オーディンを始めとする神々はこれを鎮めなければなりませんでした。
ヒュミル
トールのミッドガルドの大蛇釣りに登場する海の巨人。神テュールの父とされる説も。
トールはテュールとともにエール酒を醸造するのに必要な大釜を手に入れるため、エーリヴァーガル川の東の天の縁にある巨人の館を訪問します。そこで彼らは夕食をとることになったのです。彼らは用意された三頭の牛のうち二頭を平らげてしまいます。ヒュミルが「家にもう食べ物が残っていない」と文句を言うと、トールはヒュミルを釣りに誘うのです。沖へ出るとヒュミルは鯨を釣り上げましたが、トールはヨルムンガンドを釣り上げこれをミョルニルで撃ちますが逃げられてしまいます。
館に帰るとヒュミルはトールに課題を出しました。内容は「絶対に割ることができない杯を割ってみろ」というもので、その杯は床に落としてもまた手の中に戻るという貴重なものでした。トールは巨人の妻を味方につけて弱点(ヒュミルの頭はどんな杯よりも硬いため彼の頭に叩きつけること)を聞き、見事割ることに成功します。
トールは当初の目的である大釜を持ち上げてそのまま館を出たのです。トールは大勢の巨人に追われますが、ミョルニルで巨人たちを殺害してしまいます。
最後に
今回は「北欧神話:巨人族:その他」についてまとめてみました。
物語に登場するけどそれほど重要ではない巨人たちです。
ですが、エーギルやヒュミルなど神々と関係の深い巨人たちもいます。
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