事典篇〜剣と魔法のファンタジーの決まりごと

650.事典篇:ギリシャ神話:創世伝

 今回から「剣と魔法のファンタジー」における基礎知識を「事典」としてまとめていきます。

「ギリシャ神話」は有名なのでさらっと流します。

 ミノタウロスやメデューサなどギリシャ神話由来のモンスターもいますが、それらは別に集めるつもりです。





事典【ギリシャ神話:創世伝】


 世界の神話を見ていると、天地を造った知的生命体「神」は「巨人」であることが多く見られます。

 そもそも宇宙は広大であり、地球も大きいのです。

 それを作り出した者も、それに見合った大きさを持っていたと考えたのでしょうか。

 また「神」は人間を生み出したので、人間が土偶を作るように、「巨人」が人間を作ったという流れかもしれません。

 ファンタジー事典の第一として創世神話における「神」についてお話致します。




ギリシャ神話の原初神

 原初神カオスは事物が存在を確保できる場所として存在し、そこからガイア、タルタロス、エロースが存在を現したとされています。


 地母神ガイアは大地の象徴ですが、天空神ウラノスをも内包した世界そのものとされています。宇宙がまだ混沌としていたところからガイアが生まれます。そこからガイアが自らの力だけで天空神ウラノス、海神ポントス、暗黒神(幽冥神)エレボス、恋愛神エロースを産み、母となります。


 奈落の神タルタロスはカオス、ガイア、エロースとともに生まれた原初の神々の一柱です。ガイアとの間に最大にして最強の怪物テュポーンという息子がいます。エキドナもタルタロスとガイアの娘とされることがあります。冥界ハーデスのさらに下方に存在し、天と地との距離と同じだけ、大地からさらに低いところにいると定義されているのです。


 恋愛と性愛の神エロースは女神ではなく男神です。世界の始まりから存在した原初神の一柱。世界の始まりから「恋愛」は存在していたというのはロマンチックな設定ではないでしょうか。




ギリシャ神話の土地神

 山神ウーレア(丘陵)は十人います。エトナ、アトス、ヘリコン、ニソス、オリュンポス、オレイオス、パルネス、トモーロスがその代表です。このうちトモーロスだけが「山」で、残りは「丘陵」となって神々が住まう土地となります。




カオス・ガイアの子

 地下の幽冥・暗黒神エレボスは、カオスとガイアの子です。地下世界の暗黒の神であることから、しばしばタルタロスと混同されます。ニュクスの兄にして夫で、間に昼の女神ヘーメラ、上天の清明な大気の神(ウラノス以前の天空神)アイテール、地獄の渡し守で神に準ずるカローンをもうけます。息子のアイテールは上天の光明であり、幽冥のエレボスと表裏一体です。


 夜の女神ニュクスは、カオスとガイアの娘でエレボスの妹とされています。娘ヘーメラは昼であり、夜のニュクスとは表裏一体です。ニュクスはさらに単独で不吉な神々を数多く生み出しています。

 運命の神モロス、死の女神ケール、死の神タナトス、眠りの神ヒュプノス、夢の神オネイロスの一族を生み出したのです。さらに非難の神モーモス、苦悩の神オイジュスを産んだとされています。

 運命の三女神モイライ三姉妹(長姉・運命を紡ぐ者クロートー、次姉・運命を割り当てる者ラケシス、末妹・運命の糸を切る者アトロポス)、義憤(による復讐)の女神ネメシス、欺瞞の女神アパテー、愛欲の女神ピロテース、老年の神ゲーラス、争いの女神エリスもニュクスの子です。


 天空神ウラノスは全宇宙を統べた原初の神々の王とされています。その大きさは宇宙そのものであり、「巨人」なんてミジンコよりも小さい存在です。カオスからガイアが現れると、必然的に宇宙空間が現れるのでそういう必然から生まれた存在でもあります。


 海神ポントスは原初の海神です。母ガイアとも親子婚をして数多の神々が生み出されています。子どもたちはあまりにも膨大なので詳しくは『Wikipedia』の「ポントス(ギリシア神話)」の項目をご覧ください。




ティターン神族

 ギリシャ神話・ローマ神話に登場する、天空神ウラノスと大地母神ガイアの間に生まれた十二柱の神々を総称して「ティターン」神族と呼ぶのです。ティーターン、ティタン、英語発音でタイタンとも呼ばれます。

 日本では富野由悠季氏『機動戦士Ζガンダム』に登場する軍隊「ティターンズ」が有名なので「ティターン」と読んだほうが馴染みがよいようです。本コラムでは「ティターン」と読んでご説明致します。


一.長兄・海神オケアノス。謀略を嫌う性格とされ、クロノスが父ウラノスから王位を奪った際、ティターン神族であっても謀議に加わりませんでした。また「ティタノマキア」の際にも娘ステュクスに逸早くゼウスへ降伏するよう勧めます。テテュスとの間に三千の娘をもうけたとされ、これをオケアニデス(大洋の娘)と呼びます。オケアニデスとして名が知れているのはアシア、ステュクス、エレクトラ、ドーリス、エウリュノメなどです。またテテュスの間には三千の河神の息子ももうけたとされます。


二.神コイオス。ポイベーを妻としレト、アステリア姉妹をもうけたとされ、つまりアポロン、アルテミス、ヘカテーの祖父にあたるのです。説話らしい説話は伝えられていません。


三.神クレイオス。ポントスとガイアの娘である(ポセイドン支配下の副次的な)海の女神エウリュビアとの間に、星空の神アストライオス、コイオスとポイベーの子アステリアを妻としたペルセス、パラスをもうけたとされています。こちらも説話らしい説話は伝えられていません。


四.太陽神・光明神ヒュペリオン。英語読みではハイペリオン。テイアの夫で太陽神ヘリオス、月の女神セレーネ、暁の女神エオスの父。天体の運行と季節の変化の関係を人々に教えたとされます。


五.神イーアペトス。オケアノスの娘クリュメネーとの間にアトラス、メノイティオス、プロメテウス、エピメテウスをもうけたとされます。「ティタノマキア」の際は他の兄弟たちとともにゼウス側と激戦するも敗れてタルタロスの領域に落とされたということです。また彼の息子たちも「ティタノマキア」後に皆ゼウスと敵対しています。


六.大地と農耕の神クロノス。ティターン神族の末弟。レアーの夫であり、ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハーデス、ポセイドン、ゼウスの父です。また愛人であるニュンペーのピリュラとの間に半人半馬の賢者ケイローンをもうけました。山よりも巨大なティターン神族の長であり、天空神ウラノスの次に全宇宙を統べた二番目の神々の王でもあります。

 父ウラノスの性器を魔法金属アダマスで出来た鎌で切り取って王座から追放。父同様、子に権力を奪われるという予言を受けたため、子どもが生まれるたび(ヘスティア、デメテル、ヘラ、ハーデス、ポセイドンの順)に飲み込んでしまいます。最後に産まれたゼウスは母レアーがクレタ島で産んで代わりに石を飲ませたために助かったのです。

 ゼウスが長じると神酒ネクタールを飲ませて兄弟を飲み込んだときとは逆の順に吐き出させ、このとき兄弟の序列が入れ替わり末子のゼウスが最高神となりました。

 クロノス自身も父ウラノス同様に巨人族ギガースをガイアの胎内に押し込めていたのです。そのためガイアの怒りを買って息子ゼウスを旗頭にしたオリュンポス神族との覇権争い「ティタノマキア」を引き起こしました。


七.女神テイア。ヒュペリオンの妻で太陽神ヘリオス、月の女神セレーネ、暁の女神エオスたち兄弟の母。


八.大地の女神レアー。クロノスとの間にヘスティア、デメテル、ヘラ、ハーデス、ポセイドン、ゼウスをもうけました。夫クロノスがレアーとの間の子どもたちを飲み込んだことを嘆いたレアーはクレタ島に行きゼウスを産んだのです。ゼウスの代わりに鹿着に包んだ石を飲ませます。ガイアにゼウスを託し、クレタ島のニュムペーたちとアマルティアとクーレスたちに預けて育てさせたのです。「ティタノマキア」の際はヘラを守るためにオケアノスとテテュス夫婦に預けます。夫クロノスがローマ神話のサトゥルヌスと同一視されたことから、のちにその妻オプスと同一視されたのです。


九.法と掟の女神テミス。ティターン神族とオリュンポス神族の戦い「ティタノマキア」ののち敗れたティターン神族は主要な神の地位を失いました。しかしオリュンポス時代になってもその地位と威勢を維持した神はテミスだけです。ゼウスの二番目の妻として間に秩序の女神エウノミア、正義の女神ディケー、平和の女神エイレーネの「ホーラの三女神」が産まれました。


一〇.記憶の女神ムネモシュネ。ゼウスのとの間に文芸の女神ムーサ(ミューズ)たち、長女・叙事詩の女神カリオペー、英雄詩・歴史の女神クレイオー、悲劇・挽歌の女神メルポメネ、抒情詩の女神エウテルペ、独唱歌(独吟叙事詩)の女神エラトー、合唱・舞踊の女神テルプシコラ、占星術・天文の女神ウラニア、喜劇の女神タレイア、讃歌と雄弁の女神ポリュムニアを産みました。


一一.女神ポイベー。コイオスの妻でレト、アステリア姉妹の母であり、アポロン、アルテミス、ヘカテーの祖母にあたります。


一二.女神テテュス。オケアノスの妻で三千の河神の息子とオケアニデスと総称される三千の海や泉や地下水の女神の母です。


 またヘリオスやセレーネ、プロメテウスなどとくにゼウスに与しない神々も「ティターン」と呼ばれることがあります。





最後に

 今回は「ギリシャ神話:創世伝」を述べてみました。

 世界がカオスだけで成り立っていた時期があり、そこにガイア、タルタロス、エロースが現れて世界を形作るようになります。

 そこで物質の生みの親であるガイアが、ティターン神族を産み出したのです。

 ティターン神族によって世界の形がほぼ固まっていきます。

 しかしティターン神族の治世は長く続きませんでした。

 それに関するお話は次回の「オリュンポス十二神」でお話し致します。



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