651.事典篇:ギリシャ神話:オリュンポス十二神

 今回は「オリュンポス十二神」についてです。

 ギリシャ神話の十二神なのですが、ローマ神話にも対応する神々がいます。

 この二つの神話は影響しあっているので、名前が異なるだけで同じ内容の説話であることが多いのです。

 今回はさらに「ティタノマキア」「ギガントマキア」「テュポーンの戦い」についても述べています。

 ギリシャ神話は前回と二回だけです。

 本格的にまとめると、膨大な時間がかかるのでご了承くださいませ。





事典【ギリシャ神話:オリュンポス十二神】


 前回はティターン神族を示して、ギリシャ神話における創世伝をお話し致しました。

 今回はオリュンポス十二神を中心としたオリュンポス神族の紹介と、ティターン神族とオリュンポス神族との覇権を賭けた大戦争「ティタノマキア」、オリュンポス神族と巨人族ギガースとの戦い「ギガントマキア」、そして最大最強の怪物テュポーンと神ゼウスとの戦いについて触れていきます。




オリュンポス十二神

一.ゼウス (クロノスとレアの息子)クロノスの末子。

 神々の王、オリュンポスの主神。雷神、天空神。多数の神・半神・英雄の父祖。

 ローマ神話の「ユピテル(ジュピター)」

二.ヘラ (クロノスとレアの娘)ゼウスの姉であり妻。神々の女王。

 婚姻の神で女性の守護神。嫉妬深い。

 ローマ神話の「ユノー(ジュノー)」

三.アテナ (ゼウスとメティス〈ティターン神族〉の娘)ゼウスの娘。母はオケアニデスの一柱。

 知恵・工芸・戦略の神。戦争の知略を司る。都市の守護神。

 ローマ神話の「ミネルヴァ」

四.アポロン (ゼウスとレト〈ティターン神族〉の息子)アルテミスの兄弟。母はコイオスの娘。

 予言・芸術・音楽・医療の神。光明神ともされる。ポイボス、ヘリオス(太陽)と混同された。

 ローマ神話の「アポロ」

五.アフロディーテ (ゼウスとディオーネ〈ティターン神族〉の娘)本来はオリエントの女神。エロースの母。

 愛と美の神。

 ローマ神話の「ウェヌス(ヴィーナス)」

六.アレス (ゼウスとヘラの息子)本来はトラキア地方の神。

 軍神。戦争の災厄を司る。ギリシャ神話では知に劣り、人間にも敗れる。マルスはユピテル並みに篤く信仰されている。

 ローマ神話の「マルス(マーズ)」

七.アルテミス (ゼウスとレト〈ティターン神族〉の娘)アポロンの姉妹。

 狩猟・森林・純潔の神。処女神だが豊穣の神。セレーネ(ルナ)と混同された。

 ローマ神話の「ディアナ(ダイアナ)」

八.デメテル (クロノスとレアの娘)ゼウスの姉。ペルセポネの母。二柱女神。

 農耕と大地の神。乙女座に関連。

 ローマ神話の「ケレス(セレス)」

九.ヘパイストス (ゼウスとヘラの息子)母が単独で産んだともされる。

 火山・炎・鍛冶の神。畸形。

 ローマ神話の「ウゥルカーヌス(バルカン)」

一〇.ヘルメス (ゼウスとマイア〈ティターン神族〉の息子)ゼウスの末子。

 伝令神。旅人たちの守護神。

 ローマ神話の「メルクリウス(マーキュリー)」

一一.ポセイドン (クロノスとレアの息子)ゼウスの兄。ハーデスの弟。

 海洋の王。海・泉・地震・馬・塩の神。

 ローマ神話の「ネプトゥーヌス(ネプチューン)」

一二.ヘスティア (クロノスとレアの息子)ゼウスの姉。クロノスの長女。

 かまどの神。家庭生活の守護神。名は「炉」の意。

 ローマ神話の「ウェスタ(ヴェスタ)」


 一二柱めにはディオニュソスを入れる場合がある。

  .ディオニュソス (ゼウスとセメレー〈人間〉の息子)本来はトラキアの神。母はカドモスの娘で人間。

 豊穣・葡萄酒・酩酊の神。

 ローマ神話の「バックス(バッカス)」


 他に十二神と同格の神としてハーデス(プルートー)とその妃ペルセポネ(コレー)がいます。ハーデスが含まれないのは他の神と異なり冥界の神であり、地下の存在と考えられていたためです。

  .ハーデス (クロノスとレアの息子)ゼウスとポセイドンの兄。ペルセポネの夫。

 冥界の王。地下(クトニオス)・農耕の神。

 ローマ神話の「プルートー(プルート)」

  .ペルセポネ (ゼウスとデメテルの娘)ハーデスの妻。母とともに秘教の二柱女神。「コレー」とも呼ばれる。

 冥界の王妃。春・芽吹き・乙女・季節の神。

 ローマ神話の「プロセルピナ」




ティタノマキア

 ギリシャ神話で語られる、クロノス率いる巨大な体格を誇るティターン神族と、ゼウス率いるオリュンポス神族との戦いを「ティタノマキア」と呼びます。

 クロノスから王権を奪い取ったゼウスは同族とオリュンポス山に布陣。ティターン神族はオトリュス山に布陣します。山々が根本から大きく揺らぎ、世界を崩壊させるほどの規模となったのです。当初はステュクス一党がティターン神族を裏切るなどの動きがあったものの、不死の神々同士の戦いは互いに決め手を欠き、全宇宙を崩壊させたこの大戦は終結するのに十年を要したとされています。

 ガイアはオリュンポス神族側に、ウラノスがタルタロスに幽閉した三人のヘカトンケイル(百手巨人)と、鍛冶に秀でた一つ目巨人である三人のキュクロプス、そして大勢のギガースたちを味方につければ勝てると助言したのです。ゼウスたちは彼らを解放し、神酒ネクタールと神の不死の食べ物アムプロシアを与えて味方に引き入れます。キュクロプスたちは助けてくれた礼に、ゼウスには万物を破壊し燃やし尽くす雷霆らいていを、ポセイドンには大海と大陸を支配する三叉の鉾を、ハーデスには姿が見えなくなる隠れ帽をそれぞれ与えたのです。

 これにより戦いの均衡が崩れ、ティターン神族は敗れました。しかしゼウスが雷霆らいていを容赦なく投げつけたため天界は崩れ落ち、見渡す限りの天地は逆転したのです。それだけでなく雷霆らいていからほとばしる聖なる炎は地球をことごとく破壊したのみならず、全宇宙とその根源を成すカオスすら焼き尽くしました。

 敗れたティターン神族は不死身であるため、タルタロスの深淵へと封印され、ゼウスを最高神とするオリュンポス神族による支配が始まったのです。




ギガース

 クロノスがウラノスの男性器を切り落とした際、そこから滴り落ちた血液が大地に染みてガイアが身籠り産んだのがギガースと呼ばれる巨人たちです。トラキアのパレネ半島で産まれたとされています。

 山々すら簡単に投げつけるほどの怪力を誇り、「神には殺されない」という特徴があるのです。光り輝く鎧を着込み、剣や槍を持って戦います。

 クロノスはギガースたち(複数形はギガンテス)をタルタロスに幽閉したのです。しかしゼウスがクロノスから王権を奪おうとした戦い「ティタノマキア」のとき、ガイアの進言によってヘカトンケイルやキュクロプスとともにタルタロスから解放されます。クロノスを始めとするティターン神族は巨人たちを従えたオリュンポス神族に敗れ去りました。

 しかしガイアの子たちであるティターン神族が敗戦後タルタロスに幽閉されているのを憂いたガイアがギガースたちに助けを求め、ギガースたちはオリュンポス神族に戦争を仕掛けたのです。これを「ギガントマキア」と呼びます。




ギガントマキア

 オリュンポス神族へ戦いを挑んだギガースたちは凄まじく巨大です。山脈や島々を引き裂きながら突き進み、燃え盛る樫の木や巨岩や山脈などを武器としました。

 予言によって「巨人たちには人間の力を借りなければ勝利できない」と告げられており、不死のオリュンポス神族であっても負けはしないものの勝ちもできなかったのです。

 そこでゼウスは人間アクメネセと交わりヘラクレスを授かり味方につけます。

 ガイアはギガースたちが人間に対しても不死身でいられる薬草を大地に生やしましたが、気づいたゼウスによってすべて刈り取られて企みは未遂に終わったのです。

 こうして「ティタノマキア」以来の全世界を賭けた戦いが始まります。

 ゼウスは雷霆らいていでギガースを次々と撃ち倒し、戦闘不能になったところを半分人間である英雄ヘラクレスの強弓で射殺したりしてギガースの数を減らします。

 他のオリュンポス神族も戦います。ディオニュソスは杖で戦い、ヘカテーは灼熱の炬火を投げつけ、アテナとポセイドンは島や火山を投げつけて押し潰して封印し、最後にヘラクレスが強大な毒矢と怪力で巨人にとどめを刺していったのです。そこへパレネ半島にいるかぎり無敵を誇る最強の巨人アルキュオネウスが現れます。ヘラクレスはその怪力で巨人をパレネ半島から引き剥がし、豪腕によって殺します。

 ギガースたちはオリュンポス神族とヘラクレスによって皆殺しにされ、この壮大な戦いはオリュンポス神族の勝利で決着します。

 のちにガイアは最大最強の怪物テュポーンを産み落とし、ゼウスに最後の戦いを挑んだのです。




テュポーン

 ティフォンとも呼ばれるギリシャ神話の最大にして最強の怪物で、その力はゼウスに匹敵します。

 テュポーンは不死の怪女エキドナを妻とし、数多くの怪物の父親となるのです。

 オルトロス、ケルベロス、ヒュドラ、キマイラの父とされていますが、後年ネメアの獅子、不死の百頭竜(ラドン)、プロメテウスの肝臓を食らう不死の鷲、スピンクス、パイア、さらにはゴルゴン三姉妹や金羊毛の守護竜、スキュラもテュポーンの子とされました。

 テュポーンがゼウスに戦いを挑み、ゼウスは雷霆らいていを投げつけて近接では金剛の鎌を切りつけます。これにテュポーンは火炎で対抗します。両者の発する熱により大地は炎上し、天と海は煮えたぎったのです。さらに両者の戦いは激しさを増し、大地は激しく震動して冥王ハーデスもタルタロスにいるティターン神族も恐怖したとされています。多くのオリュンポス神族は動物に変身してエジプトへと逃げていったのです。

 テュポーンはシリアのカシオス山に追いつめられますが、ここで反撃してゼウスを絞めつけて雷霆らいていと金剛の鎌を取り上げ、ゼウスの手足の腱を切り落としたうえでデルポイ近くのコーリュキオンと呼ばれる洞窟に閉じ込めてしまいます。ゼウスの腱を熊の皮に隠して番人として半獣の竜女デルピュネを置き、自身は傷を癒すためにガイアのもとへと向かうのです。

 ゼウスが囚われたことを知ったヘルメスとパーンはゼウスの救出に向かい、デルピュネを欺いてゼウスの腱を盗み出してゼウスを治療します。

 力を取り戻したゼウスは再びテュポーンと壮絶な戦いを繰り広げ、深手を負わせて追い詰めるのです。テュポーンはゼウスに勝つために運命の女神モイライたちを脅し、どんな願いも叶う「勝利の果実」を手に入れますが、その実を食べたテュポーンは力を失ってしまいます。その果実はけっして望みが叶うことのない「無常の果実」だったのです。

 テュポーンは敗走を続けてトラキアのハイモス山(バルカン山脈)を持ち上げてゼウスに投げつけようとしたところを雷霆らいていで砕かれて、逆にテュポーンが押し潰れされました。最後はシケリア島まで追い詰められ、百の頭を焼き尽くされてエトナ火山の下敷きとなったのです。以来テュポーンが重圧から逃れようともがくたびに噴火が起こるとされています。

 ゼウスはヘパイストスにテュポーンの監視を命じたのです。ヘパイストスはテュポーンの首に金床を置き、鍛冶の仕事をしています。

 こうしてテュポーンの企みは結末を迎えたのです。





最後に

 今回は「事典【オリュンポス十二神】」としてギリシャ神話における最初の覇権争いについて述べてみました。

「ティタノマキア」後、オリュンポス神族が世界を治めることとなります。

 ここから先がいわゆる「ギリシャ神話」となるのです。

 そして引き起こされる「ギガントマキア」「テュポーンの進撃」によって世界は大きな変化を目の当たりにします。

 ギリシャ神話には数多くの説話があります。そのすべてを紹介することはできませんので、皆様方が『Wikipedia』や「紙の書籍」などをお読みいただければと存じます。

 登場する神々が多いため、ファンタジー風の名前を数多く見つけられるでしょう。

 ですから「剣と魔法のファンタジー」を書くに当たって、ギリシャ神話は欠かせない存在です。

 ぜひご一読をオススメ致します。



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