631.活動篇:どれだけ書けばプロになれるのか

 今回は「どれだけ書けばプロになれるのか」についてです。

 一作・三百枚・十万字で「小説賞・新人賞」を獲得できる人もいます。

 一方で百作書いても獲得できない人もいるのです。

 この差はなんなのでしょうか。





どれだけ書けばプロになれるのか


 小説投稿サイトで「どれだけ書けばプロになれるのか」と考えながら書いている方が少なからずいます。

 それがわかれば努力目標になるから、ぜひ知りたい。そう思うのです。

 では「どれだけ書けばプロになれるのか」おわかりの方はいらっしゃいますか。




定量は決まっていない

 たとえば「一か月三百枚書けば、確実に一年でプロになれます」と言われたら。皆様は頑張るかもしれませんね。ですが「五年かけて書いた三百枚でプロになれました」というプロの書き手もいらっしゃるのです。

「一か月三百枚書いて、五年経ったけどいっこうにプロになれません」というのが実情ではないでしょうか。

 このように、プロになるには分量も時間も定まっていないのです。

 ちょっと考えればわかることなのに、多くの方は夢に対して思考よりもカンを優先してしまいます。

 「これだけ書いたらプロになれる」「これだけ書けるようになったからプロになれる」という淡い期待に胸を躍らせるのです。

 たしかに「五年で三百枚」書くよりも「一か月で三百枚」を書けたほうが、プロになってからは有利になります。しかしそれは「プロになってから」です。

 プロになる前は「小説賞・新人賞」に応募する原稿を何年かけて書いてもかまいません。

 しかし「小説賞・新人賞」を獲得して「プロの書き手」になったら、遅筆は致命傷になりかねません。やはり一か月で三百枚書けるほうが断然強い。

 とくに「プロの書き手」は担当編集さんと二人三脚で執筆しますから、執筆だけで三か月に一本のペースだと半年に一冊出せればよいほど遅くなってしまいます。


 今からプロになった先を考えても仕方ありません。

 少なくともプロの書き手になるためには、どれだけ書けばいいのかは人それぞれです。

 一か月で書いた一本の作品でプロになる方もいれば、十年書き続けてもプロになれない方もいます。

 好きだから小説を書く方、息抜きで小説を書く方、息をするように小説を書く方。

 そういう方は創作意欲に湧いていますから、よりよい小説を書こうとつねに情報を収集しています。

 だからこそ「どれだけ書けばプロになれるのか」なんて気にせず小説を書き、結果としてレベルの高い作品となるのです。

 プロの書き手になりたくて、それを夢見て小説を書くというのでは、いつになっても結果を出せず心が折れて断筆する方も多くなります。




書いた枚数がお金になるわけではない

 たとえプロになっても、小説は書いた枚数、書いた文字数がすべてお金に換わるわけではないのです。

 三百枚、十万字書ききっても、編集さんからリテイクを要求されれば、その三百枚は価格〇円になります。

 プロも無料で小説を書いているのです。

 驚きましたか?


 マンガの話になりますが、大場つぐみ氏&小畑健氏『バクマン。』には商業マンガの書き方が詳しく書かれています。

 まず「ネーム」という「今回はこんな話を描きます」というものを作者が担当編集さんに見せるのです。そして担当編集さんからリテイクを要求され、直しては見せるを繰り返します。担当編集さんから「GO」が出たらそこからラフ、下書き、ペン入れ、ベタ&トーン貼りへと進んで完成原稿が担当編集さんに渡るのです。

 小説の場合「企画書」を担当編集さんに読んでもらい「GO」が出るまで「企画書」を直し続けます。ここまではマンガと同じ。そして「GO」が出たら三百枚、十万字を書いて担当編集さんに渡すのです。しかしここからがマンガと異なります。

 小説は担当編集さんが読んで納得するまで直されまくるのです。

 マンガの場合は書き直している暇がないので「ネーム」が決まればそのまま完成原稿へ進めます。

 小説の場合は書き直しが比較的簡単なので、原稿を読んでダメなら書き換えさせるだけの時間があるのです。だからいつまでも原稿が完成しないなんてざらにあります。

 ここが小説とマンガの大きな違いであり、「書いた枚数がお金になるわけではない」大きな理由なのです。

 書き直しを含めて二十万字ほど書いてようやく完成原稿になることもあります。そうすれば文字単価は十万字の半額になってしまうのです。

 担当編集さんは文字単価を下げるために書き直しを命じてくるのではありません。「より売れる作品にするために」書き直させるのです。

 マンガは「ネーム」代が無料。小説は「原稿が出版に値するレベルになるまで」無料なのです。

 プロの書き手は、そのくらいの金銭感覚でいないとやっていられません。


 多くの職業は、数をこなすことで報酬が上がります。

 アルバイトやパートタイマーであれば勤務時間が増えればもらえる給与も高くなるのです。

 会社員であっても、基本的には出勤日を増やせば給与が上がります。

 ですが小説の書き手は、原稿が担当編集さんから「OK」が出るまで無給で働き続けなければなりません。しかもそれで得られる報酬は原稿料プラス歩合制の印税であり、印税も前述しましたが5,000部で17万5000円程度です。執筆にかける時間が長くなるほど、時間当たりの単価は下がっていきます。だから執筆に時間をかけていては、専業の書き手になることはできないのです。


 では「プロの書き手」はそれほど儲からない職業なのでしょうか。

 ライトノベルでは十巻で百万部売れればヒット作であり、一人前の「プロの書き手」として認められます。

 十巻連載を続けるには読み手から支持され続けなければなりません。

 そのためにはなによりも「読み手を飽きさせない質の高さ」が求められます。

 質が高ければ、担当編集さんからの直しの回数も減らせるので、文字単価がそれだけ上がるのです。

 よって「質」を追い求めることが「プロの書き手」の再優先事項になります。

 そのうえで、あなたが欲しい年収に見合うだけの本数を一年で書ければ、じゅうぶんな儲けは出せるはずです。





最後に

 今回は「どれだけ書けばプロになれるのか」について述べました。

 どれだけの量を書いたからプロになれる、という定量は存在しません。

 人によっては一作目で評価されて、あれよあれよと「小説賞・新人賞」に受かることもあります。

 五年も十年もアルバイトやパートタイマーなどを続けて執筆活動に専念したとしても「小説賞・新人賞」にかすりもしない人も多いのです。

「どれだけ書けば」は書き手のセンスによるところが大きい。

 センスはどれだけ機微に通じているかにもよります。

 些細なことからも大きな違いを見つけ出せるか。その違いがわかれば文章を書き分けることもできるのです。書き手が表現したかったことを過たず表現できるのは、まさに機微に通じているかにかかっています。

 書いた枚数・文字数がお金になるわけではありません。

 プロの書き手でさえ、幾度となく書き直しを命じられ、お金にならない文字を書き続けています。

 そして小説を一冊出してみて、どれだけの収入があったのかを確認するのです。

 そうすれば一年に何冊書けば目標とする年収が得られるのかがわかります。

 印税の細かな計算は後日に改めて書きますので、掲載されるまでお待ちくださいませ。



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