632.活動篇:プロは制約が多い
今回は「プロの制約」についてです。
プロになったら、あなたの好きなように小説は書けなくなります。
「企画書」の段階から担当編集さんと話し合い、妥協点から「企画書」がようやく決まるのです。
エピソードを付け加えて「あらすじ」にしたものを、また担当編集さんと話し合います。
つまり「書き手の自由には書けなくなる」のです。
そのほうがよい面もあります。
また「締め切り」は必ず守りましょう。
それがあなたのプロ生活を永らえさせるのです。
プロは制約が多い
小説の書き手としてプロになったら、あなたひとりの意志で小説を書けなくなります。
必ず出版社の担当編集さんが「企画書」段階から絡んでくるのです。
担当編集さんをうならせるような「企画書」を書ければそれに越したことはない。でもそう簡単に書けません。
編集さんのほうが視野が広い
「今こういった小説が流行っているからぜひ書いてほしい」「今そういうタイプのキャラは流行らないので別のタイプに差し替えてほしい」「うちは中高生が主要層のライトノベルを出版しているから、性的な描写はぼかすか省いてほしい」「未成年や十八歳で成人になった人物でも飲酒や喫煙をするのは法律違反だから書かないでください」など。
とにかく編集さんは「企画書」段階から積極的に口を出してきます。
それはなぜか。出版社の利益につながらないと自分たちの給与が入ってこないからです。
身もふたもないですね。
ですが出版社があるからあなたは「紙の書籍」を販売できますし、「紙の書籍」が売れたからあなたには「印税」が入ってきます。
通常、書き手よりも編集さんのほうが視野が広いのです。それはあなた以外の小説を読む時間が長く、本数も多いから、今のトレンドを把握していると想像できますよね。
ただし編集さんの言うとおりに小説を書いたのに、編集長からボツを食らうことも起こりうるのです。
またまったく同じ作品でも、担当する編集さんが異なったり時流が変わったりすると、それまでは「ウケない」と思われていた小説がトレンドに乗っていたということもありえます。逆にトレンドを逸して読み手が飽きている展開になってしまうこともあるのです。
編集長が「売れないだろう」「問題が起きて批判されたり回収騒ぎになるのはご免だ」と判断すれば、どんなに担当編集さんが書き手にいい作品を書かせようとも出版には漕ぎ着けません。
最近では新潮社の『新潮45』という雑誌が、問題のある寄稿文を掲載していたことが原因で休刊に追い込まれたばかりです。
(2019年9月に小学館の『週刊ポスト』が同じようなことをしましたが、現時点で対応は発表されていません)。
小説も同様。穏当でない作品を出版して赤字を出す可能性よりも、適当な作品を出版して小さくコツコツと稼いだほうが安泰だと思われているのです。
書き手の書きたいものと出版社が売りたくなるものとは必ずしも一致しません。その乖離をできるだけ小さくするのが担当編集さんの役割なのです。
名のある書き手なら、出版社に対して「俺の作品は売れるのだから、出版社は黙ってそのまま出版すればいい」と思っている方もいらっしゃるでしょう。
しかしこれからプロになろうという書き手がこのような態度をとると、なんの実績もありませんから呆れられて見捨てられるのがオチです。
担当編集さんの言い分を受け入れつつ、自分の書きたいことを書くにはどうすればよいのだろうか。
それを考えながら執筆するほうが、遥かによい小説が書けます。
締め切りは信頼のタイムリミット
担当編集さんと「企画書」を練って「この方向で行きましょう」となったとき、必ず交わされるのが「いつまでに原稿を書きあげてください」という契約。つまり「締め切り」の期限を決めます。
「締め切り」間際になるまでのんびり暮らし、「締め切り」が近づいてきたからようやく重い腰を上げて書き始めた。と思ったら「締め切り」がもう目の前までやってきていて徹夜続きの執筆になる方もいます。
「締め切りに間に合わない」とわかった時点で連絡を絶ってしまう「プロの書き手」も多いそうです。
「締め切りとは延ばせばいくらでも延びるものだ」「担当編集の言いっぷりだと、あと五日は待ってもらえるだろう」などという「武勇伝」を誇る第一線の「プロの書き手」もいます。
ですがこのような「武勇伝」は、たとえ書く小説が毎回ミリオンセラーになったとしても、出版社は契約に二の足を踏むものです。
そもそも「締め切り」はなんのために用意されているのか。
すでに出版日は決められています。そのうえで校正による手直しを行なわなければなりませんし、表紙や装丁の手配もあります。印刷所の輪転機で指定部数を刷る時間、流通過程に載せて店頭に届くまでの時間がどうしても必要だからです。
「締め切り」を延ばせば、こういった関係各所に多大な迷惑が生じます。
だからプロの書き手になったら「締め切り」は必ず守りましょう。
「締め切り」を守らないミリオン作家と、「締め切り」は必ず守る底辺作家の場合、出版社にとって戦力になるのは「締め切り」を必ず守る底辺作家のほうです。
「締め切り」を守らないミリオン作家は「臨時ボーナス」のような存在で、完成原稿を受け取ってから損益に算入されます。またあまりに「締め切り」を守らないと「出版計画が頓挫」するのです。最悪の場合は契約は打ち切られます。
出版社はそれくらい慎重なバクチ打ちなのです。
出版を心待ちにしていた小説が「発売延期」になった経験を持つ人もいるのではないでしょうか。そこで「自分も締め切りを破って発売延期にすればいいじゃん」なんて思わないでください。
会社の経理や経営について詳しい方には自明ですが、小説の出版スケジュールは前もって年単位で定められています。毎月の収入を平均化し、経営を安定させて従業員を養っているからです。
つまり「締め切り」とは「出版社との信頼のタイムリミット」になります。
守りきれれば定期的に出版スケジュールを確保してもらえますし、頼りにしてもらえるのです。
小説投稿サイトでは自律を
小説投稿サイトでは、完全にひとりで執筆することになります。
他人が「締め切り」を設定することはありません。
だからこそ自分ルールを作って「締め切り」を管理すべきです。
「明後日までに一章ぶん書きあげてしまおう」「今日中に原稿用紙何枚ぶん・何千文字ぶん書きあげよう」「三月までにこの作品を完成させよう」という自分ルールの「締め切り」を設定するのです。
もちろん必ず守れるかはあなたの意気込み次第ですが、極力守るようにすれば、プロの書き手を目指すときにきっと役立ちます。
小説投稿サイトであっても、読み手は連載の続きを待っているものです。その期待を裏切らないようにしましょう。投稿スケジュールをしっかりと立てて、「あらすじ」「キャプション」などで周知してください。投稿スケジュールがわかっていれば、読み手はきちんと連載を追ってくれるものなのです。
どうしても投稿スケジュールが守れそうになければ、判明したときすぐに「あらすじ」や前回の「キャプション」に「多忙につき、次回投稿は来週月曜日になります。」のように告知しておきましょう。
毎回必ず「次は何日に投稿する」ことがわかっていれば、読み手は離れていきません。離れていくのは、読み手へなにも伝えずに連載を落としたときです。
ですので、投稿スケジュールはわかり次第読み手に開示していきましょう。
まだ書いていない投稿ぶんをスケジュールに組み込むのは「落とす」リスクが高まるのです。あらかじめストックしておいて、確実に投稿できると判断できた段階が開示のタイミングになります。
最後に
今回は「プロは制約が多い」ことについて述べました。
プロになれば、担当編集さんと二人三脚で小説を作っていくことになります。
書き手であるあなた自身が書きたくもない物語を書かされることもあるのです。
それに腐らず、目の前の契約をしっかりこなしていくことで実績を積み、あなたが書きたい小説を書けるようになります。
プロは自分の儲けだけでなく、出版社の儲けにも配慮しなければなりません。その配慮ができなければプロとしては二流です。
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