626.活動篇:絵になる作品の書き方

 今回は「絵になる作品」についてです。

 恋愛小説や推理小説なら三次元を意識してもいい。

 ですがファンタジー小説やSF小説は三次元だと再現するのに相当なお金がかかります。

 穏当に二次元のマンガやアニメを意識しましょう。





絵になる作品の書き方


 小説とくにライトノベルでは表紙にイラストが必ず付きます。口絵も数枚から十枚程度付くものです。

 執筆段階から「イラスト」を意識していますか。

 あなたの書いた文章には「映像化」を意識した描写があるのでしょうか。

 意外と抜け落ちていることが多いのです。




三次元の映像化を意識する

 とくに純文学は「映像化」される際にドラマや映画になる可能性が高い。

 ライトノベルの三次元化(実写化)つまりドラマや映画になると、ファンの多くが打ちひしがれます。

 これはライトノベルには表紙・見返し・口絵に「イラスト」が描かれており、その印象が強いため三次元化(実写化)すると読み手の想像と異なってしまうからです。

 だから三次元化(実写化)するのは純文学・恋愛・推理・サスペンス・ホラーが多い。

 SFやファンタジーが三次元化(実写化)されると、ほとんどの読み手が反発を覚えます。自身の中にある世界観を実写で見せられるとしょぼく感じられるからです。




二次元の映像化を意識する

 ですが二次元の「イラスト」「マンガ」「アニメ」であれば許容してくれる方がぐんと増えます。

 それはライトノベルには「イラスト」が付きものだからです。

「イラスト」そしてその延長である「マンガ」さらにその先の「アニメ」は、すべて手書きの絵が元になっています。

 しかも三次元より抽象的です。どんな異世界も絵で描けるかぎり違和感なく表現できるため、魔法が飛び交ったりドラゴンが炎ブレスを吐いても皆が納得します。

 三次元でこれを再現するには、膨大な予算が必要になるのです。

 それは『ハリー・ポッター』シリーズや『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズの制作費がべらぼうに高いことで証明されています。

 いっそ『勇者ヨシヒコ』シリーズのような低予算ドラマくらい振り切ってしまえば、「ギャグ」として受け入れられる余地もあるのです。

 では「イラスト」「マンガ」「アニメ」を意識するには、どうすればよいでしょうか。

 容貌を余すところなく表現しておく必要があります。

 髪の色や髪型、顔立ちや肌の色、背丈や体格など見た目をきちんと表現してください。

 目つきや口の佇まい、眉や鼻や耳の形、ヒゲやホクロの有無など顔だけでも表現すべき事柄は多いのです。八重歯や虫歯があるというだけでも特徴になります。

 服装にも個性が反映されるのです。女性戦士がビキニアーマーを着ているのか、フルプレートアーマーを着ているのかで印象はがらりと変わりますよね。

 蝸牛くも氏『ゴブリンスレイヤー』の主人公もフルプレートアーマーを着ていますよね。あれも個性の表れです。

 映像化の際、人物は最低限明確に書き分けてください。


 ただし映像化を考えた際、最も気をつけるべきは人物描写ではありません。舞台描写です。

 人物たちが今どこにいるのでしょうか。どういう状況の只中にいるのでしょうか。それが表現されていなければ、あなたの小説は暗幕の前でピンスポットライトを浴びている前座の賑やかしに過ぎません。

 太陽や月の位置が高いのか低いのか、朝焼け・夕焼けどきならオレンジ色に包まれた世界なのか、ただ単に暗くなっていく「薄暮」なだけなのか。




絵になるシーンを書く

「絵を書く」条件は以上のようにキャラや舞台状況などを視覚に訴えるよう書くのがよしとされています。

 しかしそれだけでは今ひとつ押しが弱いのです。

 あなたの小説を読んで「マンガ化したい(コミカライズ)」「アニメ化したい(アニマライズ)」と思ってくれるような表現を書かなければなりません。

 それには「絵になるシーン」を書くことです。

 窮地に陥っている人の前にヒーローが颯爽と登場するシーンなんて「絵になる」と思いませんか。

 ドラゴンに立ち向かっている冒険者パーティーなんてきっと「絵になる」はずです。

 剣折れ力尽き、愛する女性に抱きかかえられる人物も「絵になる」気がします。

 こういった読み手の印象に残る場面シーンは「絵になる」のです。

 だから出版社の編集さんがその場面シーンを読んで「これを絵にしたら映えるのでは」と感じるのではないでしょうか。そこから「小説賞・新人賞」を駆け上がることだって、ない話ではない。

 逆に言えば、「絵になる」シーンがない作品では「小説賞・新人賞」を獲得できないのです。

 あなたも純粋に読み手として小説を読む際、印象に残るのは「絵になる」場面シーンではないでしょうか。

 単に「絵になる」と書いていますが、読み手の想像力を喚起する文章が書けるかどうかで、作品の評価には雲泥の差が生じます。

 小説投稿サイト『小説家になろう』の文章評価を左右するポイントでもありますので、「絵になる」場面(シーン)を意図的に作り出していきましょう。




絵が描ける書き手は有利

「絵になる」場面シーンを書くだけで、文章評価は高まります。

 ですが、その場面シーンを実際に絵で見せられたとしたらどうでしょう。

 その場面シーンに躍動感が生まれます。

 小説投稿サイトの中には指定した場所にイラストを表示できる機能を持つところもあるので、まさに「紙の書籍」としての「ライトノベル」に近い表現もできるのです。

 イラストを描くのであれば、「平均以上の画力」が欲しい。

 小説の書き手でイラストも得意という方はかなり少ないのです。

 逆で、イラストの描き手で小説を書くのも得意という方はかなりいます。

 これは頭の中に明確なビジョンを持って文章を書くことで、読み手の理解度も増すからです。

 小説だけを書くのもいいのですが、暇を見ての「イラスト」勉強をオススメします。

「イラスト」を描くことで脳内イメージがより強固なものになるのです。

 文字だけの場合は、小手先の技術に頼って書かなければなりません。

 しかし「イラスト」が描けるほどになれば、脳内イメージを見ながら拾い上げるように文章を紡いでいけます。

 どちらが読み手の想像力を喚起するかは言わずもがなでしょう。

 絵を書くのが難しければ、せめて「色合いカラーバランス」だけでも憶えておきましょう。小説を書くとき、人物の服装の色合いがけばけばしくなったり地味になりすぎたりしてしまわないよう調整できるようになります。

 たとえば「赤と緑」は「補色」でひじょうに目立つのです。もうけばけばしいくらいに。でも「赤と緑と白」の組み合わせになると一気に「クリスマス」をイメージするのではないでしょうか。「赤と白」でサンタクロースの衣装、「緑と白」でもみの木に積もる雪を表すことができます。

 そういう意味でも「色合いカラーバランス」を憶えておくと、小説を書くとき有利になるのです。





最後に

 今回は「絵になる作品の書き方」について述べました。

 人物の容貌、置かれている舞台や状況、という情報は基本です。

 そのうえで「絵になるシーン」を意図的に用意しましょう。

 そして、できるだけ絵の勉強もすべきです。

 あなたの頭の中にいる人物の容貌をイラストレーターさんに伝えるときに絵が描けると、あなたのイメージどおりのキャラデザに仕上がります。

 文章を書くだけで手いっぱいな方は、せめて「色合いカラーバランス」だけは憶えておきましょう。



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