625.活動篇:キャッチコピーと梗概とあらすじ

 今回は「キャッチコピーと梗概こうがいとあらすじ」についてです。

 すべて似ているようで異なります。

 違いを詳しく見ていきましょう。

 とくに「小説賞・新人賞」で求められる「梗概こうがい」は要チェックです。





キャッチコピーと梗概とあらすじ


 よいタイトルを作って、それで目立つだけでは本文は読んでもらえません。

 適切な「あらすじ」と「キャッチコピー」が必要です。

 ここでいう「あらすじ」は『小説家になろう』の「あらすじ」欄、『ピクシブ文芸』の「キャプション」であり、私が「企画書」と読んでいるものに近い。

 小説の大まかな流れを書き、物語の世界観や舞台、主人公の状況などに言及します。

 しかし「梗概こうがい」以外は流れのすべてを書かないでください。書いてしまうと、本文を読まなくても物語は丸わかりです。そんな小説は読むに値しません。

「キャッチコピー」はそれをさらに先鋭化させたものです。




キャッチコピーは一文に要約する

 あなたの小説は、一文で表せるものでしょうか。

 さまざまな展開を見せる作品が、たった一文で表せるものか。

 表せないと読み手はあなたの小説に魅力を感じず読んでくれません。


 最もインパクトが出せるのは「具体的な数字を明示する」ことです。

 たとえば「百人の荒くれ者を七人の浪人が追い払う」話と書いてあれば、「多勢に無勢だがどうやって追い払うのだろう」「どんな戦い方をするのだろう」「浪人側は何人生き残れるのだろう」という疑問が湧いてきます。読み手が「この作品は面白いかも」と思うのはこのためです。

 「100万のペルシャ軍を300人で迎撃するスパルタ軍の奮闘」というのはハリウッド映画『|300(スリー・ハンドレッド)』の「キャッチコピー」として成立します。


 次は「不安を煽る」ことです。

 これは先ほどの「百人の荒くれ者を七人の浪人が追い払う」話にも含まれています。七対百ですよ。勝てそうにないじゃないですか。なにか不安を感じさせますよね。

 水野良氏『魔法戦士リウイ ファーラムの剣』では「魔精霊アトンに世界が飲み込まれる前にファーラムの剣を見つけ出して倒さなければならない」という「キャッチコピー」が付けられるでしょう。


 他にもたとえば二段式の「キャッチコピー」というものがあります。

「美女だらけの村で大活躍。ただし全員未亡人」と書いてあったとしたら、「ハーレム」ものかと思わせてから「なぜ全員未亡人なんだろう」と疑問を持ちますよね。ひょっとして男性は死ぬまでこき使われるのでしょうか。それとも儀式の生贄が男性なのでしょうか。いずれにしても「美女だらけの村で大活躍」して「ハーレム」ものかと思わせてから肩透かしのオチをつけるのです。


 これらは「キャッチコピー」としましたが、小説投稿サイト『小説家になろう』では、これをそのまま「タイトル」にしている作品が多くあります。

 そう考えると『小説家になろう』に掲載されている作品の「タイトル」が長いのも理解できるのではないでしょうか。

 多くの書き手が「タイトル」ではなく「キャッチコピー」を書いているわけです。

「タイトル」は短かったり略称ができたりするものが好まれます。

 ですが『小説家になろう』では「どんな内容の作品なのかを読み手に提示する」ことが好まれるため、あえて「キャッチコピー」をタイトルに用いているのでしょう。




盛り下がり必至のキャッチコピー

「キャッチコピー」は内容の要約です。しかし以下のような「キャッチコピー」はいただけません。『小説家になろう』の「タイトル」にしても失敗する可能性がきわめて高い。まぁ「小説家になろう」のランク上位の「タイトル」にこれらはいっさい出てきませんので、読み手は理解しているということでしょう。


「抱腹絶倒のギャグファンタジー」は、書き手が自分で「抱腹絶倒」間違いなしと決めつけています。そんな作品を読みたいと思いますか。心が素直な方なら読んでみようかなと思うかもしれません。しかしおおかたは「それを自分で言うかな」という印象を持つはずです。他人が付けたキャッチコピーならいざしらず。書き手本人が「抱腹絶倒」と言い切るところに無理があります。


「涙なしでは読めない切ない恋の物語」は、読み手を泣かせる気満々なわけです。そのために泣けるようなエピソードを満載にして書くことになります。しかし書き手が自らキャッチコピーとして書いていると「上滑り」しているように感じませんか。「そこまで言うほどのものかいな」と思うはずです。読み手の感想を書き手が決めてはなりません。


「世紀の一大巨編」は、何百万字かかって終わるのでしょうか。先がまったく読めません。しかも「世紀の」ですよ。笑ってしまいますよね。あなたはまだアマチュアなのに、文壇に残るような作品を書いています、と宣言しているようなものです。つねに上を目指す心がけは立派ですが、それを読み手に宣言するのは失笑を買うだけでしょう。


 上記三例はいずれも『小説家になろう』なら読み手が「感想」「レビュー」で書いてくれる事柄です。書き手が自ら書くのは越権行為でしかありません。

 読んでくれた方が「これは抱腹絶倒もの」「これは涙なしでは読めない」「これは世紀の巨編」と書いてくれなければ意味がないのです。




梗概こうがい

「小説賞・新人賞」に応募するときは、必ず「梗概こうがい」の添付が求められます。

梗概こうがい」とは「あらすじ」のことです。

 しかし私が創作で使っている「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の「あらすじ」とは異なります。『小説家になろう』の「あらすじ」欄のことでもありません。

 創作の「あらすじ」はこれから起こる出来事エピソードを書き出して、前後の展開をスムーズに流すために作成するのです。

 しかし「梗概こうがい」は違います。

 まず「この作品がどんな小説なのか」を端的に書きましょう。

「剣と魔法のファンタジー」で「勇者が魔王を倒す話」なら「勇者が魔王を倒す『剣と魔法のファンタジー』」と書きます。

 本文を読めばわかることをなぜ「梗概」で書かなければならないのか。それは選考を担当している編集さんや新人の「プロの書き手」さんが、前もって「これから始まるのはどんな作品なのかな」と考えながら本文を読もうとするからです。

 だから前もって「この作品がどんな小説なのか」を端的に書きましょう。

 次にどんな世界観・舞台でどんな主人公が活躍する物語なのかを書くのです。

 これも選考を担当する方への配慮になります。

 物語の流れつまり出来事エピソードはこの後に書くのです。

 そして梗概こうがいでは最後の出来事エピソードである「結末エンディング」までを淡々と書き記してください。「梗概こうがい」で選考さんを煽る必要なんてありません。

 正しく選考できるよう、書いた出来事エピソードを感情の起伏もなく淡々と書くのが「梗概こうがい」なのです。




あらすじ

 ここでいう「あらすじ」も私が創作で使っている「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の「あらすじ」ではありません。

『小説家になろう』の「あらすじ」欄、『ピクシブ文芸』の「キャプション」欄に当たります。

梗概こうがい」と似ていますが、違う点があるのです。

梗概こうがい」は「小説賞・新人賞」の選考さんが判断しやすいように書いたもの。

「あらすじ」は小説投稿サイトで読み手に「この作品はこんな物語ですよ」と客引きをしているようなものです。


 まず「梗概こうがい」と違って物語が盛り上がる「佳境クライマックス」「結末エンディング」を書かない。これから読む人のために書くのが「あらすじ」なので、ネタバレを可能なかぎり避けるべきです。

 そこで真っ先に書きたいのが「物語開始当初の主人公の状況」になります。

 たとえば「追放もの」の作品の場合「勇者パーティーのために魔術を酷使してきたのにいきなり追放されてしまった」あたりが鉄板の書き方でしょう。

「スローライフもの」の場合「勇者パーティーを引退して辺境でスローライフを満喫することにした」というのも多いですよね。

「主人公がどういう状況に置かれた」のかを端的に書きます。すると読み手は「この作品は追放ものか」「スローライフものか」と瞬時に理解するのです。

「よいあらすじ」は読み手から余計な時間を奪いません。だから読みたい展開かどうかを冒頭に持ってくるのが王道です。

 そのため「主人公の状況」の次に「主人公に訪れる出来事イベント」を書きます。

「追放もの」なら「俺を捨てた勇者を見返すため、魔術をとことん極めることにした。修業の末、気づいたらレベル999になった」、「スローライフもの」なら「穏やかな日々も長くは続かなかった。海の向こうから巨人族を乗せた巨大船が次々と現れたのだ」のようなものです。

 ここで「おっ、面白い話になりそう」と読み手に思わせられたら及第点が出せます。

 そして最後に必ず「煽り」を入れるのです。

「追放もの」なら「復讐のため、勇者より先に魔王を倒して無双する旅に出る」、「スローライフもの」なら「巨大船が次々と岸に上陸し、猛り狂う巨人たちが解き放たれる」といった感じでしょうか。

「この後どうなるんだろう」と読み手に思わせて、閲覧数(PV)を上げられれば、あなたの書いた「あらすじ」は満点です。

『小説家になろう』に特化した内容ですが、以上の三点「物語開始当初の主人公の状況」「主人公に訪れる出来事」「煽り」を意識してランク上位の「あらすじ」をじっくりと分析してみてください。ほとんどの作品がこの三要素を入れてあります。





最後に

 今回は「キャッチコピーと梗概こうがいとあらすじ」について述べてみました。

 絶妙な「キャッチコピー」を考えられれば、それだけであなたの小説の閲覧数(PV)は増えます。『小説家になろう』ではキャッチコピーをそのまま「タイトル」にしていることが多いので、よく工夫してください。

『カクヨム』ではタイトルとは別に「キャッチコピー」を付けられますので、ぜひ活用して閲覧数(PV)を稼ぎましょう。

 他の小説投稿サイトでは「あらすじ」「キャプション」で書ける文字数が少ないため、「キャッチコピー」をそのまま「あらすじ」「キャプション」として書くことになります。

「小説賞・新人賞」に応募する際に必要となる「梗概こうがい」は、要素を正しく並べて出来事エピソードを淡々と並べてください。

「あらすじ」で500字ほど表示できる『小説家になろう』では、「あらすじ」でいかに読み手に読んでもらえるかが決まります。

 この三点をきちんと理解していれば、あなたの小説はより読まれる作品になるのです。

 すでに投稿してしまった作品であっても、断りを入れて改題したり「あらすじ」の内容を変えたりするだけで生き返ることもあります。



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