624.活動篇:面白そうな作品のタイトル(毎日連載600日達成)

 今回は「タイトル」についてです。

 読み手の興味を惹くようなタイトルが付けられればいいのですが、それがなかなか難しいのです。

 とりあえず小説投稿サイトで人気のある「転生」「チート」などの「キーワード」を含めておけば、読み手が検索したときに引っかかりやすくなります。





面白そうな作品のタイトル


 出版社と契約している「プロの書き手」なら、ほとんどの場合「正式タイトル」は出版社の編集部で付けます。ただし書き下ろし作品や出版社との企画で書いた連載小説の場合だけです。

 小説投稿サイトで人気を博して「紙の書籍」化する場合は、小説投稿サイトであなたが付けた「タイトル」がそのまま用いられることが多いと思います。

 より多くの人に読んでもらいたいのなら、「面白そうだと思わせるタイトル」を付けることです。

「タイトル」で満足にアピールできない作品は、読み手にクリックされることもありません。書くだけ無駄な小説を書き続けることになります。




読み手の興味を惹く

 読み手が「異世界転生ものが読みたいな」と思ったら、検索ワードに「異世界転生」「転生」と入力してクリックします。であれば「異世界転生」「転生」という単語をタイトルに含めるべきでしょう。

『小説家になろう』の場合、必須キーワードに指定されていますので、こういうときはタイトルに「異世界転生」「転生」を入れなくてもよい、というものでもないのです。

 たとえば「紙の書籍」化をした場合。書店であなたの小説が陳列された際、小説を読みたい人は「著者名」と「タイトル」を見て「これは面白そうかも」と感じて一冊手にとり、裏表紙の「あらすじ」を読みます。

 つまり「タイトル」で「これは異世界転生ものですよ」とアピールできなければ、「異世界転生もの」を読みたい方が手にとることはないのです。

「タイトル」に「異世界」や「転生」を含めることで、「これは異世界転生ものかもしれない」と思わせます。そう思わせなければ、そもそも書籍を手にとってもらえないからです。

 読み手が「剣と魔法のファンタジー」を読みたいと思ったら、「剣士」「戦士」「騎士」「盗賊」「魔法使い」「魔術師」「魔導師」「神官」「僧侶」「賢者」といった「剣と魔法のファンタジー」によく出てくる職業を含める手があります。

 ジャンル名を付けるという意味で「剣」「魔法」「魔術」「ファンタジー」といったあたりの単語を用いるのもよく使われる手です。

「スカッとしたいからチートな作品が読みたいな」と思ったら、「チート」「俺TUEEE」「最強」「無敵」「無双」あたりの単語が入っている「タイトル」を選びます。

「いろんな女の子と楽しい時間を過ごしたい」とお思いなら「ハーレム」、逆に「さまざまなイケメンと楽しい時間を過ごしたい」のなら「逆ハーレム」、「イケメン同士の関係を楽しんで読みたい」のなら「ボーイズラブ(BL)」なんていうのもよく検索ワードになります。

『ピクシブ文芸』のランク上位は「BL」「百合」もので占められていますので、女性の読み手が多いんだなということがわかるはずです。それなら「タイトル」に「BL」「百合」という単語をダイレクトに付けてもかまいません。


 このように「読み手の興味を惹くタイトル」は、読み手が読みたいものを端的に提示しているものなのです。

 読み手は時に『Google検索』などのWeb検索でも探しています。『小説家になろう』に掲載されている作品の「タイトル」も検索可能です。

「戦記もの」が読みたいのなら「戦記」と入れて検索し、「伝説もの」が読みたいなら「伝説」と入れて検索します。

 こういった「読み手の思考」を先読みするのです。そのうえで「タイトル」を付ければ、今までよりも確実に閲覧数(PV)を増やせます。




略称が作れる

 読まれる小説は「略称」も広まっています。

 平坂読氏『僕は友達が少ない』なら『はがない』、渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』なら『俺ガイル』、川原礫氏『ソードアート・オンライン』なら『SAO』といった具合です。

 現在アニメが放送されている蝸牛くも氏『ゴブリンスレイヤー』なら『ゴブスレ』、伏瀬氏『転生したらスライムだった件』なら『転スラ』、鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』なら『とある』『インデックス』なども有名ですね。

 読みやすくて人気が出たから「略称」が付いたのか、「略称」が付いたから人気が出たのか。「卵が先か、鶏が先か」論争ですが、少なくとも親しみがこもってきたら「略称」で呼びたくなりますよね。

 それなのに「略称」しようとしても略せなければ、読み手が困ることになるのです。

 人名や地名がそのまま「略称」になることもあります。

 水野良氏『ロードス島戦記』なら『ロードス島』、同氏『魔法戦士リウイ』なら『リウイ』といった具合です。

 『ゴブスレ』『転スラ』のように強引に「略称」を付けた類いは結構多く、田中芳樹氏『銀河英雄伝説』の『銀英伝』、マンガの荒川弘氏『鋼の錬金術師』の『ハガレン』が好例でしょうか。

「略称」が作れる「タイトル」には親しみが湧きます。「略称」が作れないと親しみも湧かないのです。


 たとえば芥川龍之介氏『羅生門』、梶井基次郎氏『檸檬』、夏目漱石『坊っちゃん』はいずれも略しようがありません。いわゆる「文豪」の小説はキーアイテムやキーパーソンなどを「タイトル」に付ける傾向がありました。だから略しようがないのです。

 無理に略そうとするなら、太宰治氏『走れメロス』を「走メロ」とでもしましょうか。しかしなにか落ち着きませんよね。これは『走れメロス』の内容と「略称」に親和性がないからです。『走れメロス』には略すような親しみを覚えません。ひたすら文学の王道を突き進んでいます。だから略すことが「作品への冒涜」のように感じられるのです。


 ですが、あなたが書こうとしている小説は純文学ですか。おそらく違う方が多いはず。エンターテインメント小説であれば「略称」が作れる「タイトル」のほうが好まれるのです。




一般的でない言葉は用いない

「タイトル」はカッコいいほうがいいよなぁ、と考えてしまう人が多いと思います。

 カッコいい「タイトル」は「面白そうな小説だな」と読み手に感じさせる点でも有利です。

 ですが「カッコいい」を勘違いしないでください。

「タイトル」に用いる言葉・単語は、中学生レベルのものでじゅうぶんです。


 たとえば『蟷螂の斧』なんて「タイトル」は幾分中二病をくすぐるかもしれません。

 でも意味はわかりますか。

 読みは「とうろうのおの」であり、「とうろう」とは「カマキリ」のことです。

 そこから「蟷螂の斧」は「カマキリのオノ」であることがわかります。

 慣用句としての意味は「自分の弱さを顧みず強敵に挑むこと。はかない抵抗のたとえ」です。中国古典『荘子』が出典元とされています。

 でもこれを「タイトル」につけたら、なにか浮いているような気がしませんか。純文学っぽさが強くて、ライトノベルには合わないはずです。


 また神話から名前を借りてきても、どこか浮いたものになります。

「プロメテウスの火」という言葉をご存知でしょうか。

 ギリシャ神話で神プロメテウスは人類に天界の火を与えたとされています。しかしこれはオーバーテクノロジーであり、人類には制御できないものの象徴とされています。今ならさしずめ原子力発電所が「プロメテウスの火」に当たるのです。




ネーミング・センスを高める

「タイトル」の案を出すためには、とにかく数を稼ぐことです。

 あまり考えすぎず、思いついたことをなんでもいいので書き出してみてください。

 とりあえず集中力の続く一時間くらいを目安にしましょう。それ以上ひねり出そうとしても惰性で思いつくだけで、ろくな「タイトル」にはなりません。

 ですが一時間で良い「タイトル」候補を出そうと思ったら、センスを磨く必要があります。

 日々さまざまな「タイトル」や「キャッチコピー」に触れて、「ネーミング・センスのある人はどう付けたのか」を知るように心がけましょう。

 売れている書籍の「タイトル」だけを確認して、その共通点はなにかを判断してみるのも一手です。そのためには書籍『このライトノベルがすごい!』を必ず購入しましょう。その年で多くの読み手の心をつかんだ「タイトル」とはどのようなものだったのかが見えてきます。

 そして「アイデア」の回でも申しましたが、ひとつの案と触媒を使って「化学反応」を起こしてみましょう。ときに意外な方向で突飛な「タイトル」が生まれてくるものです。

 一時間で思いついた「タイトル」案をすべて「化学反応」させてみれば、きっと読み手が気になる「タイトル」が思い浮かぶようになります。




王道のタイトル案

 作品の「テーマ」を直接「タイトル」にするのは、「文豪」が活躍した時代から続く王道でしょう。フョードル・ミハイロビッチ・ドストエフスキー氏の『罪と罰』や、アーネスト・ヘミングウェイ氏『老人と海』などがこれに当たります。


 作中のキーアイテムの名前を「タイトル」にするパターンも多い。田山花袋氏『蒲団』、芥川龍之介『蜘蛛の糸』、梶井基次郎氏『檸檬』、J.R.R.トールキン氏『指輪物語』など、ちょっと古い名づけ方ではあります。


 また主人公や「対になる存在」、キーパーソンなどの名前をつけるパターンも多い。ウィリアム・シェイクスピア氏『ロミオとジュリエット』『マクベス』『リア王』、藤川桂介氏『宇宙皇子』、田中芳樹氏『アルスラーン戦記』、水野良氏『魔法戦士リウイ』と少し前に流行った「タイトル」です。今では『このライトノベルがすごい!2019』で文庫一位を獲得した瘤久保慎司氏『錆食いビスコ』、三位に屋久ユウキ氏『弱キャラ友崎くん』がランクインしています。


 同じ時期に物語の世界観・舞台の名前を「タイトル」にするのも流行りました。ジュール・ヴェルヌ氏『海底二万マイル』『八十日間世界一周』、芥川龍之介氏『羅生門』、川端康成氏『雪国』、田中芳樹氏『銀河英雄伝説』、水野良氏『ロードス島戦記』、川原礫氏『ソードアート・オンライン』、賀東招二氏『甘城ブリリアントパーク』などですね。


 今ライトノベルでは「文章になっているタイトル」が流行っています。振り返れば夏目漱石氏『吾輩は猫である』、太宰治氏『走れメロス』あたりが嚆矢こうしだと思います。筒井康隆氏『時をかける少女』で見直され、ライトノベルには伏見つかさ氏『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』、鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』、渡航氏『やはり俺の恋愛ラブコメはまちがっている。』、伏瀬氏『転生したらスライムだった件』、衣笠彰梧氏『ようこそ実力至上主義の教室へ』、岬鷺宮氏『三角の距離は限りないゼロ』、香月美夜氏『本好きの下克上〜司書になるためには手段を選んでいられません〜』、石川博品氏『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』など枚挙にいとまがありません。


  パロディー路線なら、有名な作品の「タイトル」をもじることもあります。最も知られているのがハリウッド映画『フルメタル・ジャケット』をもじった賀東招二氏『フルメタル・パニック!』です。伏瀬氏『転生したらスライムだった件』をもじって棚架ユウ氏『転生したら剣でした』もありますね。


 これらが現在の「タイトル」の王道になっています。

「タイトル」の「化学反応」を起こすにはじゅうぶんな「触媒」の数です。

 これらを「触媒」にして、あなたの小説にふさわしい「タイトル」をつけてみましょう。





最後に

 今回は「面白そうな作品のタイトル」について述べました。

 小説投稿サイトではいかに「タイトル」で読み手が引っかかってくれるかが勝負です。良い餌が目の前にあるのに素通りする魚はまずいません。

 最も読まれるために、「面白そうな作品」に見える「タイトル」をつけましょう。



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