623.活動篇:自らをプロデュースする

 今回は「編集さんがいないから、自分でなにをしなければならないのか」についてです。

 小説にもマンガのように「原作」がいてもいいと思いませんか。

 世界観と舞台と人物とお話を用意してくれる人と、それを元に文章で表現していく人の分業です。

 マンガがよくて小説がダメな理由はあるのでしょうか。

 またイラストの手配や原稿のチェックもしてもらえません。





自らをプロデュースする


「紙の書籍」と異なり、小説投稿サイトに掲載する作品は編集者を通していません。

 だから編集さんが請け負うはずのことを、書き手自ら行なわなければならないのです。

 とくに意識したい点を挙げていきます。

「担当編集さんが付いている」といかに「執筆に専念できるか」がわかるはずです。




物語の内容やタイトルなどへの助言

 担当編集さんがいていちばんラクになるのが、物語の内容に対する助言です。

 担当編集さんはつねに市場つまり読み手の需要を見据えています。

 だからあなたが「こんな物語にしたい」と提案したら、「それは飽和状態だから、こんな感じに変えてみては」と対案が出てくるだけでもありがたいですよね。

 しかし小説投稿サイトには担当編集さんはいません。

 だから書き手であるあなたが、市場つまり読み手の需要をつねに見据えながら小説を書く必要があります。

 ただ小説を書くだけでもたいへんなのに、さらに市場を見据えなければなりません。

 書き手が負うべき責務は過重を極めます。


 そこで小説投稿サイトへ掲載する作品の執筆に欠かせない「市場予測」を、第三者に任せるという手もあります。

 マンガで「原作:○○、作画:△△」というように「物語を考える人」と「絵を描く人」が分かれているのを見たことはありませんか。たとえば武論尊氏&原哲夫氏『北斗の拳』や、大場つぐみ氏&小畑健氏『DEATH NOTE』などです。

 小説を書くとき「物語を考える人」と「物語を表現する人」で分業するのも一手だと思います。

「物語を考える人」はつねに市場を把握して、今読み手が欲している物語展開を考えるのです。今ウケる主人公像やヒロイン像、ライバル像や「対になる存在」像だけでなく、彼らがどのように絡むと読み手が喜ぶか、どんな展開をすると読み手に興味を持ってもらえるか。つねに読み手が欲しているものを物語に取り込む役割です。

「物語を表現する人」はそれを受けて、どのように文章を表現していけば読み手に楽しんで読んでもらえるかを考えます。どのような構文で、どのような順序で、どのような比喩で表現するのかを考えることに集中できたほうがひとりで市場予測までするのに比べて有利です。

 マンガにおける原作と作画の役割分担に関しては、大場つぐみ氏&小畑健氏『バクマン。』で詳しく書かれています。気になる方はお読みください。

 そういうわけで、マンガでは今や市民権を得ている「原作者」を小説に持ち込んでもよいのではないでしょうか。

 今私がかなり突飛な提案をしていることは認めます。

 しかし「面白い小説が読みたい」ことを第一に考えるのであれば、小説にも「原作者」がいてよいはずなのです。

「原作者」なんて要らないという書き手の方は、小説を新規で書こうと「企画書」「あらすじ」を編成している段階から、積極的に市場予測つまり読み手の需要を念頭に入れなければなりません。

 市場予測は慣れれば誰でもできるようになります。ただ余計な時間がかかるだけです。「原作者」がいれば連載終了した翌日から新連載を始めることもできます。ひとりですべてやろうとすれば、どうしても現在連載中の原稿と、新連載の「企画書」「あらすじ」「箱書き」を同時並行で構築する必要があるのです。それはどだい無理な話なので、一度連載を終了させて、一から「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」を仕立てる時間が欲しい。するとどうしても次回作が一カ月後、三か月後、半年後のように伸び伸びになってしまいます。

 連載小説で「世界観」と「キャラクター」と「初めの展開」だけを用意して後は行き当たりばったりの連載を行なうこともできるのです。でも相当の荒業なので、腕がなければ物語は破綻しやすい。やはり新連載は万全の態勢が整ってから始めるべきです。




イラストの発注や表紙とレイアウトの選定

 編集さんがいて助かるのは、イラストレーターさんつまり絵師さんにイラストを描いてもらえるよう取り計らってくれることです。

 小説の書き手とイラストレーターとの接点はまずありません。

 とくにアマチュア同士の場合、マッチングするようなサービスはないのが実情です。

 小説投稿サイト『小説家になろう』は表紙絵が表示されませんので、表紙絵を確保しなくてもなんとかなります。

 しかし『ピクシブ文芸』や『エブリスタ』などでは、検索結果やランキングに扉絵が表示されるので、目を惹く表紙絵は不可欠だと言ってよいでしょう。

 今はまだテンプレートの表紙絵を用いているランク上位も多いのですが、人より目立つためにはやはり表紙絵から差別化を図るべきです。

 自分で表紙絵を描ければいちばんよいのですが、文才と画才を両立している人は限られます。拙い表紙絵を使うくらいならテンプレート画像のほうが遥かにましです。

 そこで友達や仲間に絵師さんがいれば表紙絵を描いてもらう手もあります。

 もちろんきちんと対価を払ってください。絵を描くのは、あなたが小説を書く以上の時間がかかるものです。タダ働きさせられて人間関係が壊れないはずはありません。

 表紙絵を手に入れたら、タイトルや著者名をどう配置(レイアウト)するかを考えます。この作業も込みで絵師さんにお願いしてもよいでしょう。そのぶん対価は上がりますけどね。

 表紙そのものが完成したら、それを最大限に生かすためにも定期的に連載をしていきましょう。

 せっかく絵師さんにお金を払ったのに、連載が続かないのでは本末転倒です。

 表紙を描いてもらったのなら、連載を続けてランク上位に載せることを考えましょう。

 それが絵師さんへの最大の恩返しにもなります。




文章や展開の推敲・チェック

 編集さんが重宝されるのは、とくにこの分野です。

 展開や設定に大きなミスがないかどうか。

 固定ファンをつなぎとめられるような展開になっているのか。

 人によっては不快感を覚えるような作品になっていないか。

 編集さんがいないと、これらすべてを書き手ひとりでやらなければなりません。

「他人の評価を気にして書きたいものも書けないのではストレスが溜まるだけだ。私は書きたいものを書きたいように書く」

 というのも間違った考え方ではないのです。

 しかし同程度の作品があった場合、ランク上位に行く作品と下位やランク外へ沈む作品とに違いがあるとすれば、「文章や展開の推敲・チェック」をどれだけしたかでしょう。

 文章の推敲については過去に幾度となく書いてきましたので、今回は展開の推敲について述べてみます。


 展開の推敲は必ず「あらすじ」の段階で済ませておいてください。

 それ以降へ進んでから展開を修正するのは至難の業です。

 どんな出来事エピソードがどの順番で起きているのか。そのつながりに矛盾はないのか。後々必要になるキーアイテムやキーワードやキーパーソンが前もって登場しているか。といったものをチェックします。

 キーアイテムやキーワードやキーパーソンが登場するエピソードなら、対応する「箱書き」にそれを書いておきましょう。つまり「伏線」として埋設するのです。

 展開が矛盾なくすんなり通るようになったら、初めて「あらすじ」を完成させて、次の「箱書き」段階へと進むことになります。





最後に

 今回は「自らをプロデュースする」ことについて述べました。

「プロの書き手」は出版社から担当編集さんを付けてもらって、プロデュース作業を担ってもらいます。

 アマチュアの私たちには当然担当編集さんなんていません。プロデュースも自ら行なわなければならないのです。

 自分の書きたい小説は世間でどれだけ需要があるのかを、書き手の眼力で見抜かなければなりません。市場予測ができなければ需要のない小説を書いてしまいます。誰にも読まれない作品を書いてしまうのです。

 自分の書きたい小説が、世間でどれだけ需要があるのか。需要の予測ができたらそれに沿った文章を書くことになります。

 文章の方向性の目安ができたら執筆をしていくとともに、とにかく目立つ方法を考え出すことです。とくに重要となる表紙絵をどう調達するのか。これをはっきりとさせましょう。



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