581.明察篇:他の人には書けない作品を書く

(予約投稿に失敗していてNo.577〜No.579をアップしております。

目を通しておられない方はご一読いただければと存じます。)


 今回は「他人には書けないものを書け」という根性論にも似たタイトルです。

 実際は「テンプレートからの脱却」「冒頭五ページ以内に選者の心を掴む」「主人公を走らせる」といったものです。

 とくに「テンプレートからの脱却」には不安が付きまといます。それならテンプレートからズラしてください。





他の人には書けない作品を書く


「小説賞・新人賞」を狙っている書き手の方の多くは、「面白い作品が書ければ受賞できる」と勘違いしています。

 読み手が「面白い作品」を求めているのは事実です。

「小説賞・新人賞」の下読みさん選考委員さん編集さんは、「面白い作品」かどうかで賞を授けるかを決めていません。

 どこを指して「受賞作」を決めるのでしょうか。




テンプレートは評価されない

「他の人と似たような物語」は、十把一絡げに落とされます。

「他の人と似たような物語」つまりテンプレートに従った作品です。

 文章力があればテンプレート作品であっても一次選考くらいは通過するでしょう。

 しかし大賞を射止めることはおそらく不可能です。

 今流行っている物語を研究して投稿したから受賞できるものでもありません。

 そもそも「小説賞・新人賞」は「他の人には思いつかない物語が書ける書き手を発掘する」ために開催されています。

 一行で言い切りました。それくらい「他の人には思いつかない物語が書ける書き手」が求められているのです。


 でもそうポンポンと「他の人には思いもつかない物語」を生み出せるものでしょうか。

 疑問が湧きますよね。

 どんな小説を書けばよいのかわからなくなったら、過去の受賞作を読んでそれらとは異なる物語を書くのです。

 つまり「似ていそうなんだけど、似ていない。かといって似ていないかと言われると似ているように感じられる」作品を書きましょう。

 要は下読みさん選考委員さん編集さんに「目新しさ」を感じてもらえさせさえすればよいのです。

「目新しさ」さえあれば、たとえどんなに文章が下手でも、物語が面白くなくても、「小説賞・新人賞」を受賞できる可能性が出てきます。

 まぁ文章が下手だったり物語が面白くなかったりすれば、「紙の書籍」化をされた際、書評でボロカスに叩かれることだけは覚悟しておきましょう。

「小説賞・新人賞」は「面白さ」と「目新しさ」の伴った作品が選ばれるべきです。そういった作品で受賞できれば人気が出て、次作の発刊にもつながります。

 それためにも、まずはテンプレートから外れてみましょう。

 心細くはなりますが、受賞への道はそこから始まります。




面白さは一ページ目から

「この物語は後半になってから面白くなるんですよ」という作品を書く人がいます。

 そういう作品は後半を評価されることなく選考から落とされるものです。

 下読みさん選考さん編集さんは、膨大な応募作の中から候補作を絞るために「落とすつもりで読んで」います。

 一ページ目から選者さんに「面白い」と思ってもらえなければ、後半どんなに素晴らしい展開が書いてあってもほぼスルーされてしまいます。

 さすがに一ページ目から選者の心を掴むのは難しいので、冒頭五ページくらいを想定しておきましょう。

 五ページ内に選者の心を掴めるか。それが一次選考を通過するかどうかの境界線です。

 五ページ内で見切りをつけても、選者はいちおうすべてのページに目を通して選評を書かなければなりません。後半があまりにも素晴らしい出来であれば、万が一拾い上げられないとも限らないのです。

 序盤で「面白さ」を感じない作品は「面白くない」という先入観で読みますから、後半がよほどの出来でなければ先入観を覆すことなどできないのです。

 かといって冒頭からインパクトを狙うあまり、過去の受賞作やドラマや映画で使い古された場面を「意図せず」書いてしまうことがあります。

 これは盗用つまり「パクリ」とまでは言いませんが、選者の印象を悪くすることは確かです。

 冒頭の重複を避けるために、少なくとも同ジャンルの作品に数多く触れ、どんな場面が多いのかを調べておけば、ある程度重複は回避できるでしょう。

 どうしてもインパクトのある冒頭が書けないのであれば、インパクトのある作品の一部をアレンジして「目新しさ」を加味できないか考えてみるのです。

「ありきたり」と思わせて実は「おっ、これは他と違うな」と感じさせるような掴みができれば、選者が前のめりになってあなたの作品を読んでくれるようになります。

 そのためにも、過去の受賞作やドラマや映画に数多く触れてください。

 アレンジを加えようにも、元ネタを知らなければ書きようもないからです。




主人公を走らせる

 小説やドラマなどでは、よく「主人公を走らせろ」と言われます。

 なにかを追いかけているのか、逆になにかに追い立てられているのか。どちらでもかまいません。追いつくのか追いつけないのか。追いつかれるのか逃げ切れるのか。

 とにかく「主人公を走らせ」てみましょう。そこからドラマが生まれることがあります。

 実際に走るだけでなく、精神的に追いかけている、追い立てられている状況でもかまいません。

 たいせつな部活動のスポーツ大会に出場しようと今まで練習してきたのに、前日になって台風で交通アクセスが寸断され、会場にたどり着けそうにない。

 そんな場面を経験した方がおられるかもしれません。

 受験勉強に勤しんでいて、次の日には受験日を迎えるようなとき。最後のスパートをかけたい。けれども眠気も催しているから、寝たほうがよいのか。そんな精神的に追い立てられている状況も「あり」です。

 そういった経験をされた方はそんな「主人公を走らせる」場面から物語をスタートさせてください。

 必ずや「目新しい」場面が作れるはずです。


「小説を書きたいから」という理由で、学校や会社と自宅をただ往復するだけの毎日を送るのはよい方法だとは言えません。

 書店に寄ってもいいですし、たまには外食に出かけてもいい。

 外食なら断然客の多い店を選びましょう。小説のネタにできるような話や出来事が起こる可能性があります。

 体験に根ざしたエピソードほど、強固な展開が繰り広げられます。 

「主人公を走らせろ」は、能動的な創作法なのです。





最後に

 今回は「他の人には書けない作品を書く」ことについて述べました。

 人気があるからと、「小説賞・新人賞」応募作でテンプレートな小説に手を出してはいけません。

 それよりは過去の受賞作を読んで、それとは異なる面白さを探したほうがよいのです。

 また一ページ目から読み手を掴んで離さない小説を書きましょう。

 読み始めてすぐに読み手の心を掴めなければ「小説賞・新人賞」の一次選考すら突破できないことがあります。

 読み手を惹きつけるために、物語作りの基本では「主人公を走らせろ」と言われています。

 実際に走らせてもいいですし、精神的に急かされているような状況でもいいです。

 いずれにせよ「あなたにしか書けない小説」は必ずあります。

 それを「小説賞・新人賞」へ応募するのです。



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