575.明察篇:句読点と文節の並べ方

 今回は「句読点」と「文節の並べ方」についてです。

 毎日連載551日目なので、小ネタ集となっております。

 554日目までは小ネタ集が主となりそうです。





句読点と文節の並べ方


 句読点は句点「。」と読点「、」のことです。

 句読点には文章にリズムを与える作用と、読みやすさを助ける作用があります。




句点で一文が確定する

 多くの『小説読本』では、一文を短くするように説いています。

 しかし長い一文を書いてはいけないというわけではありません。

 必然性や意図や狙いがあって、あえて長い一文にすることがあります。

 長い文を読みやすく書くには、それなりに技術が必要です。短く区切っても表現できるのなら、短くしましょう。

 短くすればすっきりと読みやすく、意味がつかみやすくなります。また文章のリズムも感じられるようになるのです。

 だから一文は短めに区切りましょう。

 ただし短すぎて途切れ途切れにならず、ほどほどの長さになるよう、いろいろと試すのです。

 目安としては六十字以内、長くても百文字以内で句点を打ち、文を終わらせるようにしてください。

 読み手もこのくらいなら長すぎるとは感じません。




読点でリズムと意味をはっきりさせる

 読点は、なんらかの意図を持って一文に区切りをつけるために打ちます。

 多すぎても少なすぎてもリズムが悪くなって読みにくくなるのです。

 ほどよく打てば文章にリズムが生まれ、格段に読みやすくなります。

 読点を打つ場所に厳密なルールはありません。

 極力打ったほうがよいとき五つと、打っても打たなくてもよいとき三つがあるのです。


 極力打ったほうがよいとき

一.主語が長いとき

「遠くからやってくるカラスの鳴き声を聞いたカズマは、〜。」のように修飾語が多くて長い主語になったとき、主語の後に読点を打つと読みやすくなります。

二.主語と述語の距離が遠いとき

「彼は、腰に佩いた長剣を抜きざま愛馬とともに敵陣へ突撃していった。」のように主語「彼は」と述語「突撃していった」が遠いときも、主語の後に読点を打つと読みやすくなります。これは一の応用パターンです。

三.一文内に主語と述語の組み合わせが複数あるとき

「花は咲き、鳥が歌う。」のように主語と述語が複数含まれる「重文」は、その間に読点を打つと読みやすくなります。「重文」なのに読点を打たないと奇妙な文が出来あがってしまうので注意してください。

四.いくつかの単語を並列させるとき

「家族旅行では、フランス、イタリア、ギリシャを巡った。」のように複数の単語を並列させるときも読点で区切るようにしましょう。中点「・」で表すこともありますが、洋語の空白と混同しがちなので、できれば読点で処理してください。

五.感動詞のあと

「ああ、なんて素晴らしい発明なのだろうか。」「いいえ、違います。」などのように感動詞のあとにも読点を打つとリズムがよくなります。


打っても打たなくてもよいとき

六.比較的短い主語のあと

「メロスは激怒した。」と書いても「メロスは、激怒した。」と書いてもよいのです。

 書き手の好みや前後の流れ、文の長さなどから判断しましょう。

七.接続詞のあと

「しかし彼は黙ってしまった。」と書いても「しかし、彼は黙ってしまった。」と書いてもよいのです。

 接続詞には他にも「そして」「また」「および」「すると」「しかも」「ただし」「だけど」「でも」などがあります。これらのあとに読点を打つかどうかは、都度判断しましょう。

八.接続助詞のあと

「ストレッチをじゅうぶんに行なったので、ウエイト・トレーニングを始める」「山に登ったが、すぐ下山しなければならない」というときは、接続助詞の後ろに読点を打つかどうかは都度判断しましょう。


 読点を打つ場所について多くの『文章読本』はよく「音読して確認しよう」と言います。

 しかし小説を音読する人は限られるため、現在では「意味がとらえやすくなる」ように読点を打ったほうがよいでしょう。

 今はPCやスマートフォンで、読点を打つ場所を簡単に試せます。とりあえず読点を打ち、意味がわかりづらいかなと思ったら、読点の場所を変えて読み返してみましょう。最も意味がわかりやすい場所を探してみてください。




文節の並べ方

 日本語の文は主語、述語、目的語、補語、修飾語などを適宜組み合わせて、それらを助詞でつなぐことで成立しています。これらは英語の品詞ですがわかりやすいので日本語でも使ってみましょう。

 文の中で、文節の順番はある程度入れ替えがききます。

 たとえば「マグロが太平洋を泳ぐ」と書いても「太平洋をマグロが泳ぐ」と書いても「マグロが泳ぐ、太平洋を」と書いても日本語の文法として間違っていません。

 このように日本語は表現の幅が広いのです。英語ではこうはいかないでしょう。

 しかし自由度が高すぎるために発生する問題もあります。

 文法は間違っていないのに意味がわかりづらくなったり、リズムが悪くなったりしてしまうのです。




順番を変える

一.「私は柔道場へ黒帯を取るために通っている。」

二.「私は黒帯を取るために柔道場へ通っている。」

 どちらも使っている文節は一緒で、並べ方を変えただけです。

 両者を読み比べると、わずかに二のほうがリズムがよくてわかりやすいと感じます。

「私は」が主語、「通っている」が述語、「柔道場へ」が目的語、「黒帯を取るために」が補足になります。

「黒帯を取るために」は「黒帯を取る」というひとつの文を、この文の修飾語としてはめ込んだ「複文」であることを示しているのです。

 述語の「通っている」がとる目的語は「柔道場へ」ですから、言葉の流れとしてこのふたつを直結したほうが自然になります。

 だから二のほうがリズムがよいですし、意味もわかりやすいのです。

 述語と目的語、修飾語と被修飾語は、できるだけ間になにも入れず直結で書きましょう。

 もちろんすべて直結させることは難しい。それでも、そのような意識を持って文を組み立てることがたいせつです。

 こうした微妙なリズムの良し悪しを感じながら、文節の並べ方、つなぎ方を工夫して文章のリズムを向上させましょう。





最後に

 今回は「句読点と文節の並べ方」について述べてみました。

 読点は「意味がわかりやすくなるように打つ」ことが大前提です。

 打ったら意味がわかりにくくなるようなら、読点を消すか移動させましょう。

 述語と目的語、修飾語と被修飾語はできるだけ直結させるべきです。

 そのほうがわかりやすくなります。



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