570.明察篇:ライトノベルの定義

 今回は「ライトノベルの定義」についてです。

「ライトノベルの文章読本」によるとライトノベルには定義があるそうです。

 ちょっと異論もあるので、それを踏まえて述べました。





ライトノベルの定義


 小説投稿サイトに掲載されている作品のほとんどが「ライトノベル」です。

「ライトノベル」と一概に言っても作品の内容は多様性に富んでいます。

 どのような小説が「ライトノベル」と定義されているのでしょうか。




中高生を主要層に想定している

 最も大きな括りは「中高生」を主要層にしていることです。

「中高生」が読みやすいように物語がシンプルであったり、漢字の割合やルビの振り方などを調整している小説は「ライトノベル」と言えます。

「中高生」が主要層ですから、物語はシンプルであるに越したことはない。ただしシンプルすぎて幼児児童向けになると「児童文学」と呼ばれてしまいます。

 素直な物語よりもひとひねりしている物語が、「ライトノベル」としてのシンプルな構成です。

 書き手が中高生なら、中高生の求める物語は自分に聞けばわかります。

 しかし大学生になり社会人になれば、現役の中高生の好みは知りようもありません。

 世の「ライトノベル読本」は、「現在発売されているライトノベル」をたくさん読むことを推奨しています。主人公の経験や考え方、読み手はどこに惹かれるのか。それを分析するのです。

 インターネットのSNSで中高生の投稿に注目してみるのもひとつの手段でしょう。


 漢字の割合やルビの振り方は、中高生が読めて意味のわかる単語を選択することから始まります。

 何回も言っていますが、「阿る」「論う」は中高生には読めませんし読めても意味がわかりません。「詳らかな」「厳かな」は読み方こそわかりにくいですが、意味は字義である程度察せられます。

 どのレベルまで難しい漢字や熟語を用いるかで「ライトノベル」か「一般文芸」か「児童文学」かが決まるのです。

 読み手の主要層を想定することが「ライトノベル」の第一要件となります。




登場人物に魅力がある

「ライトノベル」は「キャラクター小説」とも呼ばれます。

 作品に登場する人物に魅力がなければ「ライトノベル」ではないのです。

 人物の魅力とは、天下無双の剣士であったり、世界一の魔導師であったり、宇宙一の提督であったりと、ある分野のエキスパートであることが多い。

 中高生と等身大の人物であっても、ひときわ秀でている要素をひとつ盛り込むとよいでしょう。そうすれば秀でた要素に憧れを抱くことができます。

 ギャグもので、平均能力が読み手に及ばないような人物であっても、ある一点が秀でていること。そうすれば読み手は笑いながら惹き込まれていきます。

 マンガの空知英秋氏『銀魂』は著名なギャグマンガです。すべての人物がどこか抜けています。でもシリアス回で秀でた部分を利用して活躍しているさまを見せつけられれば、日常とのギャップで、ギャグがより面白く感じられるのです。


「ライトノベル」で魅力のある人物として鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』の主人公・上条当麻がいます。

 彼は特殊能力者が集まる学園都市で、レベルゼロの無能力者として蔑まれる存在です。このあたりは学校で友達が作れない、あまり目立たない生徒とリンクしています。

 そのうえで当麻は右腕に「幻想殺しイマジンブレイカー」を有しています。どんな異能力をも無効化する力は、ひときわ秀でた部分です。

 これにより一対一の実戦においてはほぼ無敵の強さを発揮します。中高生が憧れないはずはないですよね。


 川原礫氏『ソードアート・オンライン』の主人公・キリト(桐ヶ谷和人)も人付き合いが苦手です。でもユニークスキル「二刀流」を所持する手練の剣士という設定になっています。

 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の主人公・比企谷八幡も人付き合いをあきらめた少年です。でも誰も思いつかないような機転が利く頭脳の持ち主です。

 主人公だけを集めてみましたが、「対になる存在」や「第三者(脇役)」も同様、なにかひとつ秀でたところが欲しい。

 秀でたことつまり「個性」の共演が「ライトノベル」を華やかにして読み手を惹きつける要素となります。




ファンタジー要素やSF要素がある

「ライトノベル」には不思議と「ファンタジー要素」や「SF要素」があります。

 現実世界においても、どこか日常とは異なる部分があるものです。

 もちろん「ファンタジー小説」や「SF小説」も中高生が主要層であれば「ライトノベル」になります。

 上記作品なら『ソードアート・オンライン』がVRMMORPGという「SF小説」の要素を持ち、『とある魔術の禁書目録』が異能力バトルがある「ローファンタジー」(「アクション」に入れてもよい)の要素を持っているのです。

「ライトノベル」の先駆けとなった藤川桂介氏『宇宙皇子』は時代小説風味の「ファンタジー小説」であり、田中芳樹氏『銀河英雄伝説』は「SF小説」ですし、水野良氏『ロードス島戦記』は「ファンタジー小説」になります。

 日常とは異なる世界観が「ライトノベル」には必要です。

「ファンタジー」は現代よりも不思議な力が使える世界観ですし、「SF」は現代よりも科学技術が発展した世界観です。

「ライトノベル」とは「不思議な要素」「神秘的な要素」「ハイテクな要素」を持つ小説になります。




ライトノベルレーベルから出版されている

「ライトノベルの小説読本」では「ライトノベルのレーベルから出版されている小説はライトノベルである」としています。

 誠に本末転倒です。現在の多様化した広がりを考えると、そう分類しないと確実に分類できないという実態があるのかもしれません。

 ですが、ライトノベルはレーベルの数も増えました。それぞれのレーベルで似通った作品が出版されています。すべてのレーベルを見れば「ライトノベル」とはどのような作品のことを言うのかはそれなりに理解できるはずです。

 あなたの書くライトノベルは、どの出版社のレーベルから出版するにふさわしいかを、執筆する前から想定しておきましょう。

 新興レーベルの「小説賞・新人賞」は前例がないため、どのような作品が求められているのかわかりません。そういう場合は、自分の得意な作品を応募しましょう。いくらでも多作できるジャンルであれば、仮に本作では受賞できなくても、他の「小説賞・新人賞」へ新作を投稿できるのです。




マンガやアニメのようなイラストが表紙

 これを「ライトノベル」の判断材料にした「ライトノベルの小説読本」があります。

 これこそ本末転倒です。小説を執筆しているときに作者自らが表紙にマンガやアニメのようなイラストを書かないかぎり「ライトノベル」にならないということになってしまいます。

「小説賞・新人賞」に本文以外の表紙イラストや人物設定イラストなどを添付しても、それで「はい授賞」とはならないのです。

 だから「小説賞・新人賞」には本文と梗概以外の余計なイラストや写真などは送らないでください。

 小説投稿サイトでは表紙やイメージイラストを掲載できるところがあります。

 そうした小説投稿サイトで開催されている「小説賞・新人賞」に応募するときは、イラストがあったほうが有利になるかもしれない。しょせんその程度です。

 しかし拙い絵を見せられると本文がいくらよくても気持ちが萎える読み手や選考者が多い。よほど絵のレベルが高くなければ、イラストを添付すべきではありません。他人と違いを出したいときは写真を使いましょう。





最後に

 今回は「ライトノベルの定義」について述べてみました。

 中高生を主要層に想定している、登場人物に魅力がある、ファンタジー要素やSF要素がある、ライトノベルレーベルから出版されている、マンガやアニメのようなイラストが表紙と五つを例にとりました。

 しかし後ろ二つは「紙の書籍」化されたときにしか分類できません。であれば前の三つこそが、あなたが「ライトノベル」を書きたいときの参考になります。



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