571.明察篇:男子向けか女子向けか

 今回は「男子向けか女子向けか」についてです。

 基本的に主人公の性別がそちらの性向けになります。

 ライトノベルなら表紙でも分けられますし、レーベルでも分けられます。





男子向けか女子向けか


 あなたが書いた小説は、男子向けでしょうか女子向けでしょうか。

 それによって応募する「小説賞・新人賞」は異なります。

 たとえば小説投稿サイト『エブリスタ』は女子向けの作品が強く、開催されている「小説賞・新人賞」も女子向けです。

 小説投稿サイト『小説家になろう』は恋愛小説も充実しているので女子にも人気がありますが、たいていは男子向けの小説が掲載されています。




主人公は男子か女子か

 小説の主人公が男子の場合は男子向け小説である可能性が高い。女子が主人公なら女子向け小説の可能性が高いのです。

 ただし男子向けの女主人公小説や、女子向けの男主人公小説もあります。

 女子向けの男主人公小説で最も多いのが「ボーイズラブ(SF)」昔でいう「やおい」作品です。

 女子は同性愛に寛容な気質があるらしく、「ガールズラブ」いわゆる「百合」ものも人気があります。

『ピクシブ文芸』や『pixiv小説』のランキング上位は「百合」もので占められているのです。

 そこをわきまえずに投稿しても、そもそも読み手が求めている作品ではないので、読まれる率も下がりますし連動して評価もされません。

『エブリスタ』も女子向け恋愛小説が強いので、「BL」や「ガールズラブ」、また対象年齢が低いので「ティーンズラブ(TL)」も根強い人気があります。

 小説投稿サイトは利用者の主要層の年齢が低いので、「オフィスラブ」にはそれほど人気が集まりません。たいてい成人小説になることが多く、小説投稿サイトの表側には置かれなくなります。

 このように女子向けは「恋愛」要素が強いのです。

 男子向けでも「恋愛」ものはあります。どちらかというと刺身のツマです。

 男子はファンタジーやSF小説やバトル小説が強く、その中に「恋愛」要素が含まれているという形をとります。

 何回でも言いますが、男性は純粋な「恋愛小説」はいっさい読みません。照れくさいですし、噂が広がるのが嫌だからです。

 だからといって「恋愛」要素が嫌いなわけではありません。

 ファンタジー小説の中に「恋愛」要素を混ぜたものは好んで読みます。

 川原礫氏『ソードアート・オンライン』は「VRMMORPG」ものですがアインクラッド篇での内部はファンタジー世界であり、そこに「恋愛」要素が混ざっているのです。男子の読み手ががっつり食いつきます。

 男子はファンタジーやSFなどの現実離れした夢のある物語が好きで、女子は恋愛やヒューマン・ドラマなどの現実に即した理想の物語が好きです。

 女子が読みたい「恋愛」小説は「非日常の恋愛」模様となります。ファンタジー世界でのラブロマンスがウケる。アラブの富豪とのラブロマンスがウケる。白馬の騎士とのラブロマンスがウケる。とにかく「非日常」がウケるのです。

 SF小説の好きな女子が少ないのも、そういった傾向によります。

 でもSFアニメの好きな女子は意外と多いんですよね。ここが文字と映像の違いということでしょうか。




表紙による男女分け

 男子向けライトノベルの表紙は「かっこいい」「綺麗」で背景がないもしくは逆に精密な描き込みの表紙が多く、女子向けライトノベルの表紙は「かわいい」「カップリング」もので花や小物の散りばめられているものが多い。

 女子向けは主人公の女子が描かれていることが多く、その巻で主人公と絡む人物を一緒に描いてあることも多いのです。「BL」ものは攻めと受けが一緒に描かれます。つまり「カップリング」を明確に提示してその巻だけでもピンポイントで買ってもらえば、それが呼び水となって全巻購入してくれるかもしれない作戦です。

 男子向けは主人公の描かれている割合が少ない。その巻のヒロインが描かれていることが多いのです。男子は「途中から読む」ことがまずありません。ほとんどの男子は気になるライトノベルがあれば第一巻から読みます。だから主人公のビジュアルは第一巻で知っているのです。

 そういった視点でレーベルの男子向け・女子向けを調べてから応募するようにしましょう。

 小説投稿サイトで企画開催されている「小説賞・新人賞」も、「紙の書籍」化されたり「電子書籍」化されたりしたときに、表紙絵が必ず付きます。過去の受賞作をamazonや楽天、Apple Books(旧iBooks)などでチェックしてみてください。男子向け・女子向けいずれかの「小説賞・新人賞」であるか、ある程度わかります。




レーベルの個性

 男子向け・女子向けだけでなく、出版社のレーベルにも差があります。

 角川スニーカー文庫は保守的なライトノベル・レーベル、富士見ファンタジア文庫は王道ファンタジーのライトノベル・レーベル、電撃文庫は攻めのライトノベル・レーベルといった具合です。

 他にも小説投稿サイトで「小説賞・新人賞」を共催して受賞作を出版するレーベルも数多くあります。そういったレーベルは小説投稿サイトで候補作を読んでいれば傾向がわかります。

 レーベルごとの差異は、そのレーベルの作品を読めばある程度わかるものです。

「ハッピーエンド」至上主義のレーベルもあれば、悲劇的な結果からの再生を掲げるレーベルもあります。スタイリッシュであればいいと割り切ったレーベルもあるようです。恋愛小説だけのレーベルもあります。当然成人向けだけのレーベルもあるのです。


 またレーベルの個性が知りたければ、公式Webサイトもチェックしましょう。Webサイトの雰囲気がそのレーベルの個性を表しています。そうなるようにプロに外注してあるので、公式Webサイトの雰囲気はそのレーベルを写す鏡となるのです。

 今どの作品をイチオシしているのか、新刊の情報や書き手の寄稿などを載せている公式Webサイトもあります。

 あなたは今インターネットで本コラムをご覧になっているのです。

 検索窓にレーベル名を入力して公式Webページを見に行くこともわけなくできます。気になるレーベルがあれば即チェックするようにしてください。

 公式Webサイトのないレーベルも稀にありますので、そういった場合は距離をとることをオススメします。公式Webサイトも維持できないレーベルで「小説賞・新人賞」を獲っても出版社に搾取されるのがオチです。

 レーベルにはそれにふさわしい作品が出版されています。

「小説賞・新人賞」を狙うときも、最低限そのレーベルの作品をチェックしてレーベルの方向性を違えないようにしてください。


 小説には魅力的な登場人物が出てきます。レーベルごとにそれらを集めると、意外と共通点が見つかることもあります。

 登場人物の性別と年齢はレーベルが想定している読み手の性別と年齢を表しているものです。

 集計が終わったら、それらのデータとの差別化も考えましょう。既存作品と差別化が図れていないと、「○○のパクリじゃないか」と言われてしまいます。せっかく頭を使って小説を書いたのに、パクリ呼ばわりされるのは悔しくないですか。それなら最初からパクリ疑惑を回避しましょう。

 また「剣と魔法のファンタジー」に強いレーベルがあったり、「学園ファンタジー」に強いレーベルもあったりするのです。

「剣と魔法のファンタジー」ものを「学園ファンタジー」に強いレーベルの「小説賞・新人賞」へ応募しても、受賞できないでしょう。

 よほど面白ければ優秀作に選考して、「学園ファンタジー」を書かせてみるくらいのことをしてくれるレーベルもあると信じます。

 信じますが、まず大賞は射止められません。投稿した作品はムダに終わるのです。

 それなら最初から「剣と魔法のファンタジー」ものに強いレーベルの「小説賞・新人賞」に応募すべきなのは言うまでもありません。





最後に

 今回は「男子向けか女子向けか」について述べてみました。

 基本的に男子主人公なら男性向け、女子主人公なら女性向けと考えてかまいません。

 そのうえで女主人公の男性向けや、男主人公の女性向けを模索していけばいいのです。

 また「レーベルの個性」の問題もあります。

「剣と魔法のファンタジー」に強いレーベルもあれば「学園ファンタジー」に強いレーベルもある。「恋愛小説」に強いレーベルもあれば「BL小説」に強いレーベルもある。

 レーベルが企画共催している「小説賞・新人賞」へは、その「レーベルの個性」に沿う作品を応募してください。

 そうすれば作品を正当に評価してもらえますよ。



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