565.明察篇:スランプへの対処法

 今回は「スランプへの対処法」についてです。

 人間ですから誰にでも好不調の波があります。

 当人が気づいていないだけで、実は風邪やインフルエンザなどで体調を崩していることもあるのです。

 慢性的な睡眠不足かもしれません。

 長編小説・連載小説は長距離走であり、毎日無理のない分量でペースを刻み続けるようにしましょう。

 書ける日に一気に書きたい、と考えるだけでスタミナ切れを起こして書けなくなるのです。






スランプへの対処法


 初心者は短編小説を書くだけで数か月かかることもあります。

 ましてや長編小説ともなれば年単位でかかることも珍しくないのです。

 どんな人にも好不調の波があります。いつも絶好調に執筆できることなんてまずありません。

 不調なときが多い人ほど、調子のよい日であっても「書けない時間」ができてしまうものです。




好不調は当たり前

 書き手の皆様に知っておいてほしいのは、「どんな書き手にも不調は訪れる」ということです。

 いっときスランプに陥って「自分には小説を書く能力はないのか」と失望しないでください。

「いつになったら続きが書けるのだろう」と滞っていることを焦らないでください。

 不調なときはその原因を探すのです。


 もしかすると「体調が悪い」のかもしれません。風邪やインフルエンザなどにかかったとき無理に執筆しようとしても、体調がよくないのですからすらすらと書けるはずがないのです。

 また栄養が不足していると感情ホルモンが正常に分泌されなくなるので、イメージが湧きにくくなることも起こりえます。人間の感情・思考はホルモンに左右されるのです。感情ホルモンのバランスが崩れれば、創作意欲が湧かないのも当たり前だと言われています。

 また睡眠が不足していると日中睡魔が襲ってきます。

 そうなると意識を保つだけで精いっぱいになってしまい、小説のことを考えるのも難しくなるのです。


「書けない時間」が生まれてしまったら、まず体調を整えることから始めましょう。「体調が悪い」とき無理に頑張っても空転して心身の状態がさらに悪化するだけです。

 もし体調はよいのにうまく書けないのだとしたら、「次のシーンを書く能力の不足」か「次に書くシーンの展開が間違っている」かしています。

 ひとつずつ見ていきましょう。




次のシーンを書く能力の不足

「次のシーンを書く能力の不足」なら、具体的なイメージが湧いてきません。

 それでもなんとかイメージを絞り出して文章を書こうとしても、言葉が思い浮かばないのです。

 イメージがあやふやなのですから至極当然のこと。

 そんな場合は、朧げなシーンに似た小説を探して、メモ帳に書き写してみるのも一手です。

 それでイメージが強化されて、文章を紡げるようになることが多くあります。

 手詰まりを感じたときに試してください。

 また知識が足りていない場合はどれだけ頑張っても書けるはずがありません。

 先に情報を収集しましょう。不足している知識を積極的に補完すべきです。

 知識だけで小説は書けません。しかし知識がないのに小説を書くこともまたできません。




次に書くシーンの展開が間違っている

「次に書くシーンの展開が間違っている」場合。

 そもそもあらすじを作った段階で展開が強引すぎたのです。そのしわ寄せが執筆段階で出てしまった。

 だから執筆していくとき「なにかが違う」と違和感を覚えるため、無意識にブレーキを踏んでしまうのです。

 こうなってしまったら、あらすじ段階から再検討して別の展開を模索しましょう。

 別の展開に切り替えるだけで、すらすらと書けるようになることがよくあります。

 その意味でも「企画書」「あらすじ」「箱書き」「プロット」の順で工程を経ることがたいせつなのです。


 いずれにせよ、足りないもの間違っているものを正していくことで停滞から脱せられます。




短編小説は短距離走

 短編小説は分量が少ないため、それほど時間をかけずに書くことができます。

 その気になれば一日で原稿用紙五十枚を書きあげることだって不可能ではありません。

 しかし一気に書きあげると「燃え尽き症候群」に陥って、次作を書くのに時間が空いてしまったり、最悪「書くのはしんどい」と思って筆を置いてしまいます。

 たとえ五十枚の小説でも、一日に書ける分量を守って分割して書くことで、「燃え尽き症候群」を回避できるのです。

 原稿用紙十枚程度のショートショートなら、一日で書ききったほうが勢いがあってよいと思います。

 ご自身が一日に「無理せず」書ける分量をきちんと把握しておくべきです。




長編・連載小説は長距離走

 分量の多い長編小説や連載小説の執筆はマラソンのような長距離走です。

 自分のペースを守って執筆していかないと、すぐに疲れ果てて執筆する意欲をなくします。

 まずは自分のペースつまり一日で書ける枚数、文字数を把握することから始めましょう。

 そして無理せず一定のペースを守って毎日執筆を続けるほうが、結果的に早く書きあげることができるのです。

 だから「今日は調子がいいからもっと書こう」と欲を出さないこと。

 そのほうが毎日一定のペースで執筆できますから結果が伴ってきます。


 締切ギリギリまで自分を追いつめてから一夜漬けで執筆しようとする人がアマチュアでもプロでも多いのです。

 ですが、毎日一定のペースで書いていくほうが無理はありません。

 最終的には一定ペースのほうがラクに仕上げられますし、推敲にじゅうぶんな時間をかけることができて内容も格段によくなります。

 小説を書き慣れてくれば、一日十枚書くことなんてラクに達成できるのです。

 一日十枚なら一年で三千六百五十二枚書くことができます。これは長編小説に直せば十二冊は書ける計算になります。

 毎日コツコツ書き続けることができる書き手は、「小説を書く」ことを特別視せず息をするように筆が進むものです。

 書く書かないのムラを作るよりも一定ペースを継続したほうが確実に多くの作品を執筆できます。

 世間の批評を集めやすくなり「次はこの指摘を解消するような作品を書こう」と前向きに考えられるようにもなるのです。





最後に

 今回は「スランプへの対処法」について述べてみました。

 スランプの理由は大きく「体調が悪い」「次のシーンを書く能力が不足している」「次に書くシーンの展開が間違っている」の三つに分けられます。

 あとは書けるときに何十枚も一気に書いてしまい「燃え尽き症候群」に陥ってしまうこともあるのです。

 あなたは一日に何枚なら毎日書き続けられますか。

 毎日書き続けられる枚数を把握しておけば、自分のペースで執筆できるようになるのです。

 毎日十枚書けるなら、一年で三千六百五十二枚書ける計算になります。

 これは長編小説を十二冊作れるほどの量なのです。

「継続は力なり」とはよく言ったものだと思います。



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