明察篇〜よりよくするためのテクニック

552.明察篇:小説の天才

 今回は「小説の天才」についてです。

「小説を書く才能」の中で「行動力」「ムダのない文章」「面白い物語」「先が読みたくなる展開」を取り上げました。

 No.552から「明察篇」に入ります。当初「考察篇」と名付けようと思ったのですが、「考」の字は「再考篇」で用いたので紛らわしくならないよう回避しました。

 本篇がまさに「明察」となるよう、よく考えながら執筆していきたいと思います。





小説の天才


「小説を書こう」と思い立ったら、即実行している方がいらっしゃいます。

 こういった方は「小説を書く才能」があるのです。

「小説を書こう」と思い立ったけど、いろいろ準備するべく時間を費やしている方がいらっしゃいます。

 こういった方に「小説を書く才能」はありません。

 この差はなんでしょうか。

 ちなみに今の私は後者であり、なるべく早く前者へ移れるよう環境を整えています。




行動力があるか

「小説を書こう」と思い立ったのに、一文字も書かない人は行動力がないのです。

 行動力のない人に「小説を書く才能」は微塵もありません。

 実際に書いてみたら傑作だった、という人も中にはいます。

 行動を起こしてみなければ、その傑作は生み出せないのです。

 あなたは「口だけ番長」になっていませんか。

 私は「口だけ番長」になりかけています。かろうじて『秋暁の霧、地を治む』の箱書きを少しずついじくっているくらいです。近いうちにブロットを書いて、連載を開始できたら。小説のほうは今しばらく時間がかかると思います。

 短編小説でいいので先にそちらを書いてもいいですね。とにかく小説を書かないことには「口だけ番長」のそしりは免れません。

『伝説』のほうはいくらでも短編を切り出せるので、そちらを書いてもいいかなと思っています。

 まぁ私は『小説家になろう』では小説を求められていないようなところがありますから、書いてもムダになりそうな気がしないでもありません。


 行動力があれば、どんなに拙くても文字を書き連ねて文章を書いていきます。

 初めから質の高い小説を書くことはできません。

 そういう意味では「小説の天才」なんていないのです。

 結果を残して検討し、どこが悪かったのかを精査して次回作に活かす。

 そうやって文章の質は高められるのです。

 この「トライ・アンド・エラー」を繰り返しましょう。

 小説投稿サイトに掲載して酷評されても、それをバネにして「トライ・アンド・エラー」することで、間違いなく文章力は向上します。




ムダのない文章

 小説の文章は、物語を語るうえで必要不可欠なものを書きます。

 物語に関係しない物事を書いている余裕なんてないのです。

 それなのに「獅子のような金髪」「冷徹さを感じさせる青い瞳」「鼻梁が高く小ぢんまりとした小鼻」「自信に満ちた一文字の唇」「女性のような指先」「煽情的な鎖骨」「引き締まった腹筋」といった細かな設定をしてしまう人が多い。この中で物語にかかわる要素はどれだけありますか。

 こういう細かな設定を決めておきたい人は「設定中毒」です。

 決めておかないと物語を作れないと勘違いしています。

 人物をここまで細かく設定することで、書き手はイメージが湧きやすい。だから細かな設定を作るんだ。という方はそうすべきです。

 しかし「せっかく設定したのだから、全部読み手に知ってもらいたい」と思うのがよくありません。

 小説に書いていい設定は「物語にかかわるもの」だけです。

「白磁のような肌」と設定しているからといって、物語で「肌」のことがキーにならないのであれば書かないでください。

 たとえば「肌」の色によって社会的な差別が存在しているのなら、「肌」について書くべきです。アメリカ合衆国では今日まで「肌の色による差別」「白人至上主義」がまかり通っています。だからアメリカを舞台にした小説なら「肌の色」は重要な要素になりうるのです。

 また病弱な設定であれば、「白磁のような肌」は血色がよくないさまを表していますから書く必要があります。当然物語の中でその人物が「病弱」である表現をしましょう。

 そういった理由もなく物語にもかかわってこない設定を書いてしまうから「ムダ」なのです。




面白い物語

 先に「小説の天才」はいないと言いました。

 これは初めての小説で完璧な原稿を書いてしまうような才能を持っている人はいない、という文脈で用いたのです。

 しかし実際には「小説の天才」と呼ばれる人物は確かに存在します。

 日本人で最も天才に近い存在が村上春樹氏です。

 私は村上春樹氏を好まないのですが、信奉者は世界中にいますので、「小説の天才」と呼んでいいのでしょう。

 また売上としては『ハリー・ポッター』シリーズのJ.K.ローリング氏も「小説の天才」のひとりだと思います。

 『ダ・ヴィンチ・コード』『インフェルノ』『オリジン』と大ヒットを連発するダン・ブラウン氏も「小説の天才」と呼んでいいはずです。

 この三名に共通しているのがなにかわかりますか。

 それは「物語が面白い」ことです。とても簡単なことでしたね。

「面白い物語」が書ける人を指して世の人は「小説の天才」と呼びます。

「面白い物語」と書きましたが、「悲劇」であっても胸に迫るような小説なら「面白い物語」です。

『オセロー』『リア王』『ハムレット』『マクベス』という四大悲劇で有名なウィリアム・シェイクスピア氏も「劇作の天才」と言えるでしょう。

「面白い物語」とは、「この先どうなってしまうのだろう」という「先が読みたくてたまらなくなる展開」のことだと言えます。

 読んでいて夢中になってくるから「先が読みたくなる」のです。




先が読みたくなる展開

「先が読みたくなる展開」とはどういうものでしょうか。

 それは「解かれていない謎がある」ことです。

 小説を読んでいると「この先どうなってしまうのだろう」という「謎」が提示されます。読み進めていくとその謎が解かれていくのです。「謎」が解かれる前に投稿回が終わってしまったら。続きが読みたくなりますよね。

 マンガの青山剛昌氏『名探偵コナン』は二十年以上連載が続いています。

 各エピソードではまず「謎」が提示される。証拠とアリバイを集める。「謎」を解くキーワードが示される。「謎」を解く。という手順を踏んでいるのです。

 物語が始まり、コナンが「謎」に出くわします。そこで証拠とアリバイを集めてまわるのです。ここまでで「誰が犯人で、どんなトリックが用いられたのか」を読み手も考えます。でもここまでで犯人とトリックがわかる人ってまずいませんよね。だから読み手は「この先どうなってしまうのだろう」と思い、コナンが「謎」をどう解くのか「先が読みたくなる」のです。

 たいていのエピソードでは、「謎」を解くキーワードを誰かの会話から偶然拾い上げます。「そうか。だからあのときあの人はあんなことを言ったのか」てな具合に。そして関係者を集めての推理ショーです。

「先が読みたくなる展開」とは推理ものでなくても、ちょっとした「謎」があって、それが解かれるまでの状態を指します。

「剣と魔法のファンタジー」であれば、「王国が魔王軍に攻め込まれる」「勇者が王様に呼ばれる」「勇者として魔王を討伐してこいと言われる」「冒険の旅に出る」「仲間を集める」「レベルアップする」「魔王の住む城に乗り込む」「魔王と対決する」「魔王に勝利する」「王国に平和が戻る」でおしまいです。

「魔王に勝利する」までの過程はどこで区切っても「この先どうなってしまうのだろう」と思って「先が読みたくなり」ます。

 途中で一度魔王と戦って敗れる展開なんてあると、終わりの「魔王に勝利する」が叶うかどうかわからなくなって「先が読みたくなる」のです。





最後に

 今回は「小説の天才」について述べてみました。

 処女作から大ヒットを飛ばせる「小説の天才」はまずいません。

「面白い物語を書く才能」というものはあります。

「面白い物語」とは「この先どうなってしまうのだろう」と「先の読めない展開」のことです。

 そのためには「謎」を提示して、それを解くまでの過程を読ませることです。

『ロミオとジュリエット』は両家が仇同士のロミオとジュリエットがなにも知らずに舞踏会で互いを見初めて恋に落ちます。そうなると「この先どうなってしまうのだろう」と皆様思うはずです。だから『ロミオとジュリエット』は名作になりました。

 小説も物語の一形態である以上、「この先どうなってしまうのだろう」と「先の読めない物語」を書くべきです。



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