529.飛翔篇:書くために考え、考えるために書く
今回は「書く」ことと「考える」ことの相関関係についてです。
書くために考える。考えるために書く。
言葉だけを読むと堂々巡りをしています。
ですが、やることがそもそも異なるのです。
書くために考え、考えるために書く
小説を書くためには、「物語」を考えることがたいせつです。
よい「物語」であれば、誤字脱字が多かろうと「名作」と呼ばれます。
「物語」を考えているだけではいつまでも形になりません。
考えるためには、頭の中にあることを書き出してみることです。
書くために考える
小説は人物が「物語」をたどるところを書き記した書籍という側面があります。
つまり「物語」がキモなのです。
ではどんな「物語」を考えれば小説が書けるのでしょうか。
「人物」がたどる道筋こそが「物語」なのです。
「人物」像が明確でなければ「物語」を考えることはできません。
しかし「物語」が明確にならなければ「人物」像が定まらないのも事実です。
最低限「ジャンル」は決めておく必要があります。
幸い小説投稿サイトで企画・開催されている「小説賞・新人賞」は「ジャンル」が指定されているものが多いのです。
ですので新たに「小説賞・新人賞」が発表されたら、その日のうちに「物語」の雛形を作っておきましょう。それもひとつではなく複数作るべきです。
一作書き上げて応募期間中にもう一作書けそうなら、勢いのままにもう一作書きます。
一発必中を狙うより、二の矢、三の矢を続けて射かけたほうがより中央へ命中する確率は高まるからです。「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」。
では応募作を書くために「物語」を考えてみましょう。
「小説賞・新人賞」の中には「ジャンル」だけでなく「お題」が設定してあるものが多くあります。とくに短編小説の賞はたいてい「お題」が定められているものです。
短編小説が書ける人は、賞金目当てで挑戦してみましょう。
少なくとも「物語」を考えるための種である「ジャンル」と「お題」が定まっているため、考えるべき「物語」の枠は狭まっています。
長編小説か連載小説の「物語」が作りたいとします。企画・開催されている「小説賞・新人賞」で長編小説は「ジャンル」が定まっていることもあるのですが、多くの賞は「ジャンル不問」です。
その場合、自分が最も「物語」を考えられる得意な「ジャンル」で勝負してください。
人は頭の中に別人格の存在を最低ひとりは有しているとも言われています。
ドラマで俳優が演技するとき、頭の中の別人格を表に出して演じるのです。
すぐれた俳優はその別人格を多数記憶しています。
そして弾倉を換えるように人格を入れ替えて演じ分けをしていくのです。
そうしなければ売れっ子俳優が同時期に何本ものドラマに出演することはできません。
あなたの頭の中にも別人格を容れるだけの器は必ずあります。
そこに人格を形成していき、たどるべき「物語」を考えていくのです。
それはロールプレイでありシミュレーションでもあります。
一人旅では心細いなら相棒を作りましょう。
『桃太郎』もお爺さんお婆さんの前で威勢良く出立しますが、鬼ヶ島へ行く途中旅を共にする仲間を相次いで得て、犬・猿・雉と四名で鬼ヶ島へ乗り込むことになりました。そう考えると、桃太郎ってかなりのヘタレなんですね。
「人物」たちがたどる「物語」にはどんなエピソードを作ろうかを考えます。
『桃太郎』なら犬を仲間にするエピソード、猿を仲間にするエピソード、雉を仲間にするエピソードを経て、「
『桃太郎』は川を流れてきた大きな桃から生まれたという出自が特殊である以外は、一介の「村人」が鬼退治してお宝を持ち帰る典型的な「立身出世」の「物語」です。
そうなんです。「物語」を奇抜にしようとあれこれ考えるよりも、オーソドックスな「物語」に少し手を入れただけのほうが人気も出ますし、記憶にも残ります。
ゲームのエニックス(現スクウェアエニックス)『DRAGON QUEST』(『DQ』)も「物語」としては『桃太郎』と大差ありません。「桃から生まれた桃太郎」が「レベル1の勇者」であり、エピソードを通じて仲間を次々と引き連れて、「
「物語」を作ることを特別難しく考える必要はないのです。
『DQ』が西洋ファンタジー世界での『桃太郎』であるように、「物語」はなにかと似てしまってもかまいません。日本昔話と西洋ファンタジーの違いだけで『桃太郎』と『DQ』が同一であるように、舞台を変えてしまえばオリジナルの「物語」になります。
ただし現在、西洋ファンタジー世界での『桃太郎』を書くと、『DQ』のパクリ扱いされるはずです。そこでエピソードを追加したり削除したりして『DQ』のパクリにならないように配慮しましょう。それさえできれば「物語」は無限に生み出すことができます。
考えるために書く
ファンタジーの「小説賞・新人賞」の場合、基本的に「なんでもあり」の「物語」になります。
すると「どんなことをやればいいのか思いつかない」状態になるのです。
「お題」が定まっていればいいのですが、ファンタジーの「小説賞・新人賞」は「お題」がないほうが多い。
そこで途方に暮れるわけです。
「物語」を考えるために、まず頭に浮かんでいる「文」や「単語」を書き出してみてください。
この作業はPCよりもコピー用紙で行なったほうがうまくいきます。
そこに頭の中に思い浮かんでいる「文」や「単語」を書き出していき、似たものに線を引いて関連性を見出だしていきます。
アイデアを出し切ってもう頭の中は空っぽという状態になったら、コピー用紙を改めて眺めてみましょう。
ある「単語」同士を眺めていると、「こんな言葉があってもいいな」というものがひらめきます。それをコピー用紙の「単語」同士の中間に書きます。
「文」同士、「文」と「単語」の組み合わせでも、同様に「こんな言葉や文があってもいいな」と思ったものを中間に書き込むのです。
おそらくコピー用紙はすぐに埋まると思います。そうなったら新たなコピー用紙に部分を抜き書きしてどんどんアイデアを書き込んでいきましょう。
もう何も思い浮かばないほど書き込んだら、新しいコピー用紙に整理していきます。
なお今回アイデアをたくさん書いたコピー用紙はいっさい手を加えず保存しておきましょう。
このコピー用紙は、今のあなたが思いつく限りのことが書かれています。今後新たなエピソードが必要になったら、保存していたコピー用紙を眺めて使えそうなところを使えばいいのです。かなりの時短が可能な方法なので、真っ先にオススメします。とくに連載小説を書こうとしているときには、この保存したコピー用紙が連載を支える重要な役割を果たすのです。
保存したコピー用紙を眺めていて、新たな「文」や「単語」が思い浮かんだら、別のコピー用紙に「関連している文や単語を書き出したうえで」新たに書き込んで一緒に保存しておきましょう。
小説を書くとき、できれば毎回まったく新しいコピー用紙に一から頭の中で思い浮かんだ「文」や「単語」を書き出すようにしてください。そういったイメージは時間やインプット次第でさまざまに様相を変えていきます。前回書いた「関連図」とは異なる「関連図」になってもかまいません。むしろ異なる「関連図」を書くつもりで書きましょう。前回からの時間の隔たりや執筆経験などで、連想できた「文」や「単語」は異なっていて当たり前なのです。それが「ストーリーテラー」としてのあなたの成長を表しています。
書くために考え、考えるために書く
この標題を見ると循環していてなにから始めてよいのかわからないと思います。
ですが上記したように、まず「ジャンル」を決めます。そして「お題」があればそれを頼りにして「物語」を考えていくのです。「お題」がなければ「お題」を考えながら「物語」も考えていくことになります。
そして「物語」は既存の作品の展開をそのまま用いてもかまいません。
著作権法でも「物語」の展開は保護対象になっていないからです。
ただしスチームパンク小説の「物語」を、同じくスチームパンク小説で書くのは露骨すぎます。まったく別のジャンルたとえばホラー小説に転用しましょう。
そうして決まった大まかな「物語」に彩りを添える要素「エピソード」を考える必要があります。
ここでコピー用紙が大活躍するのです。方眼紙でもよいのですが、コストパフォーマンスとどこにでもどの大きさでも書けるコピー用紙は汎用性がきわめて高いのでオススメしています。
関連を連想していき、図を作るのです。「関連図」から「エピソード」を生み出せば、物語と関係のない「エピソード」は生まれないでしょう。
「あらすじ」はこの「エピソード」を盛り込んで作ります。
どの「エピソード」をどこに配置するか、どの順番で読ませるか。それを考えるのです。
これが決まれば、「物語」の骨格は完成します。
あとは「あらすじ」を何度も書いてよどみない流れになるまで粘るのです。
完璧な「あらすじ」が書ければ小説の面白さは保証されます。
「あらすじ」に従って「プロット」を書き、実際の流れを書き出してみることで表現の良し悪しを見ていきましょう。
この段階は実際に小説を書く段階でもあるので、「小説賞・新人賞」の募集要項の文字数制限を確認しておきましょう。文字数が大きく足りない場合は新しい「エピソード」を追加し、大きく上回っている場合は「エピソード」を削ります。数千字程度の誤差であればシーンを加えたり削ったりして調整し、言い回しを変えてみて微調整します。
表現にも文字数制限にも問題がないと判断したら、いよいよ執筆です。
もう迷う要素はありません。
熱量を持って、執筆を始めましょう。
最後に
今回は「書くために考え、考えるために書く」ことについて述べました。
小説を書こうと漠然とした目標を立てても達成できないことのほうが多いのです。
小説を書くには「物語」を考える必要があります。
「物語」が決まったら「エピソード」を考えるために頭の中に思い浮かんでいる「文」や「単語」をコピー用紙に書き出していきましょう。
「物語」に関連する材料から「エピソード」を作れば、場違いなものにはなりません。
小説を書き慣れない方や初めて小説を書こうという方は、ぜひ取り入れてみてください。
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