528.飛翔篇:本当にやりたいジャンルで勝負する
今回は「好きなジャンル」を書きましょう、というお話です。
「推理」小説を多く読んできた人が「ファンタジー」小説を書くのはあまりにももったいない。
そういう人は「推理」小説で勝負したほうがいいのです。
「好きなジャンル」は物語を考えるだけでも楽しくなります。
本当にやりたいジャンルで勝負する
あなたには「このジャンルの知識が豊富で、泉のようにアイデアが湧いてくる」というジャンルはあるでしょうか。
「失敗してもいいから書きたい」ジャンルはあるでしょうか。
ない人は残念ですが小説は書けないと思います。
文章力があれば、形だけの小説は書けるでしょう。
そこに魂は籠りませんが。
好きなジャンルで勝負する
好きなジャンルなら知識は豊富にあるはずです。
文章は拙いかもしれませんが、知識に裏づけられたアイデアには事欠きません。
文章力はなくてもアイデアが秀逸ならヒットする可能性はあります。
文章力は毎日書いていれば必ず上達するものです。
しかしアイデアはあなたの人生で獲得した知識だけが武器になります。
好きでもないジャンルはアイデアがそもそもも少ないのです。
好きなジャンルであればアイデアは豊富に湧いてきます。
競争が激しいジャンルであれば、すぐに埋もれてしまう可能性が高い。
しかし数多くの作品を書き、それを毎日時間を変えて投稿することで、「あなた」という存在を読み手にアピールするのです。
そうすればあなたの作品に触れる人が増え、面白ければ過去の作品もついでに読んでくれます。
好きなジャンルで書き続けることは「徒労」に終わることがないのです。
報われるタイミングがコントロールできないだけで、作品は必ず評価されます。
目立ちやすいという点では、投稿本数の少ないジャンルが確かに有利です。
ですが薄っぺらい作品を投稿していたら、あなたの評価は下がってしまいます。
好きなジャンルであれば、すぐには評価されなくても、読まれれば必ず評価が高まるものです。
『小説家になろう』では「ハイファンタジー」が最も人気を集めています。
投稿本数も多いですし、総合評価ポイントも高い。ジャンルのフォロワーさんは他のジャンルの追随を許しません。
もしあなたの好きなジャンルが「ハイファンタジー」であれば、必ず「ハイファンタジー」で勝負してください。
好きだから深い知識を書き込めますし、何本書いてもアイデアが枯渇することはないでしょう。
好きな作風で勝負する
書き手には物語を「ハッピーエンド」で終わらせようとする人と、「バッドエンド」で終わらせようとする人がいます。
どちらがいいとは言えません。
もちろん「ハッピーエンド」で終わってくれれば気分も晴れやかになって満足感が高くなります。「ハッピーエンド」のほうが読み手に受け入れられやすいことは確かです。
「バッドエンド」はさまざまなことを考えさせてくれます。「もしあのときこういう判断ができていたら結果は違っていたのではないか」という場面をいくつも記憶してくれるものです。
意外に思うかもしれませんが「ハッピーエンド」の作品よりも、「バッドエンド」の作品のほうが読み手に深く記憶されます。
人間は記憶力を持っているのです。
失敗事例を学び、後日同様の状況に陥ったとき失敗しない選択をするために必要になります。もし失敗事例の記憶がなければどうなるか。つねに同じ失敗を繰り返すことになります。
普通の人は「同じ過ちを繰り返す」ことになるのです。
賢い人は「他人の過ちを他山の石とし失敗を事前に回避」できます。
「バッドエンド」ものを好む人というのは、この「賢い人」なわけです。
プロ野球の名将であった野村克也氏は「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」との名言を引きました。元は江戸後期の平戸藩主であり剣豪でもあった松浦静山氏の言葉です。
「負け」はどうして「負けた」のか原因がはっきりしています。味方の投手の制球や配球が悪かった。打線がつながらなかった。守備で失策が続いた。一目瞭然です。
「勝ち」はどうして「勝った」のか原因のはっきりしないことが多い。それは「負けない」態勢はこちらの努力で構築することができるのに、「勝つ」には相手の態勢に依るしかないからです。相手投手の出来が悪かった、打線がつながらなかった、守備で失策が続いた。これらは相手自身にしか作り出せません。このことは『孫子』の教えにも通じます。
小説も同じです。自ら「負け」の態勢を作る必要なんてないのです。あなたの得意とする作風で小説を書けば、少なくとも「負ける」心配はありません。
あなたの不得意な作風で書いてしまうと、「負ける」可能性が飛躍的に高まります。
あなたは「ハッピーエンド」な作風が得意でしょうか。「バッドエンド」な作風が得意でしょうか。「シリアス」な作風が得意でしょうか。「コメディー」な作風が得意でしょうか。
まずはそのことを突き詰めてみてください。
あなたの得意な作風を早期に見つければ、最も無駄なく評価が高まる小説を連発できるようになります。
読み手は小説投稿サイトであなたのどの作品から読み始めるかわかりません。
その作品が気に入ったら、あなたの他の小説をチェックします。
そうして「この書き手はこういう話を書くのがうまいな」という印象を与えることができれば、宣伝効果が出るのです。
器用貧乏がいちばん怖い
小説投稿サイトに作品を掲載するとき、「器用貧乏」に陥ることがいちばん怖いのです。
「ハイファンタジー」も書ける「ローファンタジー」も書ける。「異世界恋愛」も書ける「現実世界恋愛」も書ける。「純文学」も書ければ「コメディー」も書ける。「
これほどの才能を持っている人は確かに「天才」である可能性があります。
誰にもジャンルごとに得意不得意があり、「現実世界恋愛」が最もうまく書けて他はそれなりにというのであっても「文才」があります。
どのジャンルや作風でも書けるけれども、突出したものがまったくない。そういう人のほうが圧倒的に多いのです。これが「器用貧乏」です。
これから小説を書こうとしている方は「自分が最も力を発揮できるジャンルと作風」で書いてください。
「この小説投稿サイトではこれが今いちばんウケるからこれを書こう」というのがいちばん怖いのです。
なんでも書けてしまうが故に、二流以下の作品を多作してしまいます。
しかもそれなりに評価を得られてしまうからなお怖い。
このタイプの方はプロデビューは難しいと思ったほうがよいでしょう。
出版社の編集さんとしては、「売り」になる小説のとがった部分が明確な作品を選びます。社内会議でプレゼンしやすいからです。
「器用貧乏」な作者の作品は突出したとがった部分がないため、売り出し方にも困ってしまいます。
そういう意味でも「本命ジャンルと作風」を明確に持っていたほうが断然強いのです。
「自分は小説であればなんでも書けるんだ」という方ほど「器用貧乏」に陥りやすい。
小泉八雲ことパトリック・ラフカディオ・ハーンは怪談話に定評があります。他のジャンルも書いていますが、やはり怪談話のイメージが強い書き手です。
「怪談話なら小泉八雲」と言われるほどの存在となれば、出版社が放っておきません。
ひとつのジャンル、ひとつの作風で多作することの優位性はこんなところにも現れています。
最後に
今回は「本当にやりたいジャンルで勝負する」ことについて述べてみました。
そもそも「書きたい物語がある」から小説を書くんですよね。
読み手ウケする物語を書いて、当座の評価に満足するだけでは進歩しません。
「ジャンル」も「作風」も今に迎合せず、あなたの得意なものを書けばいいのです。
結果として作品が評価され、読み手にあなたの存在を認知してもらえます。
やはり人間、自分で本当に書きたいものを書いて勝負するのが最も堅実です。
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