514.飛翔篇:主語と述語が基本構造

 今回は「主語と述語」に代表される「修飾語と被修飾語」についてです。

 英語や中国語は「主語と述語」が隣り合っています。日本語はたいていの場合文頭と文末に分かれてしまうのです。

 文が長くなるほど遠くなるので、できるかぎり文は短いほうがよいのです。






主語と述語が基本構造


 前回「日本語は主語をとらない言語」だと書きました。

 それでも文法としては他言語同様「主語+述語」がワンセットであることに変わりはありません。

「私だったら、男のことなんて考えずに、仕事一筋に生きるんだけどな」という一文があったとします。

 英語の時間のようですが「主語+述語」の組み合わせを探してみましょう。




主語の助詞はひとつではない

 例文は入れ子構造になっています。ちょっと難易度が高かったかもしれませんね。

 「私だったら+仕事一筋に生きるんだけどな」と「男のことなんて+考えず」の二セットです。

 英語の翻訳では「〜は」「〜が」が文の「主語」となりますが、日本語ではそれ以外の助詞でも「主語」になりえます。

「私だったら」「男のことなんて」が「主語」である理由は、「〜は」「〜が」に置き換えても意味が通るからです。「私は+仕事一筋に生きるんだけどな」と「男のことは+考えず」としても、ニュアンスが違うだけで話している内容に変化はないですよね。

 これが日本語における「主語」の特異性を表しています。

 日本語における「主語」とは、助詞を「〜は」「〜が」にしても文章の意味が通じる文節すべてです。

 よって「私だったら」「男のことなんて」も「主語」であることに変わりありません。

 日本語を学習する外国人の方々が苦労される理由は、「主語」が必ずしも助詞「〜は」「〜が」をとるわけではないことも一因でしょう。

 日本人には当たり前の文法なのですが、外国人にはバリエーションがありすぎて使い分けられないのです。

 英語も表現のバリエーションは豊富ですが、主に「述語」と「修飾語」のバリエーションになります。「主語」のバリエーションではありません。男性だろうと女性だろうと子どもだろうと老人だろうと、主語の一人称はすべて「I」です。名前を使うこともありますが、原則は「I」です。

 でも日本語では「わたし」「わたくし」「あたし」「あたい」「あっし」「僕」「俺」「おいら」「我輩」「われ」「予(余)」など数え上げたらきりがありません。

 一人称だけでもキャラ立てできてしまうほどです。

 それに輪をかけて「主語の助詞はひとつではない」というルールがあります。

 日常的に使い分けている私たち日本人は、この「特殊な言語」を使って小説を書いているんだと「意識」すべきです。

 英語のようなきっぱりとした文法を持たないことで、曖昧になりやすい言語です。しかし表現の多様性に関しては世界一の言語でもあります。

 英語はアルファベットと算用数字とピリオド(.)やカンマ(,)、エクスクラメーション・マーク(!)やクエッション・マーク(?)など記号だけで表されます。

 中国語も漢字と算用数字と記号だけですが、組織名や機種名などではアルファベットも用いるのです。

 それに対して日本語は、漢字・ひらがな・カタカナ・アルファベット・算用数字・記号の六種類を用います。文字コードを調べると他にもギリシャ文字やロシア文字も使えるのです。




日本語は述語が重要

「主語」は省いても文の意味が通じます。

 しかし「述語」を省いてしまうと「なにを言いたい文なのか」がわからなくなるのです。

 では日本語における述語にはどんなものがあるのでしょうか。


(一)動詞:「歩く」「走る」「跳ぶ」「飛ぶ」「泳ぐ」「潜る」など、動詞は明確に「述語」になります。文の主体がどんな動作をしているのか。それを端的に表すには「述語」動詞に限ります。


(二)形容詞:「高い」「低い」「大きい」「小さい」「多い」「少ない」「美しい」「醜い」「厚い」「薄い」「暑い」「涼しい」「寒い」「熱い」「温(ぬる)い」「冷たい」など、形容詞が「述語」になることがあります。しかし形容詞はつねに何かとの比較で成り立っているため、「述語」にすると「なにとの比較でそうなのか」という因果関係の提示が求められるのです。とくに小説では可能なかぎり「述語」形容詞を省いて、数量や基準を明確に表記しましょう。形容詞ほど小説を陳腐化させる品詞はありません。


(三)形容動詞:形容動詞は大きく「静かな」「曖昧な」「浅はかな」「勝手な」のような「〜な」をとるものと、「憮然と」「奮然と」「厳然と」「滔々と」のような「〜と」「〜たる」をとるものに分けられ、「述語」形容動詞は「〜な」だけとなります。「述語」形容詞ほどのあいまいさはありません。「述語」として用いるときは次に挙げる「述語」名詞の役割が与えられます。


(四)名詞:日本語では名詞が「述語」になることができます。「富士山は活火山です。」は「述語」名詞ですね。「私は鈴木一朗です。」は固有名詞である姓名を「述語」名詞にしています。「述語」形容動詞と見分けがつきづらい理由は、助動詞がほぼ同じだからです。形容動詞は「〜な」の活用が「静かになる」「静かだ。」「静かな湖畔」「静かの海」「静かであれば」であり、これは名詞に付く助動詞「だ」の活用とほぼ同じです。(「〜な」だけは使えません)。「述語」形容動詞は基本的に「〜だ」をとりますから、見た目は「述語」名詞と変わりません。「富士山は活火山だ」と「富士山は静かだ」は見分けがつきづらいと思います。ですが前者は定義で、後者は説明なので、その点ではわかりやすい。「述語」で「〜な」が使えるものは形容動詞とざっくり捉えてもかまいません。

 このように「述語」動詞が大半で、定義に「述語」名詞を、説明に「述語」形容動詞を用いることが多く、「述語」形容詞はできるだけ「述語」動詞に置き換えられないか模索してみましょう。




日本語は述語先行で

 日本語は「述語」によって文章が紡がれます。「述語」の範囲を限定したり狭めたりするために数ある品詞の中から「主語」を用いるのです。

「エヴァンゲリオン初号機です。」という述語があったとします。これではなにを指して「エヴァンゲリオン初号機です。」と言っているのかがわかりません。

「述語」の範囲を限定するために「そのフィギュアは」を「主語」として「そのフィギュアはエヴァンゲリオン初号機です。」と書きます。これで読んだ皆様は納得してくださるはずです。

 このように、日本語ではまず「述語」を明確にしてから「主語」を補っていくように書いていきましょう。

 そうすれば「主語」と「述語」がねじれてしまう現象を極力抑えられます。

 たとえば野球のワンシーンを書くとき、「投げる。打つ。走る。取る。」のようにまず述語を確定させておくのです。

 そこに「ピッチャーがボールを投げる。バッターはそれをライナーで打ち返す。一塁へ全力で走る。ライトがライナーを地面すれすれで取った。」のように品詞を足していきます。そうするだけで文章が簡単に出来あがります。

 先に「主語」を立てても修飾語の品詞が増えていくほど「述語」までが遠くなるのです。書いている間に着地すべき「述語」を見失うことがあるのです。

 だから私は「述語」を先行して決め、必要となる「主語」を適宜加えていくことを是とします。

 それが難しい方は、単純に「主語+述語」の形を書いておきましょう。そこに修飾語の品詞を加えていけば、「主語」と「述語」がねじれてしまう現象は起こりにくくなるのです。




小説を書けない方はまず「主語+述語」を

「どうしても小説が書けない」という方は、シンプルに「主語+述語」だけの文章を書き連ねてみましょう。

 細かな描写や説明なんていっさい抜き。「主語+述語」だけで文章を書くことで、構成力が身についていきます。

 描写力は別個鍛えるとして、まず読んだ人に物語の内容がわかる程度の「主語+述語」の文を書くのです。

 幼児が読む童話や寓話を書くのに似ています。

 幼児にわかる『桃太郎』『浦島太郎』『シンデレラ』も、突き詰めれば「主語+述語」で書かれているのです。

 「昔々、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。」も突き詰めれば「おじいさんとおばあさんが」という「主語」と「いました。」の「述語」で出来ています。ひじょうにわかりやすいですよね。

 だから「小説が書けない」という方は「主語+述語」だけにして童話や寓話を書いてみましょう。

 書き慣れてくれば、普通の文章なら難なく書けるようになります。

 そうなってから描写力を磨いていき、ライトノベルへ挑戦するのが最も近道です。

 書き慣れるまでは、童話や寓話を書いてみましょう。





最後に

 今回は「主語と述語が基本構造」ということについて述べてみました。

 前回「日本語に主語は要らない」と述べましたが、文章を書き慣れないうちは「主語」と「述語」をワンセットで一文を書いてみましよう。

 かなりシンプルになりますので、ライトノベルはまず書けません。

 童話や寓話なら書けますので、まずは童話作家、寓話作家を目指してみましょう。

 書き慣れてくれば、数多くの品詞を使い分けられるようになって、ライトノベルも書けるようになってきます。

 そうなってからライトノベルに挑戦しても遅くはないのです。



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