500.飛翔篇:原稿用紙の使い方

 今回は毎日連載500回目として「原稿用紙の使い方」についてです。

「なにを今さら」という声が聞こえてきますね。

 でも出版社から「紙の書籍」を出すに当たっては、原稿用紙の使い方は必須の知識です。

 小学校の頃に習っているはずですが、意外と憶えていないことも多いんですよね。

 とくに小説投稿サイトでは一文書いたら空行を入れる人が多いので、出版社の方も困ってしまいます。





原稿用紙の使い方


 今回は原稿用紙の使い方についてまとめました。

 テキストベースでは読みにくいと思いますが、押し通しました。

「禁則処理」については、最近のワープロソフトなら自動でやってくれますし、小説投稿サイトでも自動で処理してくれますので、あまり気にしなくていいと思います。




必要事項

タイトル

 原稿用紙一行目に行頭三マス(場合により二マス)空けて書く。

 タイトルが二行にまたがる場合は意味が通じる区切りで改行して、二行目の始めは一行目よりも一字以上下げて書く。


著者名

 原稿用紙二行目に下を一マス(場合により二マス)空けて、姓名の間を一マス空けて書く。


本文

 原稿用紙三行目から書く。

(著者名と本文を明確に分けたい場合は一行空けて四行目から書く)。


コンクールによっては、タイトルと著者名は外側の余白や別紙に書き、一行目から本文を書く。




地の文

段落の書き方

 話題が変わる(書き及んでいる主体が変わる)ときは段落を改める。

 カッコが付かない場合は行頭一マス目を空けて(一字下げて)、二マス目から書く。

 会話文の次行でカッコが付かない場合は、話題が変われば行頭一マス目を空けて(一字下げて)、二マス目から書く。

 話題が変わらなければ行頭一マス目から書く。(最近では一字下げることが多い)。

 例: 風が吹き抜けて落ち葉をさらっていく。

   「もうじき冬だな。」

   僕は襟元を手繰り寄せた。

 禁則処理:カッコ類が付く場合は行頭一マス目にカッコ開き“「”を書いてカッコ内を書く。


句読点

 句読点(句点“。”、読点“、”)は一字一マス用いる。

 禁則処理:行頭一マス目に句読点が来る場合は、前行のコマ外に句読点を書く。

(前行の最終マス内に混ぜ書きしてもよい。通常ワープロソフトにおまかせで)。


拗音(ゃゅょ)や促音(っ)などの小さな文字

 一字一マス用いる。

 禁則処理:行頭一マス目に小さな文字が来る場合は、前行のコマ外に書く。

 ただし現在は行頭に来ても問題ないとされている。

 (通常ワープロソフトにおまかせで)。


繰り返し記号

 「ヽ」「ヾ」「ゝ」「ゞ」「〃」「々」といった前の文字を繰り返す記号は行頭一マス目に書くことはできません。すべて前の文字をそのまま書いてください。×「意気揚/々」⇒○「意気揚/揚」

 ただし「佐々木さん」のように名前や固有名詞の場合は繰り返し記号を行頭一マス目に書いてもかまわない。


中点(・)や長音(ー)

 禁則処理:「カウンター・カルチャー」の中点(・)や長音(ー)は行頭一コマ目には書けないので、前行のコマ外に書く。


ダッシュと三点リーダー

 二マス二文字を一単位とする。ダッシュなら「――」、三点リーダーなら「……」

 基本的に行またぎできないとされている。ただ現在では三点リーダーはまたいでもよいとする向きもある。


英数字

アルファベット

 記号としてのアルファベットは一マス一字で書く。(三年A組)(GPS衛星)。

 英単語などを書きたいときは90度寝かせて一マス二字の半角アルファベットを書く方法もある。

 (「Macintosh」と半角でそのまま書けば、縦書きでは90度寝た形で表示されるワープロソフトが多い。ただし半角アルファベットが行をまたいではならない。この禁則処理はワープロソフトにおまかせで)。

 場合によっては単語の大文字は一マス一字の全角アルファベットで書く仕様もある。こちらの場合でも全文で統一されている必要がある。

――――――――

数字

 数字は基本的に漢数字(一二三四五……)で書く。

 単位記号は「万・億・兆」単位だけ書く場合と、「千・百・十」も書く場合がある。前者は細かな数字まで書くことになるが、後者は誤差を表せるため、一長一短。この二種は基本的に全文でどちらかに統一するべきだが、明確にすべき桁を限りたいなどの特別な理由がある場合は混ぜてもよい。

 例:「二億四〇〇〇万」なら「一万」単位までは確定しているが、「千」単位以下は不明瞭になる。

 「二億四千万」なら「千万」単位までは確定しているが、「百万」単位以下は不明瞭になる。

 固有名詞の場合は全角の算用数字を書いてもよい。(iPhone8)。

 桁数が多いなど算用数字(12345……)のほうが見やすいと思われる場合は、90度寝かせて一マス二桁の半角算用数字を書いてもよい。ただし半角算用数字が行をまたいではならない。

 慣用句や故事成語などでは「漢数字」かつ「千・百・十」単位も書く。

 例:「四苦八苦」「七転八倒」「五里霧中」「海千山千」「八百万の神」

――――――――

縦中横(たてちゅうよこ)

 数字やアルファベットなどを一マス二字の半角英数字で書き、「縦中横」の組文字指定して縦書きでも「ウインドウズ95」の「95」を縦書きでもそのまま表せる。


感嘆符「!」や疑問符「?」

 地の文では品がよくないのであまり使わないほうがよい。

 ただしライトノベルの一人称視点の場合は、主人公の感じたこと思ったこと考えたことを書くため、使用頻度は高くなる。

 感嘆符「!」や疑問符「?」は一マス一文字を全角で書く。

 感嘆符「!」や疑問符「?」の後は一マス空けてから書く。

 感嘆符「!」や疑問符「?」の直後にカッコ閉じが来る場合は一マス空けずにカッコ閉じを書く。

 感嘆疑問符「!?」と疑問感嘆符「?!」は一マスに書く。一般的に「!?」の用例が多い。

 例:「あれ? なんで動かないんだよ! 動けよ!」

 禁則処理:行頭一マス目に感嘆符「!」や疑問符「?」が来るときは、前行のコマ外に書く。




会話文や引用や強調

カギカッコ「」

カッコ開き

「会話文」は基本的に改行してカギカッコは行頭一マス目にカッコ開き“「”を一マス一字で書く。

 地の文の一部として短い言葉を話している場合は、地の文同様行頭一マス目を空けて(一字下げて)カッコ開きを一マス一字に書く。

 例: 現代語の柳川先生は始業後すぐに教科書を開く。

   「八十五ページ、及川が読め」

    「はぁい」と答えて及川は教科書を読み始めた。

  この場合の「はぁい」は行頭一マスを空けて(一字下げて)も行頭一マスからでもかまわない。ただし全文で統一されていること。

 段落の始めに短い「引用」や「強調」のカギカッコが来る場合は、行頭一マス目を空けて(一字下げて)カッコ開きを一マス一字に書く。

(出版社によって一字下げず行頭一マス目にカッコ開き“「”を一マス一字に書くことがあるため要確認)。

 長い「引用」の場合は改行してカギカッコを付けて独立させ、原文のまま書く。

 小論文などで引用はカギカッコを使わず、二字下がりで書くことが多い。つまり引用文冒頭は行頭四マス目から書くことになり、以降は行頭三マス目から書くことになります。

 禁則処理:行末にカッコ開き“「”が来る場合は、次行頭一マス目にカッコ開きを書く。

(通常ワープロソフトにおまかせで)。


カッコ閉じ

 句点と同じマスにカッコ閉じ“」”を書く。“。」”で一マス。

 ただし全文で統一されていれば、句点とカッコ閉じを各一マスの計二マスに書いたり、句点を省いて書いたりしてもよい。(新聞や雑誌などの出版社は句点を省く)。

 例:「拙者、宮本武蔵と申す。」でも「拙者、宮本武蔵と申す」でもよい。

 禁則処理:行頭一マス目にカッコ閉じか来る場合は、前行のコマ外に書く。

 これによりコマ外は最大五文字使うことがある。

 例:「〜私も負けないようにがんばらなくち/ゃーっ!」

(通常ワープロソフトにおまかせで。なお現在は拗音・促音は行頭に来てもよい場合がある。だがワープロソフトでは依然として禁則処理されます)。

 会話文の場合、カッコ閉じ“」”のあとに改行する。

 ただし会話文が短かったり継続性がある場合は改行せずに続けて書く。

 例:「拙者、宮本武蔵と申す。」と言いざま、すらりと二刀を抜き放った。


会話文が複数行にまたがる場合

 二行目以降は一字下げず行頭一マス目から続けて書く。

(小学生の国語の教科書では二行目以降は一字下げて行頭二マス目から書いてありますがこれは例外です)。


会話文の次行

 段落が変わる場合は行頭一マス空けて(一字下げて)二マス目から書く。

 段落が変わらない場合は行頭一マス目から書く。

(出版社による。通常会話文の次に来る地の文は行頭一マス空けて二マス目から書く)。


二重カギカッコ『』

 書名などを表すときに用いる。

 カギカッコの中で、さらにカギカッコを使う必要があるときにも用いる。





最後に

 500回目の今回は「原稿用紙の使い方」について述べてみました。

 小説投稿サイトに掲載するから、小説投稿サイトで流行っている書き方をすればいい、というものでもありません。

 上級のあなたが出版社から「紙の書籍」依頼を受けたら、要求されるのは「紙の書籍」としての「原稿用紙の使い方」です。

 読み手や出版社を魅了したあなたが、まさか「原稿用紙の使い方」を知らないだなんてことは許されません。

 依頼が来る前に憶えてみませんか。



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