479.飛翔篇:ネームバリューのブランド化

 今回は「ブランド化」についてです。

「○○といったら△△さん」と言ってもらえるようになるには、戦略的な仕掛けが必要です。

「小説賞・新人賞」に応募しても、毎回まったく異なるジャンルで挑戦するのは不利だと思いませんか。

「異世界転生」で書いてきたのに、ある日突然「ホラー」を書いたら、読み手は喜ぶのでしょうか。





ネームバリューのブランド化


 より多くの読み手に作品を読んでもらいたいとき、私は各小説投稿サイトが企画する「小説賞・新人賞」に応募することをオススメしています。

 しかしそれだけだと単発の作品を読んでもらうことはできますが、過去作や次回作まで読んでもらうのは難しい。

 継続的に「小説賞・新人賞」へ応募を続けることで、さらに多くの読み手があなたの存在を認識します。

 では「小説賞・新人賞」へ応募し続けるだけで注目される書き手になれるのでしょうか。




小説賞・新人賞は初めての読み手を掴む

「小説賞・新人賞」は、あなたの存在を知らなかった読み手がまず読みます。

 そして自分に合うと思えばフォロワーさんにまわってくれるのです。

 しかし合わないと思われたら、次の「小説賞・新人賞」に応募しても読まれなくなります。

 つまり「小説賞・新人賞」はあなたの作品に初めて触れる読み手を掴みとるために存在するのです。

 もちろんあなたの存在を知らない人のほうが圧倒的に多いため、小説投稿サイトの企画する「小説賞・新人賞」へ応募するメリットのほうがデメリットを上回ります。

 なんの努力もせずにあなたの存在を読み手に知らせることなどできません。

 小説投稿サイトで「小説賞・新人賞」へ応募せずに作品を掲載しても、フォロワーさんは微々たるものです。


 読み手は「小説賞・新人賞」の一次選考を通過した作品の冒頭を読み、自分に合うと思えば連載を追ってくれます。

 もちろん「連載小説」だけでなく「長編読み切り」でも同じです。

 小説投稿サイトを活用するためには「小説賞・新人賞」へ応募し続けてください。

 そしてまず一次選考を通過することを目指すのです。

 一次選考を通過できたら、二次選考の通過が目標になります。

 最終選考まで残るようになれば、商業デビューが視野に入ってくるのです。




同じ作風の作品を揃える

 世の中には、あらゆるジャンルの小説が書ける「万能型」とも呼ぶべき書き手が存在します。

 マンガの神様である手塚治虫氏はSFや歴史もの、ファンタジーに医療もの、動物ものなど実にさまざまなジャンルのマンガを書いてマンガの可能性を読み手に知らしめました。

 小説の世界でも、筒井康隆氏や宮部みゆき氏、西尾維新氏のようにファンタジーやSFや学園ものなど幅広く書ける書き手はいるのです。

 でもそれは少数だと思います。

 多くの書き手は特定ジャンルの小説しか書けません。

 自分が興味を持って読むジャンルが限られるため、書けるジャンルも限られてしまうからです。

「こんな小説を書いてみよう」と着想するには、似たような作品が存在することを知っていなければなりません。

 つまり「SF」を書こうと思うのは、「SF」小説の存在を知っているからこそ。

「ファンタジー」を書こうと思うのは、「ファンタジー」小説の存在を知っているからこそです。

「推理」小説を読んだことのない人が「推理」小説を書くのは、まず無理でしょう。

「ホラー」小説を読んだことのない人が「ホラー」小説を恐ろしく書くことも難しい。


 多くの書き手は、自ら得意とするジャンルを有しています。

 田中芳樹氏なら『銀河英雄伝説』『タイタニア』などに代表される「宇宙」、『アルスラーン戦記』に代表される「ファンタジー」が有名ですが、すべてを貫いているのは「戦争」「戦略」「戦闘」など「戦」に関する小説だということです。

 水野良氏なら『ロードス島戦記』『魔法戦士リウイ』『グランクレスト戦記』と「ファンタジー」を舞台にした「英雄譚」つまり「ヒロイック・ファンタジー」に定評があります。

 田中芳樹氏と水野良氏はともに「戦争」ものを書いていますが、田中芳樹氏は「戦略」要素が強く、水野良氏は「英雄譚」要素が強いのです。

 これが書き手の「作風」ということになります。

 書きたい小説が「戦略」ものなのが田中芳樹氏、「英雄譚」なのが水野良氏とも言えるでしょう。

 この差が書き手の「作風」を形作り、地名度ネームバリューを高めることにつながります。

「この書き手はこんな小説をよく書く」という地名度ネームバリューが高まれば、それ自体が「ブランド化」してくるのです。

 つまり「戦略」ものなら田中芳樹氏、「英雄譚」なら水野良氏といった具合に、「○○と言ったら△△氏」というイコール記号が成立することが「ブランド化」になります。




ブランドとファスト

「ショートショートなら星新一氏」と言われるほどの書き手になれたら、読み手が「ショートショートを読みたい」と思ったとき真っ先に星新一氏の作品を手にとるはずです。

 このイコール記号を成立させるには、小説投稿サイトへ投稿する作品が同じジャンルや「作風」で書かれている必要があります。

 あれも書きたいこれも書きたいと節操なく手をつけているうちは大成しません。

 ジャンルと「作風」を絞った作品を「戦略的に」投稿していくことで「地名度ネームバリューのブランド化」が図れます。

 すでに多くのジャンルの小説を投稿してしまっているのなら、これからはその中からひとつのジャンルに絞ってください。

 「ブランド化」しなければ、いくら「地名度ネームバリュー」が高くてもイコール記号は生まれません。

 逆に言えば、読み手に「○○と言ったらあなた」とイコール記号を成立させられれば、あなたはすでに「ブランド」になっています。

 ジャンルを絞らず、書けるものを書けばいいと思っているうちは、「ファストファッション」や「ファストフード」のように手っ取り早く書ける器用な「ファスト化」の段階といえるでしょう。

 あなたは「ブランド」を目指しますか。「ファスト」を目指しますか。

 ちなみに「ファスト」も極めれば立派な「ブランド」になります。

「あれこれ書ける器用な書き手」という「ブランド」です。

 前述した筒井康隆氏、宮部みゆき氏、西尾維新氏のような高名な書き手たちは「ファスト」な「ブランド」ということになります。





最後に

 今回は「ネームバリューのブランド化」について述べてみました。

「○○と言ったらあなた」という「ブランド」になることが、小説を書く最終目標かもしれません。

「歴史小説」と言ったら吉川英治氏、司馬遼太郎氏、宮城谷昌光氏。

「時代小説」と言ったら藤沢周平氏、池波正太郎氏。

 出版界であなたがそう呼ばれることは当面ないでしょう。

 しかし小説投稿サイトにおいてなら、「○○と言ったらあなた」のイコール記号を成立させることはじゅうぶん可能なのです。

 そのためには「戦略的に」投稿する必要があります。

「同じジャンルを同じ作風で意図的にまとめあげる」戦略です。

 まったく難しくないので、挑戦してみたらいかがでしょうか。



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