478.飛翔篇:課題を誤ってとらえない

 今回は「小説賞・新人賞」の「課題を取り違えない」ことについてです。

『ピクシブ文芸大賞』が開催されてから早二年余が経ちました。

 ジャンルフリーで応募されましたが、受賞作は「文芸」ジャンルのみ。

 考え違いをして「異世界転生ファンタジー」を書いて応募した方も多いのではないでしょうか。

 こういった「課題の取り違え」を無くすことが、「プロの書き手」に近づくコツです。





課題を誤ってとらえない


「小説賞・新人賞」に応募しようとして、小説を書き始めたとします。

 ですが、あなたが書き始めた小説は「小説賞・新人賞」の規定に沿っているでしょうか。

 意外と規定を勘違いしていることがあるのです。




ピクシブ文芸大賞

『ピクシブ文芸大賞』は第一回が行なわれてから早二年余りが経ちます。

 このとき募集要項では「ジャンル」縛りがありませんでした。

 しかし受賞作を見ると「文芸」ジャンルだけが受賞しています。

 おそらく多くの方が「異世界転生ファンタジー」に代表される「ライトノベル」で応募したはずです。

 これまで他の小説投稿サイトで企画された「小説賞・新人賞」はたいてい「ライトノベル」を募集していたから当然の流れでしょう。

 中にはホラー小説や恋愛小説をピンポイントで指定してくる「小説賞・新人賞」が開催されることもあります。

 しかし『ピクシブ文芸』はサイト名に「文芸」と付くだけあって、現在では風前の灯の「文芸」ジャンルの掘り起こしを狙って設立されたようです。

 つまり多くの書き手は「ジャンル」縛りがないので「ライトノベル」を投稿しましたが、受賞したのはサイト名に即した「文芸」ジャンルのみだったのです。

 これは多くの書き手が「課題を誤ってとらえていた」ことの表れといえます。

『ピクシブ文芸』側もこの事態を憂慮してか、第二回の『ピクシブ文芸大賞』の開催はまだ案内もありません。

『ピクシブ文芸』はサイトの更新も停滞しているので、あまり成功しなかった企画なのかもしれないですね。

 もし『ピクシブ文芸大賞』の第二回が開催されたら、「文芸」ジャンルを投稿してくださいね。

 応募作品数は減るかもしれませんが、質の高い作品が少数精鋭で集まる可能性も高まると思います。

「課題を誤ってとらえない」ことで徒労を防ぎましょう。

 まぁライトノベルが応募できる「小説賞・新人賞」も企画したほうが、『ピクシブ文芸』の名前を世に知らしめるには一番でしょうけどね。




今からでも異世界転生はウケるか

『小説家になろう』で開催される『ネット小説大賞』は本当にジャンルを問いません。

 ライトノベルでもいいですし、推理小説でもいいですし、冒険活劇でもいいし、空想科学(SF)でもいいのです。

 他にも「HJネット小説大賞」もジャンルを問わないので腕試しによいでしょう。

 しかし今さら「異世界転生」ものを書いて正当に評価されるのでしょうか。

 おそらく応募作品が「異世界転生」だらけになっている可能性があります。

 その中であなたの「異世界転生」が有利になるはずがありませんよね。

 本当に面白い「異世界転生」ものを書いたとしても、「異世界転生」が今では凡百な発想だからです。

 そして「異世界転生」を避けようとしたら、今度は「パーティーを追放」「主人公最強」「スローライフ」だらけになりました。

 このあたりが『小説家になろう』における、最大手ならではの問題点でしょう。

 ある作品が人気を集めると、多くの書き手がそれと同じような作品を量産して投稿します。

 それにより企画されている「小説賞・新人賞」には、同じような作品が大量に投稿されている状況になってしまうのです。

 であれば、応募が殺到している「テンプレート」とは異なる作品のほうが有利ではないでしょうか。

「ハイファンタジー」ジャンルばかりなら「宇宙」ジャンルの佳作を投入すれば差別化できますよね。

 そういった発想と計算ができなければ、小説を書くべきではないと思います。




後出しジャンケンはやめましょう

 たとえば「一週間で十万字書ける」筆の速い書き手であれば「後出しジャンケン」ができるのです。

 応募締め切り一週間前まですでに投稿された作品をチェックしてまわり、「面白い作品」を見つけます。

 そして「面白い作品」をひとひねりした作品を執筆して、応募締め切り直前に応募してしまうのです。

 そうすると、「これは面白い」と思われた作品よりも上の小説だとみなされて、選考で有利になる可能性があります。

 あなたも執筆速度を高めれば「面白い作品」に対し、「後出しジャンケン」でそれを上回る小説が書けるのです。

 だからといって、私は「後出しジャンケン」を支持できません。

「後出しジャンケン」は確かに有利なスキルなのですが、つねに流行りの後追いしかできない。

 自ら「先駆者」とはなれないのです。

 さらに「プロの書き手」となった際に、自分で「企画」を練られなくなります。

「プロ」は編集さんから要請を受けたジャンルの物語を書かなければなりません。

「書きたいものを書きたいように書いて印税が手に入る」なんて思わないでください。

「プロの書き手」は担当の編集さんから「こんなお話を書いてください」と提案され、その物語の企画書を提出し、担当編集さんに見せてOKが出たらようやく執筆に入れる。さらに書き上げても担当編集さんが満足するまで書き直しの日々です。

 だから他人の後追いばかりしていると、担当編集さんを納得させられるレベルの作品が書けなくなります。

 今まで「後出しジャンケン」をしてきた書き手は、運良く「プロの書き手」になれたとしても後が続かないのです。

 だから「プロの書き手」となるきっかけを作った物語を、できるだけ引っ張って長引かせようとします。

 そうしなければ「あとが続かない」ことは、本人がいちばんわかっているからです。

 稼げるうちに稼いで、次の作品のアイデアを溜めていこうという思考になります。

「後出しジャンケン」はその点でも、あまりオススメできない執筆方法です。

「一週間で十万字書ける」能力のある人は、応募期間内に複数作応募することをオススメします。

 一定の水準で多作できることを示したほうが、「プロの書き手」として仕事をこなしていけると選考で有利になる可能性があるからです。






最後に

 今回は「課題を誤ってとらえない」ことについて述べてみました。

「小説賞・新人賞」の募集規定はしっかりと読んでください。

 的外れな作品を書いても徒労に終わるだけです。

 また応募が殺到すると想定されるジャンルを応募するのも、すぐに埋もれてしまうため投稿しないほうがよいでしょう。

 そういった作品を応募したいのであれば、募集開始直後に投稿してください。

 誰よりも早ければ、あとから投稿した人が「パクった」印象を与えることができます。

 もし「一週間で十万字書ける」能力があるのであれば、募集期間内で複数作できれば三作でも五作でも十作でも書けるだけ書いて応募しましょう。



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