477.飛翔篇:プロを目指すなら小説賞・新人賞へ

 今回は「小説賞・新人賞」を狙うことについてです。

 結局「プロの書き手」になれるのは、「小説賞・新人賞」で結果を出した人なんですよね。

「小説賞・新人賞」に参加もしないで「プロの書き手」になれるわけがありません。





プロを目指すなら小説賞・新人賞へ


 本コラムを読んでいて、「プロの書き手」を目指している方も多いと思います。

 ここまでお読みいただいていればおわかりでいらっしゃるでしょうけど、改めて言及致します。

「プロの書き手」になる最短コースは「小説賞・新人賞」を獲ることです。

「あの人って小説投稿サイトに連載していただけで出版社から紙の書籍化の話がきたらしいんだけど」と思い出した方もいらっしゃるでしょう。

 ですがそれはかなり稀なケースです。

 小説投稿サイト最大手の『小説家になろう』では現在約五八万の作品があります。

 この中から「紙の書籍」化した書き手が百人いたとすれば、確率は一/五千八百です。

 どんなに良質な作品を書いても出版社の編集さんの目に留まるのは五千八百作品にひとつ。

 これで「紙の書籍」化のために、ただ小説投稿サイトに投稿するだけでは「プロの書き手」になれないことは想像に難くないと思います。




小説賞・新人賞狙いが有利

 小説投稿サイトや小説雑誌、新聞社や地域で企画されている「小説賞・新人賞」があります。

 このうち「紙の書籍化」つまり「プロの書き手」になれるのは「小説雑誌」の賞が最も有利です。

 小説投稿サイトで書き慣れている書き手が「小説雑誌」の「小説賞・新人賞」に応募するとき、「紙の書籍」の仕様フォーマットで書いてくることは少ないと言われています。

「紙の書籍」の仕様フォーマットで書いてあり、小説の体をなしている作品は応募作の一割ほどだと言われているほどです。

 つまり「紙の書籍」の仕様フォーマットで書かれてあるか否かだけで一割近くまで作品を絞り込めます。

 ちなみに「小説雑誌」が公募するライトノベルの「小説賞・新人賞」に応募してくる人は二千〜三千人程度と聞いたことがあります。

 これはかなり多い人数です。

 推理小説の「小説賞・新人賞」では一桁少なく二百〜三百人程度。

 この中から「紙の書籍」の仕様フォーマットで書かれてあり小説の体をなしている作品は一割ですから、二十〜三十作品。

 冒頭で述べたように、『小説家になろう』にただ投稿して出版社の編集さんの目に留まる確率が一/五千八百だとします。

 すると、およそ二百倍ほど「紙の書籍化」つまり「プロの書き手」になれるチャンスがあるのです。

 ライトノベルにこだわらなければ、かなり有利ですよね。

 ライトノベルの「小説賞・新人賞」だと「紙の書籍」の仕様フォーマットで書かれてあり小説の体をなしている作品が一割なら二百〜三百作品が残ります。

 これも『小説家になろう』にただ投稿しているだけよりも十五倍の確率で「プロの書き手」になれるのです。

 ちなみに『小説家になろう』でタイアップ企画されていた『第六回ネット小説大賞』には一万一一六五作品が応募されていました。

 その中でも一割の法則を用いると一/一一一六.五と『小説家になろう』にただ投稿しているだけで「プロの書き手」になれる確率よりも狭き門となります。

 ただしこれは大賞を獲る確率であって、入賞までを含めれば三〇/一万一一六五となり、一/三七二.二の確率になり、一割の法則を用いると一/三七.二二にまでラインが下がります。

『小説家になろう』にただ投稿しているだけで「プロの書き手」になれた方よりも、受賞して出版社の目に留まる方が圧倒的に多いことがわかるでしょう。

 であれば「プロの書き手」になって「紙の書籍化」を目指すのなら、「小説雜誌」主催でも「小説投稿サイト」主催でもいいので「小説賞・新人賞」を狙うべきなのは明らかです。




小説賞・新人賞は目利きが読んでいる

「小説賞・新人賞」に応募するとして、選考するのは下読みさんです。

「下読み」とは応募作品の一次選考をするために、最初に応募作を読む方です。

 出版社の駆け出し編集さんやデビュー直後の「プロの書き手」などが割り当てられていると書籍に書いてあります。

 下読みさんは一回の「小説賞・新人賞」で数十作を読み、そのすべてに選評を付けて一次選考の当落を判断するのです。

 選評を付けさせるのは「本当に読んで当落の判断をしたのかどうか」を上の人がチェックするためです。

 一回に数十作も読む人というのは、とても目が肥えています。

 たとえば『小説家になろう』に多い「異世界転生」ものばかり応募されていたら、「あぁまたこれか」とそれだけでマイナスイメージを持たれてしまうのです。

 下読みさんも「目新しさ」のある作品を高く評価するのは当然でしょう。

『第六回ネット小説大賞』でグランプリを獲得したのは黒崎リク氏『帝都メルヒェン探偵録』という短編連作ミステリー小説でした。

「ハイファンタジー」や「異世界転生」のようなありきたりな作品ではありません。

 他の作品とは一味違う「目新しさ」のある作品です。

 目の肥えた下読みさんも楽しく読めたのではないでしょうか。




小説賞・新人賞を獲るには

 では実際に「小説賞・新人賞」を獲るにはどうすればよいのでしょうか。

 まず一割の法則である「紙の書籍」の仕様フォーマットで書かれているかどうかです。


 小説投稿サイトの場合、読みやすさを優先して「一文改行」スタイルをとることが多く、さらに「一文改行+空行」スタイルというページがより軽くなるような仕様フォーマットで書く人も殊のほか多いように見受けられます。

 ですが「小説賞・新人賞」を狙うためには、「紙の書籍」の仕様フォーマットに従う必要があります。

「一文改行」スタイルでは評価されづらいのです。


 次に「行頭一字下げ」ができているかどうか。

 これも小説投稿サイトでは「一文改行」スタイルをとっているため、行頭を下げない作品が多いのです。

「行頭一字下げ」も「紙の書籍」の仕様フォーマットですので、これも留意しましょう。


 他には「文章はすべて全角文字で書く」「数字は算用数字ではなく漢数字で書く」というものもあります。

 とくにスマートフォンで執筆している人は「文章はすべて全角文字で書く」のがたいへんなため、つい手軽に入力できる半角文字を使ってしまいがちです。「行頭一字下げ」をしているつもりでも、空白が「半角スペース」であるという理由だけで見切られることもあります。

 また「数字は算用数字ではなく漢数字で書く」も、スマートフォンで執筆している人にはたいへんな手間がかかるのです。算用数字とは「1234」のこと、漢数字とは「一二三四」のことです。

 なぜ「すべて全角文字」「漢数字」で書くべきなのでしょうか。

 それは「紙の書籍」にしたとき、ほとんどの書籍が「縦書き」で出力されるからです。

「半角文字」を使うと、縦書きにした際「半角文字」部分が90度寝て表示されてしまいます。また「半角スペース」を入れると、各行の文字の高さが揃わなくなります。これを直すのに結構手間がかかるのです。

 なお「算用数字」に関しては「全角文字」で書くことと、もうひとつの条件をクリアしていれば使っていいことになっています。それは「固有名詞」であることです。

 たとえば「iPhone 8」というスマートフォンがあります。これを書くときは面倒でも全角文字で「iPhone8」と書くのです。固有名詞なので「iPhone八」とは書きません。「アイフォーン八」とも書きません。

 また過去に「Windows 95」というOSがありました。これを「ウインドウズ九十五」とは書きません。こちらはアルファベットが長いので「Windows」を90度寝かせることを承知で「Windows95」と書く場合があります。このとき「95」を組み文字にして縦書きでも全角一字に横書きで「95」と表示されるよう手配することもあるのです。これを「縦中横たてちゅうよこ」と言います。「縦中横」は通常半角2文字、たまに3文字、例外的に4文字を組むことがあるのです。

 ですが出版社によっては「縦中横」を嫌うところもあり、基本は「すべて全角文字」「漢数字」で書き、固有名詞のときは「算用数字」も可と憶えておけばよいでしょう。





最後に

 今回は「プロを目指すなら小説賞・新人賞へ」について述べてみました。

 ただ漠然と小説投稿サイトに作品を投稿したら出版社から「紙の書籍化」の話が来た。なんてことはまずありません。詐欺を疑ってかかるべきです。

 小説投稿サイトから「プロの書き手」を目指すのであれば、必ず開催されている「小説賞・新人賞」に応募してください。

 応募作は多くの人が読むためブックマーク数や評価が増えやすく、それだけでも執筆の苦労が吹き飛ぶほど満足のいく結果が待っています。

 だから小説投稿サイトを利用するなら「小説賞・新人賞」へ応募するのが最適解なのです。

 本コラムのように「小説賞・新人賞」へ応募もせず、四七七回以上も連載してもどこからも声はかかりません。

「小説賞・新人賞」へ応募していないのですから、読む人なんてほとんどいない証です。

 そして「紙の書籍」の仕様フォーマットで書かれているかどうか。

 クリアしてさえいれば、チャンスは身近に存在するはずです。



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