飛翔篇〜ワンランク上の書き手へ向かおう

474.飛翔篇:書きたいのかなりたいのか

 今回から「飛翔篇」が始まります。

「プロの書き手(小説家)」を見据えた上級向けのコラムが多めになります。

 今回は「小説を書きたいのか、小説家になりたいのか」についてです。

「小説を書いて印税生活がしたいんだ」という人がいてもよい。

 その本心を隠して「多くの人に小説を読んでもらいたい」なんて建前を言うのが悪いのです。

 とくに「小説賞・新人賞」に応募しておいて建前を言うのでは支離滅裂です。





書きたいのかなりたいのか


 あなたの執筆姿勢について覚悟のほどを聞かせてください。

 あなたは小説を書きたいのですか。それとも「プロの書き手(小説家)」になりたいのですか。

 小説を書きたい方は、たとえ利益にならなくても小説を書き続けるでしょう。おそらく一生アマチュアのままでもかまわない。そのくらいの気概があります。

「プロの書き手」になりたい方は、そこが到達点になって満足してしまう可能性があるのです。だから「プロの書き手」になってからも小説を書き続けるんだという強い意志を持ってください。

「プロの書き手」になるには、なんとかして出版社にあなたの存在を認めさせることから始めましょう。なにも考えずに小説投稿サイトへ作品を掲載していても、出版社からお声がかかることなどまずありません。




建前なんかうっちゃれ

 あなたが心底「小説を書く」のが好きな場合、たとえどんな状況であっても執筆をやめることはないでしょう。

 いくら小説投稿サイトに掲載しても「紙の書籍化」の話が来ない。それでも執筆をやめるなんて選択肢はありません。小説を執筆すること、それが読まれて閲覧数(PV)が増え、ブックマークが増え、文章評価・ストーリー評価が付くだけで満足できる。「小説を書く」ことが「趣味」であり、「小説を書いて」いないと落ち着かないような人は、小説投稿サイトでストレスを感じることなく投稿や連載を続けられます。

 しかし本心からそう思っている人は稀なのです。


 多くの人は「プロの書き手」になりたいがために小説を書いています。

 当然「プロになる」見返りが欲しくて小説投稿サイトへ作品を掲載しているはずです。

 それなら「自分は小説を書けるだけで満足だ」などと建前をいう必要なんてありません。

 公然と「私はプロの書き手を目指しています」と宣言すべきです。

 なぜか。

 意図的に自分へ緊張感プレッシャーをかけるためです。

 建前を掲げて「私はプロの書き手になりたいけど、なれなかったら恥ずかしい。だからとてもプロの書き手になりたいなんて言えない」という本音を隠してしまいます。

 そんなことでは「プロの書き手」になることなんてできはしません。

 だからいっそのこと、建前なんてうっちゃって本音をさらけ出してみませんか。

 あなたが「プロの書き手」を目指していることを読み手が知れば、そういう前提で感想が届きます。最初は手厳しい指摘が多く寄せられるでしょう。でもそれが次のステップへの助走なのです。




豆腐メンタルはプロを諦めよう

「プロ志望」と宣言したからこそ、よりよい原稿を書こうとしますし、感想も「この人はプロとして◯◯が足りない」と具体的なアドバイスがもらえます。

 意志が脆弱な、いわゆる「豆腐メンタル」の書き手には精神的にかなり厳しい状況だと思います。

 しかし「プロの書き手」になれば「豆腐メンタル」だなんて言い訳にもなりません。

 あなたと編集さんの共同作業で生み出した「企画書」から、あなたが書きたくもない小説を書かされるのです。

 なんとか原稿を書きあげても、編集さんが納得しなかったら書き直しを要求されます。

自尊心プライド」が邪魔をするでしょう。

 指摘された点を改善して再度編集さんに見てもらいます。納得しななければ書き直し。このループです。

「豆腐メンタル」では一回目の段階で心が砕けます。

 そして続きが書けなくなって「プロの書き手」から脱落していくのです。

 そんな手間をかけないと自分が「豆腐メンタル」であることに気づけないなら、まぁ致し方なし。できれば「プロの書き手」になる前に、自分が「豆腐メンタル」かどうか知っておくべきです。

「豆腐メンタル」の方は、よほどすぐれた編集さんが担当してくれなければ、小説投稿サイトに連載している作品を「紙の書籍」にするだけでも心身ともにズタボロになってしまいます。

 だから「豆腐メンタル」の方は「プロの書き手」を目指すべきではありません。

 趣味の範囲内で、ときどき「小説賞・新人賞」などにも投稿して、気軽に楽しく執筆活動を謳歌することをオススメします。




プロの書き手は環境の変化

 小説投稿サイトの「小説賞・新人賞」に投稿して、作品の閲覧数(PV)を増やし、ブックマークを増やし、文章評価・ストーリー評価を増やすこと。

 これは小説投稿サイトでなければできないことです。

 個人ブログや個人Webページなどに執筆した小説を投稿するブームはとうの昔に終わっています。

 それでも個人ブログや個人Webページは宣伝・広報・拡散目的としていまだに強い影響力を持っているのです。

 TwitterやFacebookなどのSNSで宣伝・広報・拡散するよりも、個人ブログや個人Webページでしたほうが、大きな反響を得やすい。

 だから小説を書いたら、適切な小説投稿サイトに投稿掲載して、それをTwitterやFacebookなどで宣伝・広報・拡散し、ブログやWebページを持っていればそこでも宣伝等をしっかりと行ないます。


 小説の質が高ければ、閲覧数(PV)・ブックマーク・評価が高まりますし、高まればより多くの読み手に作品が読まれることになります。

 だからといって閲覧数(PV)・ブックマーク・評価が一番だからといって大賞が獲れるわけではありません。

 一次選考を通過した作品の中で中段くらいの位置にいた作品が大賞を獲ることが意外と多い。

 小説投稿サイトで一番を獲る作品は「異世界転生」「悪役令嬢」などの「テンプレート」に沿っていることが多く、出版社などが流行りの「テンプレート」を嫌う傾向があるからです。

「小説賞・新人賞」に入賞・佳作などでなにがしかの賞を獲れたら、主催の出版社から「紙の書籍化」の打診が来ることがあります。受け入れれば晴れて「プロの書き手」に向けて動き出すことになります。

「プロの書き手」には制約が多いことは次回にも書きますが、当面は「自分の好きな作品を書けない」というデメリットがあるのです。

 また「紙の書籍化」をしている最中に小説投稿サイトへ作品を投稿するのも控えさせられることもあります。そんな余裕があるのなら、一刻も早く「紙の書籍」の原稿を完成させましょう。


 そういったものも含めて、改めて問います。

 あなたは小説を書きたいのですか。それとも「プロの書き手」になりたいのですか。





最後に

 今回は「書きたいのかなりたいのか」について述べてみました。

「プロの書き手」になれば「自分の考えた小説を書いて印税が手に入る」と皮算用する方が多いと思います。

 しかし「プロの書き手」を目指している方は、「プロの書き手」になれた段階で目標を達成してしまうのです。それから先、執筆活動を続けていくには、また別の目標を設定することになります。

「小説を書ければそれだけで満足」という方は「自分の考えた小説が書けなくなる」と感じて「プロの書き手」になりたくないかもしれませんね。でも「小説を書ければそれだけで満足」できるため、「プロの書き手」になっても執筆を苦にしないのです。

 皮肉なもので、「プロの書き手」を目指している人は挫折しやすく、「プロの書き手」と距離をおこうとする人のほうが「プロの書き手」に必要な心構えを持っています。

「小説が書ければそれだけで満足」という方が「プロの書き手になりたい」と宣言することが、結局「プロの書き手」に最も近づけるのです。

 まずは「小説を書ければそれだけで満足」できるレベルまで執筆に没頭しましょう。



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