470.発想篇:制限があるから工夫できる
今回は「制限」と「工夫」についてです。
「小説賞・新人賞」に応募しようと思ったけど、自分には不利な「制限」が付けられていて躊躇してしまった。
よくあることです。
そんなとき「工夫」をして「制限」を回避してみましょう。
制限があるから工夫できる
応募したい「小説賞・新人賞」には、「制限」が設けられているケースもあると思います。
そうすると「この制限だと書きたいものが書けないな」と感じるでしょう。
しかし「制限」があることで、発想に「工夫」が生まれることが多いのです。
制限は範囲を狭めるという幻想
「小説賞・新人賞」に設けられている「制限」は、書ける小説の範囲を狭めるのではないか。
そうお思いになるのは当然のことです。
そういうときは逆に考えてみましょう。
「制限」があることによって、「制限」ギリギリのところで物語を展開できないか。
そう考えると発想が豊かになります。
たとえば「女性向け恋愛小説」オンリーの「小説賞・新人賞」の場合。
「女性向け恋愛小説」を書かなければいけない、とだけ考えるのは底が浅いのです。
第一「女性向け恋愛小説」という言葉だけでは、どんな物語を書けばいいのか漠然としています。
どんな「キーワード」が「女性向け恋愛小説」につながるのか発想しづらいから難しく感じるのです。
しかし「異世界転生」しか書けない人でも、その中に「女性向け恋愛小説」の要素を取り込めば、ギリギリ「女性向け恋愛小説」と名乗れます。
『小説家になろう』では「異世界恋愛」ジャンルということになるでしょうか。
「空想科学(SF)」ジャンルしか書けない人でも、その中に「女性向け恋愛小説」の要素を取り込めば、これもまたギリギリ「女性向け恋愛小説」と名乗れます。
このように「制限」は、あなたが書けるジャンルと交差させて「要素」として取り込むことで、「課題」に変わるのです。
範囲を狭めるのではなく、「その範囲にかかるような作品を書く」という発想をしましょう。
そうすれば「女性向け恋愛小説」を書いたことのない人でも、「女性向け恋愛小説」の要素を持つ作品が書けて「小説賞・新人賞」に応募することができるようになります。
「制限」があると範囲が限定されてしまうのではないか、と考えるのが並みの書き手です。
「制限」ギリギリを狙って別のジャンルや書きやすい世界観と交差させて生み出された物語も、「制限」を守った作品に含まれます。
ただしこれができるのは「小説賞・新人賞」狙いのときだけです。
「小説賞・新人賞」狙いで何作も「女性向け恋愛小説」要素を持つ作品を書いていけば、そのうち自然と「女性向け恋愛小説」が書けるようになります。
しかし平時からジャンルを無視するような行ないは、小説投稿サイトの存立にかかわるのでやらないようにしてください。
そのような行為は自らの首を絞めるものと思いましょう。
制限をとりあえず無視する
「小説賞・新人賞」に「制限」があると頭を悩ませることになります。
「制限」に収まるような発想をしようとすると、スケールの小さな作品しか出来あがらないのです。
「制限」があってもスケールを大きくする方法はあります。
まず「制限」をかけずに書きたいように書いてみましょう。
完成したら「制限」に照らし合わせて、推敲を始めるのです。
「こういうことをしてはならない」という「制限」があるのなら、それをそぎ落としたり別のものに入れ替えたりします。
たとえば「異世界転生は禁止」という「制限」があるのなら、完成した原稿から「異世界転生」の要素を別のものに入れ替えるのです。
現在『小説家になろう』では「勇者パーティーを追放されたけど実はSSSランクで魔王を退治しに行く」というパターンが流行っています。
これは「異世界転生は禁止」という「制限」から生まれた新たな「テンプレート」です。
つまり「制限」があることで、一部の書き手は回避する「工夫」を施します。
「工夫」には発想力が必要です。
これまで記してきた発想法を駆使して「工夫」してみましょう。
「工夫」ひとつで「制限」は突破できます。
突破できない「制限」などないのです。
「異世界転生は禁止」の「制限」を「工夫」して「追放」ものが生まれました。
「制限」よりも大きな作品を書いて「制限」の枠をかけることによって、最初から「制限」を意識して書いた小説よりもスケールの大きな作品が生まれるのです。
その「型破り」な発想法から、名作は生まれます。
「制限」されると小ぢんまりとした作品がごろごろ出てきますが、「工夫」ひとつで奥深い物語も作り出せるのです。
制限があるから工夫する
このように「制限」がある「小説賞・新人賞」の場合、まずは「制限」を無視して作品を書いてください。
書き終わってから「制限」に収まるよう「工夫」して推敲するのです。
さすがに「十万字前後」という分量を無視して三十万字書いたり三万字しか書けなかったりした場合は「工夫」のしようがありません。
最低限「制限文字数」には従ったほうがよいでしょう。
「青春」ものという「制限」があったとしても「異世界ファンタジー」内で「青春」させたっていいのです。「空想科学(SF)」内で「青春」させたっていいのです。
筒井康隆氏は「空想科学(SF)」内で「青春」ものを書いて『時をかける少女』を生み出しました。
田中芳樹氏は「宇宙」内で「文学」ものを書いて『銀河英雄伝説』を生み出したのです。
「制限」があるから書き手は「工夫」します。
とくに自分の得意分野を生かして他分野の小説を書くことは、「工夫」の最たるものです。
田中芳樹氏は「宇宙」「異世界」を舞台にした戦争ものを書くのが得意ですが、著作を読むと「文学」的素養もじゅうぶん持ち合わせているように見受けられます。
もし文学小説を書いたら純文学の賞も狙えるのではないでしょうか。
現在では冲方丁氏や西尾維新氏が直木三十五賞(直木賞)を狙える位置にいると思います。
大衆小説やライトノベルを書いているからといって、芥川龍之介賞・直木賞を狙えないということはないのです。
ただし定められた小説雑誌に作品が掲載されている必要があります。
載せてもらえるように手を回してくれる優秀な編集さんがいなければ難しいことは確かです。
冲方丁氏は1996年に『黒い季節』で角川スニーカー大賞金賞を獲得し、小説家デビューを果たします。
角川スニーカー文庫といえば水野良氏『ロードス島戦記』に代表されるライトノベルの始祖ともいえるレーベルです。
そして『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞を、『天地明察』で吉川英治文学新人賞・本屋大賞・舟橋聖一文学賞・北東文芸賞を受賞して第143回直木賞候補となりました。
面白いことに『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞を受賞しているのに、『天地明察』で吉川英治文学新人賞を獲っていることです。
そこにライトノベルやSF小説は「文学小説ではない」という文壇の驕りが感じ取れます。
冲方丁氏は2016年12月に『十二人の死にたい子どもたち』で再び第156回直木賞候補となったのです。
最後に
今回は「制限があるから工夫できる」ことについて述べました。
「制限」は逆手にとれば豊かな発想が湧いてくるのです。
「推理小説を書く」という「制限」があり、あなたの得意なのは「異世界転移小説」だとします。
そうであれば「制限」はいったん忘れてください。
そして「探偵が異世界転移して王国で起きる不可解な事件を解決する」という物語を書きましょう。
分類すれば「異世界転移小説」だとしても、「推理小説」として投稿できるレベルの作品に仕上げるのです。
「制限」を逆手にとって「工夫」すれば、あなたの得意なジャンルで「制限」に当てはまる作品が書けます。
「制限」ではなく「課題」くらいにとらえて、あなたの得意なジャンルと作風で書きあげ、最後に「制限」の枠に収まるように推敲すればいいのです。
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