464.発想篇:自分の武器を生かす

 今回は「自分の武器」についてです。

 あなたには興味を持って学び、周りの誰よりも得意なジャンルがあるはずです。

 日本中を見渡せば、あなたよりもレベルの高い人は必ずいます。

 それであっても「自分の武器」を生かした作品を書くべきです。





自分の武器を生かす


 人にはそれぞれ得意な分野があります。

 私は中国古典が好きでよく読みますので、中国古典が得意です。

 ですが世の中には中国古典を専門に研究している方が大勢いらっしゃいます。

 その方たちと比べたら、私の知識なんてお子様レベルと呼ばれるかもしれません。

 中国古典の影響を受けた小説を書こうと思っていますが、知識は専門家に及ばない。

 私は中国古典を踏まえた小説を引っ込めて、別のジャンルの小説を書くべきなのでしょうか。




人にはそれぞれ武器がある

 大前提として、人にはそれぞれ「武器」があります。

 これまでの人生において力を注いできたものが必ずあるからです。

 現代文に強い人、古文に強い人、日本史に詳しい人、世界史に詳しい人、数学に詳しい人、科学に詳しい人、化学に詳しい人、空想科学(SF)に詳しい人、地球環境に関心がある人、貧困層に関心がある人、投資に明るい人、貯金に明るい人。

 人には実にさまざまな「武器」があるのです。

 ですが「武器」にはレベルがあります。


 他人が作った世界観の上で物語を作るのがうまい人。

 ひとりで世界観を作り上げて物語を構築できる人。

 後者のレベルが高いことは言うまでもありません。

 では前者に該当する方は小説を書いてはいけないのでしょうか。

 そんなことはないのです。


 書き手にとって最も得意とする「武器」が他人よりレベルが劣っていても、あなたの中では最高の「武器」であることに変わりありません。

 であれば最高の「武器」を用いて小説を書くべきです。

 他人のほうがレベルが高いからと「武器」を引っ込めてしまうと、なにも書けなくなってしまいます。

 古代人が作り上げたギリシャ神話・ローマ神話 ・北欧神話・ケルト神話、J.R.R.トールキン氏『指輪物語』、水野良氏『ロードス島戦記』を比べてみてください。

 ファンタジーのレベルでいえば「ギリシャ神話・ローマ神話・北欧神話・ケルト神話」が最も高く、それを整理してひとつの世界観に落とし込んだ『指輪物語』がそれに次ぎます。『ロードス島戦記』はそれをさらに整理したTRPG『Dungeons & Dragons』(『D&D』)のシステムを使ってオリジナルの世界観に落とし込んだ作品です。レベルは『指輪物語』より劣ります。

 ですが日本では最もレベルの低い『ロードス島戦記』の人気がひじょうに高いのです。

 なぜだと思いますか。

 水野良氏が己の「武器」である『指輪物語』『D&D』の知識を前面に押し出して、かつ一般人にわかりやすい文体で書いたからです。

『指輪物語』『D&D』の知識において、水野良氏よりもレベルの高い方はいらっしゃったことでしょう。

 しかし水野良氏は「武器」として携えて小説界に打って出ました。

 結果として、日本の「剣と魔法のファンタジー」ものの始祖のひとりとなったのです。




書きやすいもの、書けるものを書けばいい

 誰かが先に投稿しているから。自分よりも詳しい人がいるから。

 そんな理由で小説を書かないのはあまりにももったいない。

 小説には著作権がありますが、創作は盗作でなければなんでもありです。

 たとえ誰かが先に同じアイデアの作品を書いていたとしても、それで執筆を取り止める必要はありません。

 小説投稿サイト『小説家になろう』における「テンプレート」が良い例です。

 先駆者が「テンプレート」を築きあげて、フォロワーがその「テンプレート」を踏襲して新たな物語を紡いでいく。

 書き手が触れた作品の中で「面白い」ものを見つけたら、それに似た作品を書く。

 小説界はそうやって拡大してきた過去があります。

 書き手にとって「書きやすい」もの、「これなら書ける」ものがあるのなら、それを書けばいいのです。

 物語のパターンつまり「テンプレート」には著作権がありません。

 もちろん固有名詞の使い回しは盗用ですのでするべきではないのですが、すでに一般化された単語には著作権は発生しないのです。

 たとえば「エルフ」「ドワーフ」といった「亜人(デミヒューマン)」は、すでに多くの作品が用いてきた「一般化された単語」ですから著作権を心配する必要はありません。「ホビット」は『指輪物語』で創作された存在であり名称なので、不用意に用いると著作権を侵害してしまいます。『ロードス島戦記』では「グラスランナー」という名称に呼び替えられています。

 ゲームのエニックス(現スクウェアエニックス)『DRAGON QUEST』の舞台「アレフガルド」という単語は「一般化」されていませんから、小説で用いれば「盗用」とみなされます。

 この「著作権」「盗用」の線引きがわかっていることが第一です。

 あとは「テンプレート」や「一般化された単語」を用いてあなたの書きやすい小説を書けば「一次創作(オリジナル)」と判断されます。




盗用は絶対禁止

 どれほど面白い小説でも、「盗用」してしまうと手厳しい評価が待ち受けています。

 閲覧数(PV)は高いのに、文章評価・ストーリー評価が付けてもらえず、ブックマークも増えない。

 それは「盗用」が疑われているからかもしれません。

 あなたにとって「書きやすい」物語が、他人の創作物とまるっきりかぶることはありえるのです。

 そして小説投稿サイトには『小説家になろう』だけでも投稿数は57万作品を超えています。

 ですから誰かの作品とかぶってしまうことはありえるのです。

 それをとって「○○さんの△△という作品の盗用パクリだ」と言われかねない状況になっています。

 実際問題、57万作品もあれば、たいていかぶるはずです。

「万が一」でも57作品は酷似した作品があるという計算が成り立ちます。

 しかもたいていの作品が「テンプレート」に則った作品なのです。

盗用パクリ」を気にするようなら、あらかじめ検索してみてください。

 キャラの名前などの固有名詞で検索をかけて、同じ作品に複数個かぶってしまうようなら、固有名詞を変えましょう。

 物語の展開には著作権が及びませんから、「テンプレート」が出回るのです。

「テンプレート」は悪ではありません。

 ただし丸々同じ物語にしてしまうのでは芸がない。

 ある時点まではブックマークを増やすために「テンプレート」に沿って進め、そこを過ぎたら「オリジナル」な展開をさせましょう。

 読み手が「テンプレート」だと思って読んでみたら、予想外の出来事が起こった。

 多くの読み手はここでがっつりと食いついてきます。

 中には「テンプレート」じゃないのかと立ち去る読み手も存在するのです。

 しかし多くの読み手は予想外の出来事を受け入れて、「書き手の個性」と認めてくれます。

 だから怯えることなく、書きやすいもの、書けるものを書けばいいのです。

「自分の武器」を信じる発想法と言えます。





最後に

 今回は「自分の武器を生かす」ことについて述べてみました。

 あなたが最も得意とするものを書きましょう。

 たとえあなた以上に詳しい方がいたとしても、それを理由に小説を書かないなんて萎縮しすぎです。

 小説を書く基準は「あなたが最も得意とするもの」であって、「他人より劣っているもの」は書かないということではありません。

 書きたい物語があるのなら、ぜひ書いてください。

 書きやすい物語があるのなら、連載してみましょう。

 書ける物語があるのなら、他人なんて気にせずに書いてしまうのです。

 そこからあなたの書き手人生が始まりますよ。



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