462.発想篇:多ジャンルのことを同時に考える
今回は「多ジャンルの情報の組み合わせ」でアイデアをひねり出す発想法です。
すでに脳にインプットされている情報も、紙などに書き出してみると予想外のアイデアが生まれてくることがあります。
多ジャンルのことを同時に考える
「アイデア」を生み出すためにひとつのジャンルにこだわっていると、すぐに煮え切ってしまって案外よい「アイデア」が出てこないものです。
そんなときは、同時にたくさんのことを考えてみると、新たなひらめきが浮かんでくることがあります。
「アイデア」とは、「すでに脳にインプットされている情報の組み合わせ」でしか生み出せません。
「斬新なアイデア」と呼ばれるものも、実際にはその人にとって「脳にインプットされている情報の組み合わせ」でしかなかったのです。
いろんなものに興味を持とう
小説を書く人は、小説を書くスキルを磨くことに専念し、他のことをするべきではない。
そんな古い考え方をしている人が案外多いものです。
ですが「アイデア」が「すでに脳にインプットされている情報の組み合わせ」でしかないのなら、情報の種類と量を増やすべきでしょう。
なんにでも興味を持って調べるのです。
たとえば貧乏でその日の食事にも事欠く人が、書店で「株式投資」の本を読む。
そうすれば貧乏であろうと「株式投資」の知識が身につきます。
あとは原資さえあれば財産を増やしていけ、大金持ちに成り上がることも不可能ではありません。
これはちょっと生々しい話でしたが、小説を書く人も同じことが言えます。
中国古典『孫子』の知識があれば、歩兵を主体にした戦争を書くことができます。
中国古典『貞観政要』の知識があれば、巨大帝国の正しい統治法がわかるのです。
ニッコロ・マキアヴェッリ氏『君主論』の知識があれば、西欧の封建政治のことが書けます。
宮本武蔵氏『五輪書』の知識があれば、正しい剣の持ち方から構え方、斬り方や心の持ちようまで理解できるでしょう。
さしづめこの四冊を読んでいれば、ハイファンタジーでの「勇者もの」は書けます。
他にも中国古典『韓非子』の知識があれば、為政者に諫言する者の心配りや心理的な駆け引きがわかります。
中国古典『春秋』『戦国策』、司馬遷氏『史記』を読んでいれば中国大陸における国際政治の歴史が身につきます。
そうすれば田中芳樹氏のように政治色の濃い戦争小説も書けるでしょう。
私は中国古典を多数読み込んでいるので、田中芳樹氏のような作品が書ければベストだと思います。
でもヒロイック・ファンタジーものを書きたいんですよね。
そこで戦争ものの『神話(秋暁の霧 地を治む)』、勇者ものの『伝説』、ヒロイック・ファンタジーものの『戦記』、日常ものの『物語』の四本立てを構想しています。
つまり「得意」なものや書けるものから書いていって、未体験の領域に挑戦することにしました。
元々日常ものには強いので、『戦記』までをうまくまとめられればあとは書きたいように書けるのです。
そのためにもまずは『神話』に手をつけなければなりません。
(「小説の書き方」コラムの連載を最優先にしていて、まだ「プロット」で止まっていますが)。
このように、自分の「武器」と「書きたいもの」を理解したうえで広く情報を収集し、「アイデア」がひらめくように脳に記憶しておくのです。
冒頭で述べましたが、アイデアは「すでに脳にインプットされている情報の組み合わせ」からしか生まれません。
さまざまな分野から情報を得て脳にインプットされていることが、「アイデア」を生み出す泉なのです。
多ジャンルのことを同時に考える
さまざまな情報源から「アイデア」になりそうな情報を脳にインプットしてあるとします。
それだけだとそのジャンルについて考えているときにしか、そのジャンルの「アイデア」は生まれてきません。
しかしさまざまなジャンルのことを同時に考えていると、「脳にインプットされている情報」同士がジャンルの垣根を超えて結びつき、「アイデア」となって生み出されるのです。
これはあるジャンルだけを極めてきた人には到達できない「発想法」だと言えます。
「斬新なアイデア」とは、このようにジャンルの垣根を超えて情報が結びつくことで発生するのです。
もしあなたが「異世界転生ファンタジー」が好きで、小説はそれしか読んでこなかったとします。
するとあなたが小説を書こうとしたとき「異世界転生ファンタジー」以外のジャンルが書けないことにもつながるのです。
小説にはさまざまなジャンルがあります。
そのうちひとつしか書けないのでは、書くごとに先細りする一方です。
もうひとつ好きなジャンルがあれば、そのジャンルとの組み合わせで多様性が生み出されます。
だいたい頭に入っているジャンルの三乗くらいの「アイデア」が出てくるものです。
つまり二つのジャンルなら八個、三つのジャンルなら二十七個、四つのジャンルなら六十四個、五つのジャンルなら百二十五個もの「アイデア」が隠されています。
それに対しひとつのジャンルだけしか知らなければ、たった一個の「アイデア」しか出てきません。
どれだけ不利かは語らずとも察せられますよね。
外部の情報と組み合わせる
だからといって多くのジャンルの情報を脳にインプットするのはなかなか難しいと思います。
そこで得意なジャンルの情報は脳内に記憶し、苦手なジャンルの情報は書籍やインターネットから引き出すようにしてみましょう。
先ほど「株式投資」についてお話ししましたが、なかなか難しいルールも多いため脳へインプットするのが難しいジャンルです。
しかし「株式投資」の情報は専門書一冊購入してめくっていくだけにし、脳内の「異世界ファンタジー」の情報と、書籍の「株式投資」の情報を組み合わせてみてください。
すると完全ではないにしても、ある程度的を射た「アイデア」が生み出されます。
すべて記憶頼りになるよりも、書き手本人も「意外性」を感じるような「アイデア」を出せるようになります。
またインターネットが使える人は、さまざまなジャンルを検索して記事を読みましょう。
そうすれば「新たなアイデア」につながる情報を手に入れることもできるのです。
最後に
今回は「多ジャンルのことを同時に考える」ことについて述べました。
「アイデア」は基本的に「すでに脳にインプットされている情報の組み合わせ」でしか生み出せません。
だからより多くのジャンルの情報を収集して記憶しておくことが、「斬新なアイデア」につながります。
しかし興味のないジャンルの情報というものは、なかなか憶えられません。
であれば「書籍」の形でいつでも手元に置いておき、必要になったらパラパラめくるだけでもよいでしょう。
「インターネット」が使えるのなら、Webページを検索して記事を読むだけでもいいと思います。
そうすれば「意外性のあるアイデア」が生まれるかしれません。
ですから、さまざまなジャンルの書籍をとりあえず一冊でも手元に置いておくことをオススメします。
近くに図書館がある人は、図書館を最大限に活用してください。
買わなくても手に入る情報があるのなら、それに越したことはないのですから。
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