461.発想篇:誰かひとりのために書く

 今回は「八方美人は大成しない」ことについてです。

 多くの読み手に楽しんでもらえればランキングでも有利になる、というものでもありません。

 ただし二つや三つくらいのジャンルを混ぜ合わせて物語を作るのは、筆力によっては「あり」です。





誰かひとりのために書く


 小説を書くとき、あなたの思い描いた作品を書くことに集中していませんか。

 それはただ自分の生み出したストーリーを読み手にぶつけて強制的に読ませているだけです。

 読み手を想定して書かなければ、誰もあなたの作品に魅力を感じません。




八方美人は大成しない

 ランキングでより高い位置に載りたいから、より多くの人に満足してもらえる作品を書こう。

 実際にそんな作品が書けるのであればそうするべきです。

 ですが多くの書き手はそんな能力がありません。

 多くの読み手を惹きつけようと、あらゆる方面を取り込むべくあれもこれもとつまみ食いする。

 すると、かえって誰の心にも響かない作品になってしまうのです。


 たとえばバトルアクションものが好きな人と推理ものが好きな人の双方を取り込もうとする。

 シャーロック・ホームズが犯人たちを推理で追い詰め、反撃してきた犯人たちをバリツで薙ぎ倒していくような小説。

 これだけ読むと、なにか面白い作品になりそうです。

 マンガの青山剛昌氏『名探偵コナン』において、主人公である高校生探偵の工藤新一はサッカーボールで抵抗してくる犯人を倒していました。

「APTX4869」を飲まされて江戸川コナンになってからも、阿笠博士が開発した「キック力増強シューズ」を履いて、あらゆるものを蹴り飛ばして犯人を倒しているのです。

 だからバトルアクションものと推理ものは、面白くなる組み合わせだといえます。

 ではバトルアクションとホラーものはどうでしょうか。

 ゲームのCAPCOM『BIOHAZARD』のような作品になると思います。

 こちらもやはり面白くなりそうです。

 二つのジャンルを組み合わせるだけで、面白い作品が生まれます。

 では三つを組み合わせるとどうでしょうか。

 「ハイファンタジー」「恋愛」「日常」を組み合わせると「悪役令嬢」のテンプレートになります。


 落語には「三題噺」というものがあります。

 お客さまからキーワードとなるお題を三つ挙げてもらい、それを用いて「オチのある小噺」を即興で作り上げて披露するものです。

「三題噺」のできる落語家さんは相当な手練であり、駆け出しの落語家には到底マネができません。

 小説の世界でも「三題噺」で物語が作れるほどの手練はごく少数のはずです。

 八方美人は大成しません。

 ですので、まずは二つのお題を組み合わせた作品を考えてみてください。

「三題噺」やあらゆるジャンルの要素を取り込んだ作品は、「二つのお題」をさらりと書けるようになってから挑戦すべきです。




ターゲットをひとりに絞る

 では「より多くの人を満足させられる作品」が書けない人は、どうすればよいのでしょうか。

 意外かもしれませんが、「ターゲットをひとりに絞る」ことです。

 ひとりに絞って書けば、最低でもひとりには喜ばれる作品になります。

 あなたにとっては「たったひとり」かもしれません。

 しかし『小説家になろう』全129万アカウントの中でその「たったひとり」に該当する人は、「万が一」でも129人はいるはずです。

 問題は、その129人にあなたの作品を知らしめる手段。

『小説家になろう』の「あらすじ」は1000文字書けますから、ここで自分の作品を余すところなく簡潔に書きましょう。

 そして129人が「読みたい小説」を『小説を読もう!』で検索した際、確実に引っかかるようにするのです。

 そうすれば129人のうち二、三割には読んでもらえると思います。

 だいたい30人くらいでしょうか。

 あとはその30人のうち何人に評価してもらえるかで「総合評価ポイント」に差が生まれます。

 一割の3人が、文章評価・ストーリー評価に5ptずつ付けてくれれば「総合評価ポイント」30ptが確実に入るのです。

 あとは読んだ30人がすべてブックマークしてくれれば60ptはもらえます。

 合わせれば90ptはとれるはずなのです。

 短編小説で90ptがとれれば、とりあえずひとかどの書き手だと胸を張れます。

 ですが、自信がつくのはやはり三桁・100pt以上です。

「たったひとり」の読み手を想定して短編小説を書くだけで、100ptは確実にとれます。

 とれなければ、とれるまで研鑽を積み、試行錯誤を繰り返してください。




連載はブックマーク次第

 連載小説の場合、連載中はすぐに文章評価・ストーリー評価が入りません。

 ブックマーク数で総合評価ポイントを稼ぐ必要があります。

 投稿する時間や連載間隔にもよりますが、新しい読み手は1日100人(PV)くらい見てくれているはずです。

 その中で何人にブックマークしてもらえるか。

 ある程度まではトントン拍子でブックマークが増えていきますが、あるときを境にブックマークが伸びなくなります。

 そこが連載の限界だと思ってください。

 潔く連載を終了させましょう。

 もしくは方向性を若干変更することもオススメです。

 方向性を変更することで、今までとは異なる読み手層にアクセスできるので、再びブックマークが増加に転じることもあります。

 方向性を変えてもこれ以上ブックマークは伸びないと判断したら、連載を終える頃合いだと思ってください。

 そして連載を終了したとき、今までブックマークをしていた人たちが一斉に文章評価とストーリー評価をしてくれます。

 つまり連載が終了した直後はランキングに載りやすいということです。

 小説を連載していてどうも最近ブックマークが伸びないなと感じたら、それは連載終了のサインかもしれません。

 まだ読み手に伝えたいエピソードがあるとき以外は、速やかに連載をたたみましょう。





最後に

 今回は「誰かひとりのために書く」ことについて述べてみました。

 ありとあらゆる人に読んでもらいたいから、さまざまな要素を取り込んでひとつの作品に仕立てようとすれば、結果誰の心にも響かない作品が出来あがります。

 落語の「三題噺」が得意な書き手ならうまく話をまとめられますが、あなたにその才能があるかどうかは、実際に小説投稿サイトへ掲載しなければ判断できません。

 それよりも「たったひとり」のために書いた小説のほうが、読み手に広く支持されることが多いのです。

 自信がない方は、短編小説を書いてみましょう。

 ジャンルと投稿する時刻にもよりますが、100ptを得られればひとまず成功と言えます。

 100ptに届かない人は、短編小説に弱いのか小説を書くスキルが拙いのかを自分で見極めてください。

 勉強をして小説を書くスキルを高めていけば、いずれ必ず100ptを超えられるはずです。

 ストーリー評価を高めたければ「三題噺」に挑戦するのもいいと思います。



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