394.深化篇:興味と感性

 今回は「読み手が興味を覚えて、感性と作風が一致する」ことについてです。

 書き手としての認識を新たにしていただければと思います。





興味と感性


 小説は読み手が「興味を持っている」ことを書けば、人が集まってくる娯楽です。

「異世界転生」「異世界転移」「悪役令嬢」に興味を持っている読み手なら、キーワード検索で「異世界転生」「異世界転移」「悪役令嬢」を指定してふるいにかけます。

 検索結果で「あらすじ」を読み、「興味を覚えた」作品がクリックされるのです。

 そうしてあなたの小説にたどり着いた読み手は、自分の感性と作品の作風が一致しているかを重視します。

 つまり「読み手が興味を覚えて、感性と作風が一致して」いれば、ブックマークや評価は自然と高まるのです。




興味のないジャンルを好んで読む人はいない

 小説投稿サイトの最大手である『小説家になろう』は、現在124万アカウント以上を誇っています。

 これを見て「124万人が私の小説を読んでくれるんだ」と気楽に思っている方、意外と多いのではありませんか。

 そうした期待をもとに最初の小説を投稿してみたのだけれども、反応がない。

 閲覧数(PV)は少なくブックマークも評価も付かない。

 これは「初心者あるある」です。

 反響がないことから「私には小説を書く才能がないのか」と勘違いしてしまいます。

 まず「124万アカウントの罠」に気づいてください。

「124万人がすべてのジャンルの小説を読みたいわけではない」のです。

 すでに56万作品もあるわけですから、これらすべてを読んでいる時間など読み手にはありません。

 だから読み手は「ジャンル」と「キーワード」で検索して、「自分が読みたい小説」をピンポイントで選りすぐって読む作品を決めているのです。


『小説家になろう』では「ファンタジー」とくに「ハイファンタジー」の読み手が最も多い。

 他のジャンルの小説を読みたい人は、ブックマーク数を見れば「ハイファンタジー」の何分の一かが見えてきます。

 たとえば「コメディー」を書いていて投稿するとしましょう。

 2018年4月24日の時点で「コメディー」の日間ランキング1位の総合評価ポイントは250ptです。それに対して「ハイファンタジー」の1位は2557ptあります。

 読み手には何件ブックマークがあることはわかりますが、評価に何ポイント入ったのか知るすべはありません。

 しかし「コメディー」も「ハイファンタジー」も同じ割合で評価されていると仮定すれば、「コメディー」を読んでいる人は「ハイファンタジー」のだいたい一割しかいないのです。


 だからといってすべての方に「ハイファンタジー」を書きなさいとは言いません。

 ただ「コメディー」は「ハイファンタジー」と比べれば読み手は少ないんだという「自覚」を持っていただきたいのです。

 しかも「ハイファンタジー」は作品数が膨大ですが、「コメディー」であれば作品数も少なくなります。

 検索をして3ページ以内に残れず埋もれてしまう速度も「ハイファンタジー」より遅いのです。

 だから読み手は少なくても読みたい作品を探しやすいし読んでもらいやすい。

 一概に「読み手が少ないから反響が少ない」とも言い難いのです。

 ですが「ハイファンタジー」が読みたくて『小説家になろう』のアカウントを取得した方が、別ジャンルである「コメディー」を読むことはまずありません。

 そんな時間があるのなら「ハイファンタジー」の良作を探したほうが有意義だからです。




知名度ネームバリュー

 以前から主張していますが、「知名度ネームバリュー」のない書き手の小説を読もうとする人は稀です。

「以前読んでみたらとんでもない駄作だった。だから次作が出たとしてもこの書き手の新作は読むまい」と思われたら作家生命が危うくなります。

 こうなったら巻き返しが難しいのは「紙の書籍」も小説投稿サイトも同様です。

 どちらも有効な打開策となるのが「別ジャンルの小説を書く」ことになります。

 前記しましたが「興味のないジャンルを好んで読む人はいない」のです。

 だから「ハイファンタジー」で「知名度ネームバリュー」が地に堕ちて回復不可能な状態になったら、たとえば「異世界恋愛」を書いてみましょう。

 こうすれば「知名度ネームバリュー」がゼロの状態からでも再チャレンジが可能です。

 とくに「ハイファンタジー」と「異世界恋愛」はひじょうに近しいジャンルなので、そこから這い上がれれば、再び「ハイファンタジー」で勝負ができます。




感性と作風の一致

 こうしてあなたの小説に興味を覚えてもらい、一話目を読んでもらいます。

 その後の読み手のリアクションは「面白そうだから追いかけてみよう」とブックマークを付ける、「面白かったから」評価をする、「とても面白かった」ので書き手に感想を送る、「皆に読んでもらいたい」からレビューを書く。ここまで肯定的な反応です。

 ですがたいていの方は一話目を読んでも「面白くなりそうかわからない」と思っています。だから閲覧数(PV)は増えこそすれブックマークも評価も付かない状態に陥ります。

 それだけならまだしも「一話目を読んでまったく面白いとは感じなかった」ため、読み始めて早々ブラウザの「戻る」ボタンを押す人が大半なのです。

 つまり「小説の作風が、読み手の感性と一致」して初めてブックマークや評価が高まります。

 あなたが読み手になったときのことを考えてください。

 ノリがよくてテンポのある作品が読みたいのに、クリックするとひじょうに重厚な作風だったとしたら。

 あなたはやはりブラウザの「戻る」ボタンを押すはずです。

「感性と作風の一致」がなければブックマークも評価も高まるはずがありません。

 そのため「連載第一話」の作風が大きな役割を与えられています。

 本来一度投稿した連載は途中で修正してはいけないのですが、「連載第一話」に関してはいくらでも手を入れてもいいのかもしれません。

 とにかく読み手の「感性と作風の一致」がなければその後の物語を読み進めてもらえないからです。

 でもそれは最終手段です。

 もしこの「切り札」を使ったにもかかわらずブックマークも評価も高まらないのであれば、潔く連載を畳みましょう。

 いくら連載を続けたとしても、初見の読み手が最初に読むのは「連載第一話」です。

「連載第一話」の重要性は、連載を数多く経験していないとわからないかもしれません。

 どうしてもこの物語を連載して好評を得たいと考えているのならば、いったん連載を畳んで別の連載をしてください。

 そしてスキマ時間で肝煎きもいりの小説の構成をしっかりと練り「連載第一話」をできるだけ工夫してみましょう。

 読み手の感性に合わせた渾身の「連載第一話」が完成したら、今の連載が終了したタイミングですぐに本命を叩き込みましょう。





最後に

 今回は「興味と感性」について述べてみました。

 読み手は興味を覚えない作品なんていっさい読みません。

 読んでも感性に合わなければ読み進めません。

 面白くない作品はブックマークも付けないし、評価もしません。

 皆様も、せっかく苦労して書くのだから、できれば高く評価して欲しいと思います。

 だから読み手を想定して書く必要があるのです。



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