378.分類篇:創作過程の一部をお見せします

 今回は私の創作過程を見ていただくことで、全体の流れを把握したいと思います。

 とりあえず模索中の連載なので、「あらすじ」創りの参考程度です。

 前回の『桃太郎』と合わせて読んでいただければ、どういう意図でこの「あらすじ」を書いたかが見えてきます。





創作過程の一部をお見せします


 これまで本コラムで書いてきたことを中心に、「見本」を見ていただきます。

 あえて掲載することで、説明できていなかった部分を探し出せればと思います。




タイトル案

『秋暁の霧、地を治む』(原題『暁の神話』の連載版)


 私の悪いクセで、自作の小説にはたいてい「○○の△△」というタイトルを付けてしまうんですよね。

 なので『秋暁の霧、地を治む』はあくまでも「タイトル案」と致しました。

 文章の形にはしたので、これでもいいかなとは思っています。




企画(コンセプト)

「主人公が戦争を終わらせる」話


「戦争終結」といえば、歴史小説・時代小説などの戦記ものとして鉄板なコンセプトですね。

 旧作『暁の神話』はハイファンタジー小説として書きました。

 連載版もハイファンタジー小説にしたいのですが、魔法が出てこないぶん派手さに欠けるんですよね。

 主人公がスーパーヒーロー(「主人公最強」「チート」の類い)で一騎当千の働きを見せるようなこともありません。

 ただ王国軍と帝国軍が万単位の兵をぶつけあうだけです。

 そういった殺伐とした戦記ものであっても、ハッピー・エンドで終わらせる予定ではいます。

 まぁ連載なので反響次第で結末が変わることはありえるのですが。




企画書

――――――――

「どんな主人公が」軍務長官である老将の養子で王国の中隊長を務める青年が、

「どうなりたくて」長年続く王国と帝国の戦いを終わらせたくて、

「何をして」帝国大将二名と戦い勝利し、

「どうなったか」帝国「最強の大将」と直接決戦を挑み、戦争を終わらせた。

――――――――

 とりあえず「こういう青年士官が帝国軍に勝って戦争を終わらせる」ことを意識して企画書を作りました。

 ですが中隊長が帝国軍と戦って勝つというのはさすがに無理がありますよね。

 実際の戦争なら独断専行で処罰の対象になるはずです。

 それをどうやって実現させるのか。

 その方策はエピソードを作りながら考えていきます。




企画書のブラッシュアップ

 上の企画書をさらにブラッシュアップしていきます。

――――――――

【起】「どんな主人公が」早くに親を亡くしスラム街でスリをして育ち、のちに老将の養子となり、大きくなって王国の中隊長を務めている橙の髪に赤い瞳が映える青年が、

【承】「どうなりたくて」先の戦いで大敗した王国軍を立て直すために青年は将軍へ格上げされると、翌月直ちに帝国軍が「中洲」のテルミナ平原へと進出してくる。長年続く王国と帝国の戦いを終わらせたいのだが、そのためには強大な帝国軍に勝たねばならない。今回のテルミナ平原での戦いにより、王国軍は青年の養親であった軍務長官の老将などほとんどの将軍が戦死する歴史的な大敗を喫してしまう。帝国軍の再三の出撃を憂いた国王は、生き残った将軍のうち青年を新たな軍務長官に任命し、帝国軍の侵略に備えた。

【転】「何をして」青年は自身の力量では帝国軍に及ばないと判断し、同僚とともに人材を探すことにした。すると競馬に夢中になっているある男が目に止まった。しばらく男を観察していると出走馬と馬券売り場を行き来し、馬券を買ったレースはすべて的中させていることに気づく。彼を「軍師」として登用し実戦のアドバイスを授かる。こうして数少ない王国軍はカンベル山稜において帝国大将二名と戦い勝利した。これにより帝国大将は残り一名となるが、それでも兵力差は三倍ほど。

【結】「どうなったか」皇帝は自らが「最強の大将」と見込んでいる帝国大将に勝負を委ねて事実上最後の会戦に向かわせた。〜(後略)

――――――――

「どうなったか」の「後略」以降に関しては物語の根幹であるため省きました。

 とりあえずハッピー・エンドを想定して王国軍の勝利を目指しますが、総力戦なので敗北しても戦争は終結するわけです。

 だからどちらにしても主人公の当初の目的は達成されることになります。




あらすじに仕立てる

 ではブラッシュアップした企画書から「あらすじ」「キャプション」を作ってみましょう。

 まずは長編小説用の「あらすじ」から。

――――――――

 早くに親を亡くしスラム街でスリをして育ち、のちに老将の養子となり、大きくなって王国の中隊長を務めている橙の髪に赤い瞳が映える青年は、先の戦いで大敗した王国軍を立て直すために将軍へ格上げされる。その翌月直ちに帝国軍が「中洲」のテルミナ平原へと進出してくる。長年続く王国と帝国の戦いを終わらせたいのだが、そのためには強大な帝国軍に勝たねばならない。今回のテルミナ平原での戦いにより、王国軍は青年の養親であった軍務長官の老将などほとんどの将軍が死亡する歴史的な大敗を喫してしまう。帝国軍の再三の出撃を憂いた国王は、生き残った将軍のうち青年を新たな軍務長官に任命し、帝国軍の侵略に備えた。青年は自身の力量だけでは帝国軍に及ばないと判断し、同僚とともに人材を探すことにした。

――――――――

 312文字です。

 『ピクシブ文芸』のランキングなどでの「キャプション」表示は冒頭200字までなので、このままでは使えません。使っても途中で「…」が付いてしまいそれ以降は読み手に伝わらないのです。


 そこで長編小説用の「あらすじ」をさらに短くし、連載小説用の「あらすじ」にしてみます。

――――――――

 王国の中隊長を務めている橙の髪に赤い瞳が映える青年が、先の戦いで大敗した王国軍を立て直すために将軍へ格上げされた。その翌月直ちに帝国軍が「中洲」のテルミナ平原へと進出してきた。長年続く王国と帝国の戦いを終わらせたいが、そのためには強大な帝国軍に勝たねばならない。青年はこの苦境を乗り越えられるだろうか。

――――――――

 131文字です。

 こちらは『ピクシブ文芸』のキャプションにも入るので、そのまま流用することにします。





最後に

 今回は実際に「あらすじ」「キャプション」作りの手順を追ってみました。

 ハイファンタジーの中でもとりわけニッチな分野の小説なので、連載してどれだけの方が読んでくれるか今は想像もつきません。

 それでも「自分で書いた小説」は書き手の「財産」になります。

 たとえ不評を買ったとしても、「財産」を削除してはなりません。



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