377.分類篇:ハイファンタジーのあらすじ作り(2/2)
今回は「ハイファンタジーのあらすじ作り」の後半です。
ハイファンタジーのあらすじ作り(2/2)
前回に引き続き「ハイファンタジー」小説の流れを見てみましょう。
作例が『桃太郎』なのは、日本人なら誰でも知っている「ハイファンタジー」の「童話」だからです。
企画書を粗筋(あらすじ)へ
では『桃太郎』の「企画書」を「あらすじ」にしてみましょう。
要は「水増し」です。
『桃太郎』の企画は「桃から生まれた桃太郎が(起)、育てのお爺さんとお婆さんのために一旗揚げたいと思い(承)、鬼ヶ島の鬼を退治して(転)、名声と金銀財宝を得る(結)」でしたよね。
では「起」を見ていきます。
「桃から生まれた」その桃はどこにあったのでしょうか。桃の木に実がなっていたのか、桃の木の下に落ちていたのでしょうか。
とりあえず原作では「川上から流れてきた」のでそういう設定にします。
では「川上から流れてきた桃」はどうやってお婆さんが手に入れたのでしょうか。川上からですから川でなにか作業をしているか息抜きをしているかしていないと、流れてくる桃に気づかないかもしれません。
確実に気づいてもらうために「桃」を「大きく」してみましょう。
では誰が見つけたのか。原作では「お婆さんが川で洗濯をしているとき」に見つけたことになっていますのでそれに準拠しましょう。
では桃からどうやって桃太郎は生まれたのでしょうか。どこかに穴が空いていてそこから出てきたのか、自力で桃を破壊して出てきたのか。ここも原作に準拠して「お婆さんが大きな桃を家に持ち帰って刃物で割ってみたら中に男の子が出てきた」ことにします。
このくらいで「起」の膨らましはいいでしょう。
では適宜並び替えて「あらすじ」の「起」にします。
――――――――
川で洗濯をしていたお婆さんは川上から流れてきた大きな桃を拾い、家に持ち帰って刃物で桃を割ってみると中に男の子がいた。お爺さんとお婆さんはこの子に「桃太郎」という名を付けて育てることにする。
――――――――
どうでしょうか。「企画」の「桃から生まれた桃太郎が」よりも物語の流れを垣間見れるのではないかと思います。
「あらすじ」で採用する「起承」にそのまま持ってこれそうです。
このような手順を踏んで、残る「承転結」をすべて埋めていきます。
この過程は省いてしまってもいいでしょう。
『桃太郎』の「あらすじ」を以下に挙げます。
――――――――
【起】川で洗濯をしていたお婆さんは川上から流れてきた大きな桃を拾い、家に持ち帰って刃物で桃を割ってみると中に男の子がいた。お爺さんとお婆さんはこの子に「桃太郎」という名を付けて育てることにする。
【承】立派に成長した桃太郎は、育ててくれたお爺さんお婆さんのために一旗揚げようと鬼ヶ島の鬼退治に出ることに決める。お婆さんは桃太郎に「きびだんご」を持たせた。鬼ヶ島を目指して歩いていると道中で犬と出会う。犬は「きびだんご」に気づいて「きびだんごをください」とおねだりしてきた。桃太郎は「鬼退治に付き合ってくれるならあげるよ」と言い、犬はそれを快諾し「きびだんご」を受け取る。さらに道を歩いていると猿、そして雉が現れました。猿も雉も「きびだんご」欲しさに鬼退治に加わってくれることになった。鬼退治へ向かう桃太郎と犬・猿・雉の一行は船に乗り込んで鬼ヶ島へ渡った。
【転】鬼ヶ島にたどり着いた桃太郎一行は大きな門を叩いて小鬼に扉を開かせる。桃太郎は刀を抜いて高らかに名乗りを上げる。桃太郎の刀、犬の噛みつき、猿の引っ掻き、雉の突っつきによって鬼たちは全員倒された。
【結】鬼の大将は「これからは悪いことは致しません」と命乞いをし、代わりに金銀財宝をすべて桃太郎に差し出した。船と車を用いて桃太郎はお爺さんお婆さんのもとへと帰ってきた。すると村人総出で大喜び。桃太郎の勇気と力量を称賛したのです。
――――――――
これが『桃太郎』の「あらすじ」です。
この段階で、この物語が「面白い」か「面白くない」かわかるのではないでしょうか。
分量として「承」が長いと思われますが、「三分の二」の法則によって「起承」が二で「転結」が一に割り振られます。
なのでこれくらいならまったく問題ありません。
あらすじからあらすじを作る
『小説家になろう』の「あらすじ」、『カクヨム』の「紹介文」、『ピクシブ文芸』の「キャプション」は、基本的に「あらすじ」の「起承」に「転」の出だしを加えたものになります。
早速『桃太郎』の「あらすじ」を作ってみましょう。
――――――――
川で洗濯をしていたお婆さんは川上から流れてきた大きな桃を拾い、家に持ち帰って刃物で桃を割ってみると中に男の子がいた。お爺さんとお婆さんはこの子に「桃太郎」という名を付けて育てることにする。立派に成長した桃太郎は、育ててくれたお爺さんお婆さんのために一旗揚げようと鬼ヶ島の鬼退治に出ることに決める。お婆さんは桃太郎に「きびだんご」を持たせた。鬼ヶ島を目指して歩いていると道中で犬と出会う。犬は「きびだんご」に気づいて「きびだんごをください」とおねだりしてきた。桃太郎は「鬼退治に付き合ってくれるならあげるよ」と言い、犬はそれを快諾し「きびだんご」を受け取る。さらに道を歩いていると猿、そして雉が現れました。猿も雉も「きびだんご」欲しさに鬼退治に加わってくれることになった。鬼退治へ向かう桃太郎と犬・猿・雉の一行は船に乗り込んで鬼ヶ島へ渡った。鬼ヶ島にたどり着いた桃太郎一行は大きな門を叩いて小鬼に扉を開かせる。
――――――――
これで「転」つまり「佳境」がどうなるのか気になりませんか。
またここまで書いてくれれば、読み手は「あらすじ」を読んだだけで「面白そう」か「つまらなそう」かを見分けられます。
結果「面白そう」だと感じてもらえたら閲覧数(PV)が増えますし、読んでみて「面白い」と思ってくれたらブックマークや評価を付けていってくれるのです。
長編小説の「あらすじ」ならこれで万全です。
しかし連載小説は考え方を変えないといけません、
連載小説の「あらすじ」は作品の冒頭から始まりますが、途中を省いてメインのエピソードの一端を読み手に示す必要があります。
つまりメインのエピソードの「起」に「承」の出だしを加えたものが連載小説の「あらすじ」なのです。
『桃太郎』を無理やり連載小説化すると、あらすじはこんな形になります。
――――――――
川で洗濯をしていたお婆さんは川上から流れてきた大きな桃を拾い、家に持ち帰って刃物で桃を割ってみると中に男の子がいた。お爺さんとお婆さんはこの子を「桃太郎」と名付ける。立派に成長した桃太郎は、育ててくれたお爺さんお婆さんのため一旗揚げようと鬼ヶ島の鬼退治の旅に出る。
――――――――
連載小説の「あらすじ」ならこのくらい削って大丈夫です。
こちらも世界観は伝わってくるのではないでしょうか。
「世界観・舞台」がわかる「あらすじ」を書けるかどうかが書き手の腕の見せどころです。
あらすじから箱書きを作る
ちなみに『桃太郎』はほぼ「あらすじ」程度のことしか書かれていません。
「童話」としては難しい描写をするよりも、話の筋がわかりやすいことが求められるからかもしれません。
「あらすじ」ができたら、エピソードごとにシーンを作っていって「箱書き」を創ります。
『桃太郎』ではお婆さんはいつどうして川へ洗濯しに行ったのでしょうか。
このシーンはお爺さんを山へ柴刈りに行かせ、お婆さんは川へ洗濯しに行ったということにします。
ではお婆さんはどこの川に行ったのでしょうか。
またその川幅や水深や流れる速さなども知りたいですね。
大きな桃がどんぶらこと流れてくるほどですから、小川ではないし水底もそれなりに深くなければなりません。
そうなると今度は、そんなに深い川でお婆さんはどうやって洗濯をしていたのかも気になります。
うっかり洗濯物から手を離してしまうと、取り戻すことはまず不可能です。
となれば流れもゆるやかで水底の浅い場所があったことになります。
では水底の深いところを流れてくる大きな桃を、お婆さんはどうやって手に入れたのでしょうか。
まさかとは思いますが、泳いで取ってきたのかも。
老婆が水底の深い川を泳げるだなんて、本当にまさかですよね。
今はほとんどの学校にプールがあります。
それはある水難事故がきっかけで国民全員を泳げるように教育するためでした。
しかし『桃太郎』の想定する時代に、泳げる人はほとんどいなかったはずです。
ですので他の解決法を考えましょう。
洗濯物をうまく使って引き寄せた可能性があります。
手近にうまい具合に長い棒があったのかもしれません。
いちばん確率が高そうなのは「大きな桃が水底の浅いところに乗り上げて止まっていた」でしょうか。
これなら泳げなくても手近に物がなくても、確実に大きな桃が手に入ります。
このシーンでは「お婆さんが朝に川の浅瀬で洗濯をしていると、川上から大きな桃がどんぶらこと流れてきた。しかし浅瀬に乗り上げて止まってしまう。気になったお婆さんを桃を家へ持ち帰ることにした」ということにします。
いかがでしたでしょうか。
このような形で「あらすじ」から「箱書き」のシーンを作っていきます。
説明されなければイメージできないことをことごとく書き出していくのです。
どんな読み手でも明確なイメージが思い描けるように「箱書き」に情報を書いていくのが、良い小説を生み出す素になります。
最後に
「ハイファンタジーのあらすじ作り」の後半を述べてみました。
良い「あらすじ」を作るには、良い「エピソード」の流れを生み出すことです。
「エピソード」の流れが明確だから、「あらすじ」を作りやすいのです。
「企画書」ができたら「エピソード」を加えて「あらすじ」へと水増ししましょう。
そうすれば自然な「あらすじ」が創れます。
そして「あらすじ」から「あらすじ」「紹介文」「キャプション」を作り出すのです。
その後「あらすじ」をいくつかのシーンに分けていき「箱書き」を作成します。
こうすることでエピソードとシーンがよく流れるようにできるのです。
「箱書き」ができたら「プロット」創りに進みます。
ですがそれは『桃太郎』では解説できません。
『桃太郎』は「あらすじ」段階のお話だからです。
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