372.分類篇:ジャンルの区分(3/4)

 今回は「ファンタジー」ジャンルと「恋愛」ジャンルについて見てみましょう。

 双方とも「異世界」と「現実世界」がそれぞれ舞台となります。





ジャンルの区分(3/4)


 今回はファンタジージャンルと恋愛ジャンルを仕分けていきます。

 ともに「異世界」と「現実世界」が判断材料です。

 では「異世界」だけど「ファンタジー」にすべきか「恋愛」にすべきかで悩むと思います。

 そこを見ていきましょう。




ファンタジー

【ハイファンタジー】現実世界とは異なる世界を主な舞台とした小説。

『小説家になろう』において最も投稿本数が多く、総合評価ポイントの高いジャンルです。

 空想小説のうち「空想科学(SF)」ではなく、「異世界」を主な舞台とした小説が「ハイファンタジー」に当たります。

 当初は水野良氏『ロードス島戦記』、神坂一氏『スレイヤーズ』、秋田禎信氏『魔術士オーフェン』のような作品を単に「ファンタジー小説」と分類していました。

 今は「現実世界に空想要素を取り入れた作品」も多数生まれてこちらを「ファンタジー小説」と呼ぶようになり、『ロードス島戦記』『スレイヤーズ』『魔術士オーフェン』の類いは「異世界ファンタジー」と呼ばれるようになりました。

「ハイファンタジー」はその「異世界ファンタジー」を指すのです。

 そしてなぜか「異世界ファンタジー」は「剣と魔法のファンタジー」であることが多く、物語の花形である「魔法」のない「ハイファンタジー」小説は魅力が半減してしまいます。

「ファンタジー」には「空想」の意味があるので「科学のファンタジー」なら「空想科学」つまり「SF」になってしまうのです。

 だから「異世界ファンタジー」は「剣と魔法のファンタジー」に固定されたのではないでしょうか。

 親和性の高い「おすすめキーワード」は「オリジナル戦記」です。


 また「登録必須キーワード」として「異世界転生」「異世界転移」があります。

「異世界転生」は「現実世界で死に、異世界に転生する」物語で、「異世界転移」は「現実世界から生きたままあるきっかけで異世界に跳躍してしまう」物語です。

 なので「異世界転生」もので現実世界の知識があるとおかしなことになります。

 現実世界の知識を用いるには、記憶を保ったまま「異世界転生」できることがじゅうぶんに説明されていないといけないわけです。

 対して「異世界転移」ものは主人公が生きたまま異世界へ跳躍するわけですから、現実世界の知識を持っていてもなんら不思議ではありません。ただし異世界の住人と会話するとなれば、当然言語が異なるはずですから、どうやって会話を成立させるかがじゅうぶんに説明されていないといけないのです。

 ちなみに「ハイファンタジー」と「異世界恋愛」以外でこの二つのキーワードを用いるものはありません。

「SF」だと「おすすめキーワード」の「タイムマシン」などになってしまいますからね。




【ローファンタジー】現実世界に近しい世界にファンタジー要素を取り入れた小説。

 残念なことに、私は「ローファンタジー」がいつどの作品から始まったのか知識がありません。

 思い浮かぶ限りでは筒井康隆氏『時をかける少女』が挙げられます。

 現実世界にファンタジー要素である「タイムリープ」を持ち込んだのです。

 ジャンルとしては「ヒューマンドラマ」、「おすすめキーワード」としては「日常/青春」の一面も持っているため断定はできないのですが、私は「ローファンタジー」だと思っています。

「ローファンタジー」で現在最も著名なのは鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』でしょう。

 学園都市を舞台に魔術と科学が複雑に折り重なり、能力者にはレベルが割り振られています。

「現実世界に近しい世界」であるため、多少フィクションを交えても現実世界が舞台であり、そこで「魔法」や「超科学」のような力が存在すれば「ローファンタジー」にカテゴライズされます。

「空想科学」に仕分けした『フルメタル・パニック!』も「ウィスパード」の存在を加味すると「ローファンタジー」と呼べなくもないのは、そういった理由からです。

 親和性の高い「おすすめキーワード」は「伝奇」です。




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恋愛

【異世界恋愛】恋愛を主題とし、異世界を主な舞台とした小説。

 まずお断りしておきますが、男性は「恋愛小説」をほとんど読みません。

 古典としてウィリアム・シェイクスピアの悲恋などに触れたりしますが、「恋愛小説」は読まないのです。

 男性はなかなか成就しない「恋愛のやきもき」を楽しめず、実らないならと手っ取り早く気分が高揚する「ファンタジー」ジャンルに移り気してしまいます。

 男性の大半は「待つ」ということに喜びを感じません。

 そして第二次性徴期を過ぎると「恋愛小説」を通り越して「官能小説R−18」に向かうものなのです。

 女性の書き手の方にはわかりづらい特質だと思います。

「男性向けの恋愛小説」は他のジャンルに内包されることが多いのです。

 たとえば川原礫氏『ソードアート・オンライン』は「VRMMO」小説ですが、その中にキリトとアスナの「恋愛」が組み込まれています。

 燃える小説に「恋愛」要素を混ぜるのが「男性向け恋愛小説」の特徴です。

「恋愛」ジャンルは「宇宙」ジャンルとともに、さまざまな他ジャンルと結びつきます。

 その中で「恋愛」小説を明確に設定するには、主に男女の恋愛模様が物語の焦点になっている作品です。

「異世界恋愛」は「異世界」が舞台ですから、「異世界ファンタジー」「ハイファンタジー」と同じように世界観の構築からしなければなりません。

 また「登録必須キーワード」として「異世界転生」「異世界転移」があります。

 ニートが転生して王子様になり恋愛が始まったり、時空を越えた恋愛をテーマにしたり。

 いずれにせよ「ハイファンタジー」よりも恋愛面が際立っていないと「異世界恋愛」にはならないので注意してください。

 親和性の高い「おすすめキーワード」は異類婚姻譚/身分差/年の差/悲恋/ヒストリカル/乙女ゲーム/悪役令嬢/古典恋愛です。

「恋愛」でありがちなのは「性的描写」を克明に書いてしまい、運営から「R−18」指定にするか削除するかを要請されることがあります。




【現実世界恋愛】恋愛を主題とし、現実に近しい世界を舞台とした小説。

 現実|(のような)世界で行なわれる恋愛ですから、学校や職場などのコミュニティーが舞台となることが多くなります。

 「恋愛」ジャンルは単独で成立することが少なく、たいていは他ジャンルの中で「恋愛」を強く描写して「恋愛小説」にまとめてしまうのです。

「ヒューマンドラマ」は「恋愛」に近しいのですが、「ヒューマンドラマ」は日常や青春のような人々のつながりを強く押し出し、「恋愛」は誰かに恋する愛するという要素を強く出している違いがあります。

 また「ローファンタジー」と「現実世界恋愛」を分けるのも難しいのです。

 こちらも「恋愛要素」がどれだけ大きいかで分けるべきでしょう。

「ローファンタジー」よりも投稿作品数は多いのですが、総合評価ポイントが低めになっています。

 ですのでジャンルに迷うようなら「現実世界恋愛」よりも「ローファンタジー」に投稿したほうがよいかもしれません。

 もちろん「ファンタジー要素」を含まない「恋愛小説」であれば、迷うことなく「現実世界恋愛」を選ぶべきです。


「登録必須キーワード」として「ボーイズラブ」「ガールズラブ」がありますので、該当する場合は必ずチェックしておきましょう。

 親和性の高い「おすすめキーワード」は身分差/年の差/悲恋/悪役令嬢/オフィスラブ/スクールラブです。

 こちらも「異世界恋愛」同様「性的描写」を克明に書いてしまって「R−18」指定を受けることがあります。

 とくに「女性向け恋愛小説」はどうしても「性的描写」を入れることが多くなりますので、「R−18」に抵触しないようにご注意ください。





最後に

 今回は「ファンタジー」と「恋愛」のジャンル分けです。

 この二つはとくに親和性が高く、「ファンタジー」ジャンルの中に「恋愛」を持ち込むことがひじょうによくあります。

 というより、「ファンタジー」であっても人間関係こそが物語の鍵ですから、「恋愛」が出てこないほうが不自然です。

 そして「恋愛」ジャンルは「ノンフィクション」でなければ、必ず「フィクション」があります。

 つまり「恋愛」はどんなジャンルの小説にもくっつけることができるのです。



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