345.不調篇:書こうと身構えない
小説を書くとき、慣れていないうちは「これから小説を書くぞ」と身構えてしまいがちです。
それだと執筆が捗りません。
書こうと身構えない
小説を書こうとするとき、「さぁこれから小説を書くぞ」と身構えて書いていませんか。
それですらすらと筆が進むといいのですが、たいていすぐに手が止まります。
「小説を書く」ということを特別視しすぎなのです。
完璧でなくていい
小説の文章は「完璧な文法」で書かれていなければならない。
そうお思いの方が多いことでしょう。
ですが「完璧な文法」というものは、プロの書き手でも難しいのです。
多少「文法」の間違いがあっても致し方ないと割り切りましょう。
もちろん最終的に「完璧な文法」を目指すべきです。
おそらく「完璧な文法」が身についた頃にはあなたはプロの書き手になっています。
だから最初のうちは「完璧な文法」を意識して「書けない」という状態を作らないことです。
数を書いていけば、自然と文法が無意識で身についてきます。
特別視しない
「小説を書く」ことを特別視していると、あなたは自分の思考と書かれた文章との乖離に気づくことでしょう。
頭の中にはありありとイメージが浮かんでいる。
でもPCで打ち込んでみると「どうにもうまく表現できていないのではないか」と感じてしまう。
試しに読み返してみると、イメージと文章に隔たりがあるのです。
そこでまずは脳内でイメージしていることを、単語だけでいいので拾ってメモしてみてください。
どんなにくだらないと思うようなことでも、頭に浮かんだものを書き出すのです。
これで「文章の雛形」が出来あがります。
単語をつなげて順序を入れ替えてみて、「この文章なら自分のイメージどおりだな」と感じるように組み替えるのです。
たとえば「サッカーでドリブルをしてゴールキーパーもかわして五人を抜き去り、悠々とゴールへシュートを蹴り込む」シーンを表現してみましょう。
脳内イメージでは「サッカー」「ドリブルする」「五人抜きする」「シュートする」「ゴールを決める」といった単語が浮かびます。
まずはこれを単語としてメモするのです。
では文章にしていきましょう。
まず「サッカー」という単語。これはこのシーンがサッカーの試合について語っていることを表していますから、当然文頭に置きます。
「ドリブルする」「五人抜きする」「シュートする」「悠々とゴールを決める」は動作が連続しているのです。
今回は完成した文から抜き書きしましたから順番に並んでいますが、脳内イメージの段階では動作の順序なんて無視してかまいません。
とりあえず単語の順序を並び替えてシーンを構成してみましょう。
物語の文章に仕立てるには、まず要約を書く必要があります。
このシーンに関しては「サッカーでドリブルをしてゴールキーパーもかわして五人を抜き去り、悠々とゴールへシュートを蹴り込む」という先ほど挙げた文章になるのです。
ではこれを小説のワンシーンに書くならば、どういう書き方をすればいいのでしょうか。
ここでたいせつなのは「5W1H」です。英語で習いましたよね。
まず「When(いつ)」「Where(どこで)」を埋めます。
あいにく「When(いつ)」「Where(どこで)」をメモ書きしていません。
そこでとりあえず「十月十日の十三時」に「主人公の通っている高校の校庭」でサッカーの試合をしていることにします。
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十月十日の十三時、陣代高校の校庭でサッカーの試合をしていた。
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では「Who(誰と誰が)」サッカーの試合をしているのでしょうか。
これもわかりませんよね。
ここもとりあえず「陣代高校」と「長府北高校」のサッカー部同士の練習試合とでもしておきます。
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わが陣代高校十一名と、市内の長府北高校十一名がピッチに立っている。
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では主人公を決めなければなりません。
やはり主人公の設定もありませんからここではこれも即興で創作します。
実際には「企画書」の段階で「主人公の設定」をある程度決めてから「あらすじ」「箱書き」「プロット」を経てください。
主人公は物語の中心人物となりますので、共感や憧れを抱ける人物像がいいですね。
――――――――
俺は百七十センチとサッカー選手としては背の低いほうだが、陣代高校のエースストライカーとしてピッチを駆けまわっている。
スタミナの豊富さとドリブルの技術そしてディフェンダーの裏をとる動き出しには、同年代の選手よりも抜きん出ている自負がある。
昨年全国大会でMVPを獲得したこともあり、たかが練習試合なのに海外クラブから大勢のスカウトが訪れていた。
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憧れを中心に仕立ててみました。冒頭で「オッス、オラ悟空」をやっていますが、書けないときにこれを回避しようとすると、それだけで書けなくなります。
では肝心の試合のシーンに移りましょう。
ここは先ほどの順序のままに書きます。
――――――――
ハーフウェイラインでパスを受け取ると、そのままドリブルへと移った。
ただ単にゴールへ一直線に進むのではなく、相手ディフェンダーを引きつけてから緩急をつけて接触ギリギリでボールを操り、ひとりまたひとりと抜き去っていく。
四人を抜き去る怒涛のドリブルに危機感を抱いたのか、ゴールキーパーがたまらずゴールエリアから飛び出して、俺のドリブルを阻止しに来た。
ボールをキャッチしにスライディングしてきたゴールキーパーの上にボールを浮かせて俺も彼を飛び越える。浮かせたボールを頭で前方へ落とし、ゴールを見れば遮る者はいなかった。
後はそのままフィールドを駆け上がってゴールへと突き進み、インサイドキックで冷静にシュートを放って無人のゴールに蹴り込んだ。
ボールが静かにゴールネットを揺らす。
これでハットトリックを達成し、スカウト陣に絶好のアピールができたろう。
――――――――
「小説の雛形」にしては悪くないと思います。
これはあくまでも雛形であって、完成ではありません。
ここから表現を膨らませたいところの分量を増やして、より詳しく状況を書いていきましょう。
今回はあくまでも「書こうと身構えない」ことが主題です。
ここから表現の磨きをかけることは趣旨から外れるので、ここではあえて書きません。
「こんなふうに膨らませていけば、すんなりと書けるものですよ」ということをお伝えしたかったのです。
最後に
今回は「書こうと身構えない」ことについて述べてみました。
「小説を書く」と聞くだけで「難しいことですよね」とお思いの方も多いでしょう。
しかし実態はご覧いただいたとおり、ネタを作ってそれぞれを膨らませていくだけで、簡単に「小説の雛形」を作れます。
なにも恐れることなく、まずは「小説の雛形」を作ってみましょう。
呆気なく小説が書けることを体験できるはずです。
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