344.不調篇:初めはつまらなくてもいい

 投稿が後れてしまいました。やはり予約投稿にしたほうが良かったですね。

 今回は「初めから感動する小説は書けない」ことについてです。

 物事には順序があります。





初めはつまらなくてもいい


「小説を書いて」小説投稿サイトに投稿した。

 でも反応がない。閲覧数(PV)を見れば少なくとも誰かは読んでくれているようだ。

 評価されないから「私には小説を書く才能がないのだ」と思ってしまいます。

 でもそれ「早とちり」です。




初めから感動する小説は書けない

「小説を書こう」と思い立ったら、初めのうちは他人から「面白くない」「退屈だ」と言われるような小説を書いてもかまいません。

 初めから他人を感動させられるような小説を書こうとするのが誤りなのです。

 たとえばフリークライミングをやったことのない人に「上級者ルートで登ってください」と言っても登れるはずがない。

 それでも「登るんだ」と強迫するとやったことがないのですから、登りはじめて早々に落下します。

 そんな体験をして「フリークライミングって楽しい!」と思う人がいますか。いませんよね。

 その日を境にしてフリークライミングに憎しみを感じるくらい嫌うはずです。

「もう二度とフリークライミングなんてやるものか」と。




思い浮かんだものを書こう

 文章を書くときは、とにかく頭に浮かんだことをそのまま書きましょう。

 適当に思い浮かんだことを思い浮かんだ順番に書いてかまいません。

 もちろんそんな文章は、通して読めば意味不明・支離滅裂な文章のはずです。

 でもそれでいいのです。

 コラムNo.250「高速ライティングへの道(1/2)」、No.251「高速ライティングへの道(2/2)」で書きましたが、最初はどんなに粗くてもいいので、思い浮かんだことを高速で書いてしまいましょう。

 打ち込んだ文章を他人が読んだら意味がわからない。

 そんなの当たり前です。

 他人に読ませようと思って書いていませんから。

 他人に読ませるためにわざわざ「推敲」をするのです。

 初めから素晴らしい美文を書こうとしなくていい。

 完璧な文章を一発で書ける人なんてまずいません。

 いてもほぼ「偶然そうなった」にすぎないのです。

 夏目漱石氏・芥川龍之介氏・太宰治氏といった「文豪」だって、何度も書いては直してを繰り返し、一本の小説を手間隙かけて作り上げました。

 素人であるあなたが「一回で完璧な文章を書く」ことなんてできるはずがないのです。

 そう思えば、かなりラクな心持ちで小説を書けるのではないでしょうか。


 とりあえず思い浮かんだものをそのまま書きます。

 そして「あ、間違えた」と思ってもその場で削除せず、そのまま書き進めていきましょう。

 どうせ後で推敲するのです。

 その場で「間違えた」と思ったとしても、本当に「間違えた」かどうかなんて書いた当時は本人にすら判別できないものです。

 私も推敲する段階になって初めて「あれ、こっちのほうが面白いや」と感じてしまうことが何度かありました。

 初めから完成されていなくてもいい、正しい文法でなくてもいい、意味不明で支離滅裂でもいい、長い文章を書く必要もない。

 とにかく「書く」ことです。

 一文字でも書かなければ、一文もできませんし、文章もできません。

「書く」から小説へと近づいていきます。




書き出しは後で決めればいい

「小説を書こう」と思い立って、「書き出し」の一文を書いてみる。

 なにか違う。こんな「書き出し」では読み手は食いつかない。

 そう思って、一度書いた「書き出し」を削除して、また新たな「書き出し」の一文を書いてみる。

 やはりなにか違う。

 違っていて当たり前なのです。

 小説を書き始めた段階では、「佳境」も「結末」も形になっていません。

 形のないものを引き合いに出して「書き出し」と比べるから、いつまで経っても満足できる「書き出し」が書けないのです。

 では「書き出し」をどのように書けば満足できるのでしょうか。


「書き出し」から書かないことです。

 今きょとんとしましたね。

 小説に「書き出し」から書かなければならない、という規則はありません。

 どこから書き始めてもいいのです。

 私は最も盛り上がる「佳境クライマックス」とその後に迎える「結末エンディング」を先に書いてしまってから、「書き出し」を書きます。

 この段階でも「書き出し」はあくまで「目安」にすぎません。

 小説の全文を書き終えて推敲をし、完成された原稿が出来てから改めて「書き出し」を考えます。

 小説の全文が出揃っていますから、それにふさわしい「書き出し」を考える時間が生まれるのです。


 長編小説ならこれでいいのですが、連載小説では「全文完成してからでないと『書き出し』が書けない」では、いつまで経っても連載が始められません。

 その場合は、ストックのあるぶんだけを読んで、それにふさわしい「書き出し」を考えればよいでしょう。




書けそうなところから書けばいい

「書き出し」を最後に決めるように、小説を書く順番も「書けそうなところから書けばいい」のです。

 なにげない日常のシーンなら書けそうだ。緊迫する「佳境クライマックス」なら書けそうだ。物語の「結末エンディング」なら書けそうだ。

 そういうところから書きましょう。

 「書けそうなところから書けばいい」と手当たり次第に書いてみてください。

 気づいたら全体の半分が書けてしまっていることもあります。

 すると「あの部分とその部分がつながっているから、この部分で前後がつながるように書けばいいんだな」と目標が立てられるのです。

 ここが埋まると文章がつながる。

 その繰り返しで原稿用紙三百枚がみるみるうちに埋まっていきます。

 すべて埋まったら推敲の開始です。

 だから「書けそうなところから書けばいい」。

 そうすれば、今まで「小説が書けなかった」人でも、必ず小説が書けるようになります。


 冒頭の「書き出し」の一文から書く必要などないのです。

 とくに現在はパソコンの時代であり、数多くの執筆スタイルを受け入れる寛容さがあります。

 もしいわゆる「文豪」のように紙の原稿用紙に書くのであれば、小説投稿サイトはこれほどまでに利用者数を伸ばせなかったはずです。

 皆様はたいへん恵まれた環境にいます。

 原稿用紙の縛りがなく、どこから書いてもいい世代なのです。

 将来的には音声入力となるのか、人工知能(AI)が書くのかはわかりませんが、少なくとも今はPCのキーボードが打てさえすれば、かなり気楽に小説が書ける環境と言えます。

 だから気楽に小説を書きましょう。





最後に

 今回は「初めはつまらなくてもいい」ということについて述べてみました。

 最初から読み手が感動する小説は書けません。

 書けたら天才かまぐれです。

 多くの凡人は、思い浮かんだところから書けばいい。書けそうなところから書けばいい。書き出しは後で決めればいいのです。

 そうやって長編小説を一本書きあげましょう。

 それが次への自信につながります。




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