338.執筆篇:連載の起承転結(補講)

 今回はご要望があったためコラムNo.328「執筆篇:連載の起承転結」の補講となります。

「補講」は回数にカウントしていないため、執筆篇は残り三つであることには変わりありません。

「連載の起承転結」を寓話『シンデレラ』で読み解いてみましょう。





連載の起承転結(補講)


 今回はご要望のあったコラムNo.328「執筆篇:連載の起承転結」の補講です。

 なかなか具体例に乏しかったので、寓話『シンデレラ』から「連載の起承転結」を見てみましょう。




シンデレラの導入部

「起承転結」の「起」である導入部は次の四部構成で成り立っています。

「導入部」シンデレラが嫌がらせされたくない

「主」下女扱いされているシンデレラ登場

「謎」なぜ継母と義姉妹から嫌がらせを受けているのか「謎」を提示

「解」彼女たちの会話から「対になる存在」の王子様が舞踏会に来ることを知る

「惹」継母と義姉妹が舞踏会に出かけて、シンデレラが留守番する


 まず主人公のシンデレラを登場させて動かしています。小説の基本ですね。

 そしてシンデレラは家では下女扱いされています。なぜ下女扱いされるのでしょうか。

 それは継母と義姉妹が派手好きで、たいへんなことはすべて血のつながりのないシンデレラに負わせているからです。

 そして彼女たちは「対になる存在」である王子様が現れる舞踏会へと出かけていき、シンデレラがひとり留守番をすることになります。

 留守番をさせられたことで「そのまま家にいるとなにか起こるのではないか」と、続きが気になりますよね。

 ここが「惹」なわけです。




シンデレラの展開部

「起承転結」の「承」である展開部は次の四部構成で成り立っています。

「展開部」魔女の助けで淑女になる

「主」シンデレラのところに魔女がやってくる

「謎」魔女の魔法で馬車が現れ、シンデレラは華やかなドレス姿にガラスの靴の出で立ちに

「解」「〇時を告げる鐘の音が鳴り終わると魔法が解ける」ことを知る(佳境部への伏線)

「惹」シンデレラが舞踏会に向かう


 まずシンデレラが留守番しているところに魔女がやってきます。いきなり出来事が起きましたね。

 そして魔女の好意で魔法によりシンデレラは華やかなドレス姿にガラスの靴の出で立ちへと変身し、カボチャの馬車が現れます。

 魔法は午前〇時の鐘の音が鳴り終わると解けてしまうことを魔女から告げられるのです。

 シンデレラは魔女にお礼を言って「対になる存在」である王子様が待つ舞踏会場へとカボチャの馬車に乗って旅立ちます。

「淑女となったシンデレラ」と「対になる存在」である王子様とはどんな関係になるのでしょうか。

 ここが「惹」なわけです。




シンデレラの佳境部

「起承転結」の「転」である佳境部は次の四部構成で成り立っています。

「佳境部」舞踏会で王子様と知り合って、良い関係になる

「主」舞踏会場にたどり着いたシンデレラは王子様を見つける

「謎」しかしダンスをしたことがないシンデレラは隅で王子様が踊っている姿を見ているだけ

「解」それに気づいた王子様がシンデレラをエスコートしてダンスをする

   しかし途中で午前〇時を告げる鐘が鳴る(展開部の「解」の伏線を回収)

「惹」急いで城を出る途中でガラスの靴が脱げるが、かまわず舞踏会場を後にする(「結末部」への伏線)


 舞踏会場にやってきたシンデレラは王子様を見つけます。

 しかしシンデレラはいつも下女扱いされておりダンスを舞うことができません。

 隅でただ王子様のダンスを目で追うだけです。

 そんなシンデレラに気づいた王子様は彼女に関心を持ち、ダンスに誘います。

 興が乗ってきた頃に午前〇時を告げる鐘が鳴り始めます。

 元の下女姿を王子様に見られたくないシンデレラは王子様を振り切って舞踏会場を飛び出します。

 王子様は後を追おうとしますが、周囲の女性が集まってきてそれどころではありません。

 振り切ってなんとかシンデレラを追ってガラスの階段を駆け下りますが、シンデレラは振り向くことなく階段を降りていきます。

 しかし途中でシンデレラのガラスの靴が脱げてしまうのです。

 下女姿を見られたくないシンデレラはガラスの靴にかまわずカボチャの馬車に乗って舞踏会場を後にします。

 そして王子様の手元にはシンデレラの「ガラスの靴」が残されました。

 この「ガラスの靴」が「惹」なわけです。




シンデレラの結末部

「起承転結」の「結」である結末部は次の四部構成で成り立っています。

「結末部」王子様と結婚する

「主」シンデレラはいつものように下女として屋敷の掃除をしています。

「謎」一方王子様は「ガラスの靴」がぴったりと合う女性を探し始めます。

「解」街中を探し回った結果、シンデレラの家にやってきてシンデレラが「ガラスの靴」を履いてぴったりと合います(「佳境部」での伏線を回収)

「結」シンデレラは王子様と結婚する


 シンデレラはいつもの下女扱いされている日常生活に戻りました。

 舞踏会で王子様とダンスができただけで彼女は満足したのです。

 一方の王子様はシンデレラのことを忘れられません。謎の淑女が履いていた「ガラスの靴」にぴったりと合う女性を探し始めます。

 しかし街中の女性へ手当たり次第に履かせてもぴったりと合う女性が見つかりません。

 そんなとき王子様の部下はシンデレラの暮らす屋敷へとたどり着きます。

 継母と義姉妹は我こそはとガラスの靴を履こうとしますが合いません。

 王子様の真意に気づいたシンデレラは人目につかないように掃除をしていましたが、ちょっとした油断で王子様の部下に存在を気づかれてしまいます。

 王子様の部下は、身なりこそみすぼらしいがどこか気を惹かれるシンデレラにも「ガラスの靴」を履くように要求します。

 継母と義姉妹は猛反対しますし、シンデレラ自身も履くつもりがありません。

 そこは王子様の部下の権限で、シンデレラは強制的に「ガラスの靴」に足を入れなければならなくなります。

 そして「ガラスの靴」はシンデレラにぴったりと合うのです。

「ガラスの靴」の持ち主がシンデレラであることが判明し、王子様はすぐにシンデレラの下へと足を運んで彼女と結婚することを決めました。




最後の惹は結に置き換える

 大雑把にとらえれば寓話『シンデレラ』は以上のような構造になっています。

 最後の「結末部」において「惹」が「結」へと変化しています。

 これは「ここで物語は終わりですよ」と読み手へ明確に示すため、「惹」ではなく「結末」を書いてオチをつけるのです。

 もちろん「惹」にしたままで終えることもできます。

 すると「その後シンデレラはうまく結婚生活を送れているのだろうか」と読み手が先読みを働かせて、あれこれと思いを巡らすのです。

「結婚して終わり」よりも記憶に残る物語になりますよね。

 そういう工夫をするのも「連載の起承転結」である「主謎解惹」「起問答変」の適切な用い方なのです。





最後に

 今回は「連載の起承転結」の補講を行ないました。

『シンデレラ』を連載小説だと仮定しながら構造を読み解いていくと、起承転結の四部構成の中で見事に「主謎解惹」の形が現れます。

 そして最後の「結」つまり「結末部」は「惹」で終わらず「結」で終えています。

「これ以上続きはないんですよ」と読み手に宣言しているわけです。

 これによって『シンデレラ』は連載小説として見ても優れた構造を持っていることがわかります。

 物語の展開に迷ったら『シンデレラ』を思い出してください。

 必要なことがすべて書かれていますよ。




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