306.執筆篇:連想ではなく思い出す
今回は「連想と思い出す」ことについてです。
現在B型インフルエンザウイルスと闘っていますので、ネタとして一本まとめてみました。
まだ頭がぼーっとしていますが、なんとか文章を書けるところまでは回復したみたいです。
ストックを2日ぶん使ってしまったのが痛かった。
うがい手洗いはきちんとしていても、家族の中でそういうことをしていない人がいると伝染るんですよね。
(2018年2月2日のことです。2019年6月時点ではインフルエンザに罹患していません)。
連想ではなく思い出す
「冬」を舞台にして小説が書きたいとします。
ではなにを書けばいいのでしょうか。
「冬」から連想することを挙げてみましょう。
連想は希薄になる
「冬」から連想することとして「寒い」「雪」「冬至」「クリスマス」「冬休み」「大晦日」「元旦」「元日」「正月」「ニューイヤー駅伝」「箱根駅伝」「春高バレー」「成人式」「節分」「受験」「風邪」「インフルエンザ」などが挙げられるでしょうか。
ではこの中から「インフルエンザ」を題材にして小説を書いてみましょう。
ちょっと待ってください。
あなたは「インフルエンザ」についてどれだけ知っていますか。
2017〜2018年シーズンでは「A型インフルエンザウイルス」「B型インフルエンザウイルス」が並行して流行しており、「A型」も「A香港型」「Aソ連型」が流行っているのです。中でも「B型インフルエンザウイルス」が全体の六割に迫る勢いを見せています。
時代性も加味して「インフルエンザ」のデータを集めてみました。
私もB型インフルエンザに罹りましたから、実体験を伴ったデータです。
ではこれで「インフルエンザ」を題材にして小説を書いてみましょう。
まずは「企画書」です。
主人公がインフルエンザに罹って快復するまでのお話にしますか。
そうなると、インフルエンザに感染したのはどこで、それからどういう状態に陥って、咳や発熱がいつ頃始まって、悪寒が酷く熱に浮かされて、病院に行くタイミングはいつで、処方薬を飲んで快方に向かうという具合に流れていくでしょう。
主人公が内科医となってインフルエンザと闘い、人々の命を救うようなお話もありかもしれません。
そうなると、今シーズンはインフルエンザが流行していることを医師会などから入手して知っています。風邪の症状を訴えている患者に聞き取りをして発熱で38度を超えているようならインフルエンザを疑い、下回るようなら風邪で処理する。で後日38度を超えてきたらインフルエンザとして対処すればいいというふうに割り切っていくことでしょう。
うーん……どちらもなにか物足りなさを感じませんか。
どうにも「インフルエンザ」を表面でなぞっただけの作品になってしまいそうな予感を覚えます。
思い出すとエピソードが膨らむ
では「インフルエンザ」からあなたの体験を思い出してみてください。
私は「42.0度を超えて危ない目に遭ったが、解熱鎮痛薬でなんとか42.0度を下回ることができた。後れていたら命が危なかった」「当初は鼻水・タン・咳があり、次第に悪寒を感じ始めて病院に受診するも風邪と言われ、翌日ついに体温が39.0度を超えた。すぐに病院へ再受診するとインフルエンザB型と診断された。抗生物質を投与することで症状が軽くなっていった」と二つのことを思い出しました。
前者は私が一昨年にひいたインフルエンザで、後者は2018年にひいたインフルエンザです。
二つとも自身が体験してきたものを思い出したので、書きたいことが山ほどあります。
しかも体験したことだから、書いてあることにウソ偽りがありません。
連想するとこういった「体験」に裏打ちされていないものを書く必要があります。
それはウソ偽りにまみれた文章ということになるのです。
ここでは現在進行形なので後者をネタにして小説を書いてみましょう。
すると「そういえばあのときあんなことがあったな」「あのときそんなことが起きていたのか」といった内的要因や外的要因が詰まることなくあふれ出てくるのです。
「1月30日水曜日に鼻水・タン・咳が酷く感じて少し悪寒もする、体温は高くないけれども病院に行ってインフルエンザ簡易検査を受けて陰性ということで風邪薬をもらって帰ってきた。しかし薬を飲めど症状は改善せず、翌31日に39.3度の発熱があった。診療所が休みのため解熱鎮痛薬でごまかしながら、2月1日に再度受診をする。インフルエンザ簡易検査でB型の陽性反応が出てインフルエンザの抗生物質を処方される。帰宅後すぐに抗生物質を服用すると少しずつ熱が下がってきて、2日にはようやく布団から抜け出ることができるようになった。インフルエンザに罹ると5日間は外出禁止となるため、少しずつ体力を戻そうと思う」という体験をしています。
これにはウソ偽りがありません。
「小説が書けない」という人の中には「自分は絵空事が書けないから」という理由をつける人がいます。
でしたら、あなたが体験したことを元にして小説を書いてみましょう。
そこから少しずつ美化したり卑下したりして徐々に架空の物語を編んでいけばいいのです。
状況を再現して伝える
「インフルエンザ」について思ったことを書くのではなく、そのときの状況を再現して読み手に伝えるつもりで書きます。
だから読み手に「インフルエンザは罹るとたいへんだ」という書き手の思いが伝わるのです。
ではどのように書けばいいのか。
あなたが患者として内科医のもとへ赴き、受診前までの病状を内科医に伝えるように書きましょう。
あなたが内科医に過不足なく病状を伝えられなければ、適切な診療が受けられません。
病院では診察が始まると記憶力を総動員して「あのときはこうで、このときはこうだった」と時系列に従って伝えていきますよね。
時系列に従うのが大前提です。
話があちこちに飛んでしまうと、内科医は正しい診断を下せません。
何科であろうと医師に病状が伝わるよう、言いたい順番を時系列に従って憶えておいて、そのとおりに述べていきます。
なにも難しいことはありません。
あなたがいつも医師と交わしているやりとりが、伝わる文章の基本そのものなのです。
聞き手(読み手)がいると想定して、その人にわかるように順を追って説明していきます。
たったそれだけの工夫で、聞き手(読み手)が知りたい情報を、知りたい順番に与えることができるのです。
私は病気持ちなのでよく複数の医師と会話しています。
そのときのやりとりを想定しながら本コラムを書いているのです。
一見不利と思えるような「病気持ち」という属性が、コラムにおいては強みに変わっています。
最後に
今回は「連想ではなく思い出す」ことについて述べてみました。
着想するには「連想」が最もやりやすいのですが、「連想」だけでは小説の屋台骨である物語を創れません。
物語を書くには着想したものから自身の体験を「思い出す」ことです。
体験があるからその作品に凄みが加わってきます。
だからといって「推理小説」で犯人の心境を体験したいから罪を犯すような真似はしないでください。
たとえば子供の頃に友達とふざけあってした「やんちゃ」なことを思い出して、それを誇張することでもじゅうぶん犯罪心理が読み解けます。
「推理小説」はいろいろと制約が多いジャンルですので、小説を書く最初のジャンルとしては難しいでしょう。
もし一本目の小説をこれから書こうとお思いでしたら、「現実世界の恋愛小説」を書くべきです。
こちらはたいていの方がなんらかの体験をしてきたはずですので、それをアレンジすればいい。
なので「現実世界の恋愛小説」をまずは書きましょう。
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