305.執筆篇:創造力はそれほど求められない

 本日インフルエンザB型と診断されました。

 5日間の外出禁止を言い渡されたので、作業を控えめにして体調が持ち直したらまたストックを溜めていきたいと思います。

(2018年2月1日の話です。2019年6月の話ではありません)。





創造力はそれほど求められない


 小説を書く人には「創造力」が必要だとよく言われます。

 ですが高い次元が要求されるわけではないのです。




宇宙のすべてを創造する必要はない

 宇宙を舞台にした「SF小説」では、別の宇宙をゼロから生み出すような「創造力」は必要ありません。

 そんなことができる人は「異世界転生」した際、生み出した宇宙の神様になることだってできます。

「別の宇宙」という存在は「SF小説」の中でも歴史がかなりくだってから現れたようです。

「SF小説の祖」と呼ばれるジュール・ヴェルヌ氏は『八十日間世界一周』『海底2万マイル』『月世界旅行』といった、いずれも「現実世界の中にある未踏の地」を舞台にした現代でいう「冒険小説」を書いています。

 ヴェルヌと並んで「SF小説の父」と呼ばれるハーバート・ジョージ・ウェルズ氏の代表作は『タイム・マシン』『透明人間』『宇宙戦争』といった「空想科学小説」つまり今でいう「SF小説」です。

 このうち『宇宙戦争』は地球人と火星人との戦争を描いています。


 近年でも地球を含むいわゆる「天の川銀河」を舞台にした「SF小説」はあっても、それを飛び越えたたとえば「アンドロメダ銀河」を舞台にした「SF小説」というものはプロの作品ではまず見られないのではないでしょうか。

 田中芳樹氏『銀河英雄伝説』は「天の川銀河」での覇権争いですし、『タイタニア』も地球から宇宙へ進出した人類の後年の話ということになっています。

「天の川銀河」を飛び出ることさえ難しいのに、まったく別の宇宙をゼロから創造できる人は間違いなく「その宇宙の神様」です。

 マンガの松本零士氏『銀河鉄道999』は「天の川銀河」を飛び出して「アンドロメダ銀河」へと旅立つ少年星野テツローと謎の美女メーテルの冒険譚になります。

 松本零士氏の頃になってようやく「天の川銀河」を飛び越える作品が出てきたのです。

 松本零士氏が「日本SFジャンル」発展に与えた影響は多大と言わざるをえません。

 それほど「別の宇宙をゼロから生み出すような創造力」というのはひじょうに特異な才能なのです。




今ある宇宙のどこかに世界を創る

 だから「SF小説」の書き手の多くは「別の宇宙をゼロから生み出す」のではなく、「今認識されている宇宙のどこかに小説世界を創る」ことになります。

 どれだけ「宇宙」「天体」に興味や関心があるのか。

 それが「宇宙を舞台としたSF小説」を書くために必要となります。

 たとえば「どこかの天体が地球に似ている環境ではないかというニュース」をどれだけ憶えているかが問われます。

 このあたりが「宇宙を舞台としたSF小説」の難しいところです。

 たとえば2017年11月に赤色矮星ロス128bの周りを99日で公転している惑星が地球から11光年先に存在することが判明しました。

 11光年ですから、光速で飛ぶ宇宙船があれば11年で到着し、往復するのにも22年で済むのです。

 ここからどれくらい「想像力」が動かされるかで「創造力」が働きます。

 もしワクワクしているようなら、あなたには「宇宙を舞台としたSF小説」が書けるはずです。

 そのワクワクを読み手が抱けるような小説を書けば必ず当たります。

 人類や生命体が存在すると思われる天体は、これからも数多く見つかることでしょう。


 また「天の川銀河」の中で「何座のどの恒星の周りを回る惑星」を「居住可能」と仮定して小説世界を構築することもあります。

 先述の『銀河英雄伝説』では地球やシリウスなどを導入部で出しながらリアリティーを生み出し、「天の川銀河」の漠然とした地図を作り出したのです。

 これほど「構想力」「創造力」の大きな小説はなかなかお目にかかれません。

 たいていのSF小説は「とある一角の惑星とその周囲を舞台にした」ものが多いのです。

 先述した『タイタニア』も「宇宙の一角」が舞台となっています。

 だから「SF小説」を書こうとしている人は「別の宇宙」を創造する必要はありませんし、「天の川銀河」すべてを埋め尽くす必要もありません。

 「とある一角」でじゅうぶんなのです。




地球とは違う惑星

 それに対して「ある一つの惑星」が舞台となる小説は山のようにあります。

「SF小説」の他に「異世界ファンタジー小説」でも用いるからです。

 太陽の周りをどれだけの日数で一周するのか、一日は何時間なのか、大陸や島はどこにあるのかなど決めなければならないことが山積しています。

 ですがたとえば「火星」や「木星」を舞台にするなど、太陽系の惑星なら『理科年表』を読めば公転・自転・地盤・大気成分などがわかりますので、太陽系惑星を舞台にした「SF小説」を書きたいのなら『理科年表』は必ず購入して手元に用意しておきましょう。

「火星」が舞台というとマンガ・貴家悠氏&橘賢一氏『テラフォーマーズ』が真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。古いですがアニメ・XEBEC『機動戦艦ナデシコ』も「火星」と「地球」そして「木星」のお話でしたよね。

 「木星」はアニメ・北爪宏幸氏&富野由悠季氏『機動戦士Ζガンダム』でティターンズに所属することになるパプテマス・シロッコが「木星帰り」として知られていますね。続編アニメ『機動戦士ガンダムΖΖ』はラストで主人公ジュドー・アーシタがルー・ルカとともに木星へ旅立って終わります。




地球だけど異なる世界

 こちらは「ファンタジー小説」全般で用いられることがあります。

 とくに「ローファンタジー小説」なら地球なんだけど、何かが異なる世界であることが多いのです。

 マンガのゆうきまさみ氏『機動警察パトレイバー』はレイバーと呼ばれる人型作業重機が登場する世界になります。

 賀東招二氏『フルメタル・パニック!』は1990年代でソビエト連邦が存在する冷戦末期が舞台となっているのです。この設定自体は「ファンタジー」なのですが、全長八メートルの人型強襲兵器アームスレイブが存在する「SF」要素があり銃撃戦もあるため「ライトノベル」なのは確かなのですが「SF小説」と言ってもそれほど外れていないのではないでしょうか。

 鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』では「架空の学園都市」が舞台となっています。

「架空の学園都市」というのはとてもよく使われる設定なので、ライトノベルを読んでいて知らない人はまずいないでしょう。





最後に

 今回は「創造力はそれほど求められない」ということを述べてみました。

 小説に求められるのは人間関係の推移であって、舞台となっている世界(宇宙)ではないのです。

 それなのに「SF小説」を書こうと気負っている書き手は「別の宇宙」を考え出そうとします。

 でも読み手としては「別の宇宙」を作られたところで「天の川銀河」とは別のどこかというくらいの認識にしかなりません。

 あれだけ苦労して創ったあなたのオリジナルな「別の宇宙」の出来なんて誰も気にしていません。

「SF小説」だからと気負わず、「ローファンタジー小説」程度の「少し変わった地球」でもなんら問題ありません。

 設定はあくまでも人間関係を読ませる舞台として存在していればよく、完全オリジナルである必要なんてないのです。

 あなたが住んでいる町を舞台にしたってなんら問題ありません。

「SF小説」だからと気負う必要はないのです。



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