262.表現篇:連載よりもまずは短編を(No.114補講)
今日は「要望」がございましたので二回投稿となります。
(『ピクシブ文芸』様『小説家になろう』様掲載時)。
まずは「要望」であった短編小説の書き方についてです。
連載よりもまずは短編を(No.114補講)
これまで基本的に三百枚・十万字の長編小説を例にとりました。
今回は皆様からのご要望により「短編小説」に絞って述べていきます。
短編の定義
まず分量の目安を挙げておきます。掌編はショートショートのことです。
掌編:(二十五枚以内・一万字以内)
短編:(五十枚・二万字以内)
中編:(二百枚・八万字以内)
長編:(三百枚・八万字以上)
小説投稿サイト『カクヨム』の括りを見るとざっくりこんな感じになります。
短編は掴みが命
「書き出し」では冒頭二文までに必ず主人公を登場させてください。
短編では「書き出し」で世界観や舞台を「説明」してしまうと、読み手が「いつになったら主人公が出てくるのだろうか」と焦れた挙句その先を読まなくなります。
そうなると当然評価もブックマークも増えませんよね。
短編は分量が短いがゆえに、冒頭から主人公を登場させるべきです。冒頭を会話文にした場合でも、次の文で必ず主人公を出すのです。
できれば主人公は冒頭から出来事の渦中にいるくらいがちょうどいい。
たったこれだけの気遣いができなければ、読み手はあなたの短編小説をあきらめて別の短編小説を物色し始めます。
一度は読み手に選ばれた作品なのですから、内容でその期待を裏切ってはなりません。
小説は主人公に感情移入して物語を疑似体験していく娯楽です。
それなのに物語に没入していくための主人公がいつになっても出てこない。
これでは冒頭で見切られて当然です。
冒頭で主人公を書かないで、どうして読み手の関心を惹きつけられるというのでしょうか。
エピソードは欲張らない
短編小説は長編小説と比べて、さらにムダのない文章が求められます。
長編ならエピソードを五つから六つほど間に挟むことができます。
しかし短編ではエピソードをせいぜい二つ組み込める程度です。
欲張って三つも四つも入れてしまうと、それぞれの「描写」がどうしても薄くなります。
「説明」だらけのただの「文章」になるのです。
長編だろうと連載だろうと、一エピソードにはだいたい二十五から五十枚、一万字から二万字は欲しいところです。
五十枚・二万字が短編の目安なので、大きめに見積もると組み込めるエピソードはひとつだけになってしまいます。
そうなると長めのショートショートになるのです。
ここで短編のペース配分を挙げてみます。
「起承転結」構成なら「起承」で全体の三分の二、「転結」で残り三分の一だと思ってください。
つまり「起承」で一万三千字のエピソード、「転結」で七千字のエピソードを目安にするとよいでしょう。
「起承」では今回の短編で登場する人物・アイテム・世界観などをすべて登場させて「説明」「描写」していく必要があります。
とにかく話を広げていきましょう。
ただし短編では伏線をそんなに張らないでください。
伏線の回収それ自体が小さな物語になっています。
つまり伏線が多いとその回収だけに追われて物語が希薄になってしまうのです。
「転結」では新たな人物やアイテムや設定や伏線は出さないでください。
これから締めに向かって収束していく展開なのに、そこで新たな人物やアイテムや設定や伏線を出してしまうと唐突感が強くなります。
この「取って付けた」感が強くなるほど読み手は「書き手のご都合主義」を察知するのです。
それまでがどんなによい展開の小説であろうとそれ以降読まれなくなります。
『小説家になろう』ならストーリー評価が残念な結果となるのです。
そうならないようにするには、「転結」は「起承」で出した人物やアイテムや設定や伏線だけを用いて物語の「結末」へ向かうように計らいましょう。
長編なら「
しかし短編では「
読ませたいのは「
だから「転結」は一エピソードにまとめて、「転」で「
短編の基本は一人称視点
短編でも三人称視点で書けないことはないのですが、どうしても主人公への感情移入が浅くなってしまいます。
「短編の基本は一人称視点」だと憶えておいてください。
どうしても何人かの心の中を読み手に読ませたいのなら、その人物たちの一人称視点の節を作りましょう。
ゲームのエニックス(現スクウェア・エニックス)『DRAGON QUEST IV 導かれし者たち』はまずパーティーメンバーそれぞれの「一人称視点」で話を進め、最後に本編主人公の勇者が彼らを率いて戦う構成になっています。
これが多人数による「一人称視点」のお手本です。
しかし短編でこれをやってしまうと、一人ひとりのキャラをただ「説明」するだけになってしまいます。
物語のメインとなるのはあくまでも主人公です。
読み手は主人公に感情移入して疑似体験できるから小説を読みます。
それは短編であっても同じです。
主人公に深く感情移入できるからこそ、読み手はあなたの短編を読んで満足します。
だから短編では『ドラクエIV』のような形はとらないようにしましょう。
短編の登場人物
短編の登場人物は、少なければ少ないほどよいのです。
たとえば登場人物が四人なら一人につき五千字まで「描写」することができます。
十人登場させてしまうと一人につき二千字しか使えません。
これでは登場人物の「設定資料集」にしかならないでしょう。
では何人が的確なのか。特段描写する必要のないモブは含めないものとします。
まず小説は主人公がいなければ物語になりえません。
また人物がひとりだけでは牧歌的な物語になってしまいますから主人公との対比になる「対になる存在」も必要です。
最低でもこの二人が必要になります。
ただし、二人だけでエピソードを考えるとどうしてもパターンは「主人公と対になる存在」に限られてしまい、誰が書いても同じ関係性の物語にしかならないのです。
もちろん小説は「主人公と対になる存在」の関係性で「
しかし短編の場合は「転結」エピソードがひとつにまとまっているため、どうしても「転結」は「主人公と対になる存在」の関係性を中心に読ませざるをえません。
そこで物語のパターンを増やすためにもう一人(三人目を)加えてみたとします。
「主人公と対になる存在」「主人公と三人目」「対になる存在と三人目」「主人公と対になる存在と三人目」の四つの関係性が生まれるのです。
短編ではこのうち「主人公と対になる存在と三人目」の関係性が主となります。
前述どおり「起承」は冒頭から主人公を登場させます。
そして早々に「対になる存在」を提示して「佳境」を目指すことになるのです。
そこに三人目が主人公側か「対になる存在」側について登場します。
主人公の親友かもしれませんし、「対になる存在」の関係者かもしれません。
読み手を主人公に感情移入させつつ、「対になる存在」の情報を手早く読み手に提示して主人公にも認識させます。
その間に三人目が立ち回るのです。
これを「起承」で書けていなければ、いくら「転結」のエピソードを巧みに描いても唐突感が拭えません。
三人が的確かというとそうでもなく、慣れてくれば十人いてもまず問題ありません。
主人公をサポートするためだけに登場するキャラもいるからです。
取り立てて強く描写することはないのですが、なくてはならない存在という人もいます。
六人の勇者パーティーと「対になる存在」側四人という構図も「あり」です。
では短編で何人登場させるのが的確なのでしょうか。
それは短編をどれだけ書き慣れているかどうかにかかわってきます。
もしあなたが短編を初めて書くのであれば「主人公と対になる存在と三人目」の三人だけに絞って書きましょう。
必然的に
「説明」が相応に入ったとしても圧倒的な「描写」で覆い隠すことができるのです。
とくに主人公の人物描写を増やせるので、読み手を主人公へ深く感情移入させることができます。
三人で破綻しない短編が書けて評価が高まったら、後はあなたの裁量次第です。
短編の構成
短編は五十枚・二万字が目安です。
連載の形にするのなら、一回に五千字書ければ「起承」二章・「転結」一章で構成、四千字なら「起承」三章・「転結」二章で構成、三千字なら「起承」六章・「転結」三章で構成六章構成にできます。
もし一日に六千字書けるのなら「起承」二章・「転結」一章か、「起承」四章・「転結」二章で構成かが選べるのです。
だから書き手であるあなたが「一日に何千字書ける」のか。
これが無理のない構成を決めます。
なぜこうするかといえば、一回の投稿ぶんにおいても起承転結・序破急などの構造を取り入れる必要があるからです。
つまり一回の投稿ぶんでひとつの小さな物語を書きます。
主人公は必ず全体の「起承転結」を通して書かなければなりません。
そうしないと視点が錯綜して物語の一貫性が保てないからです。
短編を『ドラクエIV』にしてはいけません。
主人公だけに視点を置き、他の登場人物との絡みを組み立てていきます。
最終的には「転結」で「対になる存在」との決戦が描かれるわけです。
そこに至るまでに他の登場人物が相互にさまざまな影響を与えあって物語を彩っていきます。
だから読み手は主人公を通してワクワク・ハラハラ・ドキドキを感じるのです。
最後に
今回は「連載よりもまずは短編を(No.114補講)」について述べてみました。
五十枚・二万字以下の短編は「主人公の一人称視点」に定めましょう。
そのうえで連載投稿するなら一回の投稿ぶんを何千字にするかで何章仕立てにするかを決めます。
『小説家になろう』において「短編小説」として投稿する場合。
すべて書ききってから投稿することになるので、何章に分けるかはあなたの裁量次第です。
できれば「起承」で全体の三分の二のエピソード、「転結」で残り三分の一のエピソードという割合を目安にしましょう。
「起承」で本作に登場する人物やアイテムや設定や伏線をすべて書きます。
「転結」になってから新たに人物やアイテムや設定や伏線を出さないでください。
読み手に唐突感つまり「書き手のご都合主義」という印象を与えてしまいます。
なので「起承」で話を広げていき、「転結」で収束点に向けて広げた伏線をひとつずつ回収していくのです。
伏線のない小説というのはまずありません。
そのことは今後「表現篇」で触れることになります。
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