254.意欲篇:執筆前によい気分になろう

 今回は「小説を書く意欲」についてです。

 やっぱり小説は「気分が乗っている」ときに書くべきです。

 でも書けない日も出てきます。

 どうすればよいのでしょうか。





執筆前によい気分になろう


 執筆する際、あなたはなにをしていますか。

「そりゃパソコンを立ち上げて『Word』を起動し、小説ファイルを開くに決まっているじゃないか」

 それってただの作業ですよね。

 私が問いたいのは「気分を乗せるようことをしているか」どうかです。




気分が乗らないと効率が落ちる

 物事に取り組む際「気分が乗らない」ことはなかなか進捗しないものです。

 なぜなら「意欲が湧かない」から。

「そんなに意欲って必要か?」

 という疑問が出てくる人は少ないと思います。

 とくに「小説を書くことが楽しい」と感じている人は「意欲がみなぎって」いるものです。

 だからどんどん筆が進みます。

 だからそういう人は取り立てて「気分が乗っている」かと聞く必要なんてありません。

 当たり前のように意欲的に執筆活動に取り組みます。

 もし「気分が乗らない」ままパソコンの前に座って考えを巡らせていたらどうでしょうか。

 何をどう書いてよいものかわからず、いつまで経ってもなかなか筆は進まないはずです。

 本当になにを書けばいいのかが見えてきません。

 この「気分が乗っている」つまり「意欲が湧いている」ことは執筆に限らず、さまざまな分野で作業の効率を高めてくれます。




よい気分になるには

「気分が乗っている」状態になる、「よい気分になる」には何が必要でしょうか。

「昨日投稿した小説にたくさんの評価とブックマークが付いた」その結果「ランキングに載った」。

 となれば、その作品の続きを書くことが楽しくてしょうがなくなります。

 つまり「よい気分になって」小説を書けるわけです。

 でもたいていの書き手の方は、ランキングに載ることもなく細々と連載小説を書くことになります。

 この状態だと「よい気分になって」いないわけです。

 富める者はさらに富み、貧しい者はさらに貧しくなる。それが小説投稿サイトであり人生というものです。

 であれば無理やりにでも「よい気分になる」ことをしないと、連載の続きを書く意欲が湧きませんよね。

 では、どうやって「よい気分になれ」ばよいのでしょか。


 実はなんでもいいのです。

 たとえば執筆前に紅茶を一杯用意する、ポテトチップスの袋を用意する、ショートケーキを買ってきて冷蔵庫に入れておく、など本当になんでもかまいません。将来の旅行のために貯金箱へ一日五百円ずつ投入するのもいいでしょう。

 つまり明確な「ご褒美」があると、人は「よい気分になる」ものなのです。

 本当にそんなことで「よい気分になれ」るのでしょうか。

 なれるものなのです。


 いったん逆を考えてみてください。

「すれば必ず懲罰される」とわかっていることを「意欲的に取り組む」人はまずいません。

 そんなことに精を出しても、待ち受けるのは「懲罰」です。

 被虐的で「Mっ気がある」人でなければ、わざわざ自分の不利益になるようなことに張り切ることなんてしません。

 そんな作業を押しつけられて尽力するなんて愚か者のすることです。

 もし「必ず」でなく「すれば懲罰される可能性がある」程度だった場合はどうでしょうか。

 法の目をくぐり抜けて不正を働く者が出てくることはまず間違いないでしょう。

 「必ず懲罰される」とわかっていれば行動しませんが、「懲罰される可能性がある」程度では抑止効果はそれほど発揮されません。


 では本筋へ戻ります。

「すれば必ずご褒美が待っている」とわかっていれば、誰だって意欲的に取り組むでしょう。

 であればまず「ご褒美」を準備するのです。

「ご褒美」がありさえすれば、人は「よい気分」で作業できます。

「ご褒美」のグレードは作業の難易度によって決めるべきです。

 いつもは紅茶一杯ですが、「佳境クライマックス」から「結末エンディング」までを一気に書こうというくらい難易度が高くなれば、お茶請けとして甘いものを用意しておきましょう。

 とくに甘いものは糖質で出来ているので、脳の栄養になります。

 ただの紅茶一杯よりも甘いものを一緒に食べるほうが「ご褒美」度が高いのです。

 また紅茶をロイヤルミルクティーに変えてみるのもいいでしょう。




長期的なご褒美

 だからまずは「ご褒美」を用意して「よい気分になる」ことを優先しましょう。

 できれば「小説投稿サイトで高い評価を得る」ことが望ましい「ご褒美」であるのは言うまでもありません。

 ですが駆け出しの書き手ではそれほど高評価を得ることはできないと思います。

 ならば「ご褒美」の効果を利用して意欲を高めることが必要なのです。


 小説の執筆を始めるとします。

 そのとき筆を執る前にまず小説が書きあがったときの「ご褒美」を設定しましょう。

 でもその「ご褒美」の撒き餌効果は二か月しかもちません。つまり一作を二か月で書きあげることが必要です。


 小説賞に投稿する際に一回ですべてを投稿する場合を考えてみましょう。

 コラムNo.168「連載篇:文章を高速で書く」で述べたように、二か月間で会話文を中心として説明も描写も粗くていいのでとりあえず書きあげてしまいましょう。

 二か月以内で書きあげたら「ご褒美」を受け取ればいいのです。

 そして残り一か月をかけて推敲をしていけば、質が高くかつ勢いのある小説に仕上がります。


 超長編の連載小説の場合は、まず「あらすじ」「箱書き」「プロット」を固めておきます。出来あがったら、書きたいところつまり「佳境クライマックス」と「結末エンディング」を先に書いてしまってストックしておきます。

 それから「ご褒美」を用意して二か月間連載を続けてください。

 そして二か月以内に「佳境クライマックス」までたどり着いたらそこで「ご褒美」を受け取りましょう。

 連載をしてきた結果「佳境クライマックス」と「結末エンディング」を書き換える必要が出てきたら、再度「ご褒美」を設定して「結末エンディング」まで意欲を持って取り組めばよいのです。

 長期的にはどんな「ご褒美」がよいのかについて疑問に思うところもおありでしょう。

 しかし長期間小説を書き続ける生活をしていると、食費・水道光熱費以外でお金を使うことがほとんどなくなります。

 もちろん読みたい小説の新刊が出たら買うでしょうけど、しょせんその程度です。

 つまり使えるお金がありあまっているはず。

 であれば娯楽や趣味として少し値の張る「ご褒美」を設定しやすくなります。

 たとえば話題の映画を観に行くのもじゅうぶん「ご褒美」になるのです。

 二か月間の禁欲生活ですから、その二か月でたまった鬱憤を発散できる「ご褒美」が望ましいと思います。

 それなら娯楽や趣味に行き当たるはずです。





最後に

 今回は「執筆前にいい気分になろう」ということを述べてみました。

 基本は小説投稿サイトの連載が高く評価されていればいちばん「よい気分になれ」るのです。

 でも駆け出しではそんなに評価を受けません。そもそも読んでくれる人が少ないのです。

 そこで姑息ですが日々の「ご褒美」を用意してから執筆に取りかかるようにしてみましょう。

 しかし日々の「ご褒美」はその日のやる気しか引き起こしません。

 小説を書きあげるための長期的な「ご褒美」も用意する必要があります。



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