251.意欲篇:あなただから創れる小説
今回は前回同様「あなたが創る」ことについて述べています。
これまで経験してきたことは人それぞれ異なります。つまり「知識」の偏りは万人が異なるのです。
小説を書くには「知識」が必要です。
しかしいつでもどこでもスマートフォンでインターネットを検索できる世の中になりました。
では書き手に「知識」は必要ないのでしょうか。
あなただから創れる小説
小説を書くには物語を用意しなければなりません。
どんな物語を思いつけるのか。それが「良い小説」になるかどうかを分けます。
同じジャンル、同じ「テーマ」、同じような主人公や登場人物たち、同じキーアイテム、同じ世界観や舞台が「お題」として与えられたとしても、まったく同じ物語が生まれるわけではないのです。
ここまで条件を揃えても物語の展開は人それぞれ違いが現れます。
知識によって物語に差が生まれる
それは書き手の「知識」の差によって引用してくる情報で差が生まれるからです。
文章は人生経験の違いや専門分野がなにかなどで身についた書き手の「知識」に左右されます。
つまり「あなたの人生経験や専門分野とまったく同じ書き手でなければ、まったく同じ作品にはならない」わけです。でもそんな人いますかね。
生年月日が一緒で、性別も一緒で、生まれた場所も一緒。でも家族構成が異なっている。この場合は家族構成による「人生経験の違い」が生じます。
またケンカをした時期や反抗期になった時期までまったく同じという人もまずいないでしょう。
子どもの頃からできるだけ多くの体験をしようと意欲的に取り組んできた人は、「知識」の引き出しが多くなっています。
そういう人であれば、きっと多くの実体験をもとに作品は紡がれていくのです。
でも家庭が貧しくてそんなに体験してこられなかった人もいます。
そうであれば今この瞬間からできそうなことを始めてみませんか。
知識の索引を作る
小説を書くには「知識」が必要です。
現在、ある程度詳しい「知識」はインターネット上に存在します。
ですがその膨大な量の「知識」から適切な「知識」を導き出す「索引」が頭の中に存在していなければなりません。
「索引」もないのにインターネットから「知識」を引っ張ってくるのは至難の業です。
たとえばアメリカ合衆国初代大統領はジョージ・ワシントン氏ですが、二代大統領は誰でしょうか。
世界史に強かった方なら記憶の中に答えがあるでしょう。強くなかった方はインターネット検索をすることになります。
ネット検索で「アメリカ 大統領 二代」と入れれば「アメリカ合衆国大統領一覧」の類いのWebページがヒットするのです。
そこにはジョン・アダムズ氏が二代大統領であることが記されています。
これはわかりやすい検索ですよね。
では耳かき棒に付いている毛のようなものをなんと呼べばいいのでしょうか。
こちらも「耳かき 毛のような」「耳かき ふわふわ」で検索すると「
「毛のような」「ふわふわ」というキーワードを思いつくのは少し語彙が必要になりますね。
インターネット検索の時代、この「毛のような」「ふわふわ」というキーワードが「索引」に使えるということを「知識」として憶えておく必要があるのです。
もし使えることを知らなければ、検索が難しくなってしまいます。
少なくとも「知識」に関連付けられているであろう言葉を連想できなければ、Webサイトから正しい「知識」は引っ張ってこられません。
できればあなたの頭の中に「知識」があるほうが望ましい。でもインターネット社会となった現代では、必ずしも頭の中に完璧な「知識」を記憶しておく必要はありません。「知識」を導き出すための「索引」さえ連想できればよいのです。
知識の差を活かす
人によって「知識」が異なる。
だからこそ、ある「エピソード」はスラスラと書けますが、ある「エピソード」は頭を悩ませて「知識」との格闘をしなければならなくなるのです。
あなたの人生経験で得た「知識」であればこんこんと湧いて出ますから、労せず小説を書きあげることができます。
人生経験恐るべし、です。
この「知識」の差を執筆に活かします。
「知識」をインターネットから引っ張ってくる場合、ヘタをするとWebサイトの文章を「コピー・アンド・ペースト」略して「コピペ」しただけになりがちです。
それではただの「剽窃」「盗用」との誹りを免れません。
だからこそ、小説の書き手はさまざまなことを経験しておくべきなのです。
そこから得られる皮膚感覚が小説にリアリティーをもたらします。
あなただから書ける小説
人は経験したものしか詳しく書けません。
さまざまなことを経験してきた「あなただから書ける小説」というものも生まれてくるのです。
ガンに冒されて年単位で治療を行なってきた人であれば、ガン闘病記を小説にすることもできます。
そこに真実があるからです。
故・小林麻央氏は乳ガンに罹りましたが、ひたむきに治療を継続して、一日でも長く子どもや夫と一緒に暮らしたいという強い願望がありました。
そしてできれば完治させて末永く家族と暮らしたいという思いが強かった。
そんな闘病の日々をブログに公開することで、多くのガン患者の希望となったのです。
これによりBBCが毎年選出する「100人の女性」つまり世界で影響力があり人の心を動かす女性100人に選ばれます。
あのブログは乳ガンと闘病していた小林麻央氏でなければ書けません。
太平洋戦争に従軍していた人にしか書けない小説もあります。
それは回想録であったりノンフィクション小説であったりするかもしれません。
でも実際に戦争を経験していなければ、命の尊さを読み手に訴えかけても効果は薄いでしょう。
私は戦争経験こそありません。しかし子供の頃はケンカに明け暮れていました。
ケンカの延長線上に戦争があります。
だから私は戦争小説や戦記ものを好んで書いています。
ケンカの引き出しが多いから書きやすいわけですね。
反対に恋愛には疎いほうだったので、私の恋愛小説は毎回かなりの難産をしています。
そもそも「恋情」「愛情」という感覚に乏しいため、底の浅い恋愛小説にしかならないからです。
もちろん執筆前に恋愛小説をたくさん読むなどして「知識」を蓄えようとしますが、それはあくまでも「文字の知識」でしかありません。
人生で経験していないため「実体験の知識」ではないのです。
ですが、そういう「ぶきっちょな主人公の恋愛小説」を書くのには向いているのではないでしょうか。
私の歪な「実体験の知識」で書ける恋愛小説はそういうものに偏ってしまいます。
ではあなたがこれまでに経験してきたことを小説に活かせないものでしょうか。
小説を書こうと思い立ったら、まず自分の人生を顧みてください。
どんな出来事を通じてどんな「知識」を得ているのか。
その知識は「文字の知識」なのか「実体験の知識」なのか。
それをきっちり区別することで「あなただから創れる小説」は生み出されるのです。
最後に
今回は「あなただから創れる小説」について述べました。
あなたは日頃さまざまな経験をしてきたはずです。それはあなたの強い武器となります。
「あなたにしか書けない小説」「あなただから創れる小説」で勝負すれば、ひじょうに説得力のある作品に仕上がるのです。
少なくとも「小説賞・新人賞」や「コンテスト」などに参加する作品は「あなたにしか書けない小説」か「あなただから創れる小説」かであるべきです。
選者の目は節穴ではありません。
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